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第二章 騎士学園編
046「学習能力ゼロの男」
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『002「異世界デビューは生後六ヶ月」』
マサさんのコメントで「ビルド、どうやって知ったんだろ?」というのがあって、確認したら「あっるぅえぇぇぇ~~~~! ホンマや~!」となりましたw
ということで、身体強化の件は、
「父親が庭で稽古をしていたのを覗き見て、それを見よう見まねでやったらできた」
ということにしました(テヘペロ)。
完全に失念でしたw ご報告ありがとうございます。
設定甘々な拙作ですみませんが、これからも皆様、応援よろしくお願い致します。
********************
それにしても、あの同い年とは思えんガス・ジャガーも『ジャガー財閥』とかいう何か凄そうな家柄の御曹司なんだな。そんなのにちょっかい出すどころか、目をつけられるだけでも、かなりやばいんだろうな~。
そうか~。それじゃあ、迂闊には手を出せないな~(棒)。
ザックはイグナスのことが心配だということで、レコとの魔法指導の列から抜けてイグナスを探しにいった。そして、俺は、
「すみません。お話があるのですが⋯⋯」
「あぁ? なんだ、お前?」
俺は舞台近くで陣取っていたある男たちに声を掛けた。
「どうも。改めまして、下級貴族のカイト・シュタイナーと申します!」
「お前、さっきの⋯⋯」
そう、あのガス・ジャガー率いる三人組に声を掛けた。
********************
「何のようだ?」
子分その1が訝しげな顔をしながら声を掛けてくる。
「あの、ですね⋯⋯僕は下級貴族ではあるのですが、この授業で自分の実力を確かめたいと思って、それでAクラスの方にぜひ胸を貸していただきたいと思いましてお声を掛けさせていただきました」
「なんだ~? お前舐めてんのか~? 何、気軽に俺たち上級貴族に声掛けてんだ、あぁ~?」
子分その2が、さっきと同じように横柄な態度で絡んでくる。
「⋯⋯待て。おい、カイト・シュタイナー⋯⋯といったな。なんでお前、俺たちに声を掛けてきた?」
ボスのガス・ジャガーは、少し俺のことを睨みつつ、少し警戒した様子を見せる。
「その⋯⋯さっきイグナス様との話を聞いて、すごい強い人たちだと思ったので思い切ってお声を掛けました」
とりあえず、ここでは変に警戒されないよう俺は「イグナス様」と敬称を使って話す。
「それはつまり⋯⋯自分の力に自信があるってことか?」
「はい! こう見えて、騎士学園に入る前から魔力コントロールを習得して、魔法も使えるようになりました! あ、僕、小領地のシュタイナー領の領主の息子なんですが、そこで腕を磨いていたのですが、自分の力がどれほどのものか知りたくて⋯⋯」
「なんだ~? それって、てめえ⋯⋯俺たちに勝てるとでも言いたいのか!」
子分その2が噛み付いてくる。
「い、いえ! 滅相もありません! 逆です! 自分の力を試すなら格上のAクラスの⋯⋯できれば強い方に実力を見ていただきたいと思いまして!」
「それだったら、イグナスに相手してもらえばいいのでは?」
子分その1が、さらに訝しげな表情で俺に聞き返す。こいつは、けっこう侮れん奴だな。
「しょ、正直⋯⋯その⋯⋯言いにくいのですが⋯⋯イグナス様よりもAクラスのガス・ジャガー様たちに見ていただく方が⋯⋯いろいろと今後のことも考えて⋯⋯その⋯⋯」
「はは~ん? つまり、お前⋯⋯俺たちの仲間に入りたいと、そういうことか?」
「え! あ、いや、その⋯⋯たはは」
「ふん。お前、先ほどイグナスに助けられたというのに、そんなにすぐに手の平を返すのか?」
子分その1がそう言うと、蔑んだ目で「ゲスが⋯⋯」とポツリと呟く。しかし、
「まあまあ、ディーノ、そう言うな。下級貴族なら誰の下につくかは『大事なこと』だ。今の時期からそこまで考えて積極的に動くだけ、こいつはある意味、見どころがある」
「⋯⋯そうでしょうか。まあ、ガス様がそういうのなら異論はありませんが」
子分その1は納得していないようだが、ガス・ジャガーは意外と気に入ってくれたようだ。
「いいだろう。じゃあ、早速見てやる。舞台に上がりな」
「は、ははは、はい! ありがとうございますっ!」
そうして、俺とガス・ジャガーたちは舞台の上へと上がった。
