「自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-」

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第一章 幼少編

022「幕間:アシュリー・シュタイナーはかく語りき(4)」

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 お兄様が突然、周囲を見渡し始めた。

 すると、ここから少し離れたところにそびえる大きな岩山をみつけると「お? あの山とかいいな」とか言い出した。私はそれを見て「何をするのだろう?」とふと思っていると、

「アシュリー⋯⋯ちょっとごめんよ」
「ひゃっ!?」

 お兄様が突然私の肩をグッと掴んだ。すると、

「はぁぁぁぁ⋯⋯」
「っ?!」

 お兄様のかざした右手から『火の弾』がいくつも無数に出現した。そして、

「⋯⋯火炎弾ファイヤー・バレット

 ドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!

「きゃあああああああ!!!!!!!!!!!!」
「「「「「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」」」」」

 お兄様の右手から無数の『火の弾』が岩山に向けて放たれた。そのあまりの轟音と衝撃に私もそこにいた男の子たちも悲鳴をあげる。

 モウモウと立ち込めた煙が収まり、視界がよくなったとき、私と男の子たちは衝撃的な光景を目の当たりにする。

「や、山が⋯⋯無くなってる⋯⋯」

 そう。あのさっきまでそびえ立っていた岩山が跡形もなく消えて無くなり、岩山が塞いで見えなかったその先の森が剥き出しになって表れていた。

「い、今の⋯⋯火炎弾ファイヤー・バレットって⋯⋯中級の火属性魔法じゃ? ど、どうして、そんな中級魔法がここまで威力あるの⋯⋯?」

 確かに、お兄様が今放ったのは間違いなく中級魔法の『火炎弾ファイヤー・バレット』だ。でも、こんな威力は見たことがない。お母様の火炎弾ファイヤー・バレットもすごい威力だったけど、お兄様のは威力がまるで違い過ぎる。

 私はさっきまでのいじめられたことはすっかりと忘れ、お兄様の尋常じゃない魔法に呆気に取られていた。でも、お兄様は私の様子など特に気にすることもなく、男の子に話を続けた。

「これでわかったかな? 君たちがもし約束を破ったら⋯⋯⋯⋯容赦しないからね?」
「は、ははははははいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!」
「うん。じゃあ⋯⋯⋯⋯ここからさっさと立ち去れ、ガキども!」
「「「「「う、うわぁぁぁぁ!!!!! ご、ごめんなさいぃぃぃ!!!!!!」」」」」

 こうして、五人組のいじめっ子は一目散に逃げていった。


*********************


「お兄様⋯⋯あの⋯⋯」
「ああ⋯⋯ごめんね、アシュリー。ついカッとなって⋯⋯僕のこと、怖かったでしょ?」
「そっ!? そんなことないですっ!!!! す、すごく⋯⋯⋯⋯カッコよかったです」
「え? ホント? あ、ありがとう⋯⋯たはは」

——帰り道、お兄様はいつもどおりの口調に戻って、いつもの優しいお兄様に戻っていた。

「あ、あの⋯⋯お兄様⋯⋯助けてくれて⋯⋯ありがとうございます」
「ううん。僕の方こそ、ごめんね。アシュリーを見失ってしまって⋯⋯」
「ち、違いますっ! あ、あれは、私が勝手に⋯⋯私が勝手にお兄様の前から姿を消したんです!!」
「え? そうなの?」
「ご、ごめんなさい。それと⋯⋯」
「?」

 私はお兄様にこれまで自分がお兄様に抱いていた心の内を打ち明けた。

「そうだったんだ⋯⋯」
「ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」
「いいよ、別に。だって、あんまり家にいなかったしね、僕。たはは⋯⋯」
「お、お兄⋯⋯様⋯⋯」

 お兄様はいつもの優しい笑顔で私に気遣った言葉をかけてくれた。

「お、お兄様⋯⋯」
「ん? なんだい?」
「お兄様はどうして⋯⋯まだ八歳なのにあれだけの魔法が使えるのですか? しかも、さっき放った魔法は中級魔法の火炎弾ファイヤー・バレットですよね? 私、同じ魔法をお母様が見せてくれたのを覚えていますが、お兄様のは正直⋯⋯お母様とは比べ物にならないほどの威力でした。どういうことですか?」
「ん? んん~⋯⋯」

 お兄様は私の質問に答えようかどうか一瞬悩んだ。

「⋯⋯そうだね。アシュリーは家族だし、僕の大切な妹だから話そうかな」

 そう言うとお兄様は、少しはにかみながら私にすべてを話してくれた。

「え⋯⋯? う、うそ⋯⋯?」
「たはは⋯⋯。まあ、にわかに信じられないよね」
「い、いえ! 大丈夫です、信じられます! だ、だって⋯⋯さっき、この話が本当だと証明するだけの魔法を見せてもらいましたから!!!!」
「あ、そっか。そうだね⋯⋯たはは」

 そう言って、お兄様は照れ臭そうに笑った。

 す、すごい⋯⋯っ!

 お兄様はとんでもない人だった!

 この話を聞いた時、私は前にお父様とお母様が言っていた言葉を思い出した。

——————————————————

「ああ⋯⋯カイトはいいんだ。カイトは私たちの手には負えないから。我々にはアシュリーくらいの天才・・・・・・・・・・・がちょうどいい」

「ええ。だからお兄ちゃんは気にしなくていいのよ、アシュリー。あなたは私たちでしっかりと強くしてあげるわ」

——————————————————

 あの二人の言葉はお兄様を見限って・・・・言った言葉なんかじゃない。

 お兄様は、今の私と同じ五歳のときにはすでに⋯⋯⋯⋯お父様とお母様を超えていたんだっ!!!!

「アシュリー⋯⋯僕がアシュリーにこの事を教えたことは内緒だよ。父上、母上には『まだアシュリーには言わないで』って言われているから」
「は、ははは、はい! お兄様っ!!!!」

 こうして、お兄様の秘密を知った私はそれ以降⋯⋯⋯⋯お兄様を世界一愛するようになりました。


*********************


——後日談として

 ちなみに、あの五人組は約束どおりこの時の出来事を誰にも話すことはありませんでした。

 ていうか、その後、なぜか私のところにきて「アシュリー様!」と言い出して、行くところ、行くところ、ついて来るようになった。そして、気づいたら『アシュリー親衛隊』なるものが発足され、領内の子供教室の最大勢力となっていた。

 あと、その頃から私はお兄様と一緒に騎士学園に通いたいと思うようになったので、飛び級制度を利用するため、剣術・武闘術・魔法はもちろん、勉学にも力を入れるようになった。

 あと、なぜだかあの五人組も「僕たちはアシュリー様の親衛隊ですからっ!」と言って、私と一緒に飛び級で騎士学園に入学するべく一緒に勉強に励むこととなる。

 いずれにしても、私はお兄様のおかげで今のような楽しい環境を手に入れた。

 そんな、カッコよくて優しいお兄様に私は少しでも恩返しをしたい。いえ、どうせなら⋯⋯お兄様の『生涯の伴侶』として側に居続けたい!

 こうして、その日から私の『お兄様の生涯の伴侶として側に居続けるにはどうすればいいか計画』を考える日々が始まった。
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