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しおりを挟む「……っから、……で、なので」
「ハア!? 声ちっせぇよ、聞こえねぇよ兄ちゃん!」
ハゲ散らかした白髪の爺さんが、めっちゃ叫んでる。クソが、うるせぇ店なんだからしょうがねーだろうが。俺の声が小さいんじゃなくてBGMと目の前のこのクソ台がうるせぇんだよ。
「だから、……は、……で、使えな……でして」
「あああもういい! 別の店員呼べ!!」
何度、目の前の台は硬貨専用でメダルでは遊べないのだと説明しても理解しない耳の遠い爺さんに溜め息を吐く。本当、底辺の店には底辺しか来ないな。
「ッだお前、その態度は! 客だぞこっちは!」
「はぁ……」
ドン、と胸の辺りを突き飛ばされ、老人らしからぬその力にフラついたところで、やっと店長が走ってくるのが視界に入った。
おっせーよ。女のバイトが絡まれてたら速攻行くくせに、俺の時は放っておきやがって。どうせ四六時中事務所の監視カメラ見てるのにトロいんだよクソ店長。
「申し訳ありませんお客様、どうかなされましたか」
「どうもこうも無ぇよ……」
齢三十を前にこのゲームセンターの店長である久来石は、細縁の四角い眼鏡を直しながら俺と爺さんの間に割って入ってきた。
人好きのする穏やかな笑みを浮かべ、しかし俺を後ろ手に押しやって小さな声で「事務所」と客の見えない所に下がれと命令してくる。
舌打ちするのをなんとか我慢して、踵を返して早足でその場から逃げ出した。
背後では、さっきまで耳の遠かった厄介な爺さんが、店長の説明を受けて「そうだったのかい、すまんねぇ」なんて謝っているのが聞こえた。
『影間また客と揉めてんだけど』
『マジだりーわあいつ』
『ちょっと、インカム入ってるよ』
『うわ』
『草』
耳に装着したインカムから他のバイトが俺を馬鹿にするのが聞こえて拳を握る。
クソクソクソ、全部クソだ。クソばっかりだ、この店は。何が草だ。陽キャが陰キャの掲示板発祥のネット用語使ってんじゃねぇよ。なんで草なんだかも分かってねぇくせに、流行ってるだけのニュアンスで言葉使いやがって低脳共が。
バックルームへの扉を体当たりするみたいに押し開けて、店員用の細い通路を通って事務所の扉を開けた。
店長用と事務用と、アルバイトが勤怠チェックするパソコンが置いてある机が三つ並んで、余ったスペースに応接用のソファセットが置いてある。
ちょうど休憩中のバイトが居なくて少しホッとした。
どうせまた小言を言われるんだ。あの店長、物腰柔らかな癖に、他のバイトの前でも子供を叱るみたいに優しく叱責してきやがる。少しは俺の体面とか考えてほしい。
ソファにどかっと座って、片耳のインカムを外した。
ゲーセンの店内はいつでも耳が壊れそうに煩く、その音の中で他のバイトの指示も聞かなきゃならないから音量はいつでも最大だ。絶対耳悪くする。っていうか、客も店員も耳悪いに違いない。
脳内が怨嗟でいっぱいになっているうち、事務所の扉が開いて店長が戻ってきた。
根本二センチくらい黒くなった金髪のもみあげあたりを指で掻いてから、眼鏡のブリッジを押して位置ズレを直して、俺を見て盛大な溜め息を吐く。
「今月で何回目か、分かってますか。影間くん」
「……三回目くらいですか」
「八回目です」
もう一度大袈裟に溜め息を吐いて、店長は俺の前のソファに腰掛けて膝の上に肘をついて指を組んでしきりにそれを組み替えた。
鼻が鋭く高くて、目が小さくてやっぱり鋭い。いつも緩く微笑んでいるから、キツネのお面を連想させる。顔は細面の優男なのに、身体はがっしりしていて、たぶんジムとかで鍛えてるタイプだと思う。クソ客が多い店の店長してるだけあって、真顔だと結構迫力がある。
「もう少し声を張るのが、なんで出来ないんでしょうねぇ……」
「これでも一番大きい声出してるんですが」
そう。俺はちゃんとやってる。
聞こえない客と、聞き取れない音量で掛かってる店内BGMとゲーム筐体の音が悪い。
ふんぞり返りはしないものの、俺は努力している事を主張した。
店長は俺の顔をじっと見て、珍しく笑みを消して指同士を叩いている。
「お客様に聞こえなければ、どれだけ努力しているつもりでも意味が無いんですよ。それくらい、頭の良い影間くんなら分かってくれると思ってたんですけどねぇ」
