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10.個室完備
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赤城先生をあのままにしてはおけないが、俺一人でどうこうできるとも思えない。だから、誰かに手伝って貰いたいのだが、今の赤城先生を見て動じないと思われるのは一人。可能性としてはもう一人居るだけだ。
「睦月、悪いが少し向こうで話をしたいんだが」
「何? ここじゃ駄目なの?」
「頼む」
「まあ良いわ」
睦月は「仕方がない」とばかりに応じてくれた。
睦月を伴って移動しようとした時、夕立がムスッと睨んでくるのが視界に入った。
睨まれる覚えが無いんだが……。
「どうしたの? 君達。先生今忙しいの。ほら見て? 先生のこここんなになってるのよ-?」
俺達が赤城先生の傍に立つと、先生は自らまさぐっている胸を見せ付けてきた。
今まで壁の方を向いて座っていたので誰にも気付かれずに済んだのだろうが、俺達の方を振り返ってしまうと気付く奴が出るかも知れない。時間との戦いだ。
その様子に、さしもの睦月も目を見開いた。
俺の股間も激しく反応してしまうが、ぐっと我慢する。
「これは、どう言う事なの?」
「詳しい事は後だ。今は周りから見えないように先生と話している振りをしてくれ」
「まあ良いわ」
「助かる」
俺は壁に張り付くようにして赤城先生と壁との間に入り込み、〈鑑定〉で自分の名前が見える場所に振れてみる。
何も反応が無い。
うっすらと枠が見えるので、この枠の中で何かをするのではないかと思うのだが……。
指先で、上から下、下から上、左から右、右から左と撫でてみるが反応が無い。
一旦その場を離れ、正面から〈遠見〉と併用で〈鑑定〉を使ってみる。
うっすらと見える枠より更に薄く、色覚検査のような文様が見えた。描かれているのは8の字だ。
再度赤城先生と壁との間に入り込んで、8を逆順で書くように撫でる。8を描くには体勢的にそれが楽だったのだ。
「うわっととと!」
瞬間的に壁が消え、俺はつんのめった。
そして、数歩走ることで倒れるのを回避した俺が見たものは、五〇畳ほどの何も無い薄い灰色の部屋だった。
これは俺の部屋だ。
見た瞬間に悟った。
扉の間隔からするとこの広さはあり得ないのだが、神の領域だからこんな事も有るのだろう。だが、都合が良い。赤城先生には一旦ここに入って貰う事にしよう。
俺の部屋から顔を出すと、睦月が目も口も大きく開いて見ていた。
「睦月、先生をこの部屋に入れてくれないか?」
「あ、あれ? 部屋?」
睦月が首を傾げた。
「どうかしたか?」
「あんたが突然消えたかと思っていたら、壁から首が出てきたように見えたんだけど……」
「壁から首か」
部屋が見えなかったのに、俺が招いた途端に見えるようになったのか。これは便利に使わせて貰わなければなるまい。
「それより先生を早く。この中なら人目に付かない」
「そ、そうね。さ、先生」
睦月は赤城先生の背中を軽く押すようにして、俺の部屋へと誘導しようとした。
パチッ。
「痛っ!」
「どうした?」
「ちょっと静電気が走ったみたいになったのよ」
睦月は指先を見て顔を眉根を寄せた。
「あれか」
暴力禁止の法則がこんな場合にまで適用されているのだ。
「赤城先生、こっちに来てください」
「嫌、先生はここが良いのよー」
赤城先生は艶やかな声で言いながら、俺に股間を見せ付けてくる。
知らず、俺の鼻息は荒くなってしまう。
睦月は、汚らわしいものを見るような表情で、俺の顔と股間を見比べ、こめかみを押さえた
「その部屋に入るのも不安だけど、ここよりはマシなのかしらね」
睦月はチラッと白い部屋の中を振り返って言った。
「先生、その部屋に入ったらもっと凄いことをしてあげますよ?」
「ほんと?」
「はい」
「それなら、入っちゃうよー」
赤城先生は四つん這いでのろのろと俺の部屋へと入った。
俺の部屋の中から白い部屋の中を見回してみたが、こっちに注意を払っている奴は特に見当たらない。一安心だ。
後は、赤城先生をこの部屋から出ないようにしなければいけない。こんな先生は他人に見せられない。
「いや、こんなエロい先生を他の男に見せるのが惜しい」
やっぱり、俺のおかずナンバー1だからな。
「やっぱりゲスオだわ」
「え? 何でそうなる?」
「『こんなエロい先生を他の男に見せるのが惜しい』」
「は!? お前はエスパーか!?」
何故、俺が考えていた事が判る!?
