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一四 目眩しそうな事ばかり
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買い取り額を勘案して再計算だ。コーンフレークは少し高く買い取って貰えるとしても、小さなフライパンで大量に作るのは無理だから除外する。また、コーン油も現実的な線で一〇キログラムにつき一五〇グラムで計算する。
そうすると、八〇キログラムから採れる油は一二〇〇グラムで、少なくとも八〇〇グラムは材料費が取り戻せないものから絞ることになる。それは必然的に大豆となり、約五五〇〇グラムが必要で費用は一一〇〇円だ。油の絞り滓を一割の値段で売るとすれば約一〇〇〇円になる。
その油の費用にナス一〇〇本と調味料の費用を足すと七〇〇〇円。天ぷら一つ当たりの原価は七〇〇〇円を二〇〇で割った三五円だ。これに一日の利益目標一万円を単純に上乗せすると、単価が八五円になる。これではあまりに中途半端だから、端数を切り捨てて八〇円が妥当な線だろう。
しかし、そうすると利益目標に一〇〇〇円足りなくなるので、その分を稼ぐには更に二〇個余りを売る必要が有り、その分の材料費がまた必要になって……。
「だああっ!!」
めんどくさい。頭を掻き毟る程にめんどくさい。
それに、うっかりコーン油を使おうとしていたけど、考えてみれば八〇キログラムのとうもろこしの処理なんて毎日できるようなものじゃないじゃないか。昨日、三三〇キログラムをどうこう言ってた時点で気付けよ、あたし!
ギルドにはとうもろこしの胚芽だけを供給して貰うことができないかを尋ねなきゃいけなかったんだ。ついでにもっと大豆を調達できるかどうかをだ。
うう……、気が重いがギルドに行くことにしよう。
全て大豆油を使うとして計算してみると、大豆一四キログラムが二八〇〇円だから、天ぷら二〇〇個分の材料費は九〇〇〇円近くなり、天ぷらの原価は四三円弱だ。八〇円で売ったのでは経営がかなり厳しい。
あれ? かなり不安になってきた。
ギルドには明日行くとして、今日は副産物の後始末をする。
油は全部混ぜてしまって、水を加えて水が沸騰しない程度に加熱する。これはこのまま一晩置いて、浮いている油だけを掬い取るのだ。
おからは乾燥させて粉末にする。うん、最初からこうしていれば良かった。
豆乳はコップ一杯分だけを飲んだ後、とうもろこし粉を捏ねるのに使う。そしてそれをコーンフレークにしてしまう。食べてみると、水で捏ねたものより美味しかった。
ご飯は夕食分だけを残し、乾燥させて粉末にする。糊にでもしよう。
これで、一日二日で腐ることはないので安心できる。
また夜が明け、冒険者ギルドへと向かう。
冒険者ギルドに入ってみると、覚悟はしていたものの聞こえよがしな陰口が聞こえてきた。酒場であれば、冒険者の客が多くても、おかみさんの目も有ってかそんなにでもなかった。だけどここでは酷い。受付に辿り着く前に挫けそうだ。逃げ出したい。でも我慢だ。
そして、受付に辿り着いた時には目の焦点が怪しくなっていた。エクローネさんが回って見える。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
エクローネさんが気遣わしげに、そんな問い掛けをしてきた。
大丈夫だよ? そう、あたしは大丈夫さ! 頼むからそんなことを訊かないでよ!