有名大卒というのに騙されましたねぇ、と続けられて、唇を噛んで俯いた。
経歴は嘘じゃない。けれど、履歴書に馬鹿正直に書くべきじゃなかったと受かってから後悔していた。
高卒どころか中卒までゴロゴロ居るこの職場では、大卒というだけで仕事が出来ると期待されて、そして俺がマトモに接客出来ないと知るや馬鹿にしてきて、今ではバイトの中で最底辺の扱いを受けている。声だけ馬鹿でかくて『接客用語』の漢字すら読めない十八才の中卒バイトより下なのだ。
それでも。それでも、俺はここを辞める訳にはいかない。
ここを辞めたら、アパートの家賃を払えない。
せっかく有名大をダブる事なく卒業出来たのにマトモな会社に就職出来なかった俺は、そのせいで実家から勘当されたのだ。実家には優秀で大病院に勤める兄も可愛い妹も居るから、俺は晴れて兄のスペアとしての価値すら無くなったのだろう。
だから、生きていく為にはこんな底辺でも働かなくてはならない。
卒業後に五件面接を受けて全滅で、六件目のここで人の良さそうな店長に「明日から働けるなら雇ってもいいですよ」と言われてなんとか拾ってもらったのは有り難かったが、どう考えても頭脳労働派の俺には適していない職場だった。
「……」
すみません、とか謝ってしまえば、きっとこの店長は許してくれるんだろう。けれど、俺は頑張っているのだ。それを汲んでもらえないと、俺だって頑張り甲斐が無い。
黙って俯く俺に、店長はまた溜め息を吐いた。
いつもと違う空気に、もしかしたらクビになるかも、と首筋をヒヤリとしたものが通る。
それは困る。せめて、次のもっと良いバイト先を決めてから辞めたい。それまでは、こんなクソ職でもしがみつかなければ。
「あの……」
「今日の夜ね、親睦会の飲み会あるんですけど。影間くん、聞いてます?」
プライドより明日の飯を優先して頭を下げようとしたところで、急に話題が変わった。
飲み会なんて聞いてない。俺に話を振る奴なんていないの、店長だって気付いてるだろうに。
「俺が金出しますから、貴方も参加しなさい」
マジかよ。
うえ、と嫌そうなのを顔に出してしまって、それを見た店長の顔がさすがに歪んだので、慌てて首を縦に振って頷いた。
バイトを終えて、忘れたフリをして逃げようとしたのに店長に捕まった。
今日の親睦会は、十三時から閉店二十二時までのロング組と十八時から閉店までの夜番組だけらしい。ロング組の俺が関わる事の多い面子だから、こういう機会に仲良くなっておきなさい、と諭されて、ゲーセンから徒歩数分の居酒屋まで引き摺るように連れて来られた。
明日は機材メンテナンスで十七時開店だから遠慮しないで飲んで、と言われたが、そもそも俺は酒を飲まない。
少食で肉もあまり食べないから、ジャンクフードだらけの居酒屋なんて食べる物すら無いだろう。帰りたい。
背後を店長に固められ、寂れた外見の居酒屋の引き戸を開けて、こちらを見た視線達に息を詰める。
細める目。不愉快そうに引き結ばれる口。誰かが小さく、うわ、と言ったのが聞こえる。
泣きそうになるのを呼吸を止める事で耐えて、俯きがちに中へ足を踏み入れた。
小さな居酒屋の中は、六人座れる座敷が一つと二人席が二つとカウンター席のこじんまりとした作りで、うちのバイト共と常連らしい男性客一人だけでもう満杯の様相だった。
二人席はもう満席で、どうやら店長と俺は奥の座敷に座るしかないらしい。逃げ場の無さに歯噛みした。
ドアを閉めるフリで、店長を店内に入れてから彼の影に隠れるようにして細く長く息を吐く。
大丈夫。所詮はクズ共だ。クズの何人に嫌われようが、俺の知った事じゃない。俺はそんな事で傷ついたりしない。
自分に言い聞かせ、いつも通りの涼しい顔を作った。
「店長遅かったですねー」
「お前達が締め作業待ってくれないから、影間くんとやってたんですよ」
「さーせんw」
「店長来たから乾杯しようぜ~。ルリちゃん、ビール九人分~」
どうやら他のバイト共はよく来るらしく、店員の若い女の人を名前で呼んで注文している。
靴を脱いで座敷に上がると、談笑していた女共がこちらをチラッと横目で見てすぐに逸らした。確か夜番の大学生だ。