「エスパーじゃないのは判るんでしょ? あんた口に出してたわよ?」
「今、何と!?」
「だから、口に出してたって言ってんの! もしかして、夕立さんに告白したのも気付いてなかったの?」
「誰が夕立に告白したんだ?」
「だから、あんたよ!」
「してねーよ!」
「しっかりしてたわよ! 『俺は夕立が好きだ』とか何とか」
「やっぱりお前、エスパーだろ!」
「だから、口に出してたって言ってんの! 何度も言わせないで!」
真っ白になった。衝撃の事実だ。
「喧嘩はいけないのよー。それより先生を見て。こんなになってるのよー」
赤城先生は仰向けになって自分の身体をまさぐっている。
「勿体ないかどうかはともかく、これじゃ他人には見せられないわね」
「ねぇ、もっと凄い事をしてくれるんじゃなかったのー?」
「あー、はいはい」
睦月は先生の前に座った。
「悪いが、先生を頼む。俺は夕立達を連れてくる」
「夕立さん達にこんな先生を見せるのもどうかと思うけど、あっちの部屋に居るよりはマシなんでしょうね?」
睦月は疑わしげに俺を見た。
「一応はな。一番危機的なのは俺の理性だ」
「あー、それなら大丈夫だわ」
「何故そうなる?」
「あんたの薄っぺらい理性くらいなら、有っても無くても大差無いもの」
漣の一番の友人らしい切れ味の有る言葉だった。
「睦月、悪いが少し向こうで話をしたいんだが」
「何? ここじゃ駄目なの?」
「頼む」
「まあ良いわ」
睦月は「仕方がない」とばかりに応じてくれた。
睦月を伴って移動しようとした時、夕立がムスッと睨んでくるのが視界に入った。
睨まれる覚えが無いんだが……。
「どうしたの? 君達。先生今忙しいの。ほら見て? 先生のこここんなになってるのよ-?」
俺達が赤城先生の傍に立つと、先生は自らまさぐっている胸を見せ付けてきた。
今まで壁の方を向いて座っていたので誰にも気付かれずに済んだのだろうが、俺達の方を振り返ってしまうと気付く奴が出るかも知れない。時間との戦いだ。
その様子に、さしもの睦月も目を見開いた。
俺の股間も激しく反応してしまうが、ぐっと我慢する。
「これは、どう言う事なの?」
「詳しい事は後だ。今は周りから見えないように先生と話している振りをしてくれ」
「まあ良いわ」
「助かる」
俺は壁に張り付くようにして赤城先生と壁との間に入り込み、〈鑑定〉で自分の名前が見える場所に振れてみる。
何も反応が無い。
うっすらと枠が見えるので、この枠の中で何かをするのではないかと思うのだが……。
指先で、上から下、下から上、左から右、右から左と撫でてみるが反応が無い。
一旦その場を離れ、正面から〈遠見〉と併用で〈鑑定〉を使ってみる。
うっすらと見える枠より更に薄く、色覚検査のような文様が見えた。描かれているのは8の字だ。
再度赤城先生と壁との間に入り込んで、8を逆順で書くように撫でる。8を描くには体勢的にそれが楽だったのだ。
「うわっととと!」
瞬間的に壁が消え、俺はつんのめった。
そして、数歩走ることで倒れるのを回避した俺が見たものは、五〇畳ほどの何も無い薄い灰色の部屋だった。
これは俺の部屋だ。
見た瞬間に悟った。
扉の間隔からするとこの広さはあり得ないのだが、神の領域だからこんな事も有るのだろう。だが、都合が良い。赤城先生には一旦ここに入って貰う事にしよう。
俺の部屋から顔を出すと、睦月が目も口も大きく開いて見ていた。
