生活魔法は万能です

浜柔

文字の大きさ
205 / 627

205 早速行きましょう

しおりを挟む
「それじゃ、早速行きましょう」
「ちょっと待て」

 笑顔のシャルウィが再びルキアスとザネクの腕を取って歩き出そうとするのに、ザネクが待ったを掛ける。この辺り、絆され掛けたようにしながらも冷静だ。

「まだ一緒に行くとは言ってない」
「そんな! 信じてくれたんじゃなかったの?」
「それとこれとは話が別だ。ちょっと二人で相談するから、待ってな」
「……判ったわよ。相談するフリして逃げないでよ?」
「んなのする訳ねーだろ」

 ザネクは嫌そうに返事しながらルキアスを手招きし、二人で少し離れた場所に移動する。そして顔を突き合わせて声を潜めた。

「どうする?」
「一度くらいは付き合ってやらなきゃ収まらない流れだよね……」
「まあな。このまま見捨てても後味が悪くなりそうだしな」
「だけど、神薬が出るとも思えないよね」
「それだぜ。どのくらい付き合う?」
「期間だよね? ぼく達が宝箱の中身に確証を持てるまで……、一週間……、いや二週間?」
「まだ一つも見付けてないのを探すんだから、そのくらいは見た方が良さそうだな」
「じゃあ、二週間?」
「だな」

 方針は決まった。と、その時。

「ねえ! まだなの!?」

 何分も経っていないのにシャルウィは痺れを切らしたようだ。ルキアスとザネクは苦笑するばかり。

「今終わったところだ!」

 ザネクはシャルウィの許まで戻った後に結果を告げる。

「二週間だ。見付からなくてもそれ以上は付き合えない」
「どうして?」
「俺たちが次の階層に行くからだ」
「見付かってからだっていいじゃない!」
「一生見付からないかも知れない代物なんだ。そんなのに付き合っていてもキリが無いからな」
「え!? 信じてくれたんじゃなかったの!?」
「可能性は信じるさ。可能性はな。昔誰かが見付けたんだろうってのもな」
「だけどぼく達が見付けられる気はしないんだよ」
「どうして?」
「確率の問題だからだ。万が一に見付かればいい方じゃないか?」
「そう……」

 シャルウィは思い悩むが、短い時間で結論を出したようだ。

「判ったわ。二週間で我慢するわ。その代わり、一日も休みは無いからね! 覚悟なさい!」
「おう……」

 頼む立場でありながら居丈高なシャルウィに、ルキアスとザネクは苦笑で応えた。

「じゃあ、今度こそ行くわよ!」

 シャルウィはまたもルキアスとザネクの腕を取って歩き出す。

(結局こうなるんだ……。腕引っ張らなくても逃げないのに……)

 ルキアスはそんな感想を持ったが、ザネクの様子を窺うと、彼はどこか照れくさそうな雰囲気を醸し出していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル 異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった 孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます さあ、チートの時間だ

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

処理中です...