こいつらも、入った当初は俺の卒業校名を聞いてキャーキャー言っていたくせに、今や挨拶すらしてこない。俺だってしないけれど。
店長が一番奥の座布団に腰を下ろし、俺がその右隣に座ると、俺の右の女が俺から少しでも離れたいみたいに座布団ごと端に動いて、それを見た正面の男達が馬鹿にするみたいに声を出さずに笑った。
こんな所、来たくなかった。死にたい。いや違った、死ね、だ。死ね死ね死ね。折れるな俺。
もう料理はあらかた並べられていたが、大皿に盛られたものをクズ共とつつくなんで御免だし、やはりというか食べたい物も無かった。
一杯目のビールは我慢して飲んで、その後はソフトドリンクで凌ごう。
「えーと、はいじゃあみんなー」
店長が少し声を張って、パンパン、と手を叩いて注目を集めた。
俺の左に座っているから、どうしても他のバイト達の視線は俺を過ぎていく。
透明になりたいと心底思う。
出来るだけ背後の壁に背中をつけて、周りの視線から逃げたかった。
「まずは今日シフトの方々、お疲れ様でした。休みだった皆さんも、いつもよく働いてくれてありがとうございます。今働いてる方は皆、当日欠勤がとても少ないのでとても助かっています。ですが、何人か遅刻の常習になりつつあるので、そこは気を引き締めて頂けると。……クレーム数は先月より純増していますが、人数自体は減っています。その調子でお客様最優先を心掛けて下さい」
チクリと嫌味を言われ、一斉に視線が俺に集まるのを素知らぬフリでやり過ごす。
クソ店長。俺がクレーム数増やしてるって言いたいのかよ。そうだろうけど。
店長が話している間に店員がビールを運んできて、おかげで俺への蔑みの視線が散って有難い。
「明日は入り時間が十七時と遅いので、昼番の方はお休みで夜番の方の入り時間が一時間早いので、それだけ気をつけて下さい。それでは、アルコールは飲み放題ですが、くれぐれも倒れない程度に! 乾杯!」
形ばかりビールジョッキを持ち上げ、店長の音頭で店長とだけグラスを合わせた。
俺の目の前を横切るように差し出された右隣の女のジョッキが、店長と当たってカキンと高い音を立てる。流れで俺のと合わせていこうとされて、もう引っ込めた後だったのですれ違ってしまった。
あ、と固まる。
どうしたらいいんだ。自分から合わせればいいのか? でもそれで嫌がられたら?
キモ、と言われる未来が見えて、結局気付かなかったフリをしてジョッキに口を付けた。隣の女が小さく、ないわー、と呟いた。
苦しい。息を止めなきゃ。正気に戻ったら死ぬ。クズ共に何を言われても気にするな。どうせ俺とは違う世界の生き物だ。
挨拶が終わると、店長は腰を上げてバイトそれぞれに声を掛けて廻りだした。
シフトや待遇に不満は無いかとか、仕事中だけでは細かく聞いてやれない事を話しているらしい。狐らしく鋭い目を穏やかそうに細めて、うんうんと丁寧に聞く様を見ていると、店長だけなら大当たりを引いたと思う。
クズ共の中で、あの人だけはまだマシだ。
きっとちゃんと大卒で、若いうちの数年だけ実店舗に関わって、その後は本社勤務とかなんだろう。だって、あんな人間の出来た人がこんなクソ店舗で埋もれるなんて勿体無さ過ぎる。
わいわいと騒がしい店内で気配を消して、スマホを見ながらビールをちびちび進める。
苦い。こんな物、飲まなくても生きていけるのに、どうして好んで飲むんだか。
一人が煙草を吸い始めると、俺も俺もと数人が吸い始めてすぐに店の天井あたりが白く煙くなる。
酒、煙草、きっとこの後は風俗にでも雪崩れ込むんだろう。低俗な奴ら。
スマホを開いたって、何を見るわけでもない。
趣味も無いし、SNSもやってない。チャットアプリも入ってない。
連絡先には友人どころか家族のものも無い。職場の番号、一件だけだ。
ネットの検索画面に勝手に出てくる、どこの県で交通事故がありましただとか、政治家が脱税だとか、どうでもいいニュースを目の中に流すだけ。
ゲーセン勤務の俺には社会情勢なんてもうどうでもいいのに、これくらいしか残っていない。
何も無い。空っぽだ。
勉強しかしてこなかったけれど、就職に必要なのは学力じゃなかった。
成績的には院に上がる事も出来たけれど、親はもう学費を出さないと言った。
俺に求められていたのは万が一兄が挫折した時のスペアとして、兄と同レベルの大学を出て同レベルの会社に就職して無難な相手と結婚して孫を作ることだった。
