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346~351 ナビちゃん
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【346.ポイント制】
翌日。ハンターは箱庭でショップ画面を開き、ダンジョンポイントの交換品一覧を睨み付けていた。
この「ショップ」はマップと同じく空中に投影され、現在のダンジョンポイント、交換品の名前、詳細説明ボタン、交換ポイント数、交換ボタンなどが表示される。
ポイントは昨日説明を受けた時点で100ポイントが、日付が変わって10ポイントが足されて110ポイントになっている。
「耕した土地」は初回限定で50ポイント。2面目以降は500ポイントを必要とする。
「農耕用ゴーレム」も初回限定で50ポイント。2体目以降で500ポイントとなっている。
「水路」は1メートルに付き1ポイント、「井戸」100ポイント、「ラディッシュの種」1面分1ポイントなどが並ぶ。
「何かこう、大雑把だな……」
値段が1ポイントから、2、5、10、50、100のような判りやすい数字に寄っている。
思い付きだからな……。
こたつで茶を飲みつつ耳敏くハンターの呟きを聞いた魔王は苦笑した。
【347.何を交換するか】
何を交換するか悩むハンター。どうにも決めきれない。
「なんかもうちょっと説明がねぇのか? これっぽっちじゃ、何から始めいいのか判んねぇぞ」
とうとう説明が足りないせいにした。
ところがそこにどこからともなく声がする。
『説明を求めますか?』
「は!? 誰だ!?」
ハンターは周りを見回すが、誰も居ない。そもそもここには他に誰も居ない筈だ。しかし声だけが響く。
『説明を求めますか?』
「誰だって訊いてんだ!」
『説明を求めますか?』
「だから誰だよ!?」
『説明を求めますか?』
「がーっ! 求めらぁ! だからお前は誰か説明しろよ!」
『承認が得られましたのでナビゲーションシステム起動します。このナビちゃんのことはナビちゃんとでもお呼びください』
「とでも」と言いつつ自称しているのだから事実上の強要である。
「な、なビ?」
『ナナビではありません。ナビちゃんです』
『名前なんてどうでもいい! お前は何もんで、どうしてここに居る!? 何で声だけなんだ!?』
『質問が多いですねぇ。1つずつにしていただけると助かるのですが……。とは言え、10や20の質問を一度に処理できなくてはこのナビちゃんの名折れ。ようございます。お答えしましょう』
「前置きなげぇな、おい」
【348.ナビちゃん】
『このナビちゃんはこの箱庭に関する疑問にお答えするシステム……、まあ、からくり人形のようなものです。どうしてここに居るのかは箱庭所有者の疑問にお答えするためで、声だけなのはそれで用が足りるからですねー』
「人形なのに声だけなのか?」
『声だけがご不満ならアバター形態も可能です。ペットだと思ってお側に置いてくださいな』
「ペットねぇ」
『どんな生き物がお好みですか?』
「だったら鳥だな」
『承りました』
ポンと煙が湧き起こり、それが消えたらこじんまりしてずんぐりしたカラスが佇んでいた。
「どうしてカラス……」
『何となくですねー。あっ……』
ハンターは首を傾げた。
【349.声が】
魔王は居間から箱庭を覗く。
「何となくですねー」
「魔王、声が出てるゾ」
「あっ……」
シェフの指摘に魔王はうっかりを自覚した。
「魔王は暇なのカ?」
「うむ。しかしそれだけではないぞ」
「ほウ」
「魔法知能だけでは曖昧な部分に答えられないからな」
「節子……」
「誰が節子やねん!」
「いや、ついナ。だが魔王、それはただの未完成ダ」
「……そうとも言う」
【350.お勧め】
「なんかお勧めって無いのか?」
ハンターは考えるのを放棄した。何を選んだものかどうにも決められない。魔王が用意したものなら取って食われることも騙されることもないので、素直に助言を受けた方が楽ちんだ。