だから、問い掛けには返事をせずに用件を言う。
「あの、とうもろこしの胚芽だけを買うことはできないでしょうか? それと、大豆を毎日四〇リブ購入できるだけの量は確保できるでしょうか?」
「とうもろこしの胚芽に大豆ですか? それは穀物商に問い合わせてみないと判りませんけど、少しお待ちいただけますか?」
「はい」
エクローネさんは問い合わせのために奥の部屋へと行った。
はぁ……。言われてみれば穀物商に訊くことだった。何であたしはギルドに来てしまったのだろう? エクローネさんもいい迷惑な筈だ。まだ聞こえ続けている陰口も相まって、地面にめり込みそうな気分だ。
何も考えないようにして耐えている内にエクローネさんが戻ってきた。何だかエクローネさんの顔色が冴えない。
「とうもろこしの胚芽の方はできなくはないそうですが、とうもろこし粒を買うのと値段が変わらないそうです。つまり、一万ゴールド分のとうもろこし粒から採れた胚芽が一万ゴールドだそうです」
「ほへ?」
変な声が出た。そんなに手間賃が掛かるのだろうか? 実際、めんどくさくはあるんだけどさ。
「それと、大豆の方は、一〇〇〇リブでも大丈夫だそうです」
「ありがとうございます」
うん、少しだけ安心した。大豆は需要が少ないから売っている量も少なかっただけだったんだ。
軽く会釈をしてあたしはギルドを後にする。あたしがギルドに居る間、陰口が途切れることは無かった。
ギルドを出た足で材木屋に行く。そして、長さ四〇センチメートルくらいのオークの板を買って草原へと向かった。
菜箸と串を作るためだ。特注しても良いが、お金も時間も掛かるので今回は自作する。
板を切るのには風の刃を使う。かなり強くしないと綺麗に切れないので、魔法は地面に向けて放てるように構える。そして、狙いを定めて魔法を放つ。
ピシッ。
端っこは使わないことにし、菜箸の太さになるように狙いを定めてもう五回ほど放つ。
ピシッ。ピシッ。ピシッ。ピシッ。ピシッ。
今度は、菜箸の太さに割った板の真ん中を割る。
ピシッ。
半分に割ったものを、菜箸らしく先細りさせるようにまた割る。
ピシッ。
それを菜箸の幅に割った分だけ繰り返していく。
失敗もしたので、出来上がったのは三膳だ。成功した分は失敗したものに擦りつけて角を丸める。最後に、端を切って綺麗にしたら完成だ。
串も同様に作った。馴染みの竹串よりかなり太いが大丈夫だろう。使い道は試食品の配布である。
帰りがけに紙を五〇枚買った。半紙ほどの大きさで一枚一〇〇円だ。これを米糊を使って袋にし、器を持っていない人に原価で販売する予定である。
他にも足りないものを幾つか買い足した。
これで準備は整った。
開店は十一月一日にする。一週間ほど先だ。それまでの間はできるだけコーン油を絞ってストックしておこう。
そうすると、八〇キログラムから採れる油は一二〇〇グラムで、少なくとも八〇〇グラムは材料費が取り戻せないものから絞ることになる。それは必然的に大豆となり、約五五〇〇グラムが必要で費用は一一〇〇円だ。油の絞り滓を一割の値段で売るとすれば約一〇〇〇円になる。
その油の費用にナス一〇〇本と調味料の費用を足すと七〇〇〇円。天ぷら一つ当たりの原価は七〇〇〇円を二〇〇で割った三五円だ。これに一日の利益目標一万円を単純に上乗せすると、単価が八五円になる。これではあまりに中途半端だから、端数を切り捨てて八〇円が妥当な線だろう。
しかし、そうすると利益目標に一〇〇〇円足りなくなるので、その分を稼ぐには更に二〇個余りを売る必要が有り、その分の材料費がまた必要になって……。
「だああっ!!」
めんどくさい。頭を掻き毟る程にめんどくさい。
それに、うっかりコーン油を使おうとしていたけど、考えてみれば八〇キログラムのとうもろこしの処理なんて毎日できるようなものじゃないじゃないか。昨日、三三〇キログラムをどうこう言ってた時点で気付けよ、あたし!
