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第二章 騎士学園編
033「お・し・お・き」
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「な、何が⋯⋯一体、何が起こったんだ?」
ザックは屋敷の中の現状に困惑していた。
「いや、何が⋯⋯て、見ればわかるだろ? 俺がこいつらを返り討ちにしてやったんだよ」
「⋯⋯ま、まさか」
ザックに説明をしたものの、俺がこいつらを倒したということが想像できないのか、ただ呆然としていた。しかし、
「⋯⋯なるほど。さては、カイト・シュタイナー。お前、魔道具を持っていたんだな? どんな魔道具かはわからんがやるじゃないか」
「魔道具?」
そういえば、この世界には『魔道具』なるものがあったな。使ったことないけど。たしか、騎士学園には魔道具の研究棟もあったから今度、見に行ってみよう。ま、そんなことよりも今は、
「一応、言っておくが魔道具なんて持っていないぞ? 身体強化魔法を使っただけだ」
「なっ?! 身体強化⋯⋯だと! お前、魔法使えるのかっ!!!!」
ザックが俺が魔法を使えることにすごく驚いている。
え? 騎士学園に入学するんだから魔法使えるでしょ? 違うの?
「⋯⋯普通、騎士学園入学前から魔法が使える奴は王族か上級貴族だけだが、ごく稀に優秀な下級貴族や平民で魔法を使える奴が出てくることもある。だが、そんな奴は滅多にいない」
おっと。どうやら心の声が漏れてたようだ。
「ふーん、そうか。で、お前はどうするんだ?」
「? 何がだよ?」
「いや、何が⋯⋯て、お前も俺に戦いを挑むのか? それとも俺に謝るのか?」
「謝る? 俺が? お前、なに調子に乗ってんだ? ま、こいつらを倒したのは驚きだったが、それは、ただ単純に驚いただけで、別にお前にビビったわけじゃねー」
「ほう?」
「それにお前、その態度や言葉遣い⋯⋯だいぶ猫かぶっていたってわけか。中々、良い性格してんな?」
「お前と一緒にすんな。この『弱い者いじめ』のクソ野郎」
「な⋯⋯っ!?」
「お前、恥ずかしくないのか? 猫かぶっていたさっきまでの俺は、周りからしたら『弱そうな奴』に見えるよな? そして、そんな弱そうに見える俺をお前は数人がかりでリンチをしようとしたわけだ? しかも、自分でやるんじゃなく、人にやらせる⋯⋯⋯⋯お前、それでも男かよ?」
「う⋯⋯っ!?」
「騎士学園に入学したってことは騎士団に入るためなんだろ? はぁ⋯⋯お前みたいな奴が今の騎士団に多いのだとしたら、そりゃ、今の騎士団が昔に比べて非道くなっているっていうのは事実なんだろうな。はぁ、しょうもな⋯⋯」
俺は大きなため息を吐く。
「う、ううう、うるさいっ! お前に何がわかる!? さっきから、ペラペラペラペラ⋯⋯とふざけたこと抜かしやがって! それにな、お前、身体強化を使えるからって調子に乗っているようだが、俺も身体強化は使えるんだからな!」
「ほう?」
「それだけじゃない! さっき話たろ? 普通、入学前から魔法使える奴は王族か上級貴族くらいだが、ごく稀に優秀な下級貴族や平民でも使える奴がいると。そして、俺がその⋯⋯魔法を使える優秀な下級貴族だ」
そう言って、ザックがドヤァする。
俺は再度、大きなため息を吐く。
「はぁ~~~~~~~⋯⋯ま、いっか。初めはこんな奴でも⋯⋯」
「何? お前、何を言って⋯⋯」
「⋯⋯とりあえず、お前ボコボコにするわ。話はそれからだ」
「はん! やってみろ! ていうか、いいかげん鬱陶しぃんだよ、お前! 身体強化っ!」
キーン。
ザックは身体強化をかけると同時に俺の懐に入ってきた。
「おらぁ! これで悶絶しなぁぁぁ!!!!」
そうして、ザックが俺のヨコ腹に重い一撃を放つ。
ドン⋯⋯!
「⋯⋯え?」
ザックが重い一撃のつもりで放った攻撃。俺は特に防御もせずに打たせる。すると、俺の体に拳を入れたザックのほうが顔面蒼白になった。
「ま、まったく⋯⋯手応えが⋯⋯ない⋯⋯」
ザックは、まるで何十倍もある巨大な生き物に拳を入れたような⋯⋯そんな、圧倒的な何かに拳を入れた感覚を味わい、意味がわからなくなりその場で固まっていた。
「は~~~~~~~⋯⋯お前程度の奴が騎士学園の下級貴族でマシなほうなのかよ。この国、やばいだろ?」
そう言って、俺は、
ガシっ!
ザックの頭を雑に鷲掴みし、壁へとぶん投げる。
バキャァァァァァァ!!!!!!!!!
「がはっ!!!!」
ザックがぶつかった壁は衝撃で穴が開く。そして、ザックはヨロヨロとしながら何とか立ち上がる。
「はぁ、はぁ、はぁ⋯⋯⋯⋯ウソ⋯⋯だろ?」
ザックは、カイトの圧倒的な強さに衝撃を受けた。実際、ザックのように騎士学園入学前から魔法を使える下級貴族というのは滅多におらず、その為、入学前から魔法が使える⋯⋯魔力コントロールができているザックは他の下級貴族に比べればかなり優秀であることは間違いない。
そんな、ザックがショックを受けるのも無理もない。ただ⋯⋯⋯⋯相手が悪かっただけなのだから。
「というわけで、とりあえず⋯⋯」
カイトはフラフラのザックの前に立ち、
「お・し・お・き⋯⋯だ!」
「⋯⋯ひっ!?」
「ハイ! ハイ! ハイ! ハイ! ハイ! ハイ! ホォォォォ⋯⋯⋯⋯アチョォォォォォアアアアっ!!!!!!!!」
俺は気絶しない程度に、ザックに華麗なるジークンドーをお見舞いした。
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