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エピローグ
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王国軍に千名以上の犠牲者を出した戦いは、第一次迷宮戦役として記録に残された。出兵した兵士の殆どの命が失われた戦いだった事と共に、僅かに生き残った兵士達がハジリの町で強盗団として猛威を振るった事でも記録に残る。その強盗団はシルベルト伯爵領軍によって討伐されるまでハジリの町を恐怖のどん底に叩き込んだ事でも知られる。
第一次迷宮戦役にていち早く逃げ延びた国王は、一年の後、傭兵を集めると共に各領の領軍から兵士を徴集して二万の軍隊を組織し、再度開拓地を攻めた。第二次迷宮戦役の始まりである。
その、国王が暗殺されるまで続く戦いにおいて、計五回に及ぶ大攻勢、多数の奇襲や暗殺が実行された。だが、爆炎の魔女、水神の巫女、土竜の妖女、そして閃剣の鬼女と言う二つ名と共に四天王と呼ばれる事になる四人の女達によって王国軍は悉く殲滅され、二十万以上の兵士が失われた。
そして、迷宮と後に「始まりの開拓地」と呼ばれる開拓地は不可侵の存在として認識される事になった。
第二次迷宮戦役での無理な派兵により、治安は乱れて国内は荒れ、経済は破綻して貧困に喘ぎ、国力は弱体化して隣国からの侵略を許した。
だが、その他国の侵略からもシルベルト伯爵領だけは揺らがなかった。四天王が他国の軍をも討ち滅ぼしたのである。
◆
女は目を醒ました。思考の定まらないまま人の気配のする方へ歩いていく。その先に見たのは、酷く懐かしく感じる四人の人の姿だった。目頭が熱くなる。これはきっと夢なのだろう。天国なのかと一瞬考えてしまったが、天国だとは思いたくない。知らず嗚咽が漏れた。
「お、目が醒めたのかい。婆さん並みに寝坊助だったな」
「こりゃ、こやつに比べればわしは居眠り程度じゃ!」
「あっはっはっは、違いない」
「一体何を泣いているのですか?」
答えが返る事など期待していない口調で尋ねられた後、女は優しく抱きしめられた。
「泣かないで、ね?」
もう一人に女は頭を撫でられた。
女は心が満たされるのを感じた。
◆
ザムトは椅子にもたれ掛かり、微睡みの中にいる。既に為すことは何も無い。ただ無為に時を過ごすだけだ。
その横にエリザは控えている。このまま永い時を過ごすことに不満は無い。
第一次迷宮戦役にていち早く逃げ延びた国王は、一年の後、傭兵を集めると共に各領の領軍から兵士を徴集して二万の軍隊を組織し、再度開拓地を攻めた。第二次迷宮戦役の始まりである。
その、国王が暗殺されるまで続く戦いにおいて、計五回に及ぶ大攻勢、多数の奇襲や暗殺が実行された。だが、爆炎の魔女、水神の巫女、土竜の妖女、そして閃剣の鬼女と言う二つ名と共に四天王と呼ばれる事になる四人の女達によって王国軍は悉く殲滅され、二十万以上の兵士が失われた。
そして、迷宮と後に「始まりの開拓地」と呼ばれる開拓地は不可侵の存在として認識される事になった。
第二次迷宮戦役での無理な派兵により、治安は乱れて国内は荒れ、経済は破綻して貧困に喘ぎ、国力は弱体化して隣国からの侵略を許した。
だが、その他国の侵略からもシルベルト伯爵領だけは揺らがなかった。四天王が他国の軍をも討ち滅ぼしたのである。
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女は目を醒ました。思考の定まらないまま人の気配のする方へ歩いていく。その先に見たのは、酷く懐かしく感じる四人の人の姿だった。目頭が熱くなる。これはきっと夢なのだろう。天国なのかと一瞬考えてしまったが、天国だとは思いたくない。知らず嗚咽が漏れた。
「お、目が醒めたのかい。婆さん並みに寝坊助だったな」
「こりゃ、こやつに比べればわしは居眠り程度じゃ!」
「あっはっはっは、違いない」
「一体何を泣いているのですか?」
答えが返る事など期待していない口調で尋ねられた後、女は優しく抱きしめられた。
「泣かないで、ね?」
もう一人に女は頭を撫でられた。
女は心が満たされるのを感じた。
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ザムトは椅子にもたれ掛かり、微睡みの中にいる。既に為すことは何も無い。ただ無為に時を過ごすだけだ。
その横にエリザは控えている。このまま永い時を過ごすことに不満は無い。
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