就職に失敗した時点で、俺はもう要らないゴミになった訳だ。
何も考えたくない。
多めに口に含んで、なんとか飲み下す。喉が焼けるみたいに熱い。
酒は嫌いだ。すぐ顔が赤くなる。
下戸は馬鹿にされる。もとから馬鹿にされやすくて、どんなコミュニティでもすぐ苛めの対象になるのは昔から変わらない。
周りのクズ共は楽しそうに飲んで食べて笑って、悩みなんて無く生きてるんだろう。
ああ羨ましい。呪わしい。
俺は努力した。
今でも努力している。
だけど、どうせ誰も認めてくれない。
死ぬまでこうして苦しむんだろうか、とふと思う。
馬鹿だったら良かった。
考える頭なんて持たず、動物みたいに本能のままに生きられたら、きっと。
考えて、自分で自分を笑う。
動物のように生きるこの目の前のクズ共のレベルまで落ちてもきっと、俺はその最下層だろう。彼らの世界は力が全てで、非力でヒョロガリの俺は自然淘汰のままに死ぬだけだ。
きっとどこにも、俺の居場所なんて無い。
目眩がした。
まだジョッキの中には半分以上もビールが残っているのに、どうやらもう酔ってきたらしい。空きっ腹に飲んだのもあるかもしれない。
尿意を感じて席を立って靴を履くと、他のバイトと歓談していた店長が見咎めて釘を刺してきた。
「お開きの時間までは帰らないで下さいね」
「分かってます、ちょっとトイレです」
座敷の横のトイレに入ると、店内の狭さとは裏腹に、ちゃんと男女別に分かれていた。
男子トイレの方のドアを開けようとして、中から話し声が聞こえてノブを持つ手が止まる。
ここは店長の目が届かない。絡まれたら厄介だ。戻ろうかとも思ったが、聞こえてきた自分の名前に無意識に耳を澄ませてしまった。
「影間さー、誰が呼んだの? ああなるって分かってたじゃん。あそこだけ空気わりーって。下がるわー」
「なんか店長が連れてきたっぽいよ」
当然のように鬱陶しがられていて、むしろ安心する。
変に気遣われても虚しいし、下に見ている人間からの同情なんて欲しくない。
「マジで。あー……じゃあ久々にアレやるんかな。俺あれ苦手なんだよね」
「えーそう? スッキリすんじゃん?」
「俺ほら、アレだから。きょうかんせーしゅうち」
「は? 羞恥プレイ?」
「ちげーって」
話しながら出てきた二人の男達が、ドアの前で棒立ちしていた俺にドアをぶつけて一瞬目を剥いた。
が、気まずそうに目を逸らし、見えなかったみたいに横を通り抜けていった。
良かった、絡まれなかった。
ハズレを引くとすれ違い様に腹を殴られたりするから、まだマシな奴らだった。
トイレに入り、小便器の前で用を足す。
寛げたデニムのジッパーから出したひょろりとした陰茎を見下ろし、俺はどこまでも使えないなぁ、と嘆息する。こんな所すら『使い物にならない』。
いつからだったかなんて忘れてしまった。勉強漬けでそんな事に使う時間なんて無くて、放っておいたら何を見ても反応しなくなっていただけだ。使わないからどうでもいいけど。
ゴミ。俺はどうせゴミだ。死ぬのが怖くて自殺する事すら出来ず、その日暮らしでどうにか生きているだけの有機ゴミ。
小便棒を振って滴りを払い、股間を整えてトイレを出た。
席に戻ると、店長も元の席に座っていた。
大きな唐揚げを掴む箸使いが綺麗で、やっぱり良い育ちなんだろう。
「影間くん」
「……はい」
なんとなく予想はしていた。
さっきトイレから出てきた男達の言い方だと、きっとこの場で酷く叱責されるんだろう。それこそ、馬鹿が共感性羞恥なんて言葉を使いたくなるほど執拗に。
どうでもいいけど。
クビにならなければいい。クズ共に何を思われようが、恥ずかしさなんて感じない。
店長が俺の方を向いて話すので、俺も気持ち店長の方に向けた。
正面向かってではないけれど、お互い半分くらいは向かいあった状態で、店長は何から話そうか考えあぐねているようだった。
「貴方はね、うん、遅刻も当欠も無く真面目なんですが」
「はい」
「勤務態度が、その……問題です。かなり」
いつも真綿で絞めるような説教をしてくる彼にしては、最初からド直球できた。
唇を噛み、小さく頷く。
反抗する気は無い。
