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神を裏切り貴方と繋ぐ
Sー32、枯渇の前兆
しおりを挟む早く、と引っ張ってくる玲菜の手を握って、数秒考えてから、首を横に振る。
「駄目だ」
「は? なんで?」
あっちでパパが呼んでるんだよ、と玲菜が指差す先は、何度見ても闇だ。
真上には真紫の太陽が煌々と光っているのに。何も無い闇が広がる向こうに、誰かが、それも、普通の人間である玲菜の父親が居る筈が無い。それに。
「おーい」
「どこだ~」
「返事しろぉ」
「迎えに来たぞー」
何度も何度も、聞こえてくるくせに、一向に近寄ってはこない、あの声は。
「玲菜がパパの声だって言ってるアレ、俺にはずっと、染井川さんの声に聞こえてるんだよ」
そう。ずっと、玲菜が父親の声だと言い張るあの声は、俺には染井川さんの声に聞こえている。
言われた意味が分からなかったのか、玲菜は変な顔をして、そして数秒してから震え出した。
「なにそれ、笑えない」
「だよな」
「パパの声、毎日聞いてるんだよ? あたしが間違うはずないじゃん」
「俺も染井川さんの声を聞き違えるはず無いんだよ」
ぽすぽすと玲菜の肩を叩き、彼女が握り締めていた俺のコートを彼女の肩に掛ける。守るみたいに腕の中に抱き寄せて、俺と玲菜の周りに六方の壁を作った。破邪を重ね掛けして、暴れてホームの下に降りて行こうとする玲菜に身動きを封じる紋を掛ける。
「なんでっ……、パパ、パパ……」
「大丈夫」
すぐ足元まで百足の群れが溢れ、とうとう玲菜が泣き出した。玲菜の頭にすっぽりとコートを被せ、周囲が見えないようにしてやる。
百足は壁の紋をよじ登り、食い破れる端を探すみたいに這い回り出す。視界いっぱいに虫の多足が占め、気色悪さに目を閉じた。虫の脚がカサカサと音を立て、サラウンドだすげーな、と努めて呼吸を落ち着けた。
「大丈夫だから」
染井川さんが、きっとすぐに来るから。
恐怖でしゃくりあげる玲菜の背中をコート越しに撫で、もう片手でまたあの紋を描く。また光った感じがしたから薄ら目を開けると、俺の指の周りでくるくると回っていた。
なんだろう、とそれを掴んでみたら、掌の中で急激に光り出した。
思わず目を瞑って、開いた時には、周囲は昼間のホームだった。
「……え」
抱き合うみたいな格好の俺と玲菜に、周囲の人たちの視線が刺さる。慌てて見回すと、不愉快そうな表情で俺を見る染井川さんと目が合った。
「染井川さ……」
「人たらしが」
「へっ」
ツカツカと革靴を鳴らして寄ってきた染井川さんに拳骨を落とされ、頭を押さえてフラフラと数歩退がった。目の前に星が散ってる。そんな本気で殴らなくても。
「玲菜!」
「パパ……ッ」
俺のコートを被ったままの玲菜と、父親らしき男が感動の再開をしているのを横目に、俺はねちねちと染井川さんに叱られる事になった。
「壁の紋でバリアに出来るのが分かってんなら、早めから作っとけ。なんでギリギリに、しかもあんな小せぇの作った。破邪も弱い。あと数個掛けるかギリギリまで霊力注ぎ込んで堅くしろ。割れたらどうするつもりだったんだ、大体なぁ……」
染井川さんの説教は限り無く、とっくに泣き止んだ玲菜が哀れなものを見る目になっても続いた。それを止めてくれたのは、玲菜の父親だった。
「あ、あの、娘は無事に帰ってきましたので、どうかその辺りで……」
「はぁ……、この度は、うちのが至らず、お嬢さんを危険な目に遭わせてしまい……」
「いえ、いえ、本当に、帰ってきただけで」
お互いに頭を下げる大人達を前に、ぐぅ~、と盛大に俺の腹の虫が鳴る。即座に染井川さんに睨まれるが、我慢出来るものでもない。
