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560 軟鉄
ルキアスのアダマント『捏ね』も堂に入ったもので、傍目からでも形を変えて行くのが目に見える。
その正面ではフヨヨンが軟鉄を握って唸っていた。
「ぐぎぎ……」
軟鉄がフヨヨンの指の形に凹んだ。
「あらあらフヨヨンったら、それじゃ『捏ね』るんじゃなくて握り潰してるだけよ」
「判ってはいるんだけどね。どうにも焦ってしまうんだよ」
フヨヨンは本格的に『捏ね』る練習を始めていた。今までも幾らかはやっていたが、先の見えない『捏ね』よりも魔道具の製作にかまけ勝ちだったのだ。
「ルキアス君と会って半年、もっと真剣に『捏ね』に取り組んでいたら今頃この鉄くらいはどうにでもなったのではないかと思うと後悔しか無いね」
「今頃になってどうして?」
「付与の性能だけではないのが判ったのが大きいね。それを今まで検証しようともしていなかったのも悔しい限りだよ」
付与の性能が上がるだけなら研究対象として興味深くても優先順位は高くない。だが違う性能が手に入ったり、魔法薬のようないざと言う時の備えの底上げができるとなれば話が変わる。この時肝心の『捏ね』る部分が他人任せでは製品の品質が担保できなくなるため、品質を揃えるには自ら『捏ね』る他無い。
「だけど改めて『捏ね』てみて実感するよ。できると判ってなければこんなの続けてられないよ。何の変化も感じられないから徒労感が酷いね」
「だったら諦める?」
「そうも行かないだろうね。ところでルキアス君? 鉄を『捏ね』るようになってから何年経つんだったかい?」
「えーと、一二年……、いえ一三年ですかね」
「……鉄に挑戦し始めて変化を感じられるようになるまではどのくらいだったかい?」
「一年くらいですかね……。よく憶えてないけど」
「参ったね。気が遠くなるよ」
フヨヨンは天を仰ぎながら肩を竦めた。しかし『捏ね』るのを中断したのは一瞬。直ぐにまた鉄との格闘を始める。
「一日二日でできるようにって考えるのが烏滸がましいのよ」
メイナーダはくすくすと笑った。
そうこうする内にダンジョンに行っていた三人が帰って来た。
「「ただいま」」
「帰ったぜ。今日も階層更新だ」
第一六階層への進出だ。
「あらあら頑張ったのね」
「頑張りましたよー」
答えたのはシャルウィだった。タイラクは浮かれた様子で階層更新を報告したが、シャルウィはまた酷く疲れている様子だ。
「あらあらお疲れね。ご飯食べたらお風呂に入って早くお休みなさい」
「そうしますー」
何でもない一日の終わりである。
その正面ではフヨヨンが軟鉄を握って唸っていた。
「ぐぎぎ……」
軟鉄がフヨヨンの指の形に凹んだ。
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「判ってはいるんだけどね。どうにも焦ってしまうんだよ」
フヨヨンは本格的に『捏ね』る練習を始めていた。今までも幾らかはやっていたが、先の見えない『捏ね』よりも魔道具の製作にかまけ勝ちだったのだ。
「ルキアス君と会って半年、もっと真剣に『捏ね』に取り組んでいたら今頃この鉄くらいはどうにでもなったのではないかと思うと後悔しか無いね」
「今頃になってどうして?」
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「だけど改めて『捏ね』てみて実感するよ。できると判ってなければこんなの続けてられないよ。何の変化も感じられないから徒労感が酷いね」
「だったら諦める?」
「そうも行かないだろうね。ところでルキアス君? 鉄を『捏ね』るようになってから何年経つんだったかい?」
「えーと、一二年……、いえ一三年ですかね」
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「一日二日でできるようにって考えるのが烏滸がましいのよ」
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