生活魔法は万能です

浜柔

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199 頼むのが苦手

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 ルキアスとザネクが下を見れば、水草塗れで頭から濡れそぼった金髪少女が一人、何かの残骸なのか木片に掴まって水に浮いていた。二人は顔を見合わせる。さて、どうしたものか。彼女がどうしてここに居るのかが問題だ。幾ら困難に見舞われているように見えても、ここはダンジョンなのだ。罠の可能性を考慮しない訳にはいかない。

「こんにちは?」

 ルキアスは一応挨拶をしてみた。疑問形なのはどう声を掛けて良いのかはっきりしない心情の表れだ。
 しかし彼女にはそれが不満だったらしい。

「この状況で言う言葉がそれ!? いえ、それよりそれ、どうやって飛んでるの?」

 かなり居丈高な物言いだ。しかしそれがザネクの癇に触った。

「どうやって飛ぼうとこっちの勝手だろ。そっちがどこで泳ごうと勝手なのと同じでな」
「これが泳いでるように見えるの!?」
「それ以外に何がある?」
「見て判らないの!?」
「判るかよ。そんなもん」
「あんたに付いてるのは節穴なのね」

 少女はやれやれとばかりに頭を振った。心底馬鹿にした雰囲気が癇に障る。

「はあっ!?」

 ザネクはルキアスに手振りも交えて言う。

「もう行こうぜ。こんなヤツ放っておいて」
「あ、うん……」

 ルキアスは少女を助けなくて大丈夫なのかと疑問半分ながら、「助けて」とは一言も発していないし、これだけ元気なら自分で何とかするだろうとも楽観して、そろそろと『傘』を動かし始めた。
 すると彼女が焦り始める。

「ちょ、ちょっと、どこに行こうってのよ!」
「どこだっていいだろ。お前には関係ないんだから」
「関係あるわよ! この状況見て判んないの!?」
「判らんな」

 少女とザネクが言い合っている間にも『傘』は彼女から離れて行く。彼女はいよいよ焦った。

「待って! 待ちなさいよ! 助けなさいよ!」
「それが人にものを頼む態度か?」
「ぐ……」

 彼女は苦々しげに顔を歪めた後、絞り出すように言う。

「……お……お願い。助けてください!」

 最後は勢い任せで声を張り上げた。

(絶望的に他人に頼むのが苦手なんだ……)

 ルキアスはむしろ楽しくなった。苦笑いしつつザネクを見れば、ザネクも似たような表情だ。『傘』を少女の傍に戻して近づける。水面ギリギリまで高度を下げたところでザネクが彼女に向かって手を伸ばす。

「最初から素直にそう言や良かったんだぞ?」
「ふん!」
「……助けは要らないようだな」

 ザネクが手を引っ込める。

「待って! 待って! 要る、要る、要るから! 助け要るから!」
「ったく……」

 再度ザネクが手を伸ばすと、彼女はその手を思い切り引っ張った。見捨てられそうになった腹いせか。
 しかしザネクはビクともしなかった。彼女を引っ張り上げるように体勢を整えてから手を伸ばしているのだ。水の中から引っ張られたからと、ぐらつくようなものではない。そのくらいでなければ引っ張り上げることさえ及びも付かないだろう。
 しかし意図は伝わる。

「マジに見捨てるぞ?」
「……ごめんなさい」

 ザネクは今度こそ素直に謝って手を取った彼女を『傘』の上に引っ張り上げた。
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