「睦月、先生をこの部屋に入れてくれないか?」
「あ、あれ? 部屋?」
睦月が首を傾げた。
「どうかしたか?」
「あんたが突然消えたかと思っていたら、壁から首が出てきたように見えたんだけど……」
「壁から首か」
部屋が見えなかったのに、俺が招いた途端に見えるようになったのか。これは便利に使わせて貰わなければなるまい。
「それより先生を早く。この中なら人目に付かない」
「そ、そうね。さ、先生」
睦月は赤城先生の背中を軽く押すようにして、俺の部屋へと誘導しようとした。
パチッ。
「痛っ!」
「どうした?」
「ちょっと静電気が走ったみたいになったのよ」
睦月は指先を見て顔を眉根を寄せた。
「あれか」
暴力禁止の法則がこんな場合にまで適用されているのだ。
「赤城先生、こっちに来てください」
「嫌、先生はここが良いのよー」
赤城先生は艶やかな声で言いながら、俺に股間を見せ付けてくる。
知らず、俺の鼻息は荒くなってしまう。
睦月は、汚らわしいものを見るような表情で、俺の顔と股間を見比べ、こめかみを押さえた
「その部屋に入るのも不安だけど、ここよりはマシなのかしらね」
睦月はチラッと白い部屋の中を振り返って言った。
「先生、その部屋に入ったらもっと凄いことをしてあげますよ?」
「ほんと?」
「はい」
「それなら、入っちゃうよー」
赤城先生は四つん這いでのろのろと俺の部屋へと入った。
俺の部屋の中から白い部屋の中を見回してみたが、こっちに注意を払っている奴は特に見当たらない。一安心だ。
後は、赤城先生をこの部屋から出ないようにしなければいけない。こんな先生は他人に見せられない。
「いや、こんなエロい先生を他の男に見せるのが惜しい」
やっぱり、俺のおかずナンバー1だからな。
「やっぱりゲスオだわ」
「え? 何でそうなる?」
「『こんなエロい先生を他の男に見せるのが惜しい』」
「は!? お前はエスパーか!?」
何故、俺が考えていた事が判る!?
「エスパーじゃないのは判るんでしょ? あんた口に出してたわよ?」
「今、何と!?」
「だから、口に出してたって言ってんの! もしかして、夕立さんに告白したのも気付いてなかったの?」
「誰が夕立に告白したんだ?」
「だから、あんたよ!」
「してねーよ!」
「しっかりしてたわよ! 『俺は夕立が好きだ』とか何とか」
「やっぱりお前、エスパーだろ!」
「だから、口に出してたって言ってんの! 何度も言わせないで!」
真っ白になった。衝撃の事実だ。
「喧嘩はいけないのよー。それより先生を見て。こんなになってるのよー」
赤城先生は仰向けになって自分の身体をまさぐっている。
「勿体ないかどうかはともかく、これじゃ他人には見せられないわね」
「ねぇ、もっと凄い事をしてくれるんじゃなかったのー?」
「あー、はいはい」
睦月は先生の前に座った。
「悪いが、先生を頼む。俺は夕立達を連れてくる」
「夕立さん達にこんな先生を見せるのもどうかと思うけど、あっちの部屋に居るよりはマシなんでしょうね?」
睦月は疑わしげに俺を見た。
「一応はな。一番危機的なのは俺の理性だ」
「あー、それなら大丈夫だわ」
「何故そうなる?」
「あんたの薄っぺらい理性くらいなら、有っても無くても大差無いもの」
漣の一番の友人らしい切れ味の有る言葉だった。
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