魔法少女と悪の下っ端おじさん

おてんと

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第54話 魔法少女と三人目の四天王

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 「かーめかめかめかめ! ワシは四天王が一人、カメアタマダブル。<真摯>のカメアタマダブル。この町の女は全員、ワシのもんよ」

 「ひゃっはー! 俺様とこいつの相手をする女はどこだー!」


 今日も今日とて、とある平和な町の公園で善と悪の戦いが繰り広げられようとしていた。

 相も変わらず昼過ぎにこの戦いは始まる。

 魔法少女的には学校があるから止めてほしいところだが、そんな事情は悪の組織にとってどうでもいいところ。

 そんな本日の天気は曇り。天気予報によれば、もう少しすれば雨が降り出す頃合いとなる。

 本当は雨が降りそうな日は善と悪の戦いはしないように努めていた悪の組織であったが、本日は止むを得ない状況のため、致し方なく急遽バトルすることになった。

 その際、中年タイツがマジカルピンクに某SNSツールで次のやり取りを行っていた。


 『今からバトルすることになったから、いつもの公園に来て』

 『え、今授業中なんですけど』


 『頼むよ。てか返信早いな。授業中のくせに』

 『ええー』


 『正義の味方なんだろ?』

 『そうですけど......これで成績落ちたら責任取ってくださいね』

 『何の責任だよ』


 本当に何の責任だろうか。


 とまぁ、悪の組織と魔法少女のやり取りとしてはグダグダなものであったが、現実はこのようにして善と悪の戦いは密かに繰り広げられていたのだ。


 話を戻すが、本日の怪人は四天王の一人、カメアタマダブル。


 体長三メートルにも及ぶ巨体の持ち主で、見た目は名が体を表すように亀そのままだ。

 ただ亀の尻尾は蛇のように細長く、その先端には蛇の頭があった。そしてその蛇には意思があった。

 カメアタマダブルは珍妙な生き物で、二体の怪人が合わさった怪人なのである。

 魔法少女はカメアタマダブルの両脇に居るタイツ野郎二人をジト目で見やった。

 マジカルピンクが股間のもっこり具合から、中年タイツを割り当てて声を掛ける。


 「あの、急に呼び出したと思ったら、また四天王と戦わせるつもりですか」

 「いやさ、そろそろカメアタマダブルさんも歳だから引退を視野に入れてるんだよ」

 「ワシ、定年退職する前に、若い子とキラキラしたバトルしたい」

 「ジジイの思い出作りだと思ってくれよ、嬢ちゃんたち」

 「「「......。」」」

 ご年配のお願いとは言え、なぜ魔法少女が定年退職間際の怪人の思い出づくりに協力しなければならないのだろうか。


 それになぜだろうか、カメアタマダブルの視線が妙にいやらしいものに思えてしまい、生理的嫌悪感を抱いてしまうのは。

 セクハラオヤジ、そんな言葉が似合いそうな怪人に見える。

 しかし魔法少女に敵を選ぶことなどできない。相手がやると言ったら応じるのが正義の味方だ。

 ということで、半ば強引に戦闘は始まった。


 「かーめかめかめかめ! ワシは四天王が一人、カメアタマダブル。<真摯>のカメアタマダブル。この町の女は全員、ワシのもんよ」

 「ひゃっはー! 俺様とこいつの相手をする女はどこだー!」


 本日のメイン敵役は二人で一人みたいなので、名乗り口上は二人分となる。

 名乗り口上の内容は一旦触れないでおこう。これで定年退職まで食べていくと決めたカメアタマダブルの顔を立てたい。


 「出たわね! 怪人カメアタマダブル!」

 「この町は私たち、魔法少女マジカラーズが守る!」

 「マジカルブルー! マジカルピンク! 私たちの絆の力を見せてあげましょ!」


 対する魔法少女たちは気を取り直して、臨戦態勢へと入った。


 「食らえ! マジカルハンマー!!」


 マジカルイエローが魔法のステッキをマジカルハンマーに変形させ、その鈍器でカメアタマダブルの頭を狙った。無論、硬そうな甲羅を狙うつもりなどない。

 が、次の瞬間、カメアタマダブルの頭がスポッと甲羅の中に吸い込まれるようにして消えた。

 故にマジカルハンマーは地面を叩きつけるだけだった。


 「な?!」

 「今だ、ヘビアタマ」

 「おう!」


 カメアタマダブルの尻尾の蛇、ヘビアタマがその隙を突いてマジカルイエローの足に縛り付き、黄色い魔法少女を逆さに吊し上げた。

 当然、フリルの付いたスカートは重力の名の下捲れてしまう。


 「ちょ!」


 マジカルイエローが顔を赤くして、両手でスカートを押さえつけた。

