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302 大口を開けた
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ユアの落ちる先、クロコダイルがユアに向けて大口を開けた。
「くそっ!」
ザネクが剣を抜きつつ飛び降りる。だが気付いてから飛び降りて間に合おう筈もない。ユアはクロコダイルの顎門に挟まれた。
「ユアーっ!」
ルキアスが『傘』を急降下させる。襲い来るメガフロッグの舌を切り裂きながら降り立ったザネクがユアに噛み付いたクロコダイルの首筋に剣を突き立てる。クロコダイルの顎門が緩んだ。その瞬間にザネクがユアを抱き上げて手を伸ばすルキアスへと渡す。ユアを引き上げるルキアス。ザネクはクロコダイルの顎門を避けるため、背を向けているクロコダイルの群を踏み付けて走る。背後からのメガフロッグの舌を防ぐのは『傘』だ。魔物は上の階層を目指しているので進む先は第三階層になる。
「ユア、大丈夫?」
「ん!」
ルキアスはユアの具合を確かめたが、『傘』へと引き上げる時に喫驚の表情を浮かべていた以外、特に変わりが無い。着ている服にはクロコダイルの牙で出来ただろう穴が幾つか空いているが、血が滲んだ様子も無い。ユアの返事も至って元気だ。
若干惑乱しつつもルキアスはユアが無事ならばと、ザネクを追う。
ザネクには直ぐに追い付いた。上から手を伸ばしてザネクに呼び掛ける。
「ザネク!」
ザネクは右手でルキアスの手を取りつつ、クロコダイルの背で踏み切って跳び上がる。左手で『傘』の縁を掴み、その勢いで左足を引っかけ、するすると這い上がる。
そうこうする間に第三階層も間際に迫っていた。だがルキアスは第三階層を目前にして『傘』を止めた。
「ヤバっ」
「出るのはまずそうだな」
第三階層もまた魔物に溢れていた。地上にはガルム、第四階層から登って来たクロコダイルとメガフロッグが入り乱れて蠢き、上空にはガーゴイルの群が舞っている。
ルキアス達にとって危険なのはガーゴイルだ。空を飛ぶ相手では『傘』に乗っても避けようが無い。上の階層の魔物が下の階層への螺旋回廊に侵入することは無いようで、螺旋回廊に居る今は襲われないが、第三階層に出た途端に群がられるの必至だ。
「戻ろうか」
「だな。ガーゴイルが消えるか、下のヤツらを先に片付けなきゃ危険だ」
ガーゴイルだけならどうにかできる可能性があるだろう。しかしそれも地面にしっかり足を着けていればこそだ。クロコダイルなどが蠢いておちおち立っていられないようでは無理がある。
何にせよ幾らかでも状況が見えたのだ。危険を冒す意味は無い。
ルキアスはそろそろと第四階層に向けて移動を始めた。
この時突然に後方、つまり第三階層で光が弾け、爆音が押し寄せて来た。振り向けば火柱だ。
ルキアスはどうにも嫌な予感がした。
「い、急ぐよ!」
ルキアスは全速力で第四階層に向けて『傘』を飛ばす。
その背後にまた閃光が煌めき、爆音が響く。明らかに先より近い。後を見ていたザネクが叫んだ。
「火だ! 火が来た!」
「くそっ!」
ザネクが剣を抜きつつ飛び降りる。だが気付いてから飛び降りて間に合おう筈もない。ユアはクロコダイルの顎門に挟まれた。
「ユアーっ!」
ルキアスが『傘』を急降下させる。襲い来るメガフロッグの舌を切り裂きながら降り立ったザネクがユアに噛み付いたクロコダイルの首筋に剣を突き立てる。クロコダイルの顎門が緩んだ。その瞬間にザネクがユアを抱き上げて手を伸ばすルキアスへと渡す。ユアを引き上げるルキアス。ザネクはクロコダイルの顎門を避けるため、背を向けているクロコダイルの群を踏み付けて走る。背後からのメガフロッグの舌を防ぐのは『傘』だ。魔物は上の階層を目指しているので進む先は第三階層になる。
「ユア、大丈夫?」
「ん!」
ルキアスはユアの具合を確かめたが、『傘』へと引き上げる時に喫驚の表情を浮かべていた以外、特に変わりが無い。着ている服にはクロコダイルの牙で出来ただろう穴が幾つか空いているが、血が滲んだ様子も無い。ユアの返事も至って元気だ。
若干惑乱しつつもルキアスはユアが無事ならばと、ザネクを追う。
ザネクには直ぐに追い付いた。上から手を伸ばしてザネクに呼び掛ける。
「ザネク!」
ザネクは右手でルキアスの手を取りつつ、クロコダイルの背で踏み切って跳び上がる。左手で『傘』の縁を掴み、その勢いで左足を引っかけ、するすると這い上がる。
そうこうする間に第三階層も間際に迫っていた。だがルキアスは第三階層を目前にして『傘』を止めた。
「ヤバっ」
「出るのはまずそうだな」
第三階層もまた魔物に溢れていた。地上にはガルム、第四階層から登って来たクロコダイルとメガフロッグが入り乱れて蠢き、上空にはガーゴイルの群が舞っている。
ルキアス達にとって危険なのはガーゴイルだ。空を飛ぶ相手では『傘』に乗っても避けようが無い。上の階層の魔物が下の階層への螺旋回廊に侵入することは無いようで、螺旋回廊に居る今は襲われないが、第三階層に出た途端に群がられるの必至だ。
「戻ろうか」
「だな。ガーゴイルが消えるか、下のヤツらを先に片付けなきゃ危険だ」
ガーゴイルだけならどうにかできる可能性があるだろう。しかしそれも地面にしっかり足を着けていればこそだ。クロコダイルなどが蠢いておちおち立っていられないようでは無理がある。
何にせよ幾らかでも状況が見えたのだ。危険を冒す意味は無い。
ルキアスはそろそろと第四階層に向けて移動を始めた。
この時突然に後方、つまり第三階層で光が弾け、爆音が押し寄せて来た。振り向けば火柱だ。
ルキアスはどうにも嫌な予感がした。
「い、急ぐよ!」
ルキアスは全速力で第四階層に向けて『傘』を飛ばす。
その背後にまた閃光が煌めき、爆音が響く。明らかに先より近い。後を見ていたザネクが叫んだ。
「火だ! 火が来た!」
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