7 / 145
第一章 幼少編
007「上級魔法士のレコ」
しおりを挟む——月日は流れ、俺は五歳になった
この五年で、夜な夜な忍び込んでは父親の書斎で書物を読み漁っていた俺はついに書斎の本すべてを読破。おかげでこの世界の文化や常識、そして地球にはなかった魔法、魔力、魔獣といった知識も獲得した。
あと、エルフや精霊といった厨二心を非常にくすぐるジャンルもあったが、父の書斎にはその手の本がほとんどなく、あくまでこの世界にはそういうものが存在する程度にしか学べなかった。
まあ、大きくなれば学べる機会はいくらでもあるだろうと思ったので特に気にはしていなかったが、そんな折、父のベクターから「お前は光るものがあるから家庭教師をつけてやろう。しっかりと勉強しなさい」と言われ、家庭教師がつくこととなった。
いきなり、ベクターからそんなことを言われた俺は「もしかして身体強化魔法で書斎に忍び込んで勉強したことがバレた?」と思ったが、もし、それがバレていれば勉強うんぬんの前に「なんで五歳にも満たない子供が身体強化の魔法を使いこなせてるんだ?!」とそっちで驚かれるだろう。
だが、そんなことを言われたことはなかったので別にバレたわけではないのだろう。ベクターが「お前は光るものがある」と言った理由はわからないが、単純にベクターが勝手にそう感じて言っただけだと思い、俺は特に気にすることなく、その疑いはすぐに払拭した。
*********************
——一週間後、家庭教師が我が家にやってきた。
「はじめまして。上級魔法士のレコ・キャスヴェリーと申します」
自己紹介をしたその⋯⋯燃えるような赤い髪をしたツインテールの女の子はものすごい美少女だった。
すげー! さすが異世界! 美少女レベル高っ! やればできるじゃないか、異世界!
などと、一人平静を装いながら心の中で歓喜のファンファーレを鳴らしていた。
それはさておき、俺はベクターが「家庭教師」と言っていたので、てっきり大人が来るものだと思っていたのだが⋯⋯目の前にいるのは、
「カイト。この子はな、わずか六歳にして騎士団に飛び級で特例入団を果たした『天才少女』レコ・キャスヴェリー君だ! 今回は特別にこの子にカイトの家庭教師をお願いした。彼女は魔法だけでなく学問もこの年齢にして騎士学園で学ぶものをすべて習得したすごい子だ。存分に勉強に励むんだぞ」
「お、お父様⋯⋯どうして、そんなすごい人が僕の家庭教師に⋯⋯?」
「うむ。私の親友が騎士団にいてな⋯⋯そいつに少しお願いをしたまでだ。問題ない」
「は、はあ⋯⋯」
よくわからないが、まあ、ベクターが親バカな感じでその親友とやらに「優秀なこの子を家庭教師としてよこしてくれ」とでも無理強いでもしたのだろうか。
それにしても⋯⋯⋯⋯この世界のことをまだ詳しくは知らないが、それなりに勉強をして一般常識は備わっているつもりの俺がはっきりと言わせていただこう⋯⋯⋯⋯絶対に彼女はタダ者ではない。
まず、六歳で『上級魔法士』という称号を持っているとかこの世界の常識ではあり得ないし、そもそもこの⋯⋯『クラリオン王国騎士団』に入るには、十歳になったら入学する『クラリオン王国騎士学園』で厳しい卒業試験をクリアして卒業しないと入れない。
そんな騎士団に騎士学園を入学せずに飛び級で入団するなど、この子は『規格外の天才』なのだろう。いや間違いない。
いやはや、表にはあまり出さないがベクターも結構『親バカ』なのかもしれないな。
こうして、レコが家庭教師としてウチに通うようになった。
*********************
——家庭教師 初日
レコは上級魔法士と言っていたので、てっきり魔法も教えてくれるのかと思ったが普通にこの国の歴史や地理といった勉強の講義をするだけで魔法の講義はなかった。
そこで、レコに「魔法も教えてくれるの?」と聞いてみた。すると、
「はあ? あんた馬鹿じゃないの? 五歳で魔法なんて扱えるわけないじゃない! 馬鹿じゃないの!」
と、一つ上の六歳のレコに言われた。
あと、さっきまでの大人しそうな少女はどこへやら。結構⋯⋯というか、かなり口が悪い。
そして、レコの罵倒はそこで終わるどころか、さらなる追い討ちをかけるようにマシンガン罵倒を始める。
「いい? 魔法を扱えるようになるには、まず魔力をコントロールする必要があるの。でも、この魔力をコントロールする為には、そもそも魔力の存在を感じ取ることができないといけないわけ。つまり、この魔力の存在を体内で感じ取れない間は魔力コントロールの訓練はできないし、魔力コントロールができないと魔法は扱えないの! あんたにそれができるの? 魔力を感じ取ることができるの? 普通どんなに早くても十歳くらいにならないと魔力の存在を感じ取ることなんてできないの! だから、私はあんたに魔法なんて教えることは絶対にないってこと! わかった?!」
最初「口数が少ないシャイな子かな?」と思っていた自分を殴ってやりたいです。あと、理由はわからないが俺のことをかなり嫌っているようだ。
「わ、わかったよ⋯⋯」
「わ・か・り・ま・し・た」
「わ、わかり⋯⋯ました」
「はい、よくできました。じゃあ次、講義続けるわよー」
「⋯⋯」
あーーーーーーーーー!!!!!!!!!
クソ生意気なガキだなぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!!!!!
10
あなたにおすすめの小説
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる