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2.辺境の密会、魔女の耳は獣耳
Remember-51 ――/(無断で)踏み入る魔女の秘密
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頭上から地上を照らしていた月光は、生い茂った森の中では届かない。唯一の光源は手にしたランタンだけだ。
静かな村を通り抜けて山奥の森をある程度歩いた頃、休憩のつもりで足を止めて大きく空気を吸い込んだ。温まった体に冷たい外の空気が心地良く馴染む。
「ハァ、ハァ……結構長く歩いた気がするよ。足場が悪いから転ばないよう神経使う分疲れるな」
シン……、と静寂に声が溶け込む。
ああ、そうだった。今俺のポケットの中に彼女は居ない。他愛無い会話のつもりで口にした言葉も今はただの独り言に成り下がってしまう。
「……ッ!」
パチン、と頬を両手で叩いて意識を保とうとする。きっと疲れて意識がちゃんとしていないから、今みたいな独り言を口にしてしまったのだろう、と歯を食いしばって痛みを紛らわす。
(……こんなことをしてる場合じゃない。行こう)
木の根に足を取られないようにランタンで照らしながら、慎重に暗い森を進む。昼間は涼しい木陰に感じられたこの森も、夜になると不気味な雰囲気を感じてしまう。まさしく魔女の住む森だ。
……俺は今、その魔女――アザミさんの秘密について勝手に迫ろうとしている。自分を自覚したあの時から信用してきた直感が、今じゃないと駄目な気がしたからここまで歩いてきたのだが、本当にこんなことをして良かったのかと迷いが頭の片隅に居座っていた。
「……やっとこさ着いた」
はぁ、と薄く白い息が視界を覆う。窓から明かりが漏れているからまだ家主は起きているらしい。
「……アザミさん、居ますか。ユウマです」
三度大きめのノックをして声をかける。
……返事は無い。戸の向こうからは物音一つしない。どうやら今、家主は手が空いていないらしい。そうなれば家主が気がつくまで繰り返すか、日を改めて訪ねるべきなのだろう。
ただ、なんとなくドアノブに手をかけてみると、呆気なく戸は開かれてしまった。
「――――」
息を呑む。高揚感に近い緊張感で手の先がビリビリと痺れている感じがする。その指先の震えに任せて、俺は戸を完全に開いた。
室内は明かりが灯っているのに無人だ。いや、家の何処かには居るのだろうけどこの部屋には居なかった。
「……すみません、アザミさん」
小さく謝罪の言葉を呟きながら室内に入って戸を閉める。その言葉を口にする意味など無いけれど、罪悪感はそれだけで少しだけ引っ込んだ。
ネーデル王国の城の時といい、夜間にこんな感じに忍び込んでばかりな気がする。今回は忍び込むのではなく、ここの家主に会うのが目的なのだが。
昼間にも少し見たが、相変わらず散らかっている部屋だ。何台か置かれているテーブルの上には何かを記した紙とかよく分からないガラス製の道具が隙間なく置かれている。
雰囲気から直感的に言うなら、ここは何かの実験室か、あるいは工作室のように感じられた。
「こんな時、ベルが居てくれたら何か分かったのかもしれないけど……」
通りすがりに設計図のような紙の表面を撫でながら、ポツリと呟く。
……アザミさんはこの奧に居るのだろう。彼女に会って、“あの時”の件について聞かなければならない。そしてそれは、今――シャーリィとか他の人が居なくて、相手に言い訳を用意する時間を与えない――この状況、この時でなければ叶わない。
だから俺は、緊張で早まる鼓動を押し殺して、奧に足を進めた。
(客室は確か、この突き当たりの部屋だったかな……)
それ以外の部屋を知らないから、もう行き当たりばったりな方法で訪ねるしかない。別に隠れて秘密を暴こうだとか、何かを盗み出す訳じゃない。堂々と声をかけながら歩いて行けば、いずれ彼女に会えるだろう。
(……? 物音がした……?)
