魔☆かるちゃ~魔王はこたつで茶をすする~

浜柔

文字の大きさ
49 / 1,641

346~351 ナビちゃん

しおりを挟む
【346.ポイント制】
 翌日。ハンターは箱庭でショップ画面を開き、ダンジョンポイントの交換品一覧を睨み付けていた。
 この「ショップ」はマップと同じく空中に投影され、現在のダンジョンポイント、交換品の名前、詳細説明ボタン、交換ポイント数、交換ボタンなどが表示される。
 ポイントは昨日説明を受けた時点で100ポイントが、日付が変わって10ポイントが足されて110ポイントになっている。
 「耕した土地」は初回限定で50ポイント。2面目以降は500ポイントを必要とする。
 「農耕用ゴーレム」も初回限定で50ポイント。2体目以降で500ポイントとなっている。
 「水路」は1メートルに付き1ポイント、「井戸」100ポイント、「ラディッシュの種」1面分1ポイントなどが並ぶ。

「何かこう、大雑把だな……」

 値段が1ポイントから、2、5、10、50、100のような判りやすい数字に寄っている。

 思い付きだからな……。

 こたつで茶を飲みつつ耳敏くハンターの呟きを聞いた魔王は苦笑した。



【347.何を交換するか】
 何を交換するか悩むハンター。どうにも決めきれない。

「なんかもうちょっと説明がねぇのか? これっぽっちじゃ、何から始めいいのか判んねぇぞ」

 とうとう説明が足りないせいにした。
 ところがそこにどこからともなく声がする。

『説明を求めますか?』
「は!? 誰だ!?」

 ハンターは周りを見回すが、誰も居ない。そもそもここには他に誰も居ない筈だ。しかし声だけが響く。

『説明を求めますか?』
「誰だって訊いてんだ!」
『説明を求めますか?』
「だから誰だよ!?」
『説明を求めますか?』
「がーっ! 求めらぁ! だからお前は誰か説明しろよ!」
『承認が得られましたのでナビゲーションシステム起動します。このナビちゃんのことはナビちゃんとでもお呼びください』

 「とでも」と言いつつ自称しているのだから事実上の強要である。

「な、なビ?」
『ナナビではありません。ナビちゃんです』
『名前なんてどうでもいい! お前は何もんで、どうしてここに居る!? 何で声だけなんだ!?』
『質問が多いですねぇ。1つずつにしていただけると助かるのですが……。とは言え、10や20の質問を一度に処理できなくてはこのナビちゃんの名折れ。ようございます。お答えしましょう』
「前置きなげぇな、おい」



【348.ナビちゃん】
『このナビちゃんはこの箱庭に関する疑問にお答えするシステム……、まあ、からくり人形のようなものです。どうしてここに居るのかは箱庭所有者の疑問にお答えするためで、声だけなのはそれで用が足りるからですねー』
「人形なのに声だけなのか?」
『声だけがご不満ならアバター形態も可能です。ペットだと思ってお側に置いてくださいな』
「ペットねぇ」
『どんな生き物がお好みですか?』
「だったら鳥だな」
『承りました』

 ポンと煙が湧き起こり、それが消えたらこじんまりしてずんぐりしたカラスが佇んでいた。

「どうしてカラス……」
『何となくですねー。あっ……』

 ハンターは首を傾げた。



【349.声が】
 魔王は居間から箱庭を覗く。

「何となくですねー」
「魔王、声が出てるゾ」
「あっ……」

 シェフの指摘に魔王はうっかりを自覚した。

「魔王は暇なのカ?」
「うむ。しかしそれだけではないぞ」
「ほウ」
「魔法知能だけでは曖昧な部分に答えられないからな」
「節子……」
「誰が節子やねん!」
「いや、ついナ。だが魔王、それはただの未完成ダ」
「……そうとも言う」



【350.お勧め】
「なんかお勧めって無いのか?」

 ハンターは考えるのを放棄した。何を選んだものかどうにも決められない。魔王が用意したものなら取って食われることも騙されることもないので、素直に助言を受けた方が楽ちんだ。

『お勧めはやっぱり初心者セットですねー。農耕、牧畜、果樹園のどれか1つだけですがお得になってますー」

 農耕セットなら耕した土地1面、農耕用ゴーレム1体、ラディッシュの種1面分、ほうれん草の種1面分、キャベツの種1面分、とうもろこしの種1面分で100ポイント。
 牧畜セットなら牧草地1面、牧畜用ゴーレム1体、鶏の雛10羽、餌1ヶ月分付き餌箱1つで100ポイント。
 果樹園セットなら肥沃な土地1面、果樹園用ゴーレム1体、果樹の苗100本詰め合わせで100ポイント。

「ふーん。ところでゴーレムって何をするんだ?」
『牧畜なら餌の補充、卵の収集、卵を産まなくなった鶏の処分まで全てお任せおっけーです。他も同様ですねー』
「ゴーレムさえあれば俺は何もしなくていい?」
『最初に必要に応じて幾つか設定するのを除けばその通りですー』
「それで牧畜なんかをすることになるのか?」
『なにぶんゲームですから、そこら辺は適当に』
「お、おう。それじゃ初心者牧畜セットにしておくぜ」

 ハンターは唆されるままに初心者牧畜セットをポチった。



【351.槍士も箱庭で】
 槍士も箱庭で交換品一覧を前に悩んでいた。初心者セットを見付けるまでは良かったが、どれにしたものか決心が付かない。

『あーあー、見てられませんねー』

 槍士は突然の声に喫驚して周囲を見回した。しかし何も居ない。

『何かお悩みならこのナビゲーションシステム、通称ナビちゃんにお任せくださいー』

 ハンターの時とは登場の仕方が違うナビちゃんだ。ここら辺、適当な魔王である。
 対する槍士は無言で周囲を警戒する。

『やだなー。そんなにビクビクしないでくださいな。ここに敵なんて居ませんよ』
「む。そうは言われても姿が見えないのではな……」
『はぁー、仕方ありませんねぇ。姿形は飾りでしかないんですけどねー。見えるようにいたしましょう。どんな動物がお好きですか?』
「動物?」
『どうせならお好みの姿の方がいいじゃありませんか』
「……」
『さあさあ、何にします?』
「猫……」
『ガッテン承知』

 ポンと音を立てて手に載りそうなほど小さな子猫が現れる。
 槍士は一瞬目を見開いた後、顔を上気させて子猫を見詰めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

処理中です...