ぴかぴかレンズ

はまだかよこ

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ぴかぴかレンズ

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 かなり以前から両目とも白内障と乱視との診断を受けていた。
すぐに手術という切迫した状態ではなかったので、まあまあと先延ばししてきた。

 最近、駅の近くの通いやすいところに眼科医院が開院した。ちょっと診てもらおうかなと軽い気持ちで行ってみた。

  2月10日 
 広やかな待合室で当たり前だが、何もかも新しい。
いろんな器械での検査の後、診察室に呼ばれた。
親しみやすそうなお若いかっこいい先生だ。
『確かに白内障ですね。乱視もあります』
「私、中秋の名月が二つ見えると自慢しているんですけど、誰も羨ましがらないんです」
『子どもの時から視力とかよかったのではありませんか?』
「はい、目だけがよかったんです」
『二重に見えるのはご不自由ですよね。それにしても、あなたは面白い人ですねえ』
「私、目薬さすのがすっごい苦手なんですけど」
『大丈夫ですよ。二階から点すわけではありませんから。僕、学生の時、実験したことがあるんですよ。二階から点せるかどうか』
「先生の方がよほど面白い方ですよね」
ぐずぐずしていないで、体力がまだあるうちにと手術していただくことを決めた。

  3月26日
 たくさんの検査の後、説明を受けレンズを決める。
隣で検査を受けている(私が言うのもなんだが)かなりの高齢の男性。
検査がなかなかうまくいかないようで時間がかかっていた。
(やっぱ決めてよかったな。歳年とればとるほど大変になるもの)
つくづくそう思った。

  4月5日 
ついに来た! 目薬をきちんと点さねばならぬ日が。
薬局でていねいなリーフレット≪上手に点眼するために≫をもらったが、これを読んでうまくいくならこの歳まで困ってはいない。でも点さねば!

  4月8日 
 右目の手術
受付を済ませると、時間をおいて目薬、何度も何度も。よく溢れないなと感心する。
案内された小さな部屋でガウンを着る。ドラマでよく見るあれだ。もっともとても薄くてきれいなブルー。なんかうれしい。おそろいのキャップも被る。
看護師さんの穏やかな声。
『とめるのにお顔にテープはりますね。はがすの、ちょっと痛いかもしれません。ごめんなさいね』
「全然大丈夫です。面の皮厚いので」
うふふと笑われる。どのスタッフの方もまなさん丁寧でやさしい。
ゆったりとした大きな椅子で休んでいると
『最後の目薬です。痛み止めと麻酔ですからね』
いよいよ手術室へ。
うわー、まぶしい位明るい部屋
先生や看護師さんなどがおられる。
ベッドのような椅子に座る
『顔を覆いますね』
手術する右目だけがスケルトンで顔全体が覆われる。
そして、ピカー!!!
まぶしいと思った途端、何やら怪しい白い丸が三つ現れる。
なんだ、これは!地球外生物か!
その三つが、少しだけ動き回る。いや、むしろUFOか!
がんばるぞ! あれに飲み込まれてはいけない。宇宙に放りだされるぞ!
ビチャー、ドボッ、ビチャー
水のようなものが目を流れる。
何かピタッと張り付いた。きっとレンズだ。
宇宙を漂っている割には冷静な自分に安堵する。
体がつっぱっていると、どなたかが手をやさしく握って下さった。こわばりが少しほどけてホワットなる。
『終わりましたよー。お疲れ様』
先生の明るい声が聞こえる。
フーやれやれ、宇宙からの生還。
右目には大きな眼帯。明日の朝まで『ゲゲゲの鬼太郎』だ。
リカバリールームのふわふわのソファーで休む。
迎えに来てくれた夫の車で帰宅。
痛みはないが、何もできないのでひたすら眠る。

  4月9日
「昨日はお世話になりました」
『いや、うまくいきましたよ。ご安心ください』
にこやかな先生に
「あのうー、手術中ずっと見えてた白い丸のへんなの。私、地球外生物と戦っていたのですが、あれは何ですか?」
『うははあははは。あれは手術用の顕微鏡のレンズです。アハハハハハ』
また目薬が4つも処方されて、まだまだ試練は続く。

  4月11日
 ≪頭浸浴≫というサービスを受ける。
ずっとシャンプーができないので、頭皮と髪をきれいにしてくださる。
しかも無料。
スタッフの方もやさしく丁寧で、王妃になった気分だった。
あー気持ちよかった。
さあ、次は左目だ。がんばるぞ!
不安だけど、二回目だし、うん、大丈夫。

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