それで気が済むなら、好き放題叱責してくれ。人手を考えるなら、今日急に辞めさせられる事は無いだろう。シフトに穴を開けないだけでも必要な筈だ。
「声が小さいのは、まあおいおい……入った当初よりは大きくなってますし。ですがね、貴方、壊滅的に愛想が無いでしょう。そっちは問題です。無愛想な店員より、笑顔の店員が多い方が店のイメージは上がります。正直言って、貴方一人のその態度で、客足が落ちていると言えなくもありません」
「……」
そこまで言うか。
クソみたいな客が少し減ったところで、と考えて自分を守ろうとして、店長がらしくない嘲るみたいな笑い方をした。
「貴方、周り全部バカでゴミだとでも思ってるんでしょう」
「……そ、んな、ことは」
「周りの奴らなんてバカばっか、こんなとこ俺の居場所じゃねー、他にもっと良い職場が決まればすぐ辞めてやる、って。けどね? 違いますからね。貴方が一番下ですよ。最底辺。貴方、いっちばん使えないです。愛想笑い出来て大きな声で挨拶出来れば十分なうちみたいな楽な店で、貴方が一番のゴミです」
一見穏やかそうに微笑み、店長はまだ続ける。
「中卒の古賀の方がよっぽど戦力になってます。貴方に何が出来ますか? 接客を任せてもお客様に何度も聞き返されて、挙句他のスタッフを呼んで代わりに対応してもらったり、笑顔すら作れないせいでお客様に絡まれて他のスタッフに助けてもらったり……。それでなんでそんなに尊大な態度がとれるんでしょうねぇ?」
震える唇が硬く乾燥して、それを噛んで湿らせることすら出来ずに言葉に打ちのめされる。
俯いて、握った拳に爪が食い込んで真っ白なのを見ることで、なんとか平静を保ちたかった。
人の良さそうな店長にここまで思われていたなんて、なんて考えちゃいけない。クズだったんだ、店長もクズだったんだ。だから傷ついたりしなくていい。
「貴方はね、クズですよ。なーんにも使えない、ゴミクズです。せめて愛嬌でもあれば佐藤さんみたいに愛玩用にするんですが、それすらない。本当に使い道の無いゴミなんですよ。貴方の経歴に騙されましたよ。教訓にしますね」
遠くで、高い声の女が「ひどーい」と甘えた声で呟くのが聞こえる。おそらく佐藤だろう。
なんか顔の良い女が何人か居たけれど、そういう事だったのか。愛玩用って。お綺麗な顔して変態かよ店長。
聞き流せ、と反省しているフリで頭を低くして耐えるのに、次の店長の言葉に呼吸が堰き止められて吐き気がした。
「それで、いつになったら辞めてくれるんですかね?」
嫌だ。辞めるのだけは無理だ。
黙って首を横に振ると、うんざりしたような長い溜め息が吐かれる。
「今のご時世、こちらから解雇というのはよほどの理由が無いと出来無い仕組みになっていましてね。ああ、こうやって直接言うのも本当はダメなんですよ。パワハラになってしまいますからね。でもね、お酒も入っていますし、本音が漏れてしまったという事で、ね」
冷たく突き放すような言葉に、それでも首を横に振り続けた。
今辞めたら、来月どころか今月の家賃も払えない。ホームレスになって飢えで死ぬ自分を想像してぞっとした。
「辞めたく、ないです……。頑張りますから」
「頑張る頑張るって、それで今何ヶ月めです? 入店からもう半年経ちましたよね、貴方」
もう見限ったのだ、と断じられて目の前が真っ暗になる。
死がすぐ間近に来ている恐怖に、気がつけば目から涙が溢れてきていた。こぼれそうになって、必死で目に力を入れてそれを阻止しようとするのに、不意に伸びてきた店長の手が俺の額の前髪を掴んで上向かされた。
瞬きで頰に涙が落ちるのを見て、店長がその細い目を大仰に開いて驚いたみたいに声をあげる。
「泣いてるんですか? おやおや、高学歴でも泣くんですねぇ。人前で泣くのは恥ずかしい事だって、大学では教えてもらえなかったんですか?」
「ち、が……、離し」
店長の手から逃げようとするのに、ガッチリ掴んでくる指すら剥がせず彼の手に縋るみたいに掴むしかできない。
毛が抜けそうなくらい強い力で掴まれて痛い。こんな扱いを受けたのは初めてで、急に殴られるよりずっと怖かった。
歯列がカタカタと鳴って俺が怯えて震えているのを、舐めるように見つめて店長はやはり狐のような顔で笑う。
