異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜

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第一章

035「疑惑」

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 俺が異世界転移のきっかけとなったあの交通事故で救った美少女⋯⋯雨宮 理恵こと理恵たんは、何とあの『雨宮バリューテクノロジー』のCEOの娘だった。

 俺も詳しくは知らないがそれでも一つ確実に知っているのは、現在のすべての電子通貨決済サービスの根幹である『AMAMIYAシステム』を生み出した会社ということ。あと、日本で唯一世界の巨大企業とも対等に肩を並べるレベルの世界的巨大企業の一つということだ。

「マ、マジすか?」
「は、はい。マジです」

 おいおいおい、これってちょっとしたお金持ちどころじゃないじゃん。

「で、話を戻しますと、父の会社の『開発室』でそのDストリーマーオメガの配信映像を分析してもらったんです。そして、それで確認したところ、あの映像は100%リアルの配信映像だということがわかりました」
「な、なるほど⋯⋯」

 そりゃ、あの『AMAMIYAシステム』を生み出した巨大企業の技術者の出した答えなら間違いないだろうな。

「だから、佐川は理恵たんの言っていることをすぐに信じたわけか」
「そうだ」

 まー、そりゃ信じるわな。理恵たんの背景知ってたら。

「タケル君⋯⋯」
「うっ!?」

 突然、理恵たんが俺にスッと近づいて耳元に手を当ててきた。

(す、すみません、突然。でも一つ聞きたいことがありまして⋯⋯。あまり大きな声で話す内容ではないのでこういう形で聞くことになるのですが⋯⋯構わないでしょうか?)
「も、もちのろんさ!(激しく動揺)」
(あ、あの、タケル君って最近⋯⋯F級探索者シーカーになりましたよね?)
「えっ?!」

 なっ?! 理恵たんが何でそのことを!

(ご、ごめんなさい?! 知り合い・・・・から聞いたものでして⋯⋯)
「知り合い? もしかして探索者シーカーの知り合いってことですか?」
(ま、まあ、そんなところです。それで、こんなこと周囲の生徒に知られると迷惑かなと思ったので、それでこうやってお伝えしました。すみません)

 そう言うと、また元の位置に戻った理恵たんはペコリと頭を下げた。

 俺は一瞬ごまかそうかと思ったが、たぶん理恵たんにはそんなごまかしは通用しないだろうと思い、素直に最近F級探索者シーカーになったことを伝える。

「やっぱり、その話は本当だったんですね。嬉しいです!」
「嬉しい?」
「はい。だって、探索者シーカーでしたら微力ながら私でも何かお手伝いできると思ったので。ていうか、一緒にダンジョンに潜りたいです!」

 ニコッと満面の笑みでそんなことを言う理恵たん。あらかわ。

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、でも、理恵たんとは全然階級違うから。それに登録したのは一昨日の土曜日だったし⋯⋯」
「一昨日の⋯⋯土曜日?」
「うん。だから自分なんてまだ探索者シーカーになったばかりだから、その⋯⋯ただの足手まといにしかならないと思うんだ。だから一緒にっていうのは嬉しいけど難しいんじゃないかな、ははは」

 俺は無難に笑ってごまかそうとした。しかし、

「だ、大丈夫です! 足手まといなんてとんでもない! それに私がいればタケル君のレベル上げもしやすくなりますよ! どうですか?!」

 ぐいぐい来る、理恵たん。

「じゃ、じゃあ、今度、お願いもしていいかな?」
「は、はい!」

 その時、ちょうど担任の風香先生が教室に入ってきたため、そのタイミングで理恵たんは立ち上がり、

「タケル君、今度じっくりとさっきの話・・・・・しましょうね!」

 と、またもや爆弾を投下して去っていった。すると当然、

「「「「「タケル? その『さっきの話』なるもの、ホームルーム後にkwsk⋯⋯」」」」」
「⋯⋯はい」

 そうして、ホームルームが終わった直後、1時限目が始まる直前まで俺は雨宮親衛隊の執拗な尋問を受け続けたのは言うまでもない。


********************


「ほ、本当に、タケル君がF級探索者シーカーになっていただなんて⋯⋯」

——お昼休み

 私は、いつものように屋上で一人お昼を食べていた。

 屋上はいつも鍵がかかって入れないのだが、私は父に少し・・無理を言って、私専用の屋上の鍵を作ってもらうよう、この学校の校長先生に口利きしてもらった。

 もちろん、こんなこと普通はやってはいけないことだ。でも、私はずっと学校がつまらなかったし、友達も作ろうとも思わなかった。だって、本当はすぐにでも探索者シーカー一本でやっていきたかったのに両親がそれを許さなかったからだ。

 私は両親に自分が探索者シーカーとしてやれることを証明しようと、高校に入るとすぐに探索者シーカー養成講座へ通い、3ヶ月でレベル2となりF級探索者シーカーを取得。さらにそれから1ヶ月でE級へと上がり、そして今年の4月、2年生へと進級したタイミングで『D級探索者シーカー』へと昇り詰めた。

 これで私は両親に探索者シーカーとしてやっていけると証明したつもりだったが、それでも両親は探索者シーカー一本でやっていくことを認めないどころか学校もやめさせてくれなかった。

 だから、私は「せめて⋯⋯」と譲歩案として『私専用の屋上の鍵』をお願いした。

 最初は、ワンチャン「そんなワガママ言うのなら学校やめて探索者シーカーでも何でも勝手にしろ!」とでも言ってくれるかと期待したが、実際は「うん、それくらいなら全然いいよ」とむしろ軽いノリで鍵を作ってもらえた。

 まさか父がそんな簡単に私のわがままを聞いてくれるとは思っていなかったので、『わがまま作戦』は失敗したが、しかし学校ではどこにいても「雨宮の娘」や「D級探索者シーカー」といった好奇な目で見られるため、一人になれる場所ができたのはそれはそれでよかった。

 そんな屋上で一人ご飯を食べながら私は『ある疑問』に朝から⋯⋯いえ、具体的には今朝タケル君と話した後から心は大きく揺さぶられていた。

 それは土曜日、父の会社の開発室で配信映像を解析中にわかった『Dストリーマーオメガの情報』のことで、それは、その時たまたま・・・・私が言った一言から大きな可能性として浮上した『疑惑』⋯⋯。

「ほ、本当に、あのDストリーマーオメガはタケル君⋯⋯なの?」


『Dストリーマーオメガと結城タケルは同一人物』という疑惑だった。
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