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155 ピクニック気分
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「俺達も見てないぜ」
相手の問いに答えたのはザネク。ルキアスが野草を料理し、エリリースがそれを興味深そうに眺めているから……ではない。そんなのには関係無くザネクはこんな場合の対応を自任している。ルキアスに任せれば変に言いくるめられそうに、エリリースやリュミアだとしつこく言い寄られそうに思えて仕方がないのだ。
しかしザネクの危惧は杞憂だったらしい。
「そっか、あんたらもか。邪魔して悪かったな」
相手はあっさり引き上げた。「どうだった?」「あいつらもだってさ」「ところであいつら何やってんだ?」「さあ? ピクニックじゃないか?」なんて会話が漏れ聞こえるが、ザネクが改めて他の三人を見ればピクニックにしか見えない。リュミアに至っては折り畳みの椅子に座って寛いでいたりする。
しかしそこを邪魔して相談だ。
「リュミア姉ちゃん、ホーンラビットがここまで出ないのは変じゃないか?」
自分達だけならザネク自身の「ホーンラビットを見たくない」と言う思いが叶ったと好意的に解釈もできよう。しかし他の探索者までホーンラビットに遭遇しないのは些か奇妙だ。
「変だとは思うけど、今できるとしたら早めに引き上げることだけ……ね」
「それもそっか」
ザネクは考えるのを放棄してピクニック気分を味わうことにした。
程なくしてルキアスの手による料理も出来上がる。当て込んでいたホーンラビットの肉が手に入らなかったせいで肉が手持ちの干し肉しか無く、些かボリュームに欠けるのが残念ではあった。
「出来たよ!」
「わたくしも手伝いましてよ! 味見をですけど……」
小さく舌を出すエリリースにみんなで笑い、昼食の和やかな時間が過ぎた。
食事が終わってリュミアが言う。
「今日は早めに帰りましょう……ね」
無論ザネクに異論は無い。ルキアスもエリリースを余裕を持って帰らせたいと思うので文句は無い。
しかしエリリースは残念そうだ。
「もうですか? まだホーンラビットも見ていませんのに……」
「だから、かしら……ね。今日は縁が無かったと思って諦めてちょうだい……ね?」
エリリースは柳眉を顰めて思案するが、それはほぼ束の間だった。ダンジョン素人を自覚しているので玄人たるリュミアの言葉を基本的に受け入れる。
「そういたしますわ」
荷物を片付けたら早々に採取ポイントを発ち、出口の螺旋回廊へと向かう。
ところが螺旋回廊の柱の近くまで行くと、採取ポイントで話し掛けて来た三人組が突っ立っていた。ザネクが彼らに顔を向けると、それに気付いた相手が柱を顎で指し示した。
何事かと『望遠』で様子を見れば、柱の周囲には異様な光景。数千にも及ぶだろうオークやホーンラビットの大群が柱を取り囲んでいる。
「何が起きた?」
ザネクのその呟きが聞こえた訳ではないだろう。だが、オークの一部が振り向いた。
そのオーク達が走り出す。
「やべっ! こっちに来る! 逃げろ!」
ルキアス達四人と、ここで出会った三人組とは別々の方角へ一目散に逃げ出した。
相手の問いに答えたのはザネク。ルキアスが野草を料理し、エリリースがそれを興味深そうに眺めているから……ではない。そんなのには関係無くザネクはこんな場合の対応を自任している。ルキアスに任せれば変に言いくるめられそうに、エリリースやリュミアだとしつこく言い寄られそうに思えて仕方がないのだ。
しかしザネクの危惧は杞憂だったらしい。
「そっか、あんたらもか。邪魔して悪かったな」
相手はあっさり引き上げた。「どうだった?」「あいつらもだってさ」「ところであいつら何やってんだ?」「さあ? ピクニックじゃないか?」なんて会話が漏れ聞こえるが、ザネクが改めて他の三人を見ればピクニックにしか見えない。リュミアに至っては折り畳みの椅子に座って寛いでいたりする。
しかしそこを邪魔して相談だ。
「リュミア姉ちゃん、ホーンラビットがここまで出ないのは変じゃないか?」
自分達だけならザネク自身の「ホーンラビットを見たくない」と言う思いが叶ったと好意的に解釈もできよう。しかし他の探索者までホーンラビットに遭遇しないのは些か奇妙だ。
「変だとは思うけど、今できるとしたら早めに引き上げることだけ……ね」
「それもそっか」
ザネクは考えるのを放棄してピクニック気分を味わうことにした。
程なくしてルキアスの手による料理も出来上がる。当て込んでいたホーンラビットの肉が手に入らなかったせいで肉が手持ちの干し肉しか無く、些かボリュームに欠けるのが残念ではあった。
「出来たよ!」
「わたくしも手伝いましてよ! 味見をですけど……」
小さく舌を出すエリリースにみんなで笑い、昼食の和やかな時間が過ぎた。
食事が終わってリュミアが言う。
「今日は早めに帰りましょう……ね」
無論ザネクに異論は無い。ルキアスもエリリースを余裕を持って帰らせたいと思うので文句は無い。
しかしエリリースは残念そうだ。
「もうですか? まだホーンラビットも見ていませんのに……」
「だから、かしら……ね。今日は縁が無かったと思って諦めてちょうだい……ね?」
エリリースは柳眉を顰めて思案するが、それはほぼ束の間だった。ダンジョン素人を自覚しているので玄人たるリュミアの言葉を基本的に受け入れる。
「そういたしますわ」
荷物を片付けたら早々に採取ポイントを発ち、出口の螺旋回廊へと向かう。
ところが螺旋回廊の柱の近くまで行くと、採取ポイントで話し掛けて来た三人組が突っ立っていた。ザネクが彼らに顔を向けると、それに気付いた相手が柱を顎で指し示した。
何事かと『望遠』で様子を見れば、柱の周囲には異様な光景。数千にも及ぶだろうオークやホーンラビットの大群が柱を取り囲んでいる。
「何が起きた?」
ザネクのその呟きが聞こえた訳ではないだろう。だが、オークの一部が振り向いた。
そのオーク達が走り出す。
「やべっ! こっちに来る! 逃げろ!」
ルキアス達四人と、ここで出会った三人組とは別々の方角へ一目散に逃げ出した。
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