「お前……」
「いや、反省してても腹は減るじゃん?」
夜中から頑張ってたんだぞ、と口を尖らすと、俺を睨む染井川さんがやっと少し苦笑して肩を竦めた。
「それでは、今回はこれで……」
「急な頼みだったのに、すぐ来て頂けて本当に助かりました。有難うございました」
玲菜の父親は何度も染井川さんと俺に頭を下げ、玲菜を伴って駅から出て行った。その背を見送って、しばらくは車での移動になるだろうな、と玲菜の精神的な傷が小さくあるように祈った。
「行くぞ」
彼らが見えなくなるまで待ってから、染井川さんも駅の外へ歩き出した。すっかり増えた人の中を、彼のスーツの背中を見失わないように追いかける。車へ戻って乗り込むと、料金を払ってから運転席に乗り込んだ染井川さんが大きな溜め息を吐いた。
まさかまた説教の続きか、と身構えるのに、染井川さんは何も言わずに車を出した。
「……」
「……」
説教は嫌だけど、無言も苦しい。
何かしら弁明した方がいいかと考えるのだが、動く車に揺られているうち、睡魔に襲われて瞼が重くなってくる。
「あのさ、二回目に染井川さんが電話してきた時さ……」
「電話が繋がったのは一回だけだぞ」
線路に降りろと言った意味を教えて欲しいと思ったら、そもそも二回目は染井川さんでは無かったらしい。降りなくて良かった、と今更背筋が寒くなった。
「ごめん、少し……寝る……」
耐え切れずなんとか宣言すると、横から染井川さんの腕が伸びてきて、俺の頭をわしわしと撫でた。あ、良かった。俺、生きて帰ってきたんだ。染井川さんの体温にひどく安心して、そのまま微睡に落ちていった。
「あ、ねぇ、これ染井川さんのやつだよね?」
不便だから時計が欲しい、と言ったら、仕事の無い日に関東のショッピングモールに連れ出された。
外出する用に何着か買っておけ、と言われて適当な店で服を買ってもらって、ブラブラ見て周る中に時計屋があったから入ってみたところで、染井川さんが使っているのと同じ時計を見つけたのだ。
「そうだったか?」
「そうだよ、前に机の中にあるの見たし」
大体は机の一番上の引き出しに仕舞われていて、普段着けているのは見た事が無い。仕事に行く前に着けているのを何度か見た気がする。
俺の横からショーケースを覗き込んだ染井川さんが、覚えてねぇな、と首を傾げる。
「ちゃんと時間が分かりゃなんでもいいからなぁ」
あまり拘りが無いらしい染井川さんは、興味も無いみたいですぐに目を逸らして壁の方の掛け時計を眺めだした。
「じゃあ俺もこれにしよ。……って、うわ高っ! ゼロの数やばっ」
染井川さんが使っているなら見易さに問題はないんだろうと、値札を見て顔が引き攣る。六桁? 無い無い。時間確認するだけにこの値は無い。
いくら神子のうちに荒稼ぎしてきたとはいえ、俺の金銭感覚は庶民のそれだ。別の店行こう、と染井川さんに声を掛けて店を出た。いくつか他の店も見て回ったが、どうにもしっくり来なくて、結局買わずに諦めた。
「飯はどうする」
「食べるに決まってる」
「どこでだ、って話だよ」
食わねぇなんて選択肢がお前にあんのかよ、と肘で小突かれ、無いよ、と笑う。
平日でもモールの中は割りかし混んでいて、早めに食べようとフードコートに足を運んだ。
ここなら俺に合わせず染井川さんも好きな物を食べられるだろうと思ったのだが、彼は広がるテーブル群を見回して「落ち着かねぇ」と不満を漏らした。
「えー? でも、いつも俺に合わせてばっかりじゃん? たまには染井川さんも好きな物食べたくならない?」
「ならこんなとこじゃなく店入るぞ」
俺の希望でいいなら、と別方向に歩き出した染井川さんに付いていったら、モールの敷地の外の定食屋だった。
座敷で足を崩した染井川さんを見て、確かにあのテーブル間隔だと狭苦しく感じるだろうな、と少しイラッとくる。俺だって、きっともう少しは伸びる筈だ。というか、しばらく測っていないうちに伸びたかもしれない。
運ばれてきた日替わり定食を、内心で染井川さんの方が美味しいな、と思いながら黙々と箸を進める。
「お前、誕生日はいつだ」
不意に話し掛けられて、煮付けた蒟蒻を摘んで止まる。
「えーと、一月二十三日」
「過ぎてるじゃねぇか!」
「え、そうなんだ」
冬に入ったからそろそろなのかなー、と思っていたが、どうやら過ぎていたらしい。カレンダーもテレビも無い染井川さんの家では月日の流れが曖昧で、正確に数えられる筈もない。というか、年明けてたのか。
指折り数えて、染井川さんに拉致られてから五ヶ月以上過ぎていたのを知る。最初の三ヶ月くらいは毎日が長かったけれど、外に出られるようになってからはそれこそ朝から晩まで仕事に連れ回されていて、毎日のサイクルがめちゃくちゃ早い。
誕生日が過ぎてたって言われても、ああ、じゃあ十七才になってたんだなぁと思うだけで、特に感慨も無い。
ご飯を食べ終えて、車の鍵を渡された。
「先戻ってろ」
「はーい」
この人、本当に俺が逃げると思ってないのかな、とチラッと脳裏に悪戯心が湧く。戻ってきて俺が居なかったら、と想像して、やはりというか、項垂れて黙って泣く姿が脳裏に浮かんで胸糞悪い。駄目だ。笑えない悪戯はしたくない。
素直に車に戻って中で待っていると、十数分してから染井川さんは戻ってきた。
「手ぇ出せ」
「ん」
言われた通りに出した掌に、時計が乗せられる。さっきの、染井川さんのと同じ奴が。
「は……」
金額を思い出してビビる俺に構わず、染井川さんは固まる俺を気にした風もなくシートベルトを締める。
「え、いや、あの」
「なんだ、別のが良かったか」
「へ? いやそうじゃなくて」
あの値段の物、素手でこのまま持ってきたよな、この人。目を白黒させる俺を訝しげに横目で見て、染井川さんはようやく思い至ったみたいに「まさか」と呟く。
「箱も取っとけとか言うんじゃねぇだろうな」
オカンか、と言われて、もうどこから突っ込んだらいいのか途方に暮れた。
「ありがと……」
「ああ」
着けてやる、と染井川さんが言うので手首に巻いてもらって、凝った造りでもない、ごくごくシンプルな盤面を見下ろして内心で「これが六桁か……」と納得しきれない思いで見つめていると、俺の思考を読んだみたいに染井川さんが苦笑する。
「俺がこれ選んだのは、こいつがゼンマイ式だからだ」
「ゼンマイ? 巻くの?」
「ああ。暫く使わないと止まっちまうから、仕事の前には合わせろよ」
それって面倒なんじゃ、と顔を顰めた俺の眉間を押して、染井川さんが「最後まで聞け」と笑う。
「電波式と違って磁場にも霊場にも干渉を受けねぇんだ。それに、電池が無くてもネジ巻きゃ半永久的に使える。買い替えの手間が掛からねぇんだから、何本も買う必要も無ぇだろ」
だから値段に見合う価値を見出したのだと説明され、理解出来るものの、もう少し安いのもあったんじゃないかと納得いかない。
「……俺と揃いは嫌か?」
「そうでもなきゃ、返してきなさい! って怒ってるとこだよ」
肩を竦めて文字盤を撫でると、染井川さんは少し黙ってから「そうかよ」と言った。
……あれ。もしかして俺、お揃いで嬉しい、って言った気がする。うわ、気付かれてませんように。顔が熱くて、染井川さんに見られないように俯いた。
すべすべしたガラスの文字盤を撫でているうち、段々眠くなって、気が付けば寝入っていた。
