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小学生編
6.ピアノ
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(やばい。もう耐えられない)
ふかふかのベッドの上で拓人は足をばたつかせる。
入学式を終え、週末を迎えた。
今日は入学式から2日がたった水曜日だ。
(そろそろピアノに触れないと、もうヤバい)
そうこの世界に来てからというもの僕は一度もピアノに触れてない。
学校で音楽室を貸してもらおうと思ったんだけど、入学して一週間もしないうちにピアノ貸してなんて言えなくて耐えてたけど、もうダメ。
今日は先生に相談して音楽室を貸してもらおう。
そうと決まれば…
僕は急いで部屋を出て、玄関で靴を履く。
「ちょっと、拓人!どこ行くの!!」
ちっ、見つかってしまった。
「学校」
「学校って言ったって、まだ7時よ」
ご飯くらい食べていきなさい…とお母さんに止められた。
うん、ご飯はちゃんと食べないとね。
しぶしぶ、食卓へと向かった。
⚫◯⚫◯
今、僕の前には一つのピアノがある。
鍵盤の上に手を置く。
ポーン、と心地の良い音が耳の中を駆け抜ける。
むふふ。
思わず顔がゆるんでしまう。
僕のクラスの担任、佐藤みのり先生は僕が音楽室でピアノをしたいと言ったら、快くOKをしてくれた。
めっちゃええ先生や。
そして、僕についてきた人が一人いる。
「ねえ、そんなに面白いの?」
一年生とは思えない落ち着いた声。
その声の主を見ながら、僕は言う。
「うん、すごく面白いよ、鳴海さん」
そう。鳴海さんもついてきたのだ。
鳴海さんにも音楽に興味を持ってほしいな。
よし、鳴海さんにも興味を持ってもらおう。
「ねえねえ、鳴海さん。」
「なに?」
「何か好きな曲とかない?」
僕がそう聞くと鳴海さんは少し悩んでから答えた。
「じゃあ、トトロとか弾ける?」
「トトロのなんて曲?」
「?」
「よしっ、トトロメドレーにしよう」
そう言って鍵盤に手をのせ、音を奏でる。
まずは〈さんぽ〉
軽やかなリズムにのびのびとした音。イメージは冒険のワクワク感。
続いて〈五月の村〉
弾むように優しい風が踊るようなイメージで。
そして〈風の通り道〉
僕が一番好きな曲だ。幻想的な情景と懐かしさを感じる。
最後は〈となりのトトロ〉
トトロの中で最も有名な曲だろう。森とトトロの姿が目に浮かぶ。
ふぅ、なんとか弾ききることができた。
やっぱり、ずっと鍵盤を触ってなかったからか指が何度かつりそうになった。
子供の手ってこんな小さかったんだなあ。
自分の手を見て思う。
それよりも、どうだっただろうか。
感想を聞こうと顔を上げる。
そこには、涙を流す姿があった。
あれ、そんなに感動した?
嬉しいなあ。
「どうだった?」
僕がそう聞くと鳴海さんは興奮したように体を震わせながら言った。
「感動したあああああ!!」
「もうなんか見たことない景色が浮かんできたああ。凄すぎるよ音尾くん」
良かった。
しっかり、弾けてたようだ。
あのおとなしい性格の鳴海さんをここまで興奮させるなんてやっぱりジブリは偉大だ。
僕は達成感に包まれながら鳴海さんを見る。
鳴海さんも僕を不思議そうに見ていた。
「それより、あの曲ってなんて曲なの」
ん?
あれ?
僕、トトロの曲弾いたよな?
「トトロの曲だよ?」
「嘘でしょ。私の知ってるとトロの曲じゃない」
鳴海さんの言葉に嫌な予感がする。
もしかして…と思い、聞いてみる。
「トトロってなんて題名だっけ?」
そう言うと訝しむような目で鳴海さんが僕の方を見る。
「そんなの『都内のトトロ』に決まってる」
……やべえ。
何だよ、『都内のトトロ』って。
あの、田舎の自然豊かな景色は?