微かな物音に足が止まる。聞こえたのはほんの数歩先にある戸の向こうから。
恐らくだが、この先にアザミさんが居るのだろう。俺は戸の前に立って戸に手をかけ――ようとしたところで、ふと冷静になった。
(……勝手に家に入り込んで、ここで突然戸を開けて入るのはどうなんだろうか)
もしも自分がそんなことをやられたら酷くビックリすると思う。
その上、“お前の隠していることを話してくれ”だなんて問い詰められたら――うーん、さては今から俺がやろうとしていたこと、良くないことだな?
(……ここから声をかける……のも驚かせるよな。一回出直すべきか……? ま、マズイ、どうすりゃ良いのかわからなくなったぞ)
駄目だ、もしかしなくても俺はベルが居ないと決断力と判断力がてんで駄目だ。どうすれば良いのか分からなくて体が固まってしまう。
――そんな躊躇をしていた隙に、ガラリと引き戸が向こう側から開かれた。
「え――――」
「――――あ」
――空気が静止した。お互いバッタリと、こんな状況で出会ってしまって誰一人として身動きが取れない。
唯一、彼女の濡れた髪から滴り落ちている水滴だけがこの場で動ける存在だ。
……分かりやすく、包み隠さず現状を表現しよう。目の前には、タオル一枚で体を包んだだけのアザミさんの姿があった。湯気のような熱気を肌で感じるから、どうやらついさっきまでお湯に浸かっていたらしい。
……詰まるところ、風呂上がりのとても無防備な姿を彼女は晒していた。
「……ゆ、ユウマ……さん……?」
「…………」
呆気を取られた。俺の視線はすっかり釘付けになっていた。
艶やかな毛並み。髪の毛ではない、言うならば四足の獣の尻尾。
彼女の背後――腰ぐらいからだろうか――から出ているそれは、ゆらりと揺れ動いている。
「……その、頭」
そしてなにより、彼女の頭の上にはまさしく、獣のような三角形の耳が生えていて――
「――――き」
震えるように息を吸い込んで、アザミさんは小さく声を漏らす。
「――――うっ」
「ッ……? んえ、えっと……ユウマさん……?」
「うおぉおわぁああああああどッ、動物の耳と尻尾がぁああ――!?」
「き……きゃあああ!? なっ、なんでユウマさんの方が悲鳴を上げてるんですかーッ!?」
■□■□■
「……それで私の家へ訪ねに来た、という訳なんですね」
……場所は変わって、今朝も入った草の匂いのする客室。あれからアザミさんは着替えを済ませて、生地の薄い和服を着て対面に座っていた。
「はい……今更ですけど、色々と冷静じゃなかったと思います。もっとこう、良いやり方があっただろうに……すみません。いや、ほんっっっとすみません……」
「あわわ、そんなに謝らなくて大丈夫ですよ! ……コホン、一先ず先程の件は水に……は流せませんよね……あはは」
話によると彼女は寝る前に湯浴みをしていて、俺がその直後に出会わせてしまった……という感じらしい。その姿を見てしまったこと、無断で家に入った事に関しては意外にも怒ってはいない様子……だが、
「……あの時、帽子に手を伸ばした時に距離を取ったのは“それ”を隠すためだったんですね」
「……はい。悪気はなかったのですが、つい体が動いてしまったと言えばいいのでしょうか……気を悪くしてしまったのなら、すみませんでした」
今の彼女は室内だろうと脱がなかった魔女帽子を被っていない。その頭の上には大きな獣の耳が二つ、ぴょこんと生えていて時折動いていた。
そして、腰の部分からは獣の尻尾が生えていて――和服には尻尾を通す専用の穴が空いているらしい――こちらも同様に飾りなどではなく、彼女の意思で揺れ動いている。
「獣の、耳?」
「はい。本物です。動かせますよ」
「え、ええ。さっきから動いてますね……頭の耳も尻尾も……」
頭の上に生えた耳はピョコンと主張し、尻尾を指さすとフワリと波打つように動いて主張していた。
見慣れないモノだからついつい視線で動きを追ってしまうが、それでは埒があかないのでキチンと彼女の目を見て会話を再開する。