車は高速に乗って、二時間くらいで家まで戻ってきた。いつも帰宅途中で寝てしまっているから、家がどこにあるのか看板を見忘れてしまう。山に入ると相変わらずの悪路でかなり揺れて、それで窓に頭をぶつけて起きた。
ぎゅ、と握った手の中に生温かくなった時計があって、改めて喜んだらいいのか困ればいいのか悩む。
「起きたのか」
「ん~……」
曲がっていた体を起こして座り直すと、すぐに気付いた染井川さんが横目で俺を見た。笑いが堪えきれないみたいに唇の端を上げて、上機嫌だ。
「機嫌良いね」
「そりゃあな」
家に着き、車から降りて家に入るとまた、ただいまの声がハモった。
「……嫁にしたみてぇで、たまらねぇな」
「うわ、妄想酷すぎ」
「うるせぇ」
照れ隠しに揶揄ったら肘で小突かれて、「そういえば」と染井川さんが思い出したように俺のコートのポケットを指し示す。
「お前、そん中に変なもん入れたままだろ」
「ポケットの中?」
何か入れてたっけ、とポケットに手を入れると、ビニール袋の感触があった。ああ、そういえば電車で異界に入った時に、向こうで貰った飴を入れたままだった。
取り出してみて、透明の袋の中を見て放り出した。
「ひやあああああっ」
叫んで染井川さんの後ろに縋り付くと、彼は馬鹿にしたように俺を見下ろして笑う。
「なんだなんだ、さっきまで平気でポケットの中に入れてたくせに」
「だっ……、だっ、だって、アレッ」
俺が指差す先に落ちているビニール袋の中には、飴では無く、黒い多足の虫が入っていた。しかも、動いている。動いているのだ。
「そ゛い゛が゛わ゛さ゛ん゛な゛ん゛と゛か゛し゛て゛!!!!」
「すっげぇ顔」
縋り付いて半泣きの俺を見て染井川さんはウハハハ、と大きな声で笑い出して、悔しいが彼に頼るしかない。
あの仕事から、もう何週間も経っているのに。なんで生きている。なんで気付かなかった、俺。
ビニール袋の中で虫が動いてカサカサ音がして、木登りするみたいに染井川さんに登った。頭に腕を回し、腰に足を回して抱き着く。地上に足を下ろしているのすら嫌だ。
「やだやだやだ、俺あの虫キライ、もう見たくない、お願いだからどうにかして」
「……かわい」
「あんた俺ならなんでも可愛いとか言ってない!?」
ぎゃんぎゃん喚く俺の背中を撫で、やっと笑い止んだ染井川さんは虫の袋の方へ近付いていく。
「ひぃっ、や、やめっ」
「大人しくしてろ、すぐ終わっから。……二階のアレ、まだ見たこと無いだろ?」
袋を拾った染井川さんは、そのまま階段の方へ歩いて行く。
普段は扉が閉じられていて、階段がある事すら忘れてしまっているが、二階があるのだこの家は。確か、来た当初に登ってみようかと覗き込んだのだが、カリカリと何かを引っ掻くような音に、ネズミでも住んでいるのかと思ってやめたのだ。
「あ、アレ、って……?」
あの不気味な音の正体は、ネズミでは無かったらしい。染井川さんの言いぶりでは、おそらくは良いものでは無い。
染井川さんが扉を開くと、彼に抱き着いたままの俺の背中にひんやりとした風がぶつかってきた。降りろ、と言われて、床に足をつく。
階段の上を覗いてみると、まだ昼間で外は十分明るい筈なのに真っ暗だった。
カリカリ、と引っ掻く音がする。何がいるんだろう。染井川さんが居る事で安心して、もっと上を覗いてみようと上体を階段の中に入れようとしたところで、襟首を掴んで止められた。
「……お前、霊視は入れっぱなしにしとけ。死ぬぞ」
「え?」
染井川さんは、手に持った袋を階段の方に投げ入れた。二段目くらいに落ちたそれに、瞬時に穴が空いて中の虫がバラバラに引き千切られてから一つずつ消える。二秒もしないうちに、脚の一本も残さず。
