31 / 145
第二章 騎士学園編
031「騎士団幹部候補生を夢見る男」
しおりを挟む【修正箇所】
『第二章 騎士学園編 029「ザック・カーマイン」』
(誤)→「そっか! あ、俺はザック・カーマイン。カスティーノ領の下級貴族。次男だ。ザックって呼んでくれ!」
(正)→「そっか! あ、俺はザック・カーマイン。下級貴族の次男だ。ザックって呼んでくれ!」
ザック・カーマインは「王都で暮らす下級貴族の次男」となります。
********************
俺の名はザック・カーマイン。
今年、クラリオン王国騎士学園に入学した一回生だ。ていうか、今日は入学初日だ。
下級貴族である俺はCクラスに在籍しているが、魔力量には自信があるから来月の『クラス編成トーナメント』でBクラスへの昇格を狙っている。
俺の目標は、二年後の三回生までにAクラスへ昇格すること。卒業試験を好成績でクリアすること。そして⋯⋯⋯⋯騎士団幹部候補生として入団することだ。
俺は次男だから家を継ぐ必要もないし、魔力量が多いということで両親や兄も騎士団での活躍を期待してくれている。だから、俺は何としてでも騎士団⋯⋯しかも幹部になって家族に「自慢の息子だ」と喜んでもらいたいんだ。
カーマイン家は王都クラリオン・シティーで商会をやっている。クラリオン・シティーでは中規模の商会だ。
ただまあ、中規模の商会だと普通は他の商会に目をつけられたりして商売の邪魔とかされたりすることが多いが、カーマイン家は上級貴族のカスティーノ家がバックにいるおかげで、他の商会に目をつけられることなく稼がせてもらっている。
そういう背景がある俺にとって、今年騎士学園に入学したカスティーノ家の次男とは小さい頃からの知り合いだ。知り合い⋯⋯というよりも手下に近い。いや⋯⋯パシリといったほうが正しいな。
他にもパシリみたいな奴らはいっぱいいたが、俺はうまいことそいつに取り入って右腕的な立場になれたから、特に非道いことをされたことはない。
ただ、今回の⋯⋯カイト・シュタイナーのように、誰かを『リンチ』するときは、俺が中心となって計画し実行するよう命じられていた。
騎士団の幹部候補生入団を目指す俺にとってこの仕事はとても辛かった。だが、当然、カスティーノ家には逆らえないので俺は奴の命令通りにこれまで動いていた。
一応、その場合はできるだけ相手に非道いケガを負わさないよう手下には言って聞かせていた。せめてもの罪滅ぼしみたいなもんだ。
そして、今回⋯⋯騎士学園に夢と希望を持って入学した初日に、そいつは俺に「カイト・シュタイナーのリンチ」を命じた。
正直、騎士学園に入ってからはそういう仕事をするのが嫌だったので、俺はそいつに「騎士学園に入ってこの仕事がバレたら退学になるからもう今回限りにして欲しい」と頼んだ。
すると、そいつは「断る。俺の命令に逆らうことは許さん。逆らえば、カーマイン家との関係はすべて反故にする」と脅してきた。
絶望した。そして同時に俺は⋯⋯⋯⋯今後そいつには絶対に逆らえない『駒』としての人生を送ることになるのだと悟った。
人生に絶望したその後の俺は、ただただ、そいつの命令通りに、淡々といつも通りに、カイト・シュタイナーをリンチする命令を実行に移した。
********************
——二十分後
買い物を終えた俺は屋敷へと帰ってきた。
「おーい、お前ら、帰ったぞ。終わったか?」
扉を開けると、目の前には縄で縛られた⋯⋯⋯⋯ボコボコに顔を腫らした手下たちが座らされていた。
「⋯⋯へ?」
俺は目の前の光景に一瞬何が起きたのか理解できず、思わず素っ頓狂な声を漏らす。すると背後から、
「やあ⋯⋯ザック? 何を買ってきたんだい?」
「っ!?」
俺はいきなり背後から声をかけられ驚いたが、反射的にその場所からバックステップで距離を取る。すると、
ガチャリ⋯⋯。
俺の背後から声をかけたカイト・シュタイナーがゆっくりと扉の鍵を閉めた。
「カ、カイト・シュタイナー⋯⋯ま、まさか、お前がこれを⋯⋯?」
「ああ、そうだ」
「っ!?」
俺は驚いた。
こいつらを一人でやっつけたということにも驚いたが、それよりもカイト・シュタイナーがさっきとはまるで別人であるかのような⋯⋯⋯⋯その佇まいに驚愕した。
「お、お前⋯⋯本当にさっきまでの⋯⋯カイト・シュタイナーか?」
「ほぉ? お前、そこに驚いているのか? 中々、見どころあるな」
「⋯⋯」
な、何者だ、こいつ?
1
あなたにおすすめの小説
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる