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第64話 魔法少女とギャンギース 3
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「クラスターカノン!!」
覚醒したマジカルピンク――ブラッディピンクが大杖から魔法を放った。
刹那、とある長閑な町にある河川敷に、無数の赤黒い閃光が走った。それらは着弾と同時に爆ぜ、視界いっぱいに爆炎の連鎖と化す。
魔法少女<マジカラーズ>の面々は悪の組織<ギャンギース>と戦っているのだが、戦況は芳しくなかった。
というのも、敵が強すぎるのだ。
ブラッディピンクの無差別攻撃を、怪人スーパーサイヤエン、怪人カッパサムライ、怪人チョージンハッカイが各々の得物で全て防ぎ切った。
直後、カッパサムライが地を駆ける。
クラスターカノンを避け、叩き切り、ブラッディピンクとの距離を瞬く間に縮めていった。
カッパサムライが下段に構えた日本刀をブラッディピンクに対して振ろうとした――その時だ。
二人の間に何者かが姿を現した。
「護ってみせるわ!」
覚醒したマジカルブルー――ブルーナイトだ。
彼女は白銀色の大盾を前に構え、カッパサムライの斬撃を受け切る。
カッパサムライが不敵な笑みを浮かべて青の魔法少女を称賛した。
「見事!!」
「はぁぁぁぁあああ!!」
「退け! クソガッパ!!」
続いて、カッパサムライの後ろからスーパーサイヤエンが武器の棒を上段に構えて振り下ろした。
魔法少女たちとの距離はまだあるにも関わらず、その怪人は攻撃の動きを取る。
「伸びろ! 如意棒!!」
刹那、スーパーサイヤエンの如意棒が一瞬で数十メートル長くなり、ブルーナイトたちを頭上から襲った。
カッパサムライは巻き込まれまいと横へ避ける。
ブルーナイトは上から叩きつけられる如意棒を白銀の大盾で対抗することにした。
如意棒と白銀の大盾が交差した瞬間、爆発にも似た衝撃がこの地に響く。
「ぐっ!!」
「はははははははは! このまま潰れるかぁ?! ああ?!」
ブルーナイトの顔が苦痛で歪む。カッパサムライの斬撃とは比べ物にならないほどの破壊力で、それに抗うのにいっぱいだったからだ。
が、そんなスーパーサイヤエンの影から現れるようにして、マジカルイエローが現れる。
「そこ! がら空き!!」
マジカルイエローがマジカルハンマーをスーパーサイヤエンに向けて、横薙ぎに振るった。
直撃だ。次の瞬間には眼前の怪人は吹っ飛ぶだろう。
そう、予想していたマジカルイエローだったが――現実はそう甘くはなかった。
スーパーサイヤエンが片足でマジカルハンマーを受け止めていたからだ。
「な?!」
「あのよぉ......」
スーパーサイヤエンが苛立たし気に怒鳴る。
「雑魚はすっ込んでろや!!」
「っ?!」
スーパーサイヤエンが如意棒を一瞬で元の長さに戻し、目にも止まらぬ早さでマジカルイエローに叩きつける。
受け身も間に合わず、直撃を許してしまったマジカルイエローは川の方へと吹っ飛んでいった。水切りのように何回も水面を跳ね、やがてその身を川に沈める。
川は倒れたマジカルイエローの全身が浸かる程深くは無かったが、ぴくりとも動かない様子にブラッディピンクが叫んだ。
「イエロー!」
「余所見している場合じゃないブヒ!」
「っ!!」
チョージンハッカイが三叉槍を前に突き出し、<スキル>を発動した。
「喰らい突けブヒ! <グラトニースピア>!!」
突如、三叉槍たる所以の先端の三つの刃が変貌する。
瞬く間に巨大な黒い竜の頭へと姿を変え、人ひとりを優に呑み込めるほどの大口を開けた。それはブラッディピンクへと迫り、少女を食らいつくさんとばかりに穿たれる。
「ぐぅ!!」
「ブヒヒヒヒ!」
「ブラッディピンク!」
「貴様の相手は私だ」
ブラッディピンクを護ろうと、ブルーナイトが白銀の大盾を持って駆け出そうとしたが、その前にカッパサムライが立ちはだかる。
カッパサムライが白銀の大盾目掛けて、居合の構えを取った。
二振りの日本刀を手に取り、怪人は低く唸るような声でスキルを唱える。
「血染めの時は来た......<血ノ刃>」
刹那、日本刀が鞘から姿を晒す。その動きはブルーナイトには捉え切れず、ただ盾を前に構えることしかできなかった。
そして次の瞬間、朱に染まる斬撃が白銀の盾を破壊した。
その斬撃は止まることを知らず、ブルーナイトに十字の斬撃を刻むことになる。
「がはッ」
血飛沫を上げながら、ブルーナイトが力なく地に伏せた。
そして今も尚、チョージンハッカイによる攻撃、<グラトニースピア>はブラッディピンクを襲い、少女の魔法によるバリアは尽く破壊されていった。
まるでガラス細工を叩き割るように、黒い竜の頭は魔法少女のバリアを破壊した後、ブラッディピンクを呑み込んだ。
「あぁあぁああぁぁぁぁああ!!」
ブラッディピンクが絶叫する。
その悲痛な叫びの末、少女はばたりと倒れてしまった。
そんな魔法少女たちを見下ろしながら、スーパーサイヤエンがぼやく。
「ったく。覚醒したってつまんねーな」
「呆気なかったブヒ」
「ふむ、思っていたよりも弱かったな」
三者とも似たような反応を見せる怪人に対して、サンゾウボウズが苦笑しながら応じた。
「おそらく覚醒したと言っても、まだその力を使いこなせる域に達してないのでしょう」
「へぇー」
「私は昔、覚醒したヒーローと戦ったことがあるのですが、そのときは勝てたのも奇跡と言うくらい危なかったので」
「お師匠がそこまで追い詰められたのか......」
「俄には信じられないブヒ」
「さて、準備運動はこれくらいにしておきましょう」
「準備運動にもなってなかったがな」
「あ、じゃあ道中、<ジョーカーズ>の怪人を見っけたら、片っ端からぶっ倒して行こうぜ」
そんな会話をしながら、この場を立ち去ろうとする怪人であった。
が、
「ま......て」
たった一人、立ち上がる魔法少女が居た。
マジカルイエローだ。
四人の怪人が足を止める。
「なに......勝った気でいんの......」
マジカルイエローがゆらりと立ち上がり、ふらつく足取りで前へ進む。
「あんたら怪人はここで倒す......」
一歩、一歩、また一歩。
少女は押せば倒れるほど満身創痍であったが、どういう訳か、怪人たちはマジカルイエローを警戒していた。
満身創痍の少女を意識することしかできなかった。
サンゾウボウズが少女に問う。
「まだやる気ですか? 本当に死にますよ? 私たちの目的は<ジョーカーズ>の怪人であって、あなた方は――」
「眼中に無い......てか」
「......。」
サンゾウボウズは目を細めた。
マジカルイエローがやけくそ気味に嗤った。
「こっちは正義を背負って悪党どもの前に立ってんのに、目的は怪人ですってか」
「正義......ですか。別にこの町の住人には危害を加えるつもりはないのですが......」
「んな主張通るなら銃刀法なんて無いから」
マジカルイエローは青空を見上げた。
自身の周りから聞こえてくる川の音、戦いが始まってから避難を始める町の住人たちの喧騒、そして――酷く落ち着いた自身の鼓動。
マジカルイエローは静かに口を開く。
「私が覚醒できない理由、やっとわかった気がする」
「は?」
「私はあんたら怪人が大嫌いだ」
何を言い出すかと思えば、ヒーローとして当然のことを口にしただけではないか。
面倒くさくなったスーパーサイヤエンが、如意棒を担ぎながら前に出る。
しかしマジカルイエローは続けた。
「好き勝手暴れて、戦って、圧勝しやがる。戦いが終わったら説教してきて......。そのくせ、世間体とか気にしたり、世話焼きだったりするから余計腹が立つ。悪党のくせに、なんで......なんであんなに優しいんだよ」
「なにブツブツ言ってんだ、てめぇ」
少女は視線を自身の手に下ろし、ぎゅっと拳を作った。
「だから憎めなかった。だから本気でぶん殴ろうとは思えなかった。......こいつらには勝てなくてもいいって............心のどこかで思っていた」
「ああ、そうかい。雑魚のくせにしつこいんだよッ!!」
スーパーサイヤエンが如意棒をマジカルイエローに振り下ろした――その時だ。
「でも」
