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506 よいしょ
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「「#$%&!」」
「よいしょ」
ザネクとシャルウィが言葉にならない悲鳴を上げる一方、ナンソラは落ち着いた様子で『収納』から鍬を出して振り下ろした。
魔物が一撃で骸と化す。
「びっくりした」
「どうしてこんなのが出るのよ!」
動悸が治まるまで暫く掛かったザネクとシャルウィだ。
「なあ、爺さん。随分慣れた様子だけど、こいつみたいなのはよく出るのか?」
「いんや、初めてだねぇ」
「だったらどうしてそんなに落ち着いてられるんだ?」
「そりゃピーラの方が怖ろしいからだね。それ、見んしゃい」
ナンソラが指し示す先、魔物の骸にはピーラが食らい付いている。魔物の姿が奇っ怪に見えたのは食い付いたピーラがバタバタ暴れていたり、ピーラに食われた部分が抉れていたためだ。これでは魔物も元々瀕死だっただろう。確かにピーラの方が怖ろしい。
「変な叫び声がしなかったかい?」
「何が起きたんだ?」
「あら? その魔物は……」
フヨヨン、タイラク、メイナーダが駆け付け、直ぐに魔物の骸に気付いた。生きている間に気付かなかったのは、日常的には能動的な索敵を行わないためだ。受動的な索敵は行っているが、これだと弱々しい反応の場合にはかなり近付かないければ発見できない。
このことからも、目の前で骸を晒す魔物がナンソラに止めを刺される前から弱っていたことを窺わせる。
「ダンジョンから出て来たようだね。もう砲台も止まってる頃だから、そのせいかも知れないね」
「砲台が止まったら魔物が溢れるのか?」
「直接は関係無いよ。誰かが不用意に入っても守ってくれる物が無いだけさ」
「ってことは、フヨヨンはダンジョンで誰かがまた死んで、それが切っ掛けだと見るか?」
「このタイミングなんだ。この間の例と考え合わせればボクはそう予想するね」
タイラクは一つ頷いた。
「どっちにしろ行ってみるしかねぇな。ドーズ! ここは任せるぞ」
「しゃあねぇ。任された」
タイラク達が話す間に職人達も集まって来ていて、その中にドーズも混じっていたのだ。
ザネクが『傘』を差し、タイラク、フヨヨン、メイナーダとユアが乗り込む。ユアはいつもメイナーダと一緒だ。
そしてダンジョン上空まで来て下を見れば、前回に倍する魔物がひしめいていた。
「生きている人は居ないわね」
「当然だね。やっちゃってくれたまえよ」
「そうするわ」
もしかすると生きてない人は居るかも知れないが、足の踏み場も無いような状況ではそこまで面倒見切れない。
メイナーダは火柱が上がらない程度に抑えて『火魔法』を放ち、ダンジョン周辺の魔物を焼き払った。空気を読んで魔法を抑えることもあるのだ。
そして前回同様に『傘』に乗ったままダンジョンに突入する。メイナーダの火の壁に守られながら回廊を進む。
半ばまで達した辺りでメイナーダが「あっ」と声を出して火の壁を消した。
「誰か死んでるわ」
回廊の途中に一つ、元は人だっただろう肉塊が転がっていた。
「よいしょ」
ザネクとシャルウィが言葉にならない悲鳴を上げる一方、ナンソラは落ち着いた様子で『収納』から鍬を出して振り下ろした。
魔物が一撃で骸と化す。
「びっくりした」
「どうしてこんなのが出るのよ!」
動悸が治まるまで暫く掛かったザネクとシャルウィだ。
「なあ、爺さん。随分慣れた様子だけど、こいつみたいなのはよく出るのか?」
「いんや、初めてだねぇ」
「だったらどうしてそんなに落ち着いてられるんだ?」
「そりゃピーラの方が怖ろしいからだね。それ、見んしゃい」
ナンソラが指し示す先、魔物の骸にはピーラが食らい付いている。魔物の姿が奇っ怪に見えたのは食い付いたピーラがバタバタ暴れていたり、ピーラに食われた部分が抉れていたためだ。これでは魔物も元々瀕死だっただろう。確かにピーラの方が怖ろしい。
「変な叫び声がしなかったかい?」
「何が起きたんだ?」
「あら? その魔物は……」
フヨヨン、タイラク、メイナーダが駆け付け、直ぐに魔物の骸に気付いた。生きている間に気付かなかったのは、日常的には能動的な索敵を行わないためだ。受動的な索敵は行っているが、これだと弱々しい反応の場合にはかなり近付かないければ発見できない。
このことからも、目の前で骸を晒す魔物がナンソラに止めを刺される前から弱っていたことを窺わせる。
「ダンジョンから出て来たようだね。もう砲台も止まってる頃だから、そのせいかも知れないね」
「砲台が止まったら魔物が溢れるのか?」
「直接は関係無いよ。誰かが不用意に入っても守ってくれる物が無いだけさ」
「ってことは、フヨヨンはダンジョンで誰かがまた死んで、それが切っ掛けだと見るか?」
「このタイミングなんだ。この間の例と考え合わせればボクはそう予想するね」
タイラクは一つ頷いた。
「どっちにしろ行ってみるしかねぇな。ドーズ! ここは任せるぞ」
「しゃあねぇ。任された」
タイラク達が話す間に職人達も集まって来ていて、その中にドーズも混じっていたのだ。
ザネクが『傘』を差し、タイラク、フヨヨン、メイナーダとユアが乗り込む。ユアはいつもメイナーダと一緒だ。
そしてダンジョン上空まで来て下を見れば、前回に倍する魔物がひしめいていた。
「生きている人は居ないわね」
「当然だね。やっちゃってくれたまえよ」
「そうするわ」
もしかすると生きてない人は居るかも知れないが、足の踏み場も無いような状況ではそこまで面倒見切れない。
メイナーダは火柱が上がらない程度に抑えて『火魔法』を放ち、ダンジョン周辺の魔物を焼き払った。空気を読んで魔法を抑えることもあるのだ。
そして前回同様に『傘』に乗ったままダンジョンに突入する。メイナーダの火の壁に守られながら回廊を進む。
半ばまで達した辺りでメイナーダが「あっ」と声を出して火の壁を消した。
「誰か死んでるわ」
回廊の途中に一つ、元は人だっただろう肉塊が転がっていた。
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