新世界より〜前世の知識を生かして歴代最高の音楽家になる〜

pino

文字の大きさ
6 / 11
小学生編

6.ピアノ

しおりを挟む
(やばい。もう耐えられない)

ふかふかのベッドの上で拓人は足をばたつかせる。
入学式を終え、週末を迎えた。
今日は入学式から2日がたった水曜日だ。

(そろそろピアノに触れないと、もうヤバい)

そうこの世界に来てからというもの僕は一度もピアノに触れてない。

学校で音楽室を貸してもらおうと思ったんだけど、入学して一週間もしないうちにピアノ貸してなんて言えなくて耐えてたけど、もうダメ。
今日は先生に相談して音楽室を貸してもらおう。
そうと決まれば…
僕は急いで部屋を出て、玄関で靴を履く。

「ちょっと、拓人!どこ行くの!!」
ちっ、見つかってしまった。
「学校」
「学校って言ったって、まだ7時よ」
ご飯くらい食べていきなさい…とお母さんに止められた。

うん、ご飯はちゃんと食べないとね。
しぶしぶ、食卓へと向かった。



⚫◯⚫◯

今、僕の前には一つのピアノがある。
鍵盤の上に手を置く。
ポーン、と心地の良い音が耳の中を駆け抜ける。

むふふ。
思わず顔がゆるんでしまう。


僕のクラスの担任、佐藤みのり先生は僕が音楽室でピアノをしたいと言ったら、快くOKをしてくれた。

めっちゃええ先生や。

そして、僕についてきた人が一人いる。

「ねえ、そんなに面白いの?」
一年生とは思えない落ち着いた声。
その声の主を見ながら、僕は言う。

「うん、すごく面白いよ、鳴海さん」

そう。鳴海さんもついてきたのだ。
鳴海さんにも音楽に興味を持ってほしいな。
よし、鳴海さんにも興味を持ってもらおう。

「ねえねえ、鳴海さん。」
「なに?」
「何か好きな曲とかない?」

僕がそう聞くと鳴海さんは少し悩んでから答えた。

「じゃあ、トトロとか弾ける?」
「トトロのなんて曲?」
「?」
「よしっ、トトロメドレーにしよう」

そう言って鍵盤に手をのせ、音を奏でる。
まずは〈さんぽ〉
軽やかなリズムにのびのびとした音。イメージは冒険のワクワク感。
続いて〈五月の村〉
弾むように優しい風が踊るようなイメージで。
そして〈風の通り道〉
僕が一番好きな曲だ。幻想的な情景と懐かしさを感じる。
最後は〈となりのトトロ〉
トトロの中で最も有名な曲だろう。森とトトロの姿が目に浮かぶ。




ふぅ、なんとか弾ききることができた。
やっぱり、ずっと鍵盤を触ってなかったからか指が何度かつりそうになった。
子供の手ってこんな小さかったんだなあ。
自分の手を見て思う。

それよりも、どうだっただろうか。
感想を聞こうと顔を上げる。

そこには、涙を流す姿があった。
あれ、そんなに感動した?
嬉しいなあ。

「どうだった?」
僕がそう聞くと鳴海さんは興奮したように体を震わせながら言った。

「感動したあああああ!!」
「もうなんか見たことない景色が浮かんできたああ。凄すぎるよ音尾くん」


良かった。
しっかり、弾けてたようだ。
あのおとなしい性格の鳴海さんをここまで興奮させるなんてやっぱりジブリは偉大だ。
僕は達成感に包まれながら鳴海さんを見る。
鳴海さんも僕を不思議そうに見ていた。

「それより、あの曲ってなんて曲なの」

ん?
あれ?
僕、トトロの曲弾いたよな?

「トトロの曲だよ?」
「嘘でしょ。私の知ってるとトロの曲じゃない」

鳴海さんの言葉に嫌な予感がする。
もしかして…と思い、聞いてみる。

「トトロってなんて題名だっけ?」

そう言うと訝しむような目で鳴海さんが僕の方を見る。

「そんなの『』に決まってる」

……やべえ。
何だよ、『都内のトトロ』って。
あの、田舎の自然豊かな景色は?
なんでちょっとずつ違うんだよ。

「あー、うん。そうそう、都内のトトロ」

とりあえず、この場はやり過ごそう。

「そんなことより鳴海さんも弾いてみない?」

ピアノを指さしながら聞いてみる。
鳴海さんは目を輝かせて、首を縦に動かしている。

うん、かわいい。

「それじゃあ一緒に弾いてみようか」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

陰キャの俺、なぜか文芸部の白髪美少女とバスケ部の黒髪美少女に好かれてるっぽい。

沢田美
恋愛
この世の中には、勝者と敗者がいる。 ――恋人がいて、青春を謳歌し、学校生活をカラフルに染める勝者。 そしてその反対側、モブのように生きる俺・高一賢聖(たかいちけんせい)。 高校入学初日、ぼっちを貫くつもりだった俺の前に、 “二人の女王”が現れた。 ひとりは――雪のように白い髪を持つ、文芸部の女神・瀬良由良(せらゆら)。 もうひとりは――バスケ部の全国エースにして完璧超人、不知火優花(しらぬいゆうか)。 陰キャ代表の俺が、なんでこの二人に関わることになるんだ!? 「文芸部、入らない?」 「由良先輩、また新入生をたぶらかしてる〜!」 平凡で静かな高校生活を夢見ていたのに―― 気づけば俺の毎日は、ラブコメと混乱で埋め尽くされていた。 青春なんて関係ないと思ってた。 だけど、この春だけは違うらしい。

俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい

沢尻夏芽
恋愛
 自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。  それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。 『様子がおかしい』 ※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。  現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。  他サイトでも掲載中。

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

クラスで3番目に可愛い無口なあの子が実は手話で話しているのを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
俺のクラスにいる月宮雫は、誰も寄せ付けないクールな美少女。そのミステリアスな雰囲気から『クラスで3番目に可愛い子』と呼ばれているが、いつも一人で、誰とも話さない。 ある放課後、俺は彼女が指先で言葉を紡ぐ――手話で話している姿を目撃してしまう。好奇心から手話を覚えた俺が、勇気を出して話しかけた瞬間、二人だけの秘密の世界が始まった。 無口でクール? とんでもない。本当の彼女は、よく笑い、よく拗ねる、最高に可愛いおしゃべりな女の子だったのだ。 クールな君の本当の姿と甘える仕草は、俺だけが知っている。これは、世界一甘くて尊い、静かな恋の物語。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。

甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。 平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは── 学園一の美少女・黒瀬葵。 なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。 冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。 最初はただの勘違いだったはずの関係。 けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。 ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、 焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。

処理中です...