「ねぇ、そうやって泣いてれば誰か助けてくれると思ってますか? あのね、うちの子たちね、割と人間性は悪くないんですよ。けど、誰も助けない。何故だか分かりますか? 貴方の日頃の行いが悪いからですよ。ザマアミロって思われてるんですよ。ここまで酷いことを言われていても助けようと思えない態度を、貴方はとっていたんです」
そんなの分かってる。最初から助けなんて期待してない。
「……はぁ。ここまで言ってもまだここから動かないんですね。泣いて逃げ帰って、明日からバイト来なければいいでしょう。そうして明日からも、『あんな低レベルな奴らになに言われたってどうってことないぜ』って顔して生きていけばいいでしょう。ほら、行きなさい。立ちなさい。靴を履いて、自分の家に帰るんですよ。分かりますか?」
掴んだ前髪でぐいぐいと前後に振られ、痛みで息が詰まって呼吸が出来ない。
帰れというならこの手を離して欲しい。
俺の細腕じゃ剥がせない。
俺じゃ振り払って逃げる事すら叶わない。
「ああ、もう。使えないならせめて、オナホの代わりにでもなって下さいよ。連日仕事でヤる暇もなくて溜まってるんです。ほら、くわえなさい。気持ち良くできたら玩具枠として雇ってあげますよ。ほら、ほら」
また前髪を引っ張られて、店長のあぐらの股間に引き寄せられた。
彼の腕を掴んでいたから、抗えず前に倒れるようにして顔面をそこに押しつけられて、悔しくてまた涙が出てきた。
なんでここまでされなきゃならない。
俺は頑張ったのに。
頑張ったけど、結果が出なかっただけなのに。結果が出なきゃゴミなのか。
ああそうだ。俺はゴミだ。ゴミならゴミらしく、何も考えず言うことを聞けばいいのか?
この目の前の汚物を舐めれば辞めずに済むなら、とりあえず今月の家賃は払える。
鼻に当たる股間は、しかし柔らかい。当然勃起なんてしていない。
俺を辞めさせる為の性質の悪い冗談だからだ。
はは。一周回っておかしくなってきた。
本当に舐めたら、どんな顔をするだろう。
驚くだろうか。ドン引きして、そうして前髪を離してくれたら、この場から逃げよう。どうせゴミだ。ゴミがどんな死に方になるかなんて、考えるだけ無駄だ。
唇を開き、視線だけを上げて店長を見た。
ほら、言う通りにしたぞ。俺の口に突っ込め。玩具枠で雇ってくれるんだろ、変態。
見下ろす店長と視線が合って、その目が暗く澱んでいるのに気付いた。
ああ、蔑めばいい。
「ちょ、ちょっと、店長、さすがにやりすぎですよ!」
「あ、……え、ええ。すみません、柄にも無く、飲みすぎてしまっていたようです」
「影間も、ちゃんと謝れよ! 優しい店長にこれだけ言わせて、それでも一言も謝らねーからヒートアップしちまったんだろうが!」
遠くの席から店長を止めにきた男が、俺を助け起こしてから頭を引っ叩いてきた。
俯いたまま、「ごめんなさい」と呟く。
周りを攻撃してなんとか保っていた正気は、ボロボロに壊された。
優しい店長があれほど罵りたくなるほど、俺はどうしようもない人間だったんだ。もう平気なフリをする気力も残っていない。
「帰り、ます。制服は、クリーニングしてから返却します」
よろよろと立ち上がって、靴に爪先を入れただけで歩き出した。
集まる視線が痛い。
俺が本当に口を開けたのは角度的に誰にも見られなかっただろうけど、店長は見た。そこまでして見下す職場にしがみつきたいのかと、内心馬鹿にしているだろう。
「待って下さい、影間くん。言い過ぎでしたし、やりすぎました」
「いいです。全部本当の事なので……」
謝罪なんて要らないから、一刻も早くこの場から立ち去りたかった。
バイト達からの、同情半分、嘲り半分の視線。
周りがクズなんだ、なんて言い聞かせる盾を失ってしまえば、俺はこんなにも脆い。
足早に居酒屋の扉を開けて外に出た。深夜の闇は暗く、吸った空気は肺が凍りそうに冷たかった。フラつく足元に、そういえばビールを飲んだんだっけ、と呪わしくなる。
「影間くん、待ちなさい。タクシー呼びますから、乗って行きなさい」
あとを追ってきたらしい店長によたよた歩きの俺はすぐ捕まって、でもまともに顔を見られる筈もなく逃げようと身を捩った。
「タクシー代なんて、払えないし、近いので……」
「俺が払うから。その足では家に帰り着くまでに倒れてしまいそうですよ」
「いいです、本当に。離して下さい」
