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167~172
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【167.トランプ】
何だかんだで5人パーティーの残る3人も半熟卵を食べた。剣士に釣られたようなものだ。しかし、食べた後で後悔したように青い顔。いつ腹が痛くなるのかと、胃が痛くなる気分らしい。
魔王もオリエはそんな彼らの様子を横目で見るだけである。気持ちの問題に付ける薬も無い。
「何して遊ぼう?」
「まずはトランプだな」
「いつもやってるよ?」
「大人数でするゲームがあるのだ」
「へぇー。じゃあそれで」
「うむ」
5人パーティーの意思を確かめることも無く、話は纏まった。
【168.俺はどうなっても】
「ちょっと待ってくれ。何の話をしてるんだ?」
剣士は焦った。自分達が蚊帳の外のまま話が勧められていることに危機感を抱いたのだ。
「楽しい楽しい遊びの話だ。お前達とのな」
「な、な、な、何だって……」
剣士は慄いた。魔王が自分達と遊ぶと聞いて思い浮かんだのが、自分達に苦痛を与えて喜ぶ魔王の姿だ。美味しい食事も、幸福感を味わわせてから地獄に突き落とすことで、苦痛より強く感じさせる手段だったのだ。
人々が魔王に抱くイメージなんてこんなものである。
「た、頼む。俺はどうなってもいい。他のみんなは許してくれ!」
「〃「ゾッケン!?」〃」
「いいんだ。犠牲は俺だけで」
「何の話をしているんだ?」
魔王はジト目で見た。
牛の骸骨の仮面で見えないけど。
【169.遊ぶだけだよ】
「お、俺達をおもちゃにして遊って言うんだろう?」
「〃「は?」〃」
他の全員の呆れを含んだ声がシンクロした。
「ゾッケン、それはさすがに……」
「穿ちすぎとも違うわね」
「ここに来てからのゾッケンのポンコツぶりが酷いです」
「やれやれだ」
「お、お前ら!」
仲間に散々に言われる剣士であった。
「一緒に遊ぶだけだよ……」
「う……」
オリエの哀しそうな表情に、剣士は声を詰まらせる。そして幾許かの逡巡。
「すまん」
土下座した。
【170.七並べ】
オリエが「もういいよー」と、剣士の土下座を軽く流しただけで、魔王とオリエは話を進める。元より理解を求めただけで、謝罪は求めていないのだ。
「まずは簡単な七並べと行こう」
「どんなゲーム?」
「最初に7を4枚場に配置して、順番に場に出ているカードの続き番号になるカードを置いて行く。手札が無くなったら勝ちで、手詰まりなら負けだ」
「それ、あたしはしたこと無いよね?」
「2人でやっても面白くないからな」
シェフにとっては料理が遊びのようなものだから、オリエが居て、やっと2人なのだ。
オリエはチラッとシェフを見てから頷いた。
【171.隣接】
「誰よ? ダイヤの8を止めているのはぁ」
「さあな」
「ゾッケン、あんたか!」
「何故判った!?」
「〃「……」〃」
何だかんだで和気藹々と七並べをする面々である。
「はぁ……、パス。出せないわ」
魔法使いは早々に敗北した。そして少し口を尖らせる。
「AとかKばかりの手札じゃ、どうやったって勝てないわよ。もう」
「AとKが隣接するルールもオプションであるぞ」
例えば場に8からKまでが出ていたら2が出ていなくてもAを置けるルールだ。
「それなら最初から……」
魔法使いは言い募ろうとして尻窄みになった。最初はカードの絵柄を憶えるのにも四苦八苦したのだ。ルールはシンプルな方が良かったことに間違いない。
「次からそのルールを入れてみよう」
魔王は頃合いだと考えて、ルールの追加をするのであった。
【172.麻雀】
「リーチ、一発、平和、ドラ3。跳満だ」
「くっそ、やられた!」
ハンターにロンされた剣士は頭を抱えて天を仰いだ。
「ほら、点棒を出しな」
「ぐぬ……」
剣士は点棒を漁る。ところが、足りない。
「ハコった……」
「あっはっは! またゾッケンのビリだ」
「ええい! もう1回だ。もう1回!」
「何度やっても同じだと思うけどなぁ」
「勝つまでやる!」
剣士、槍士、ハンター、それに魔王は牌を掻き交ぜる。麻雀だ。賭けてはいないので単なる勝ち負けでしかないのではあるが、男達はかなり熱い。
