魔法少女と悪の下っ端おじさん

おてんと

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第32話 悪の組織おじさんと会議

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 「皆、今日は集まってくれてありが――」


 「なんか腹減ってきた。おい、カメアタマダブル、この後、飯食い行こーぜ」

 「ワシ、胃が弱ってきたから、消化しやすいもの食べたい」

 「ラーメンとかな!!」

 「なに?! ラーメンって消化良かったのか?! 知らなかったのだ!!」

 「そんなわけ無いでしょう」

 「「チャーシューは燻製が一番!」」

 「あ゛~」

 「......。」

 第二怪位、怪人ワーストキング。開幕早々、涙がちょちょ切れそうになった。

 会議を始めようとしているのに、なぜかラーメンの話に。


 気を取り直してもう一度。

 「みんな――」

 「ラーメンって言ったら、やっぱ家系だよな~」

 「“じろー”が一番なのだ!」

 「「もやし嫌い~」」

 「ワシ、ちゃるめら派」

 「ジジイはスープでも啜ってろ~!」

 「ラーメンなんて身体に悪い物、よく食べられるわね」

 「俺は最近胃もたれするからあんま食べないけど、家系が好きだな」
 「家系ラーメンが一番よ」

 「すげぇー掌返し」

 「ここまでしても本人にその恋慕が微塵も伝わらないとは、もはや悲劇じゃな」

 「......。」

 イケメン男の頬を一滴の雫がなぞる。

 第二怪位、ワーストキング。この場にいる全員からナメ腐った態度を取られて、無性に帰りたくなった。

 が、そんな気持ちも束の間。パンパンと手を叩いて、本日開かれる会議の議題がラーメンになる前に、注目を集めた。


 「ごっほん! 今から七天王会議を開きたいと思う! 議題がラーメンになる前に!!」


 「「「「「「「「......。」」」」」」」」


 やっと静かになる会議場。

 「さて、今日集まってもらったのは他でもない。先日、タイツゴッドが担当している区域で、同業者が我が物顔で荒らしてきたことについてだ」

 ワーストキングは足を組み直して続けた。

 「先方はうちと同じく規模のでかい組織だ。秘密結社<ギャンギース>。皆、知っていると思うが、その中でもトップレベルの二人がスザクファイヤーを倒した」

 「「ざーこざーこ!」」

 「あ、アレ言うの忘れてたわ」

 「そうじゃったな」

 「なんだったっけ? えっと、“クックックッ。スザクファイヤーを倒したか。しかし奴は我ら四天王の中でも最弱の――”」

 「やめてぇ! それ言われるの嫌だったから、負けたの秘密にしてたのにぃ!!」

 「もうなんなの君ら......」

 またもすぐ話が脱線したことに、ワーストキングは半泣きする。

 お約束をするのはかまわないが、この会議でしないでほしい。そんな思いがワーストキングの胸にあった。

 そんな騒がしい会議の中、ある者が急に立ち上がった。場が静まり返って、全員がその者に注目する。

 立ち上がったのはタイツゴッドだ。

 「皆、聞いてくれ」

 たったその一言で、先程の馬鹿騒ぎは掻き消えたのだ。ワーストキングは男泣きしそうになった。


 「今回の件で、俺はやらかした。すまねぇ」


 「「「「「「っ?!」」」」」」


 タイツゴッドは腰を折って、頭を深々と下げた。

 それを見た面々が驚く。すぐさまスザクファイヤーが慌てて立った。


 「あ、謝るのは俺の方だ。一番先に<ギャンギース>の連中と接触した俺に非がある。俺が本部に......すぐに報告すべきだった!」

 「「「「「それはそう」」」」」

 「それはそうだが......」

 それはそうである。


 タイツゴッドは続けた。

 「だとしても、俺は対応を誤った。目立っちゃいけない俺が目立っちまった。この場で誰よりも強くて、第一怪位の俺が......動いちまった」

 「お主、謝っとる? 嫌味言っとる?」


 「一応、謝ってるつもりだ」

 「一応ってなんだ、一応って」


 「正直なところ、俺が動くことなく、事が済めば良かったと思ってる。なぁ、ブルードラゴン」

 「っ?! い、嫌よ。なんで私があなたのために......」

 「いや、俺のためじゃなくて、組織のためにだな......」


 今回の件、少なからずブルードラゴンに非があったとしても、文句を言えた立場じゃないのはタイツ野郎もわかっているところ。

 ブルードラゴンのスキル<転移>が無ければ、あの町は魔法少女を失っていたことだろう。それは怪人業界としても避けたいところ。自分たちの手で倒したのならまだしも、他所の組織にやられたとか笑われて当然である。

 タイツゴッドが切り出した話題の展開に乗じたのは、ワーストキングである。


 「今回の議題はそのことに関してだ。皆、我々が七天王から四天王に体制を変えた理由はわかるね」

 「三人死んだからなのだ!」

 「「違う!」」

 「三人死んだら、この会議名と集まったメンツは何なんだよ......」

 「ロリビャッコ、少し静かにしてなさい」

 「ほれ、綿菓子やるから」

 「どっから取り出したんだそれ」

 ワーストキングが話し始めたからか、すぐに脱線する七天王の面々。

 ワーストキングは泣きたい気持ちを必死に押し殺して続けた。ちなみにロリビャッコのみならず、ニニンジャもカメアタマダブルから綿菓子を貰い、自席に戻ってお行儀よく食べている。

 その綿菓子はどこから取り出したのか、と言及するのが怖い。


 「で、だ。知っての通り、私を含め、このまま我々の上位三名の存在は秘密にしておきたい。......強すぎる悪の存在に屈したヒーローなんて、もう見たくないからね」

 その言葉に、一同が首を縦に振った。

 自分の言葉に全員が頷いてくれた。そんな光景に感極まっていたワーストキングだが、笑みが溢れないよう、キリッとした面持ちで続けた。

 「しかし戦隊ヒーロー<チホーレンジャー>を始め、魔法少女<マジカラーズ>にも知られてしまったのも事実。近い将来、またヒーローたちはあの悲劇を繰り返すかもしれない」

 「“英雄絶望劇アパシー・シンドローム”......」

 ワーストキングが敢えて口にしなかったワードを、ブルードラゴンが呟く。

 決して大きくなかった声だが、この場に居る全員の耳に届いた。誰もが思い返すのも辛いと言わんばかりに、静かになった。

 そんな沈黙の間を、ワーストキングが打ち消すべく結論を口にした。

 「故に我々は自社の拡大及び強化のみならず、ヒーローの育成も視野に入れなければならない。ところが最近、急成長を見せた者が居る......タイツゴッド」

 ワーストキングが静かに名前を呼んだ。呼ばれた者はそれに応じる。

 タイツゴッドは仮面越しに口端を釣り上げた。

 「ブラッディ・ピンク......若くしてヒーローの覚醒を実現したJCが現れた」

 「JCって言うな」

 そんなスザクファイヤーのツッコミが刺さる会議であった。

 この物語は善と悪の戦いを記す物語。悪には悪の事情があることも知ってもらう物語でもある。

 続く。
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