暴れても、二の腕を掴む店長の手はビクともしない。
怖い。
本能的に本気の恐怖を感じて必死で体全体で拒否示すのに、店長は細い目を弧にしたまま俺の反応なんて気にしていないみたいに片手を上げてタクシーを捕まえた。
「あの、ほんとに……っ」
「貴方、口、開けたでしょう?」
扉の開いたタクシーの後部座席に押し込まれそうになり、暴れる俺の耳元で店長が囁いた。
ひゅ、と息を飲む。まさか、本気で。
抵抗を止めた俺をタクシーの中に突き飛ばし、店長もすぐに乗り込んでくる。
「あのっ」
「四丁目のコーポフジオカまで」
はい、と返事した運転手はすぐに車を出してしまって、俺は狭い車内で逃げ場もなくドアに張り付くみたいに端に体を寄せるしか出来ない。
そんな俺を横目で見て、店長は薄ら笑いを浮かべている。
タクシーが走ったのはほんの五分ほどで、周りの風景には俺にも見覚えがあった。徒歩でも帰って来られる距離をわざわざタクシーに乗ったのは、俺を逃がさない為だろうか。
同じ形の縦に細長い一軒家が三軒並んだ前でタクシーから降ろされ、怯える俺の腕を掴んで店長は上機嫌で鼻歌まで歌いだした。
「あの、店長……俺、は」
帰りたいです、と。言おうとした口を掌で掴んで、店長が笑って言った。
「ごちゃごちゃうるさいですよ。貴方、やっと自覚したんでしょう? 貴方は使えないゴミクズです。ですが、俺の玩具になるならクビにはしないであげますよ」
どうしますか、と鍵を開けた玄関ドアのノブを俺に握らせて、店長は後ろから肩を掴んで囁いてくる。
「いいですよ、帰っても。でも、そうなったらいきなり職無しです。貴方みたいなのを雇ってくれるところ、ありますかねぇ? ……無いと思うな、俺は。愛想笑い一つ出来ない、勉強しかやってこなかったコミュニケーションのとれないお荷物なんて、俺以外採らないですよ」
「……っ」
「俺ね、ああやって使えないゴミを公開処刑して泣かすの大好きなんです。でも、ちゃあんとお口開けてしゃぶってくれようとしたのはね、君だけですよ」
背後から体をまさぐられて、怖いし気色悪いしで震えが止まらない。
なのに、逃げられない。
店長の熱い吐息が耳に掛かって怖気が走るのに、ドアノブから手が離せない。
「可愛かったなぁ、さっきの貴方の顔。あの場で突っ込んであげても良かったんですけどね、そうなると、俺も明日から働くのちょっと気まずくなっちゃいますからね。……ほら、ドア開けて、中に入って下さい。そしたら、貴方のお望み通り、玩具にしてあげますからね」
望み? 俺が玩具になるのを望んでる?
笑えない。
ただ、ただ俺は、やっと就けた職を手放したくないだけだ。断じて、男の性玩具になりたい訳じゃない。他に術が無いのだ。
こうするしか、無いのだ。
ガチャ、とノブを回すと、開いた隙間にもはや俺を後ろから抱き締めているような格好で、店長が俺を家の中に押し込んだ。
思いきり突き飛ばされ、玄関らしい硬い床に倒れる。
冷たくてじゃりっとした砂の感触のあるタイルの上で、俺の上に店長が乗っているのが怖くて逃げようと身を起こそうとしたのに、その手に彼の手が重なってくる。
「あは、やった、家の中、入りましたね。……はぁ、焦らしやがって。オラ、さっさとしゃぶれ」
「ひ……っ」
一度体を起こした店長が、掴んだ腕を引いて俺を乱暴にひっくり返した。あお向けにされて後頭部をぶつけてクラクラしている俺の両腕を靴のまま踏みつけてきて、顔の上でジッパーが引き下される音がした。
「や、嫌だっ! 俺、そんなこと出来な」
「やるんだよ」
ぐぐ、と腕の上に乗る靴に体重がかけられ、重みと痛みで奥歯を噛み締めた。引き結ぶ唇に、熱くて臭い肉が当たる。逸らした顔の鼻を摘まれて、口で息をしようと開けたところに容赦無く押し込まれた。
「ぐ、うぇっ」
「どうせ入んねぇから、大人しくしろ」
口腔いっぱいに入ってくると思っていたそれは、しかし俺の口が限界まで開いても到底入るサイズでは無かった。
目を白黒させる俺の上で、店長はデカ過ぎる逸物を自分で擦りながら、その先端だけを俺に銜えさせていた。
暗闇の中でも、彼のソレが規格外なのが視認出来る。
まるで股間にもう一本腕が生えているみたいな太さで、見えているものが信じられずにしゃぶらされているのも忘れて呆けた。