その勢いよく振り下ろされた如意棒がピタリと止まる。
マジカルイエローが片手で受け止めていたのだ。
スーパーサイヤエンが目を見開く。
「はぁ?!」
「あんたらは別。......ここでぶっ潰す!!」
刹那、この場が極光で埋め尽くされる。
晴れ渡る青空が突如として雷光を放ち、川辺に落雷する。
ドゴンッ!! けたたましい音が響き渡り、轟音が収束すると共にそれは姿を見せた。
少女の黄色を基調としたドレスは右腕だけ破け、華奢な腕がまるで炭化したように黒く染まっていた。
腕に浮かび上がる血管は稲妻の如く光り輝いており、手には金の小槌が握られている。
その小槌から感じる魔力はどこまでも高まっていき、高まっていき、更に高まっていった。
そしてマジカルイエローの右の額に黒光りする角が生えた。
スーパーサイヤエンは臨戦態勢を取った。
確信したのだ。
目の前の少女は今、ここで覚醒したのだ、と。
故に興奮しきった様子で吠える。
「キキッ! そうこなくっちゃなぁ!!」
が、怪人の視界にマジカルイエローは映っていなかった。
「は?」
「こっちだ、バーカ」
「っ?!」
マジカルイエローが振り上げた小槌がスーパーサイヤエンを穿つ。
稲光を纏った極光が明確な破壊力を伴って爆ぜる――その時だった。
「失礼」
「「っ?!」」
怪人と魔法少女の間に割って入った者――サンゾウボウズが少女の小槌を片手で掴んでいた。その男の手は僅かばかり焼け焦げていただけだ。
マジカルイエローが驚愕するのも束の間。サンゾウボウズがにこりと笑って、少女の額に二本の指先を軽く当てる。
「素晴らしい戦いっぷりでした」
次の瞬間、まるで拳銃で撃たれたかのように、マジカルイエローが仰け反る。
少女は覚醒の力を霧散させ、その場に仰向けに倒れた。どうやら気を失っているだけらしい。
サンゾウボウズが一息吐いてから、スーパーサイヤエンに告げる。
「あなたも修行が足りませんね」
「......うるせ」
斯くして、魔法少女を倒した怪人たちはこの場を立ち去る。
目的地は悪の組織<ジョーカーズ>の拠点。
サンゾウボウズはこの地ならば好敵手に会えると予感して、どこか嬉しそうに青空を見上げるのであった。
覚醒したマジカルピンク――ブラッディピンクが大杖から魔法を放った。
刹那、とある長閑な町にある河川敷に、無数の赤黒い閃光が走った。それらは着弾と同時に爆ぜ、視界いっぱいに爆炎の連鎖と化す。
魔法少女<マジカラーズ>の面々は悪の組織<ギャンギース>と戦っているのだが、戦況は芳しくなかった。
というのも、敵が強すぎるのだ。
ブラッディピンクの無差別攻撃を、怪人スーパーサイヤエン、怪人カッパサムライ、怪人チョージンハッカイが各々の得物で全て防ぎ切った。
直後、カッパサムライが地を駆ける。
クラスターカノンを避け、叩き切り、ブラッディピンクとの距離を瞬く間に縮めていった。
カッパサムライが下段に構えた日本刀をブラッディピンクに対して振ろうとした――その時だ。
二人の間に何者かが姿を現した。
「護ってみせるわ!」
覚醒したマジカルブルー――ブルーナイトだ。
彼女は白銀色の大盾を前に構え、カッパサムライの斬撃を受け切る。
カッパサムライが不敵な笑みを浮かべて青の魔法少女を称賛した。
「見事!!」
「はぁぁぁぁあああ!!」
「退け! クソガッパ!!」
続いて、カッパサムライの後ろからスーパーサイヤエンが武器の棒を上段に構えて振り下ろした。
魔法少女たちとの距離はまだあるにも関わらず、その怪人は攻撃の動きを取る。
「伸びろ! 如意棒!!」
刹那、スーパーサイヤエンの如意棒が一瞬で数十メートル長くなり、ブルーナイトたちを頭上から襲った。
カッパサムライは巻き込まれまいと横へ避ける。
ブルーナイトは上から叩きつけられる如意棒を白銀の大盾で対抗することにした。
如意棒と白銀の大盾が交差した瞬間、爆発にも似た衝撃がこの地に響く。
「ぐっ!!」
「はははははははは! このまま潰れるかぁ?! ああ?!」
ブルーナイトの顔が苦痛で歪む。カッパサムライの斬撃とは比べ物にならないほどの破壊力で、それに抗うのにいっぱいだったからだ。
