「自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-」

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第二章 騎士学園編

114「プロポーズと大物出現(後編)」

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われはリーガライド獣国、女王『アン・リーガライド』であーーーるっ!!!!」

 真紅のライオンヘアーをなびかせ、ド派手に登場した二メートル近い巨躯のリーガライド獣国女王アン・リーガライド。そのアン女王が第一声を放つと、会場全体がリーガライド獣国の女王の出現にザワザワと騒ぎ立った。

 しかし、そんな周りの雰囲気にもお構いなしに、アン女王は俺のところへきて話し始める。

「貴様が、あの・・カイト・シュタイナーだな!」
「え? どの・・?」
「え? だ、だから、あの・・⋯⋯だよ。え? あ、あれ? 何だっけ?」
「⋯⋯」

 おおーっと。これはもしや⋯⋯天然&脳筋女王様なのではっ!? 獣人国、キャラ濃いな~。

 そんなことを思っていると、舞台横から『黒ヒョウ』っぽい獣人が現れた。こちらも『人間寄りの獣人』のようだ。もしかすると『人間寄りの獣人』がこの世界の獣人の姿なのかな?

「し、失礼します! アン様、どうして舞台に飛び降りたんですか!? 交渉・・は試合が終わってからって言ったでしょうが!」
「ご、ごごごご、ごめんなさいぃぃ~~!!!!」

 荒々しい風貌と威勢のある存在感を放つアン王女であるが、しかし、この執事っぽい黒ヒョウ風獣人にはペコペコ頭を下げまくっていた。あんな大柄な女王が自分よりもだいぶ小柄な黒ヒョウ風獣人に頭を下げる光景がかなりシュールだ。

 一通り、この黒ヒョウ風獣人がアン女王を厳しい口調で注意して黙らせた後、挨拶をしてきた。

「お、お初にお目にかかります! わたくし、アン女王様の筆頭執事『ライラ・バラライカ』と申します。アン女王が勝手に舞台に飛び出し、場を荒らしてしまいまして誠に申し訳ありませんでした!」

 黒ヒョウ風獣人⋯⋯『ライラ・バラライカ』が学園長にそう言って深々と頭を下げる。

「いやいや、少し驚いたがよいよい。ところで、ラディット国王には許可をもらって注意・・を受けて我が国に入っていると思うが、何用で舞台に飛び出したのですかな?」

 学園長は以前、好々爺然で穏やかな口調で問いかけているが⋯⋯⋯⋯目が笑っていなかった。後、言葉のトーンが少し低い。

「は、はいぃぃっ!! あ、あの、そこの、カイト・シュタイナーの強さを見て『まさに予言書どおり・・・・・・の⋯⋯!』と、女王様が興奮してしまいまして⋯⋯」
「え? 予言書?」

 何だ? 俺を見て『予言書どおり』って⋯⋯⋯⋯どゆこと?

「⋯⋯何とか必死で抑えていたのですが、私では女王様を押さえることができず、結果、このような事態になった次第でございます! それで⋯⋯」

 さっき、アン女王が来て『おまえがあの・・⋯⋯』と言っていたのが、この『予言書』の話だったってことか。ていうか、その予言書っていうのに何で俺が出てくんの?! で、それと、サラ・ウィンバードの『求婚宣言プロポーズ』に何の関係が?! 

「そこまでっ!」

 学園長の迫力に怯えたライラが、必死に弁明を図るべくすべてを語り始めようとしたとき、それを学園長がすぐに静止⋯⋯中断させると、その後、突然、学園長が筆頭執事ライラとアン王女の方へ行き、耳元に小声で話し始めた。俺は、すかさず身体強化ビルドを両耳へと全力展開する。

「その話は後じゃ。今はそのではない」
「え?」
「その話はある程度は聞いておる。それはまたじゃ。あと⋯⋯⋯⋯アン!」
「む? なんだ、ハンニバル爺・・・・・・?」

 え⋯⋯!? リーガライド獣国の女王に『アン』って呼び捨て⋯⋯! あ、でも、アン女王も『ハンニバル爺』って⋯⋯。二人は知り合いなのか?

「お主はもう少し、耐えることを覚えろ! ラディットがてっきり止めていると思っておったが⋯⋯」

 いや、ラディット国王も呼び捨てかよ。やっぱ、学園長タダ者じゃねーな。

「フハハ。ラディットごときが我を抑えられるなど、百年早いわー!」
「あー、お前は本当に⋯⋯。とりあえず、裏にいるラディットのところに連れて行け、ライラとやら。それ・・についてはちゃんとワシがタイミング・・・・・を考えておる。心配せんでもよい。まったく⋯⋯まさか、舞台に登場するとは思ってなかったぞ」
「はっ! ハンニバル様、お手を煩わせてしまい、申し訳ございませんでした!」

 学園長の口から『それについては話すタイミングを考えている』と『舞台に登場するとは思っていなかった』いう発言を聞くに⋯⋯つまり、学園長はアン女王がクラリオンにいることは知っていたけど、舞台に上がってきたのは想定外だったということか。

 それにしても、この『リーガライド獣国の件』といい『ヤマト皇国の件』といい、学園長はもちろんだがラディット国王も含めて、本当にこの大会中⋯⋯または終わった後にでも、何か『大きなこと』をするのかもしれないな。まあ、なにかはわからんが。

「さあ、アン女王、行きますよ!」

 ムンズ! ズズ⋯⋯ズズズ⋯⋯!

「コ、コラ、離せ⋯⋯ライラよ!? 我の話はまだ終わってはおらぬ⋯⋯」
「いいえ! 終わりです! とりあえず裏にいるラディット国王のところへ行きますよ。サラ、あなたも行きますよ」
「はい、わかりました」

 そう言うと、ライラは自分よりもだいぶ体格のあるアン女王を、グイグイ引っ張って強引に舞台裏へと引きずっていき、サラ・ウィンバードはその後ろをヒョコヒョコとついていった。

 うーむ⋯⋯シュール。

 それにしても、あれだけ体格差のあるアン女王を一人で軽々と引きずっていくなんて、すげーな⋯⋯筆頭執事ライラ・バラライカ。


********************


「あー諸君。先程の女性はご存知の通り、リーガライド獣国の女王アン・リーガライド女王じゃ。今、舞台に登場したのは、自国の留学生サラ・ウィンバード君のカイト・シュタイナー君への告白と、さらにその告白にカイト・シュタイナー君が断ったような発言をしたため、つい、カッとなって舞台に上がったらしい」

 学園長が騒ついている観客に対し、アン女王の登場の真意を説明した。

 う、うーん、まあ⋯⋯苦しいよね、その理由言い訳

「今は舞台裏にて控えておられるラディット国王がアン女王にいろいろと説明しておる。よって、先程の件は解決である。この話はこれで終わりじゃ・・・・・・・・・・・・。では次に⋯⋯」

 そう言って、学園長が見るからに強引・・に話を終わらせた⋯⋯などと、他人事のようにツッコミを入れていると、

「⋯⋯これより、準決勝の対戦カード・・・・・についての話をする」
「っ?!」
「準決勝進出者であるイグナス・カスティーノ君、リュウメイ・ヤマト君も舞台へ」

 突然、学園長の口から『準決勝の対戦カードの話をする』ということとなり、急遽、イグナスとリュウメイ・ヤマトを舞台へ呼び出した。
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