つとむさん

はまだかよこ

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Ⅲ・地域デビューのつとむさん

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 はっぱやの『秋の収穫祭』を終えて、つとむは智恵の大好物、栗のポン焼きの袋を手に、ゆっくり歩いていた。
「あらっ、はっぱやさんの。今日はおつかれさま。新米が安かったわねえ」
 庭の手入れをしていた主婦に声をかけられ、しばらく立ち話に付き合う。少し歩いていると、三輪車に乗った子が
「はっぱやのおじいちゃん」
 と手をふってくれた。
「あら、栗のポン焼き、うちの子も喜んで」
 などと話すのに付き合う。歩きながら、つとむは苦笑した。
(通勤五分どころか、二十分はかかってるな)

 智恵と近所を歩いていても、あいさつをされることが多い。
「まあ、なあに。私よりよほど顔が広くなってるわね」
 そう言って、智恵は目を丸くする。会社勤めの頃は、近所のことなど、つとむの眼中にはなかった。
(川田勉、この歳で地域デビューか!)
 そう一人でにんまりした。野菜にも少し、くわしくなった。

 その日の夕食、智恵がつとむの前に小鉢を並べる。
「はい、はっぱやさんのうりずん豆のサラダ、こっちはルッコラの胡麻和え。私も知らなかったのよ。なかなかおいしいものね。お客さんに勧められるね」
 智恵は、せっせと栗のポン焼きを口に運びながら、目を細めて言った。

   つづく
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