「……」
魔王も勝ててなかった。
何だかんだで5人パーティーの残る3人も半熟卵を食べた。剣士に釣られたようなものだ。しかし、食べた後で後悔したように青い顔。いつ腹が痛くなるのかと、胃が痛くなる気分らしい。
魔王もオリエはそんな彼らの様子を横目で見るだけである。気持ちの問題に付ける薬も無い。
「何して遊ぼう?」
「まずはトランプだな」
「いつもやってるよ?」
「大人数でするゲームがあるのだ」
「へぇー。じゃあそれで」
「うむ」
5人パーティーの意思を確かめることも無く、話は纏まった。
【168.俺はどうなっても】
「ちょっと待ってくれ。何の話をしてるんだ?」
剣士は焦った。自分達が蚊帳の外のまま話が勧められていることに危機感を抱いたのだ。
「楽しい楽しい遊びの話だ。お前達とのな」
「な、な、な、何だって……」
剣士は慄いた。魔王が自分達と遊ぶと聞いて思い浮かんだのが、自分達に苦痛を与えて喜ぶ魔王の姿だ。美味しい食事も、幸福感を味わわせてから地獄に突き落とすことで、苦痛より強く感じさせる手段だったのだ。
人々が魔王に抱くイメージなんてこんなものである。
「た、頼む。俺はどうなってもいい。他のみんなは許してくれ!」
「〃「ゾッケン!?」〃」
「いいんだ。犠牲は俺だけで」
「何の話をしているんだ?」
魔王はジト目で見た。
牛の骸骨の仮面で見えないけど。
【169.遊ぶだけだよ】
「お、俺達をおもちゃにして遊って言うんだろう?」
「〃「は?」〃」
他の全員の呆れを含んだ声がシンクロした。
「ゾッケン、それはさすがに……」
「穿ちすぎとも違うわね」
「ここに来てからのゾッケンのポンコツぶりが酷いです」
「やれやれだ」
「お、お前ら!」
仲間に散々に言われる剣士であった。
「一緒に遊ぶだけだよ……」
「う……」
オリエの哀しそうな表情に、剣士は声を詰まらせる。そして幾許かの逡巡。
「すまん」
土下座した。
【170.七並べ】
オリエが「もういいよー」と、剣士の土下座を軽く流しただけで、魔王とオリエは話を進める。元より理解を求めただけで、謝罪は求めていないのだ。
「まずは簡単な七並べと行こう」
「どんなゲーム?」
「最初に7を4枚場に配置して、順番に場に出ているカードの続き番号になるカードを置いて行く。手札が無くなったら勝ちで、手詰まりなら負けだ」
「それ、あたしはしたこと無いよね?」
「2人でやっても面白くないからな」
シェフにとっては料理が遊びのようなものだから、オリエが居て、やっと2人なのだ。
オリエはチラッとシェフを見てから頷いた。
【171.隣接】
「誰よ? ダイヤの8を止めているのはぁ」
「さあな」
「ゾッケン、あんたか!」
「何故判った!?」
「〃「……」〃」
何だかんだで和気藹々と七並べをする面々である。
「はぁ……、パス。出せないわ」
魔法使いは早々に敗北した。そして少し口を尖らせる。
「AとかKばかりの手札じゃ、どうやったって勝てないわよ。もう」
「AとKが隣接するルールもオプションであるぞ」
例えば場に8からKまでが出ていたら2が出ていなくてもAを置けるルールだ。
「それなら最初から……」
魔法使いは言い募ろうとして尻窄みになった。最初はカードの絵柄を憶えるのにも四苦八苦したのだ。ルールはシンプルな方が良かったことに間違いない。
「次からそのルールを入れてみよう」
魔王は頃合いだと考えて、ルールの追加をするのであった。
【172.麻雀】
「リーチ、一発、平和、ドラ3。跳満だ」
「くっそ、やられた!」
ハンターにロンされた剣士は頭を抱えて天を仰いだ。
「ほら、点棒を出しな」
「ぐぬ……」
剣士は点棒を漁る。ところが、足りない。
「ハコった……」
「あっはっは! またゾッケンのビリだ」
「ええい! もう1回だ。もう1回!」
「何度やっても同じだと思うけどなぁ」
「勝つまでやる!」
剣士、槍士、ハンター、それに魔王は牌を掻き交ぜる。麻雀だ。賭けてはいないので単なる勝ち負けでしかないのではあるが、男達はかなり熱い。
「……」
魔王も勝ててなかった。
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