が、そんなスーパーサイヤエンの影から現れるようにして、マジカルイエローが現れる。
「そこ! がら空き!!」
マジカルイエローがマジカルハンマーをスーパーサイヤエンに向けて、横薙ぎに振るった。
直撃だ。次の瞬間には眼前の怪人は吹っ飛ぶだろう。
そう、予想していたマジカルイエローだったが――現実はそう甘くはなかった。
スーパーサイヤエンが片足でマジカルハンマーを受け止めていたからだ。
「な?!」
「あのよぉ......」
スーパーサイヤエンが苛立たし気に怒鳴る。
「雑魚はすっ込んでろや!!」
「っ?!」
スーパーサイヤエンが如意棒を一瞬で元の長さに戻し、目にも止まらぬ早さでマジカルイエローに叩きつける。
受け身も間に合わず、直撃を許してしまったマジカルイエローは川の方へと吹っ飛んでいった。水切りのように何回も水面を跳ね、やがてその身を川に沈める。
川は倒れたマジカルイエローの全身が浸かる程深くは無かったが、ぴくりとも動かない様子にブラッディピンクが叫んだ。
「イエロー!」
「余所見している場合じゃないブヒ!」
「っ!!」
チョージンハッカイが三叉槍を前に突き出し、<スキル>を発動した。
「喰らい突けブヒ! <グラトニースピア>!!」
突如、三叉槍たる所以の先端の三つの刃が変貌する。
瞬く間に巨大な黒い竜の頭へと姿を変え、人ひとりを優に呑み込めるほどの大口を開けた。それはブラッディピンクへと迫り、少女を食らいつくさんとばかりに穿たれる。
「ぐぅ!!」
「ブヒヒヒヒ!」
「ブラッディピンク!」
「貴様の相手は私だ」
ブラッディピンクを護ろうと、ブルーナイトが白銀の大盾を持って駆け出そうとしたが、その前にカッパサムライが立ちはだかる。
カッパサムライが白銀の大盾目掛けて、居合の構えを取った。
二振りの日本刀を手に取り、怪人は低く唸るような声でスキルを唱える。
「血染めの時は来た......<血ノ刃>」
刹那、日本刀が鞘から姿を晒す。その動きはブルーナイトには捉え切れず、ただ盾を前に構えることしかできなかった。
そして次の瞬間、朱に染まる斬撃が白銀の盾を破壊した。
その斬撃は止まることを知らず、ブルーナイトに十字の斬撃を刻むことになる。
「がはッ」
血飛沫を上げながら、ブルーナイトが力なく地に伏せた。
そして今も尚、チョージンハッカイによる攻撃、<グラトニースピア>はブラッディピンクを襲い、少女の魔法によるバリアは尽く破壊されていった。
まるでガラス細工を叩き割るように、黒い竜の頭は魔法少女のバリアを破壊した後、ブラッディピンクを呑み込んだ。
「あぁあぁああぁぁぁぁああ!!」
ブラッディピンクが絶叫する。
その悲痛な叫びの末、少女はばたりと倒れてしまった。
そんな魔法少女たちを見下ろしながら、スーパーサイヤエンがぼやく。
「ったく。覚醒したってつまんねーな」
「呆気なかったブヒ」
「ふむ、思っていたよりも弱かったな」
三者とも似たような反応を見せる怪人に対して、サンゾウボウズが苦笑しながら応じた。
「おそらく覚醒したと言っても、まだその力を使いこなせる域に達してないのでしょう」
「へぇー」
「私は昔、覚醒したヒーローと戦ったことがあるのですが、そのときは勝てたのも奇跡と言うくらい危なかったので」
「お師匠がそこまで追い詰められたのか......」
「俄には信じられないブヒ」
「さて、準備運動はこれくらいにしておきましょう」
「準備運動にもなってなかったがな」
「あ、じゃあ道中、<ジョーカーズ>の怪人を見っけたら、片っ端からぶっ倒して行こうぜ」
そんな会話をしながら、この場を立ち去ろうとする怪人であった。
が、
「ま......て」
たった一人、立ち上がる魔法少女が居た。
マジカルイエローだ。
四人の怪人が足を止める。
「なに......勝った気でいんの......」
マジカルイエローがゆらりと立ち上がり、ふらつく足取りで前へ進む。
「あんたら怪人はここで倒す......」
一歩、一歩、また一歩。
少女は押せば倒れるほど満身創痍であったが、どういう訳か、怪人たちはマジカルイエローを警戒していた。
満身創痍の少女を意識することしかできなかった。