おそるおそる霊視をオンにすると、目の前に何かがいた。人間の腰から頭が生えているようなその『何か』は、白目の無い黒い目で俺を見ていた。口らしき部分から、虫の脚が何本も覗いている。
ぺ、とその脚をこちらに向かって吐かれて、悲鳴も上げられずに飛び退いた。
「……っ、……! ……!!!!!」
目の前にいるそれを指差して、染井川さんを見る。
「呪い返し用に二階に置いといてんだけどな。割と強力で、滅多に餌やらなくても消えねんだよなぁ」
「な、……なん」
バン、と階段へ続く扉を閉めてから、染井川さんのワイシャツの襟首を掴んで前後に振る。
「なんてもん飼ってんだよ! 俺、前にここ登ろうとしちゃったぞ!?」
「生きてて良かったな」
「ほんとにな!!」
思い出すだけでゾッとする造形の化け物だった。もう二度と開けないぞ、この扉。
「お前、もう神子じゃねぇんだから霊視入れたまま生活するのに慣れろ」
まさかこの家の中で死に掛けると思わなかった。染井川さんの事だから、即死は免れるようになんらかの守りは掛かっているだろうけれど、半死半生の傷くらいは負ったかもしれない。
「少し眠ぃな」
「昼寝する?」
スーツを脱ぎに行った染井川さんに先んじて、俺の部屋に行って今日は畳んで部屋の隅においやっておいた布団を敷く。ストーブに点火して、ヤカンに水を入れに台所へ行くと、染井川さんと廊下ですれ違いさまに何故か抱き締められる。
「あの、染井川さん?」
「一緒に寝るだろ?」
「寝るけど、水は入れてこないと喉痛くなるよ」
「だな」
後ろから抱き締められたまま二人羽織みたいに、ヤカンに水を汲んで部屋に戻る事になった。
「俺も着替えたいんだけど」
「ん」
コートを脱がされ、ハンガーに掛けてから鴨居に引っ掛けてきた染井川さんが、また俺を抱き締めて布団に転がる。すんすんと頭の匂いを嗅がれて、気恥ずかしくて肩を丸めた。
「逃げんなって」
「染井川さん、前より遠慮なくなってきたよね」
「だってお前逃げねぇし」
ちゅ、ちゅ、と額にキスされて、くすぐったさに体をよじりながら掛け布団の中に潜る。追ってきた染井川さんの唇が、額から頬に、頬から首筋に落ちてきて、下着を捲って胸や腹も口付けられる。
「ちょ、染井川さ……ん」
あんまり下の方を触られるとむずむずしてきてしまう。染井川さんの髪を撫でると、ぺろ、と乳首を舐められた。
「んっ」
甘い痺れに、ぞくぞく、と背筋が震える。脇腹を撫でられて、胸を舐める頭を腕の中に抱き締めた。染井川さんの頭は、俺と同じシャンプーの匂いがする。
「静汰、お前は……俺が死んだら、幸せになれよ」
「……は?」
せっかく幸せな気分だったのに、不吉な事を言われて台無しだ。
「そういうのやめろって。まだ死んでないんだから」
「だから、死んだら、だ。あのガキんとこ戻って、幸せにしてもらえ。あいつなら、俺とヤッたくらい気にしねぇで……」
「やめろってば!!」
たまらず叫んだ。
なんでそんな事を言い出すのかと、染井川さんの頭を力任せに抱き締める。腕の中の染井川さんが微かに震えだした。嘘だろ、泣いてるのかよ。やめてくれよ。染井川さんは、俺の好きな染井川さんは、……一人で泣く人だ。俺の腕の中で泣いてくれる染井川さんなんて、そんな、──好きを通り越して、愛してしまうじゃないか。
「絶対、死なせない。染井川さんが生きてられる方法、絶対に俺が見つけるから」
だから泣かないで。
何度も何度も染井川さんの頭のてっぺんに口付けて、そのうち彼は寝てしまったようだった。
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