『お勧めはやっぱり初心者セットですねー。農耕、牧畜、果樹園のどれか1つだけですがお得になってますー」
農耕セットなら耕した土地1面、農耕用ゴーレム1体、ラディッシュの種1面分、ほうれん草の種1面分、キャベツの種1面分、とうもろこしの種1面分で100ポイント。
牧畜セットなら牧草地1面、牧畜用ゴーレム1体、鶏の雛10羽、餌1ヶ月分付き餌箱1つで100ポイント。
果樹園セットなら肥沃な土地1面、果樹園用ゴーレム1体、果樹の苗100本詰め合わせで100ポイント。
「ふーん。ところでゴーレムって何をするんだ?」
『牧畜なら餌の補充、卵の収集、卵を産まなくなった鶏の処分まで全てお任せおっけーです。他も同様ですねー』
「ゴーレムさえあれば俺は何もしなくていい?」
『最初に必要に応じて幾つか設定するのを除けばその通りですー』
「それで牧畜なんかをすることになるのか?」
『なにぶんゲームですから、そこら辺は適当に』
「お、おう。それじゃ初心者牧畜セットにしておくぜ」
ハンターは唆されるままに初心者牧畜セットをポチった。
【351.槍士も箱庭で】
槍士も箱庭で交換品一覧を前に悩んでいた。初心者セットを見付けるまでは良かったが、どれにしたものか決心が付かない。
『あーあー、見てられませんねー』
槍士は突然の声に喫驚して周囲を見回した。しかし何も居ない。
『何かお悩みならこのナビゲーションシステム、通称ナビちゃんにお任せくださいー』
ハンターの時とは登場の仕方が違うナビちゃんだ。ここら辺、適当な魔王である。
対する槍士は無言で周囲を警戒する。
『やだなー。そんなにビクビクしないでくださいな。ここに敵なんて居ませんよ』
「む。そうは言われても姿が見えないのではな……」
『はぁー、仕方ありませんねぇ。姿形は飾りでしかないんですけどねー。見えるようにいたしましょう。どんな動物がお好きですか?』
「動物?」
『どうせならお好みの姿の方がいいじゃありませんか』
「……」
『さあさあ、何にします?』
「猫……」
『ガッテン承知』
ポンと音を立てて手に載りそうなほど小さな子猫が現れる。
槍士は一瞬目を見開いた後、顔を上気させて子猫を見詰めた。
翌日。ハンターは箱庭でショップ画面を開き、ダンジョンポイントの交換品一覧を睨み付けていた。
この「ショップ」はマップと同じく空中に投影され、現在のダンジョンポイント、交換品の名前、詳細説明ボタン、交換ポイント数、交換ボタンなどが表示される。
ポイントは昨日説明を受けた時点で100ポイントが、日付が変わって10ポイントが足されて110ポイントになっている。
「耕した土地」は初回限定で50ポイント。2面目以降は500ポイントを必要とする。
「農耕用ゴーレム」も初回限定で50ポイント。2体目以降で500ポイントとなっている。
「水路」は1メートルに付き1ポイント、「井戸」100ポイント、「ラディッシュの種」1面分1ポイントなどが並ぶ。
「何かこう、大雑把だな……」
値段が1ポイントから、2、5、10、50、100のような判りやすい数字に寄っている。
思い付きだからな……。
こたつで茶を飲みつつ耳敏くハンターの呟きを聞いた魔王は苦笑した。
【347.何を交換するか】
何を交換するか悩むハンター。どうにも決めきれない。
「なんかもうちょっと説明がねぇのか? これっぽっちじゃ、何から始めいいのか判んねぇぞ」
とうとう説明が足りないせいにした。
ところがそこにどこからともなく声がする。
『説明を求めますか?』
「は!? 誰だ!?」
ハンターは周りを見回すが、誰も居ない。そもそもここには他に誰も居ない筈だ。しかし声だけが響く。
『説明を求めますか?』
「誰だって訊いてんだ!」
『説明を求めますか?』
「だから誰だよ!?」
『説明を求めますか?』
「がーっ! 求めらぁ! だからお前は誰か説明しろよ!」
『承認が得られましたのでナビゲーションシステム起動します。このナビちゃんのことはナビちゃんとでもお呼びください』
「とでも」と言いつつ自称しているのだから事実上の強要である。
「な、なビ?」
『ナナビではありません。ナビちゃんです』