サンゾウボウズが少女に問う。
「まだやる気ですか? 本当に死にますよ? 私たちの目的は<ジョーカーズ>の怪人であって、あなた方は――」
「眼中に無い......てか」
「......。」
サンゾウボウズは目を細めた。
マジカルイエローがやけくそ気味に嗤った。
「こっちは正義を背負って悪党どもの前に立ってんのに、目的は怪人ですってか」
「正義......ですか。別にこの町の住人には危害を加えるつもりはないのですが......」
「んな主張通るなら銃刀法なんて無いから」
マジカルイエローは青空を見上げた。
自身の周りから聞こえてくる川の音、戦いが始まってから避難を始める町の住人たちの喧騒、そして――酷く落ち着いた自身の鼓動。
マジカルイエローは静かに口を開く。
「私が覚醒できない理由、やっとわかった気がする」
「は?」
「私はあんたら怪人が大嫌いだ」
何を言い出すかと思えば、ヒーローとして当然のことを口にしただけではないか。
面倒くさくなったスーパーサイヤエンが、如意棒を担ぎながら前に出る。
しかしマジカルイエローは続けた。
「好き勝手暴れて、戦って、圧勝しやがる。戦いが終わったら説教してきて......。そのくせ、世間体とか気にしたり、世話焼きだったりするから余計腹が立つ。悪党のくせに、なんで......なんであんなに優しいんだよ」
「なにブツブツ言ってんだ、てめぇ」
少女は視線を自身の手に下ろし、ぎゅっと拳を作った。
「だから憎めなかった。だから本気でぶん殴ろうとは思えなかった。......こいつらには勝てなくてもいいって............心のどこかで思っていた」
「ああ、そうかい。雑魚のくせにしつこいんだよッ!!」
スーパーサイヤエンが如意棒をマジカルイエローに振り下ろした――その時だ。
「でも」
その勢いよく振り下ろされた如意棒がピタリと止まる。
マジカルイエローが片手で受け止めていたのだ。
スーパーサイヤエンが目を見開く。
「はぁ?!」
「あんたらは別。......ここでぶっ潰す!!」
刹那、この場が極光で埋め尽くされる。
晴れ渡る青空が突如として雷光を放ち、川辺に落雷する。
ドゴンッ!! けたたましい音が響き渡り、轟音が収束すると共にそれは姿を見せた。
少女の黄色を基調としたドレスは右腕だけ破け、華奢な腕がまるで炭化したように黒く染まっていた。
腕に浮かび上がる血管は稲妻の如く光り輝いており、手には金の小槌が握られている。
その小槌から感じる魔力はどこまでも高まっていき、高まっていき、更に高まっていった。
そしてマジカルイエローの右の額に黒光りする角が生えた。
スーパーサイヤエンは臨戦態勢を取った。
確信したのだ。
目の前の少女は今、ここで覚醒したのだ、と。
故に興奮しきった様子で吠える。
「キキッ! そうこなくっちゃなぁ!!」
が、怪人の視界にマジカルイエローは映っていなかった。
「は?」
「こっちだ、バーカ」
「っ?!」
マジカルイエローが振り上げた小槌がスーパーサイヤエンを穿つ。
稲光を纏った極光が明確な破壊力を伴って爆ぜる――その時だった。
「失礼」
「「っ?!」」
怪人と魔法少女の間に割って入った者――サンゾウボウズが少女の小槌を片手で掴んでいた。その男の手は僅かばかり焼け焦げていただけだ。
マジカルイエローが驚愕するのも束の間。サンゾウボウズがにこりと笑って、少女の額に二本の指先を軽く当てる。
「素晴らしい戦いっぷりでした」
次の瞬間、まるで拳銃で撃たれたかのように、マジカルイエローが仰け反る。
少女は覚醒の力を霧散させ、その場に仰向けに倒れた。どうやら気を失っているだけらしい。
サンゾウボウズが一息吐いてから、スーパーサイヤエンに告げる。
「あなたも修行が足りませんね」
「......うるせ」
斯くして、魔法少女を倒した怪人たちはこの場を立ち去る。
目的地は悪の組織<ジョーカーズ>の拠点。
サンゾウボウズはこの地ならば好敵手に会えると予感して、どこか嬉しそうに青空を見上げるのであった。
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