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歴史と神戸 359
しおりを挟む『火垂るの墓を歩く会』に2月、4月と参加した。ちょっとした興味からだったが、深く心に残り、そのことを短いエッセイにまとめた。
(何か書き留めておきたい!)
と気持ちが強く動いたのだ。
書き終わって、
(主催者の方に一応読んで頂くのがマナーだよね。拙いもので恥ずかしいけれど)
迷いながらも、主催者の方に郵送した。二回のツアーでお世話になった辻川氏は、深い知識をひけらかせない温厚なお人柄で、お気を悪くなさらないだろうと、勝手に決めつけて。
すぐにお返事のメールを頂き、しかも、
「神戸史学会の『歴史と神戸』にレポートを書くので引用させていただけないでしょうか」
とのことだった。びっくり仰天したけれど、承諾のメールを送信して、パソコンを閉じた。
(でも、あれ?『歴史と神戸』ってどこかで聞いたような見たような? 何だったかしら)
そう思いながら、椅子の背もたれに体を預けた。目の前には夫の本箱がある。その二段にズラーっと並んでいるではないか! お互い相手の趣味には無関心できたので、何年もの間、気に留めていなかったのだ。目をぱちくりさせて、夫に声をかけた。
「ねえ、この本、ずっと買ってるの?」
「なんや、急に。そやで、これはええ冊子や。会員制で隔月発刊。創刊号から全部持ってるで」
そう鼻高々と言いながら本箱を開けると、
「これこれ、ガリ版刷りの別冊やで、すごいやろ」
「ふーん、昭和の香りやな」
「それでも、どないしたんや? 急に」
「今度ね、これに載るんだって、私の『火垂るの墓』のエッセイが」
「ええーーー!!!」
すっとんきょうな声をあげた夫は、それでも顔をほころばせた。
そして、そのあと『歴史と神戸』のうんちくが続いた。さすがに私も興味が出て、たくさんの冊子を手に取りながら耳を傾ける。
夫が会員になったのは、三十年くらい前。昔のことで忘れたそうだ。趣味の『播磨風土記』的な古本集めをしているときに、度々この本を目にし、手に取った。いい内容だし、会員になって定期的に送ってもらおうと思った。
そしてそこから『コレクター魂』が激しくうずき、昭和37(1962)年の創刊号から全巻を集めようと決めたそうだ。
あちこちの古本屋を巡って一冊ずつ手に入れていった。三宮センター街にあった『後藤書店』に座り込んで探したことも今は懐かしいとか。
ただ、1983年4月発行の117号がどうしても手に入らず、県立図書館でコピーを取った。しばらくして『神戸史学会』からバックナンバーが発売になり歓喜して買ったとか。
そういう冊子たちが並んでいたことに、私は全く関心を払ってこなかった。
辻川氏が地域委員であることも分かり、編集委員の大国氏からメールも頂いて恐縮した。
夫は
「10年くらい前から『暑中見舞い広告』出してるんやぞ」
とか自慢そうに言っていた。
(私の拙い文と一緒の号でよかったね)
私も笑いながら言った。
そして今日、めでたく『359号』が届いたのである。
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