『名前なんてどうでもいい! お前は何もんで、どうしてここに居る!? 何で声だけなんだ!?』
『質問が多いですねぇ。1つずつにしていただけると助かるのですが……。とは言え、10や20の質問を一度に処理できなくてはこのナビちゃんの名折れ。ようございます。お答えしましょう』
「前置きなげぇな、おい」
【348.ナビちゃん】
『このナビちゃんはこの箱庭に関する疑問にお答えするシステム……、まあ、からくり人形のようなものです。どうしてここに居るのかは箱庭所有者の疑問にお答えするためで、声だけなのはそれで用が足りるからですねー』
「人形なのに声だけなのか?」
『声だけがご不満ならアバター形態も可能です。ペットだと思ってお側に置いてくださいな』
「ペットねぇ」
『どんな生き物がお好みですか?』
「だったら鳥だな」
『承りました』
ポンと煙が湧き起こり、それが消えたらこじんまりしてずんぐりしたカラスが佇んでいた。
「どうしてカラス……」
『何となくですねー。あっ……』
ハンターは首を傾げた。
【349.声が】
魔王は居間から箱庭を覗く。
「何となくですねー」
「魔王、声が出てるゾ」
「あっ……」
シェフの指摘に魔王はうっかりを自覚した。
「魔王は暇なのカ?」
「うむ。しかしそれだけではないぞ」
「ほウ」
「魔法知能だけでは曖昧な部分に答えられないからな」
「節子……」
「誰が節子やねん!」
「いや、ついナ。だが魔王、それはただの未完成ダ」
「……そうとも言う」
【350.お勧め】
「なんかお勧めって無いのか?」
ハンターは考えるのを放棄した。何を選んだものかどうにも決められない。魔王が用意したものなら取って食われることも騙されることもないので、素直に助言を受けた方が楽ちんだ。
『お勧めはやっぱり初心者セットですねー。農耕、牧畜、果樹園のどれか1つだけですがお得になってますー」
農耕セットなら耕した土地1面、農耕用ゴーレム1体、ラディッシュの種1面分、ほうれん草の種1面分、キャベツの種1面分、とうもろこしの種1面分で100ポイント。
牧畜セットなら牧草地1面、牧畜用ゴーレム1体、鶏の雛10羽、餌1ヶ月分付き餌箱1つで100ポイント。
果樹園セットなら肥沃な土地1面、果樹園用ゴーレム1体、果樹の苗100本詰め合わせで100ポイント。
「ふーん。ところでゴーレムって何をするんだ?」
『牧畜なら餌の補充、卵の収集、卵を産まなくなった鶏の処分まで全てお任せおっけーです。他も同様ですねー』
「ゴーレムさえあれば俺は何もしなくていい?」
『最初に必要に応じて幾つか設定するのを除けばその通りですー』
「それで牧畜なんかをすることになるのか?」
『なにぶんゲームですから、そこら辺は適当に』
「お、おう。それじゃ初心者牧畜セットにしておくぜ」
ハンターは唆されるままに初心者牧畜セットをポチった。
【351.槍士も箱庭で】
槍士も箱庭で交換品一覧を前に悩んでいた。初心者セットを見付けるまでは良かったが、どれにしたものか決心が付かない。
『あーあー、見てられませんねー』
槍士は突然の声に喫驚して周囲を見回した。しかし何も居ない。
『何かお悩みならこのナビゲーションシステム、通称ナビちゃんにお任せくださいー』
ハンターの時とは登場の仕方が違うナビちゃんだ。ここら辺、適当な魔王である。
対する槍士は無言で周囲を警戒する。
『やだなー。そんなにビクビクしないでくださいな。ここに敵なんて居ませんよ』
「む。そうは言われても姿が見えないのではな……」
『はぁー、仕方ありませんねぇ。姿形は飾りでしかないんですけどねー。見えるようにいたしましょう。どんな動物がお好きですか?』
「動物?」
『どうせならお好みの姿の方がいいじゃありませんか』
「……」
『さあさあ、何にします?』
「猫……」
『ガッテン承知』
ポンと音を立てて手に載りそうなほど小さな子猫が現れる。
槍士は一瞬目を見開いた後、顔を上気させて子猫を見詰めた。
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