ギルドにはとうもろこしの胚芽だけを供給して貰うことができないかを尋ねなきゃいけなかったんだ。ついでにもっと大豆を調達できるかどうかをだ。
うう……、気が重いがギルドに行くことにしよう。
全て大豆油を使うとして計算してみると、大豆一四キログラムが二八〇〇円だから、天ぷら二〇〇個分の材料費は九〇〇〇円近くなり、天ぷらの原価は四三円弱だ。八〇円で売ったのでは経営がかなり厳しい。
あれ? かなり不安になってきた。
ギルドには明日行くとして、今日は副産物の後始末をする。
油は全部混ぜてしまって、水を加えて水が沸騰しない程度に加熱する。これはこのまま一晩置いて、浮いている油だけを掬い取るのだ。
おからは乾燥させて粉末にする。うん、最初からこうしていれば良かった。
豆乳はコップ一杯分だけを飲んだ後、とうもろこし粉を捏ねるのに使う。そしてそれをコーンフレークにしてしまう。食べてみると、水で捏ねたものより美味しかった。
ご飯は夕食分だけを残し、乾燥させて粉末にする。糊にでもしよう。
これで、一日二日で腐ることはないので安心できる。
また夜が明け、冒険者ギルドへと向かう。
冒険者ギルドに入ってみると、覚悟はしていたものの聞こえよがしな陰口が聞こえてきた。酒場であれば、冒険者の客が多くても、おかみさんの目も有ってかそんなにでもなかった。だけどここでは酷い。受付に辿り着く前に挫けそうだ。逃げ出したい。でも我慢だ。
そして、受付に辿り着いた時には目の焦点が怪しくなっていた。エクローネさんが回って見える。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
エクローネさんが気遣わしげに、そんな問い掛けをしてきた。
大丈夫だよ? そう、あたしは大丈夫さ! 頼むからそんなことを訊かないでよ!
だから、問い掛けには返事をせずに用件を言う。
「あの、とうもろこしの胚芽だけを買うことはできないでしょうか? それと、大豆を毎日四〇リブ購入できるだけの量は確保できるでしょうか?」
「とうもろこしの胚芽に大豆ですか? それは穀物商に問い合わせてみないと判りませんけど、少しお待ちいただけますか?」
「はい」
エクローネさんは問い合わせのために奥の部屋へと行った。
はぁ……。言われてみれば穀物商に訊くことだった。何であたしはギルドに来てしまったのだろう? エクローネさんもいい迷惑な筈だ。まだ聞こえ続けている陰口も相まって、地面にめり込みそうな気分だ。
何も考えないようにして耐えている内にエクローネさんが戻ってきた。何だかエクローネさんの顔色が冴えない。
「とうもろこしの胚芽の方はできなくはないそうですが、とうもろこし粒を買うのと値段が変わらないそうです。つまり、一万ゴールド分のとうもろこし粒から採れた胚芽が一万ゴールドだそうです」
「ほへ?」
変な声が出た。そんなに手間賃が掛かるのだろうか? 実際、めんどくさくはあるんだけどさ。
「それと、大豆の方は、一〇〇〇リブでも大丈夫だそうです」
「ありがとうございます」
うん、少しだけ安心した。大豆は需要が少ないから売っている量も少なかっただけだったんだ。
軽く会釈をしてあたしはギルドを後にする。あたしがギルドに居る間、陰口が途切れることは無かった。
ギルドを出た足で材木屋に行く。そして、長さ四〇センチメートルくらいのオークの板を買って草原へと向かった。
菜箸と串を作るためだ。特注しても良いが、お金も時間も掛かるので今回は自作する。
板を切るのには風の刃を使う。かなり強くしないと綺麗に切れないので、魔法は地面に向けて放てるように構える。そして、狙いを定めて魔法を放つ。
ピシッ。
端っこは使わないことにし、菜箸の太さになるように狙いを定めてもう五回ほど放つ。
ピシッ。ピシッ。ピシッ。ピシッ。ピシッ。
今度は、菜箸の太さに割った板の真ん中を割る。
ピシッ。
半分に割ったものを、菜箸らしく先細りさせるようにまた割る。
ピシッ。
それを菜箸の幅に割った分だけ繰り返していく。
失敗もしたので、出来上がったのは三膳だ。成功した分は失敗したものに擦りつけて角を丸める。最後に、端を切って綺麗にしたら完成だ。
串も同様に作った。馴染みの竹串よりかなり太いが大丈夫だろう。使い道は試食品の配布である。
帰りがけに紙を五〇枚買った。半紙ほどの大きさで一枚一〇〇円だ。これを米糊を使って袋にし、器を持っていない人に原価で販売する予定である。
他にも足りないものを幾つか買い足した。
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