生活魔法は万能です

浜柔

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309 得策

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 ロマは休憩場所を定めると、調理道具といつの間にか拾っていたらしきシーサーペント肉の塊を取り出した。

「働いたらまた腹が減っちまったからな」
「何も食べずに働いたのはわたしよ?」
「おう。だからメイの分は多めにしとくぜ」
「あら、ありがと」
「どういたしましてだ」

 手っ取り早くソテーに仕上げられたシーサーペント肉に皆で舌鼓を打つ。

「美味しい! ふんわりしてるのに歯応えがしっかりあって、噛めば噛むほど味が出るなんて!」
「ほっほっほ。こんな機会でもないとなかなか口にはせんからの」

 シャルウィが賞賛し、ダン老人が補足した。
 シーサーペント肉は供給にムラがあって口にできる機会が少ない。食べる機会が少なければ食生活のローテーションから外れて尚のこと口にしなくなる、そんな食材だ。

「ですけど、こんなにのんびりしていて良いのでしょうか?」

 エリリースには大発生した魔物に対して何かしなければならないのではと居たたまれない気持ちがある。

「今回はじっとしていた方が得策……ね」
「それはどうしてでしょう?」
「大発生した魔物は丸一日経てばどこかに行ってしまうからさ」

 エリリースの再度の問いにはリュミアではなくロマが答えた。

「第五階層の魔物まで出てるようじゃ、メイでも倒すのにも丸一日以上掛かっちまうからな」
「一度に倒せる数には限りがあるからねー。第五階層までの魔物なら一度に回廊を通れる数なら上に残ってる人で十分よ」
「だけど魔物が大発生するのって迷惑よね。こんな場所で丸一日足止めなんて」

 シャルウィは溜め息混じりにぼやいた。

「人によってはそうでもないぞ。ススカベンジャーゴミ漁り人には待ち望んでるヤツも多いからな」
「それはまたどうしてでしょう?」
「魔物を倒しても魔石を回収しきれるものじゃないからな。捨て置かれた魔石を拾うのにこれほど都合のいい時は無い。現に俺らだってメイが倒した魔物の魔石のかなりを拾わず仕舞いだろ?」
「おっしゃる通りですわ」

 エリリースは一つ頷いた。

「それはそうと、メイはどこまで見て来たんだ?」
「二層の手前までよ。二層もびっしりだったから帰って来たの」
「四層の様子からすりゃ、そうだろうな」

 この後はもう取り留めのない話で夜が更けた。
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