 この際、マジカルハンマーを地面に落としてしまうのだが、やはり魔法少女といっても中身は一人の乙女であることに違いはない。


 無論、怪人たちも黙ってない。


 「ひょー! 見たかジジイ、イエローなのにパンツはホワイトと来た!」

 「ホッホッホッ。一周まわってエロいのぉ」


 「もしかしてパンツのシミがイエローなのか~」

 「うむ、そうに違いない。ワシの魔法ステッキが反り返りそうだ」

 「ジジイの退職金でそのパンツ買おーや」


 怒涛の如く浴びせるセクハラ攻撃。

 容赦ないセクハラに、マジカルイエローは赤面しつつ、中年タイツを睨みつける。


 「ちょっと! おたくの怪人、女子中学生に対してエグいセクハラ浴びせてくるんですけど! コンプラどこ行ったの?!」

 「い、いやその......カメアタマダブルさんはそういう人だからさ......」

 「知らねぇよ!!」


 中年タイツ、マジカルイエローの露わになっている有り様を直視しないよう、明後日の方向を見ながら応じた。


 お察しの通り、カメアタマダブルはセクハラを生き甲斐に今まで戦ってきた怪人だ。


 だから許される訳では無いが、カメアタマダブルくらいのキャリアを積んだ怪人をそう易易と罰せられないのが、秘密結社の闇なところ。

 その背景には、後継者不足的な理由があるのだが、魔法少女としてはどうでもいい。

 次にマジカルピンクが魔法ステッキを前に構えて、魔力弾を撃ち放とうとした。

 が、それはカメアタマダブルがマジカルイエローを肉壁のように盾にしたことで、その攻撃は未然に防がれることになる。


 「な?!」

 「ほれほれ、仲間がここに居るぞ~」

 「なんて卑怯なの!!」

 「俺様たちは怪人だぜ~」


 文字通り、手も足も出ない状態のマジカルピンクであったが、いつの間にかカメアタマダブルの甲羅の上にマジカルブルーが立っていた。

 マジカルブルーは覚醒していて、その白銀の騎士を思わせる様相でカメアタマダブルの上に仁王立ちしていた。

 「お?」

 カメアタマダブルが首を捻り、頭上のマジカルブルーを見上げる。

 途端、セクハラオヤジの顔がニヤつく。


 「おほ、マジカルブルーは黒か」

 「清楚な見た目に反して黒とはなぁ~」

 「この......」


 マジカルブルーは大きな盾を上段に構え、そのエッジを甲羅に強く打ち付けるべく振り下ろした。


 「変態ジジイがッ!!」


 ガッ。覚醒状態のマジカルブルーの膂力による振り下ろしは、カメアタマダブルの巨体を地面に埋め込むほどの強打であった。その衝撃が辺り一帯に響き渡り、ちょっとした地震を生み出す。

 渾身の一撃を繰り出したマジカルブルーは、はぁはぁと息を切らしていたが、土埃が霧散した後の光景に驚愕してしまう。


 「ワシの甲羅は硬くて太いから無駄よ」

 「な?!」


 次の瞬間、カメアタマダブルが転がるようにして一回転したことで、マジカルブルーが足場を崩し、地面に倒れてしまう。その隙にカメアタマダブルがマジカルブルーの上に乗っかった。

 マジカルブルーは咄嗟の判断で白銀の大盾を前に構えたが、カメアタマダブルの容赦ない押し潰しが青い魔法少女を襲う。


 「ぐぅ!!」

 「マジカルブルー!」

 「魔法少女よ、保健体育の授業で騎◯位とやらを習ったか?」


 「っ?! そ、そんなこと習わないわよ!!」

 「おおっと、それじゃあ学校の授業で習わないことを知ってることになるぜ、お嬢さんよぉ~」

 「っ!!」


 「「どこで覚えたんですか~」」


 マジカルブルー、赤面して何も言えなくなる。

 カメアタマダブルはその反応が面白くて腰をカクカクさせた。

 絵面的に過去一でヤバいのは言うまでもない。

 マジカルピンクはマジカルイエローとマジカルブルーの醜態を目の当たりにして、自分はどうすべきか悩んだ。

 自分も二人と同じ目に遭うのではなかろうか。乙女として、そんな醜態は晒したくない。でも二人を助けないといけない。

 そんな葛藤がピンク色の魔法少女を襲った。

 やがてマジカルピンクは涙目になりながら、中年タイツに声を掛ける。


 「もう......戦えません」

 「......。」


 「止めてください」

 「その、ごめん......」


 これは善と悪の壮絶な戦いを記す物語。

 時として、魔法少女でも乙女の尊厳を賭けて戦わなければならないことを記す物語でもあった。

 「マジカルイエロー、マジカルブルー! 大丈夫?!」

 「もうお嫁に行けんわ......」

 「くっ殺......」

 「ホッホッホッ。まだまだ若い子には負けんわ」

 続く。
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