********************
「はーい。では、ここでは私が皆さんの力をいろいろと見てから指導しますので、まずは一人ずつ舞台に上がってくださーい」
レコのいる舞台でも、ちょうど魔法指導が始まっていた。
「お、おい、あれ、見ろよ⋯⋯」
「え? あ、あれって⋯⋯」
「さっきの⋯⋯レイア姫様にお声掛けされた奴じゃねーか!」
「た、たしか、下級貴族のカイト・シュタイナーだっけ?」
「ちょっと待て! カイト・シュタイナー以外に舞台にいる奴って、あの、ジャガー財閥のガス・ジャガー様じゃないか!」
「本当だ! 側近の上級貴族のディーノ・バレンチノ様とカート・マロン様も一緒だ!」
へー。手下その1は『ディーノ・バレンチノ』で、手下その2が『カート・マロン』ね。野次馬諸君ありがたう。
「え? カイト・シュタイナー?」
レコは俺の名前が野次馬から聞こえたことで、俺のいる舞台に視線を向ける。
(あ、どうも~)
とりあえず、笑顔で手を振ってみた。
「はぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~??????!!!!!!」
レコが予想通り、絶叫した。
********************
「イグナス」
「ザック⋯⋯」
俺はイグナスを見つけた。イグナスは教室に戻っていたようだ。
「イグナス、授業には出ないの?」
「出れるかよ! ガスの言う通り、俺は実際、上級貴族の『恥』であることに変わりはないからな」
イグナスは、昔から上級貴族の中で唯一魔力量が少ないことをずっと嘆いていた。
「その証拠に、俺の親や兄貴もそれで俺のことを煙たがっていた。そうじゃなきゃ、上級貴族の子供が平民と下級貴族が通う『子供教室』なんかに入らされるわけないだろ?」
「⋯⋯イグナス」
確かにイグナスの言う通り、彼は親や兄からいつも厳しい言葉を言われたり、時には殴られたりもしていたようで、たまに、その事を俺に愚痴ることがあった。
「まー、そのおかげでお前と出会うことができたがな。それだけは、親や兄貴に感謝してるよ」
「っ! あ、ありがとう⋯⋯」
まさか、イグナスの口からそんな事を言われる日が来るとは思わなかった。
本当に、本当に、イグナスとこうして仲良くなれてよかった。もし、カイトがいなかったら俺もイグナスもお互いのことを誤解したままで、こんな信頼関係を築くこともなかっただろう。
本当にカイトには感謝しかない。
「お、おい、ザック! ここにいるってことはお前⋯⋯レコ・キャスヴェリー女史の魔法指導の列から抜けてきたのか!?」
「まーね」
「馬鹿かっ! せっかくの機会なのに! 今すぐ戻れよ!」
「いーよ。それにレコ先生はCクラスの魔法授業の担任だからね。今度、時間みつけて魔法指導をお願いするよ」
「あ? お前、今、レコ・キャスヴェリー女史が担任だってこと自慢したな?」
「え? いやぁ~、そんなことないよ~(棒)」
「嘘つけ! 目が笑ってんだよ! あと、棒読みし過ぎだ、この野郎!」
「あ、バレた?」
「チッ! ふざけやがって⋯⋯」
「じゃあ、イグナスもCクラスに移動すれば?」
「できるわけねーだろ!⋯⋯ったく」
「⋯⋯ふ」
「⋯⋯ふふ」
「「あはははははは⋯⋯!!!!」」
少しは、ザックの気分も晴れたかな?
「ところで、カイトはどうした?」
「カイト? さあ?」
(あいつ⋯⋯ちょっとくらいは、俺のこと心配しろよ⋯⋯(ボソ))
「え? なんか言った、イグナス?」
「何でもねーよ!」
ざわざわざわざわ⋯⋯。
「ん? 何か外、騒がしくねーか?」
「そう⋯⋯だね⋯⋯」
イグナスの言葉を聞いて、俺はさっきまでいた屋外武闘場に目を向けようとした。すると、
「はぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~??????!!!!!!」
と、女性の叫び声が響いた。
「な、ななな、何だ!?」
「い、今の声って、レコ・キャスヴェリー女史の声じゃねーか?」
「た、確かに。でも、一体何が⋯⋯?」
その時、俺とイグナスの頭にある男の顔が浮かぶ。
「ま、まさか⋯⋯ね?」
「いやいやいや、ないない。それはないって! いくらなんでも、こう何度も何度も目立つようなことなんてしないって!」
「だ、だよねー、ははは⋯⋯」
「「⋯⋯」」
俺とイグナスは、全力で屋外武闘場へと戻った。
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