「ちなみに聞きたいんですけど、どうして隠していたんですか? 何かしら見せたくない事情があるとだけでも話してくれていれば、こんな変に詮索することも無かったと言いますか……ああいや、違うッ、アザミさんのせいだって言いたい訳じゃなくて……ええっと」
……そもそも、こんなの人の家に断りなく入っておきながら言える台詞じゃないのだが。
「私がこの耳と尻尾を隠していたのは、単に不要な混乱を避けたかったからです」
「? まあ確かにビックリはしましたけど……流石に混乱まではしないのでは?」
「……転生者伝説の話を思い出して下さい。“多大な加護より生まれし、獣の証を持ちうる人”――その獣人族の話を」
「……? いや、すいません。そもそもその転生者伝説? ってやつを俺はよくわかってないんです。なんだっけ……世界の混乱を正して言語を統一した~って部分は何度か聞いてるんですけど、それ以外の話はこれっぽっちも」
シャーリィが何度か話していた記憶がある。が、話していたこと以上の内容を俺は知らない。
その転生者伝説に獣人族ってのが関わっている話も、そもそもそんな種族が存在していたことも今初めて知った。そもそも種族って概念自体を今初めて知――いや、ギルドマスターが長耳族だとか名乗ってた覚えがあるか。
「転生者伝説を……ご存じないのですか?」
「あー、ごめん。常識が無くて会話の成り立たない奴だって思うかもしれない。言い訳みたいになるけど実は俺、記憶喪失で色々忘れているみたいで……」
「あっ……い、いえ! そういうことを考えていた訳ではなく……記憶喪失云々は気になりますが、それは後で聞かせて頂くとして」
両手を突き出してブンブンと慌てて振って否定を示しながら、アザミさんは話す。
……なんだろう、普段はお淑やかで清廉な印象なのに、慌てたり張り切ったりすると容易くボロが出ると言えば良いのか。
彼女は本来、そんな性質の人らしい。表面上では恐らく、彼女が何度も口にしている“大和撫子”というものを振る舞っているらしいが。
いや、表面上でしかまだ振る舞えていないから“見習い”を自称しているのか――
「そういうことなら、もっと早くユウマさんに打ち明かしていればよかったって思っていたんです。私一人で、変に緊張して話すのを怖がってて……あはは、馬鹿みたいですね」
「秘密を明かすのが怖いのは馬鹿じゃないと思いますよ。むしろ平然と後先考えずに記憶喪失だーって話す奴の方が馬鹿みたいじゃないですか?」
「……ふふっ、確かにそうかもしれませんね。それなら、お互いお馬鹿同士ってことで」
「お馬鹿か……よく相方に言われてますよ」
そんな会話を交えてお互い笑みを浮かべる。
後ろめたさ故にお互い取っていた、たった一歩の間合いをようやく踏み出して近づくことが出来たような、そんな雰囲気。
確かにシャーリィの言う通り、アザミさんは秘密を隠していた。でもそれは、彼女なりに考えた上で我々のことを思っての判断なのだと、今この会話で確信した。
「……アザミさんがもし良かったらですけど、シャーリィともこんな感じに仲良くしてあげてください」
「シャーリィさんとも、ですか? 私は別に拒絶だとかそういうつもりで接した筈ではなかったのですが……まさか、そんな風に感じられてました……!?」
「ああいや、妙に律儀というか丁寧な人だな~とはシャーリィ共々感じていましたけど。そうじゃなくて、彼女の方がちょっとピリピリしていると言うか、今まで顔を合わせたことのない知人って立ち位置の相手に慣れてないと言えば良いのかな……」
「あー、シャーリィさんのお気持ちはちょっと分かりますね……実際に会ってビックリしましたし、距離感が掴みにくい感じとか分かる気がします」
王族云々もあるだろうが、それとは別に、なまじ相手についてある程度知っているせいで初対面でもはじめましてから関係を始められないのだろう。
話すことも精々“以前からお世話になってます”とか、そんな感じで関係を一気に踏み込むことができないんだろうなぁ……なんて、彼女たちの関係を横から考察してみたり。
「そうでしょうね……でもどうか、俺からわざわざ言うような――そもそも、俺が口出しできる用件じゃないんだろうけど、そうだとしてもシャーリィのことをお願いします」
