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第二章
118「決して遠くない未来の脅威」
しおりを挟む「さて、ではそろそろオメガとしての今後の話をするぞ」
と、櫻子ちゃんが口火を切って話始めた。
「まず、今一度言うが『戦乙女』のレベルアップは配信を行わなくてよい。まだ、オメガの配信は控えたいからの」
「わかった」
「うむ。で、じゃ。その場所なんじゃが⋯⋯さっきお主の注文じゃった『喋る魔物』が一番出没するという報告のあったダンジョンでいいかの?」
「ぜひ、お願いしまっす!」
と、元気にお返事を返して、おしゃべり魔物さんの出没多発ダンジョンに行きたいアピールをする俺。
「はぁぁ⋯⋯本来、喋る魔物の出没例の高いこのダンジョンは多くの探索者からは避けられておるんじゃがの。まーでも、それはそれで『戦乙女』のレベルアップには都合が良いのじゃが」
「で、どこのダンジョンなの?」
「場所は⋯⋯⋯⋯沖縄じゃ」
「沖縄っ!?」
おお! 有名観光スポット!
「そのダンジョンは、沖縄の中部に位置する『うるま市』というところにあるダンジョンでな。沖縄にダンジョンは1個しか存在しないということで⋯⋯付いた名称が『琉球ダンジョン』じゃ」
「琉球⋯⋯ダンジョン。あ、でも⋯⋯」
「どうした?」
「いやどうしたもこうしたも⋯⋯俺、学生ですねん。授業ありますねん」
「うむ。気持ち悪い関西弁じゃな」
あら辛辣。
「まーお主の言っていることもわかる。なので、ワシ⋯⋯というより新宿御苑ギルドから学校へはお主が長期休みが取れるよう便宜を図るつもりじゃ」
「おお、ザ・権力ってやつだな!」
「⋯⋯まーそういうことじゃ。じゃが怪しまれないよう学校には『高校生探索者の中から才能ある者を招集した強化合宿』という体で申請を出すつもりじゃ。そうすれば、お主にとっても『結城タケル』として目立った行動をしたとしても怪しまれないじゃろうからな」
「なるほど!」
すげえ! 櫻子ちゃん、策略家だな~。たしかにそういう理由で休むということであれば、俺が今後理恵たんや佐川たちと『英雄旅団』として活動して目立った活躍をしても怪しまれないと思う。
ましてや、『結城タケル=オメガ』なんてつながることもないだろう。
「というわけで、お主には来週にも早速動いてもらうぞ」
「わかった」
********************
「でも、沖縄か~。俺、初めてなんだよね~」
「おいおい、遊びじゃないのじゃぞ」
「わかってるよ」
「いいな~。私も行きたいな~」
と、ここで如月さんが櫻子ちゃんにおねだりのような仕草を見せる。⋯⋯が、
「何を言っておる! 行かせるわけないじゃろ! お前には『佐川』のデータ取りがあるじゃろが!」
「あ、そうでした(テヘペロ!)」
あ、そうだった。俺が沖縄に行っている間は、佐川は如月さんに『調べ上げられるイベント』が待ち構えているんだった。⋯⋯南無。
「来週、出発の前日にお主には旅行チケットや必要なものを渡すからここに来るのじゃぞ」
「了解~」
「『戦乙女』たちとは現地で合流となる。現地では手配したナビゲーターがいるからそいつの指示にちゃんと従って動くように」
「了解~」
「間違っても、観光などと抜かして遊ぶようじゃったら、ワシ自ら『おしおき』するからの? よいな?」
「りょ、了解~⋯⋯」
怖っ?!
ということで、本日はこれにて解散となった。
********************
「いや~、それにしてもついにタケル君とここで顔を合わすことになるとはね~」
「どうしたのじゃ?」
現在、ギルマス部屋にはタケルが帰ったので櫻子と如月だけがいた。二人はコーヒーを飲みながらボソボソと話している。
「いや、なんかカミングアウトするまであっという間だったな~⋯⋯てね」
「感慨に耽っている⋯⋯ということか?」
「まーそんなとこかな」
そう言って、二人がグビッとコーヒーを喉に流す。
「⋯⋯ところで櫻子。その女帝マーレの動きってのはまだ掴めてないのかい?」
「ああ、そうじゃ。女帝マーレがあの池袋ダンジョンに現れてからというもの、ずっと探しておるのじゃが、ワシ直属の密偵を使ってもなお一向に情報が掴めぬ⋯⋯」
「ふ~ん⋯⋯。櫻子直属の密偵でも見つけられないだなんて⋯⋯相当な相手なんだね」
「いや、おそらくじゃが⋯⋯それは女帝マーレがというより、その『協力者』が優秀なんじゃと思う」
「協力者?」
「⋯⋯『白装束の人物』じゃ」
「! ああ、そういえば言ってたね。たしか、『闇属性上級魔法:隠蔽』ていう魔族の中でも扱えるのが限られる魔法を使って女帝マーレを逃したっていう⋯⋯」
「そうじゃ。あやつがおそらく女帝マーレの隠蔽工作を図っておるとワシは見ている。ていうか、女帝マーレはそもそもそんな謀略、策略などは苦手な脳筋よりの奴じゃからな」
「⋯⋯そっか。そういえば櫻子もタケルと同じように女帝マーレとは仲が良かったんだっけ?」
「ああ。ワシは異世界ではタケルとの直接の面識は無かったが、女帝マーレはタケルとの『共通の友人』みたいな感じになるの」
「へ~。なんだか不思議なつながりだね」
「あともう一人⋯⋯タケルと同じ『共通の友人』もいるがの」
「⋯⋯魔王ベガ?」
こくり⋯⋯と無言で頷く櫻子。
「タケルの話では、魔王ベガが突然配下である幹部と魔族を使って、人間族と戦争になったと言っておった。ワシはその時にはすでに異世界にはおらず、現代にいたから直接はわからん。すべてはタケルから聞いた話じゃが⋯⋯しかし、あの魔王ベガはそんなことをするような者ではない。なのに、なぜ⋯⋯!?」
感情の入った強い口調で憤りを吐き出す櫻子。その瞳には少し涙のようなものも見える。
「⋯⋯櫻子」
そんな彼女を見て、目を細めながら話を聞く如月。
「はっ! い、いかん、いかん! こんなことを今話したところでどうこうなるものでもない! それよりも、ほとんど出現例のなかった新宿御苑ダンジョンで『喋る魔物』がタケルの前に現れたこと⋯⋯。そして、その『喋る魔物バロン』が『上司命令でタケルを探し、そして見つけたこと』で、まず間違いなく、女帝マーレは動き出す」
「そうだろうね」
「じゃから、その前にタケルには『戦乙女』のレベルアップ⋯⋯。そして、タケルが異世界から持ち込んだ『覚醒ポーションの量産化』⋯⋯これは最優先事項じゃ!」
「うん」
「おそらく、女帝マーレは『喋る魔物』を使って一斉に攻撃をしかけてくるとワシは見ておる。じゃから、それらに対抗する準備はスピード勝負になるじゃろう。『覚醒ポーションの量産化』⋯⋯頼んじゃぞ、如月!」
「あいあいさー!」
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