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41~46
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【41.潔い】
「ふああっ……」
オリエがあくびをした。ダンジョンの中をここまで来るのに疲れもしただろう。
「もう夜だから、今日は泊まって行け」
「……助かる」
少々目をしょぼしょぼさせているオリエに魔王を疑う様子は無い。
「ん? 寝ている間に何かされるとは考えないのか?」
「魔王にその気が有るなら、わたしはもう生きてはいまい?」
魔王が感心するほどの潔さであった。
魔王もこんな人物、嫌いではない。
【42.風呂】
「寝床は用意するから、その間に風呂に入っておけ」
ほとんど裸のオリエだから判りにくいが、かなり汚れている。これを洗い落とさなければゆっくりと眠れないだろう。
しかし。
「風呂? 何だそれは?」
オリエは風呂を知らなかった。身体を洗うだけなら風呂である必要が無いこともあって、一般的でないのだ。
「入り方を教えてやるからついて来い」
百聞は一見にしかずだ。魔王は説明する前に見せることにした。
オリエも首を捻りながらも、素直に続く。
「これが風呂だ!」
ババーン! って感じに、魔王は風呂場の引き戸を開け放った。
【43.風呂場】
風呂は魔王がシェフのために造ったものだ。だから魔王と言う存在と比較するなら、こじんまりとしている。それでも脱衣場だけでも6畳、浴室は12畳の広さを誇る。
脱衣場の床は板張り。脱衣場や浴室への出入り口の引き戸にはアルミサッシ。それら以外はダンジョンの構造体そのままだが、大理石のような風合いにしてあって、シェフも満足の一品である。
「これが風呂!? 水があんなに贅沢に!」
「あれはお湯だ」
「お湯!?」
大理石のような湯船になみなみと湛えられたお湯に、オリエは驚きを隠せない様子だ。
「使い方を教えるぞ」
魔王はオリエを連れて浴室に入った。
【44.水の出し方】
魔王は壁から突き出た混合栓の前で足を止める。
「このレバーを上げたら水が出る。左に回せば冷たくなって、右に回せば熱くなる。止める時には下げる」
魔王は手本を実演した。
「やってみろ」
感心しきりで少々面白い顔になっているオリエが恐る恐るレバーに手を掛ける。
「やぁっ!」
ガコン! ジャバシャーッ!
「そんなに思いっ切り動かさなくていいから」
魔王はパタパタと手を横に振った。
因みに派手な音はしても、オリエの腕力程度では壊れないように魔王が保護魔法を掛けているので、壊れる心配は無い。
【45.蛇口】
「おーっ! おーっ! おおーっ!」
最初こそぎこちなかったオリエも、何度か動かす間に蛇口の動かし方をマスターした。ついでにシャワーもだ。
「凄いな! この魔道具が有れば、幾らでも水とお湯が使えるのだな!」
「え?」
「え?」
「魔道具じゃないぞ?」
魔王にはオリエがどう思ったのか理解できなかった。
【46.配管】
「この蛇口とやらを壁に取り付けたら水が出るんじゃないのか?」
「取り付けただけじゃ、水は出ないなー」
元々が魔法の使えない人間であるシェフのために造ったものだ。シェフの感覚に合わせて、風呂場より20メートルばかり高い位置にお湯と水のタンクを設け、そこから配管を通してお湯と水を風呂場と調理場に供給している。タンクの中身が減ったら魔王が追加する。
「ええー。魔王なんだから、何かこう魔法でするものじゃないのか?」
「タンクも配管も魔法で造ったぞ」
「そうじゃなくてぇ……」
オリエは魔道具じゃないのが不満らしい。魔道具でなければ持ち帰っても使えないから。
「ふああっ……」
オリエがあくびをした。ダンジョンの中をここまで来るのに疲れもしただろう。
「もう夜だから、今日は泊まって行け」
「……助かる」
少々目をしょぼしょぼさせているオリエに魔王を疑う様子は無い。
「ん? 寝ている間に何かされるとは考えないのか?」
「魔王にその気が有るなら、わたしはもう生きてはいまい?」
魔王が感心するほどの潔さであった。
魔王もこんな人物、嫌いではない。
【42.風呂】
「寝床は用意するから、その間に風呂に入っておけ」
ほとんど裸のオリエだから判りにくいが、かなり汚れている。これを洗い落とさなければゆっくりと眠れないだろう。
しかし。
「風呂? 何だそれは?」
オリエは風呂を知らなかった。身体を洗うだけなら風呂である必要が無いこともあって、一般的でないのだ。
「入り方を教えてやるからついて来い」
百聞は一見にしかずだ。魔王は説明する前に見せることにした。
オリエも首を捻りながらも、素直に続く。
「これが風呂だ!」
ババーン! って感じに、魔王は風呂場の引き戸を開け放った。
【43.風呂場】
風呂は魔王がシェフのために造ったものだ。だから魔王と言う存在と比較するなら、こじんまりとしている。それでも脱衣場だけでも6畳、浴室は12畳の広さを誇る。
脱衣場の床は板張り。脱衣場や浴室への出入り口の引き戸にはアルミサッシ。それら以外はダンジョンの構造体そのままだが、大理石のような風合いにしてあって、シェフも満足の一品である。
「これが風呂!? 水があんなに贅沢に!」
「あれはお湯だ」
「お湯!?」
大理石のような湯船になみなみと湛えられたお湯に、オリエは驚きを隠せない様子だ。
「使い方を教えるぞ」
魔王はオリエを連れて浴室に入った。
【44.水の出し方】
魔王は壁から突き出た混合栓の前で足を止める。
「このレバーを上げたら水が出る。左に回せば冷たくなって、右に回せば熱くなる。止める時には下げる」
魔王は手本を実演した。
「やってみろ」
感心しきりで少々面白い顔になっているオリエが恐る恐るレバーに手を掛ける。
「やぁっ!」
ガコン! ジャバシャーッ!
「そんなに思いっ切り動かさなくていいから」
魔王はパタパタと手を横に振った。
因みに派手な音はしても、オリエの腕力程度では壊れないように魔王が保護魔法を掛けているので、壊れる心配は無い。
【45.蛇口】
「おーっ! おーっ! おおーっ!」
最初こそぎこちなかったオリエも、何度か動かす間に蛇口の動かし方をマスターした。ついでにシャワーもだ。
「凄いな! この魔道具が有れば、幾らでも水とお湯が使えるのだな!」
「え?」
「え?」
「魔道具じゃないぞ?」
魔王にはオリエがどう思ったのか理解できなかった。
【46.配管】
「この蛇口とやらを壁に取り付けたら水が出るんじゃないのか?」
「取り付けただけじゃ、水は出ないなー」
元々が魔法の使えない人間であるシェフのために造ったものだ。シェフの感覚に合わせて、風呂場より20メートルばかり高い位置にお湯と水のタンクを設け、そこから配管を通してお湯と水を風呂場と調理場に供給している。タンクの中身が減ったら魔王が追加する。
「ええー。魔王なんだから、何かこう魔法でするものじゃないのか?」
「タンクも配管も魔法で造ったぞ」
「そうじゃなくてぇ……」
オリエは魔道具じゃないのが不満らしい。魔道具でなければ持ち帰っても使えないから。
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