「……ユウマさん」
「シャーリィはアザミさんのことを――いや、なんていうか……その、とにかく仲良くするにはアザミさんの方から動いて貰わないと難しいみたいですから」
……うっかり、シャーリィがアザミさんを懐疑的な目で見ていることを話しそうになって、うやむやな言葉で締める。
もしかしたら今ので何かを悟られたのでは、と彼女の目を盗み見るが、アザミさんはとても穏やかな目をしていた。懐疑も推測も無い、あたたかなものを見る目だ。
「……シャーリィさんのこと、大切に思ってらっしゃるんですね」
「それは……うん、大切に思ってる。俺とベ……いや、俺は無くした記憶を取り戻すのが目的ですけど、それとは別に彼女の掲げている理想……目的の力になりたいと思って、こうして一緒に旅をしているんです。彼女は俺の転生使いとしての力を求めていて、俺は彼女のこうして各地を回れる足を求めている……そんな利害の一致って感じで」
それは、偶然それぞれが求めているものを相手が持っていたから。
俺とベルは彼女の旅に記憶を取り戻す可能性を見出して、シャーリィは俺に転生使いとしての存在を求めていた。
……だけど、それだけじゃなくて俺は彼女の在り方に惹かれたんだと思う。そうして彼女の裏の弱さも知って、だからこうして俺はここに居るんだと思う。
「そうでしたか……はい、そうですね。ユウマさんが折角そう話してくださったことですし、私も仲良く出来るよう明日色々話してみようと思います」
「! ありがとうございます」
「打ち解け合うためにもまず、この耳と尻尾について話してみたりして……あっ、今日のことは後でユウマさんの口からシャーリィさんへ話しても構いません。あの大和撫子見習いは、実は獣人族なんだー! って」
「ん、状況に応じて話したり話さなかったりします。実は俺、シャーリィ達に何も伝えずこっそり来ちゃったので、お説教されてアザミさんのことを話す暇が無いかもしれない」
冗談交じりの言葉と受け取ったらしいアザミさんは微笑ましそうに笑みを浮かべて、一方俺は苦笑いを浮かべるのだった。いや冗談でもなく実際そうなってもおかしくないんですよ、はい。
シャーリィだけじゃなくてベルからも怒られて二倍説教を受けることになるかもしれないし。正直この後が怖い……
「……ユウマさん。シャーリィさんと打ち解け合うために、一つお願いをしても良いでしょうか」
「? 打ち解け合うためのお願いって?」
「シャーリィさんにこの手紙を渡して欲しいのです。やっぱり私達はこのやり方が一番話しやすいので……」
「手紙……? ああ、わかりました。渡しておきます……説教されながらでも渡すだけならできると思いますから」
アザミさんからのお願いを快諾して手紙を受け取る。シャーリィにガミガミと説教されながら、恐れおののきながら手紙を差し出そうとする自分の姿がイメージできてしまったが、今は関係のない話だ。
……と、手紙を受け取ったが、アザミさんはまだ何かを言いたそうな様子で俺を見つめている。ので、遠慮せずどうぞと会話を促す。
「えっと、ユウマさん。もし、もしも良かったらですけど、私のことはどうか“アザミ”と呼び捨てにしてください。言葉遣いも丁寧なものじゃなくて結構です。シャーリィさんと仲良くなりたいですが、私はユウマさんとも仲良くしたいですから」
こうして打ち解け合えた友好の証みたいなものだろうか。彼女は少し照れくさそうに頬を人差し指で掻きながら、そんな提案をしてくれた。
……その言葉は素直に嬉しい。最悪、彼女の秘密に迫ろうとして関係が悪くなる可能性だって考えていたのだ。というか不法侵入と覗きはとっても悪い事だ。
だからこそ、彼女からそんな言葉を聞けて心から“良かった”と思えた。
「うん、改めてよろしく、アザミ。……あ、そうだ。それなら俺の名前もユウマって呼び捨てにしてやってくれないか? ほら、対等にさ」
「あっ、それは駄目です」
ガクッ、と思わず頭が一瞬落ちた。アザミの返事はまさしく迷いのない素の反応だった。もしかして先程の一件で微妙に距離を置かれてたり……?