なんでちょっとずつ違うんだよ。
「あー、うん。そうそう、都内のトトロ」
とりあえず、この場はやり過ごそう。
「そんなことより鳴海さんも弾いてみない?」
ピアノを指さしながら聞いてみる。
鳴海さんは目を輝かせて、首を縦に動かしている。
うん、かわいい。
「それじゃあ一緒に弾いてみようか」
ふかふかのベッドの上で拓人は足をばたつかせる。
入学式を終え、週末を迎えた。
今日は入学式から2日がたった水曜日だ。
(そろそろピアノに触れないと、もうヤバい)
そうこの世界に来てからというもの僕は一度もピアノに触れてない。
学校で音楽室を貸してもらおうと思ったんだけど、入学して一週間もしないうちにピアノ貸してなんて言えなくて耐えてたけど、もうダメ。
今日は先生に相談して音楽室を貸してもらおう。
そうと決まれば…
僕は急いで部屋を出て、玄関で靴を履く。
「ちょっと、拓人!どこ行くの!!」
ちっ、見つかってしまった。
「学校」
「学校って言ったって、まだ7時よ」
ご飯くらい食べていきなさい…とお母さんに止められた。
うん、ご飯はちゃんと食べないとね。
しぶしぶ、食卓へと向かった。
⚫◯⚫◯
今、僕の前には一つのピアノがある。
鍵盤の上に手を置く。
ポーン、と心地の良い音が耳の中を駆け抜ける。
むふふ。
思わず顔がゆるんでしまう。
僕のクラスの担任、佐藤みのり先生は僕が音楽室でピアノをしたいと言ったら、快くOKをしてくれた。
めっちゃええ先生や。
そして、僕についてきた人が一人いる。
「ねえ、そんなに面白いの?」
一年生とは思えない落ち着いた声。
その声の主を見ながら、僕は言う。
「うん、すごく面白いよ、鳴海さん」
そう。鳴海さんもついてきたのだ。
鳴海さんにも音楽に興味を持ってほしいな。
よし、鳴海さんにも興味を持ってもらおう。
「ねえねえ、鳴海さん。」
「なに?」
「何か好きな曲とかない?」
僕がそう聞くと鳴海さんは少し悩んでから答えた。
「じゃあ、トトロとか弾ける?」
「トトロのなんて曲?」
「?」
「よしっ、トトロメドレーにしよう」
そう言って鍵盤に手をのせ、音を奏でる。
まずは〈さんぽ〉
軽やかなリズムにのびのびとした音。イメージは冒険のワクワク感。
続いて〈五月の村〉
弾むように優しい風が踊るようなイメージで。
そして〈風の通り道〉
僕が一番好きな曲だ。幻想的な情景と懐かしさを感じる。
最後は〈となりのトトロ〉
トトロの中で最も有名な曲だろう。森とトトロの姿が目に浮かぶ。
ふぅ、なんとか弾ききることができた。
やっぱり、ずっと鍵盤を触ってなかったからか指が何度かつりそうになった。
子供の手ってこんな小さかったんだなあ。
自分の手を見て思う。
それよりも、どうだっただろうか。
感想を聞こうと顔を上げる。
そこには、涙を流す姿があった。
あれ、そんなに感動した?
嬉しいなあ。
「どうだった?」
僕がそう聞くと鳴海さんは興奮したように体を震わせながら言った。
「感動したあああああ!!」
「もうなんか見たことない景色が浮かんできたああ。凄すぎるよ音尾くん」
良かった。
しっかり、弾けてたようだ。
あのおとなしい性格の鳴海さんをここまで興奮させるなんてやっぱりジブリは偉大だ。
僕は達成感に包まれながら鳴海さんを見る。
鳴海さんも僕を不思議そうに見ていた。
「それより、あの曲ってなんて曲なの」
ん?
あれ?
僕、トトロの曲弾いたよな?
「トトロの曲だよ?」
「嘘でしょ。私の知ってるとトロの曲じゃない」
鳴海さんの言葉に嫌な予感がする。
もしかして…と思い、聞いてみる。
「トトロってなんて題名だっけ?」
そう言うと訝しむような目で鳴海さんが僕の方を見る。
「そんなの『都内のトトロ』に決まってる」
……やべえ。
何だよ、『都内のトトロ』って。
あの、田舎の自然豊かな景色は?
なんでちょっとずつ違うんだよ。
「あー、うん。そうそう、都内のトトロ」
とりあえず、この場はやり過ごそう。
「そんなことより鳴海さんも弾いてみない?」
ピアノを指さしながら聞いてみる。
鳴海さんは目を輝かせて、首を縦に動かしている。
うん、かわいい。
「それじゃあ一緒に弾いてみようか」
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