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第二章 騎士学園編
028「学園長ハンニバル・シーザー」
しおりを挟む「というわけで、カイト少年。これからはもっと自重するように!」
「そうよ。あんたはとにかく自重しなさい!」
二人にメチャクチャ搾られたあと、自重を求められた。
なぜだ? 別に誰もいないところで魔法を試しただけなんだから何も問題ないじゃないか。解せぬ。
「団長、任せてください! 私がカイトを監視しますから!」
「うむ、頼んだよ⋯⋯レコ君」
ちなみに、レコがなぜ教師として学園に赴任したかというと、表向きは『生徒に近い年齢で人気もあるから』ということらしいが、本命は何と俺の『監視役』とのこと。
「『自重』という言葉をどっかに捨ててきたようなあんたには監視役が必要なのは当然でしょっ!」
解せぬ。
「カイト君、カイト君⋯⋯」
「! 学園⋯⋯長?」
「私は君の味方だから」
「⋯⋯え?」
「学園を目一杯楽しんでくれたまえ!」
「?? は、はい。ありがとうございます⋯⋯」
「うんうん」
何だろう? 学園長が二人に聞こえないような小声でそんなことを言ってきた。
とりま、一通りの説教が済んだので俺は教室へと戻った。
********************
「団長。カイトの奴、ちゃんと自重してくれますかね?」
「彼だって自分が目立つようなことをしたら色々困ることくらいわかっているはずだ。大丈夫、彼ならちゃんと自重してくれるよ」
「ふぉふぉふぉ⋯⋯『自重』か。そんな言葉、八歳あたりで置き忘れてきたのぉ⋯⋯」
「え? 学園⋯⋯長?」
「あ、あの⋯⋯ハンニバル⋯⋯様?」
「何じゃ、何じゃ? 久しぶりに面白い奴が現れたではないか?」
ドクンっ!
「「えっ⋯⋯?」」
ごぎぎぎぎぎぎぎぎぎ⋯⋯!!!!!!!!
「「え⋯⋯えええええええええ!!!!!!!」」
学園長ハンニバル・シーザーは右腕の筋肉を急激に盛り上げると指をゆっくりと鳴らす。そして、その表情は『極上な獲物』を見つけた獰猛な肉食獣のそれだった。
「「が、学園長ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ⋯⋯!!!!!!!!!!!」」
「ふぉふぉふぉ⋯⋯。いやいやいや、久しぶりに血が⋯⋯⋯⋯滾るのぉぉぉ?」
「「きゃああああああ!!!!!!」」
学園長ハンニバル・シーザー。
ベクター、ジェーン、アルフレッドが騎士学園を卒業し騎士団へと入団した時代⋯⋯クラリオン王国騎士団最強時代の騎士団長。
当時、腕っぷしの強い者や荒くれ者ひしめくクラリオン王国騎士団において、そんな強者どもをを力でねじ伏せ、頂点に君臨していた男。
また、本人もその比類なき強さと粗暴さで付いた二つ名が『悪虐』。その名は国内はおろか他国までその名を轟かせていた。
そんな⋯⋯かつての『最強の男』がカイト・シュタイナーを見て、再び目を覚ます。
「レコ・キャスヴェリー先生?」
「は、ははははは、はいぃぃぃぃ!!!!!!!」
「カイト君に何か面白いことが起きたら、報告をお願いしますね?」
「イ、イエッサーーーーっ!!!!!!」
「ふぉふぉふぉ⋯⋯。さてさて、今年の一回生はいろいろと有名人が多い。カイト君はこの動天世代の中でどこまで名を上げることができるかのぉ?」
学園長ハンニバル・シーザーは『ニチャア⋯⋯』と不敵な笑みを浮かべた。
********************
学園長室を出た俺は、教室へと向かった。
「これから教室に行くのなんかやだな~」
すでに、学園長室に呼ばれて二十分ほど経過している。おそらく、もう教室では自己紹介も終わり、担任の先生が話をしている頃だろう。
そんな場所に、入学初日から遅れて入るなぞ、ただの自殺行為である。
「かと言って、入学初日にボイコットっていうのはあり得ないよな~⋯⋯はあ」
——『Cクラス』
クラリオン王国騎士学園は一学年ごとに三クラスある。ちなみに俺はCクラス。
入学して最初の一ヶ月は身分でクラス分けをされる。理由は「同じ魔力レベルの生徒同士じゃないと実習や演習でケガをしてしまうため」となっており、基本、王族や貴族は魔力が高いので身分でクラス分けをするというのは理にかなっていると思う。
クラスはAからCまでとなっており、下級貴族の俺はCクラスからのスタートとなる。
ただ、入学して一ヶ月後⋯⋯クラス編成が行われるらしいのだが、そのクラス編成はなんと個人参加によるトーナメント方式の実力勝負をするらしい。『クラス編成トーナメント』というそうだ。
ちなみに、入学して一ヶ月後に開かれるこの『クラス編成トーナメント』は入学した一回生だけのイベントらしく、他の二回生、三回生たちは年一回開催となっている。
他にも、この騎士学園では生徒個人の実力やチームの実力を図るためのイベントもいろいろあるらしい。
「さすが騎士団入団のための学校だけあって、しのぎを削るようなイベントが多いということか」
そんな、入学資料に書いてあったことを思い出しながら歩いているといよいよ教室に着いた。
「⋯⋯はあ。とりあえず、あまり目立たないよう軽く挨拶をしてサッと自分の席にいこう」
ガラ⋯⋯。
俺は覚悟を決めて、教室へ入った。
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