「……対等なのは駄目だった?」
「殿方を呼び捨てにするだなんて、私の信条が許せませんので」
「……えっと、何。それってアレか、ナントカ撫子ってやつ」
「はい、大和撫子です。その見習いですので」
こちらの杞憂なんて知らない様子で、そういうところはしっかりと線引きし自律しているアザミだった。
そもそもの意味をよく理解していないのもあるけど……大和撫子、結局今の今までよく分からんなぁ。
静かな村を通り抜けて山奥の森をある程度歩いた頃、休憩のつもりで足を止めて大きく空気を吸い込んだ。温まった体に冷たい外の空気が心地良く馴染む。
「ハァ、ハァ……結構長く歩いた気がするよ。足場が悪いから転ばないよう神経使う分疲れるな」
シン……、と静寂に声が溶け込む。
ああ、そうだった。今俺のポケットの中に彼女は居ない。他愛無い会話のつもりで口にした言葉も今はただの独り言に成り下がってしまう。
「……ッ!」
パチン、と頬を両手で叩いて意識を保とうとする。きっと疲れて意識がちゃんとしていないから、今みたいな独り言を口にしてしまったのだろう、と歯を食いしばって痛みを紛らわす。
(……こんなことをしてる場合じゃない。行こう)
木の根に足を取られないようにランタンで照らしながら、慎重に暗い森を進む。昼間は涼しい木陰に感じられたこの森も、夜になると不気味な雰囲気を感じてしまう。まさしく魔女の住む森だ。
……俺は今、その魔女――アザミさんの秘密について勝手に迫ろうとしている。自分を自覚したあの時から信用してきた直感が、今じゃないと駄目な気がしたからここまで歩いてきたのだが、本当にこんなことをして良かったのかと迷いが頭の片隅に居座っていた。
「……やっとこさ着いた」
はぁ、と薄く白い息が視界を覆う。窓から明かりが漏れているからまだ家主は起きているらしい。
「……アザミさん、居ますか。ユウマです」
三度大きめのノックをして声をかける。
……返事は無い。戸の向こうからは物音一つしない。どうやら今、家主は手が空いていないらしい。そうなれば家主が気がつくまで繰り返すか、日を改めて訪ねるべきなのだろう。
ただ、なんとなくドアノブに手をかけてみると、呆気なく戸は開かれてしまった。
「――――」
息を呑む。高揚感に近い緊張感で手の先がビリビリと痺れている感じがする。その指先の震えに任せて、俺は戸を完全に開いた。
室内は明かりが灯っているのに無人だ。いや、家の何処かには居るのだろうけどこの部屋には居なかった。
「……すみません、アザミさん」
小さく謝罪の言葉を呟きながら室内に入って戸を閉める。その言葉を口にする意味など無いけれど、罪悪感はそれだけで少しだけ引っ込んだ。
ネーデル王国の城の時といい、夜間にこんな感じに忍び込んでばかりな気がする。今回は忍び込むのではなく、ここの家主に会うのが目的なのだが。
昼間にも少し見たが、相変わらず散らかっている部屋だ。何台か置かれているテーブルの上には何かを記した紙とかよく分からないガラス製の道具が隙間なく置かれている。
雰囲気から直感的に言うなら、ここは何かの実験室か、あるいは工作室のように感じられた。
「こんな時、ベルが居てくれたら何か分かったのかもしれないけど……」
通りすがりに設計図のような紙の表面を撫でながら、ポツリと呟く。
……アザミさんはこの奧に居るのだろう。彼女に会って、“あの時”の件について聞かなければならない。そしてそれは、今――シャーリィとか他の人が居なくて、相手に言い訳を用意する時間を与えない――この状況、この時でなければ叶わない。
だから俺は、緊張で早まる鼓動を押し殺して、奧に足を進めた。
(客室は確か、この突き当たりの部屋だったかな……)
それ以外の部屋を知らないから、もう行き当たりばったりな方法で訪ねるしかない。別に隠れて秘密を暴こうだとか、何かを盗み出す訳じゃない。堂々と声をかけながら歩いて行けば、いずれ彼女に会えるだろう。
(……? 物音がした……?)