「ボーッとしてんな。舐めろ。舌動かすくらいできんだろーが」
「んんっ」
前髪を鷲掴みにされ、また頭を揺さ振られる。
呻いて言われた通りに舌を動かすと、少しだけ髪を掴む指の力が緩まった。
舌に苦い味がする。先走りだと気付いて吐きそうになるのに、口は塞がれていて結局それも飲み込むしかない。喉の奥が粘ついて、青臭くて気持ち悪い。
「そうだ。大人しく言う事聞いてろ。お前は俺の玩具だ、いいな?」
「う……」
「お前の頭は縦にしか振れねぇんだよ。無駄な抵抗すんな。……あークソ、舌だけなのに具合良いなお前。ちょっと吸ってみろ。やれ、ほら」
クビにされたくないだけで、玩具になるなんて真っ平御免なのに。
店長は先端しか咥えられないでいる俺の唇を親指で揉んで、急かすみたいにまた前髪をぐいぐい引っ張ってきた。痛いからやめて欲しくてヤケクソに強く吸ったら、店長がぶるりと震えた。
イくのかと身構えて、しかしどうやら踏み止まった彼が嬉しそうに笑い声を上げる。
「は、はは。やべーわ。やっと見つけた。やっとアタリ引いた。なぁゴミ、お前も嬉しいだろ? お前が求めてたご主人様だぞ、おい。クソマゾが」
「う、うぅ」
「だぁから、お前は頷くしかねーんだよ。頭パーか? 大卒なんだろ、一回で覚えろや」
パン、と高い音がして、それが店長が俺の頰を叩いた音だと気付くまでに数瞬かかった。
じわ、と俺の目尻に涙が滲んだのを闇の中でも目敏く見つけて、店長がそれを指ですくう。
「かっわいい。叩かれ慣れてねぇのか? こんなマゾい体質してて、よく今まで無事だったな」
意味が分からない。
店長はおかしい。
俺がマゾなんじゃなくて、店長がサディストで、俺は彼に無理強いされているだけなのに。
思い込みが激し過ぎて恐ろしく、横に振りたい首はしかし前髪を掴まれているせいで自分の意思では動かせない。
「とりあえず一回出すから、ちゃんと飲めよ。一滴でもこぼしたら胃液吐くまで腹殴るからな」
脅し文句の恐ろしさに、慌てて唇を窄めた。
う、と呻いた店長の剛直が吐き出したザーメンを舌で受け、あまりの青臭さに背筋が戦慄くが口は離さない。ごく、と一気に飲み干して、じゅうっと強く吸った。中に残っていたのがこぼれたから、なんて理由で殴られたくは無かった。
息をするだけで胃の奥が臭い気がする。
気持ち悪い。男の精液を飲んでしまった。先走りより苦くて、予想外にしょっぱかった。知りたくなかった。早く口を濯ぎたい。
俺の口から先端を抜かれて、ちゅぱ、と濡れた音がして、背筋に震えが走った。
動悸が早い。恐怖のせいだろう。
熱があるみたいに顔が火照っていた。
まだ酒が残っているみたいで目眩もする。
「初めてなのに、ちゃんと出来たなぁ」
掴んでいた前髪が離されて、いいこいいこと頭を撫でられた。
「は……」
呆けて、あんぐりと口を開けたままそれを受け入れる。
誰かに誉められたのなんて、いつぶりだろう。頭を撫でるなんて、母親もしてくれなかった。
出来て当たり前で、出来なければ叱責されるのも当たり前で。
それなのに、こんな事で、誉められた。
ただ口を開けて、舌を動かしていただけ。
言われた通りに飲んだだけ。
それだけなのに。
「お、れは……俺は、何も」
「しただろ。言う通りにした。俺の言う通り、舐めて、しゃぶって、ザーメン飲んで。ちゃんと出来てたぞ」
優しい声に誉められて、頭の正常な部分が危険信号を鳴らしていた。聞くな、真に受けるな、騙されるな、と煩く警報が鳴っている。
「影間は、ちょっと強情なだけなんだよな。本当はいい子だもんな? 俺の言う通り、いい子で玩具になれるよな?」
「あ……」
体がガタガタと震える。
駄目だ。拒絶しなきゃ、と思うのに、体が動かない。
だって、腕の上に乗られていて。それに、また前髪を掴まれて、だから、縦にしか振れないから。
「いい子に出来たら、明日からも、働けますか」
だってしょうがない。
俺は明日以降も生きていたくて、だからその為にも働かなきゃならなくて。言い訳を探すのは得意だ。
ああ、だから、今はただ、誉められたい。
「もちろん」
店長が目を弧にして薄く笑う。闇の中でも、その濁った瞳の闇は一層暗く見えた。
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