微かな物音に足が止まる。聞こえたのはほんの数歩先にある戸の向こうから。
恐らくだが、この先にアザミさんが居るのだろう。俺は戸の前に立って戸に手をかけ――ようとしたところで、ふと冷静になった。
(……勝手に家に入り込んで、ここで突然戸を開けて入るのはどうなんだろうか)
もしも自分がそんなことをやられたら酷くビックリすると思う。
その上、“お前の隠していることを話してくれ”だなんて問い詰められたら――うーん、さては今から俺がやろうとしていたこと、良くないことだな?
(……ここから声をかける……のも驚かせるよな。一回出直すべきか……? ま、マズイ、どうすりゃ良いのかわからなくなったぞ)
駄目だ、もしかしなくても俺はベルが居ないと決断力と判断力がてんで駄目だ。どうすれば良いのか分からなくて体が固まってしまう。
――そんな躊躇をしていた隙に、ガラリと引き戸が向こう側から開かれた。
「え――――」
「――――あ」
――空気が静止した。お互いバッタリと、こんな状況で出会ってしまって誰一人として身動きが取れない。
唯一、彼女の濡れた髪から滴り落ちている水滴だけがこの場で動ける存在だ。
……分かりやすく、包み隠さず現状を表現しよう。目の前には、タオル一枚で体を包んだだけのアザミさんの姿があった。湯気のような熱気を肌で感じるから、どうやらついさっきまでお湯に浸かっていたらしい。
……詰まるところ、風呂上がりのとても無防備な姿を彼女は晒していた。
「……ゆ、ユウマ……さん……?」
「…………」
呆気を取られた。俺の視線はすっかり釘付けになっていた。
艶やかな毛並み。髪の毛ではない、言うならば四足の獣の尻尾。
彼女の背後――腰ぐらいからだろうか――から出ているそれは、ゆらりと揺れ動いている。
「……その、頭」
そしてなにより、彼女の頭の上にはまさしく、獣のような三角形の耳が生えていて――
「――――き」
震えるように息を吸い込んで、アザミさんは小さく声を漏らす。
「――――うっ」
「ッ……? んえ、えっと……ユウマさん……?」
「うおぉおわぁああああああどッ、動物の耳と尻尾がぁああ――!?」
「き……きゃあああ!? なっ、なんでユウマさんの方が悲鳴を上げてるんですかーッ!?」
■□■□■
「……それで私の家へ訪ねに来た、という訳なんですね」
……場所は変わって、今朝も入った草の匂いのする客室。あれからアザミさんは着替えを済ませて、生地の薄い和服を着て対面に座っていた。
「はい……今更ですけど、色々と冷静じゃなかったと思います。もっとこう、良いやり方があっただろうに……すみません。いや、ほんっっっとすみません……」
「あわわ、そんなに謝らなくて大丈夫ですよ! ……コホン、一先ず先程の件は水に……は流せませんよね……あはは」
話によると彼女は寝る前に湯浴みをしていて、俺がその直後に出会わせてしまった……という感じらしい。その姿を見てしまったこと、無断で家に入った事に関しては意外にも怒ってはいない様子……だが、
「……あの時、帽子に手を伸ばした時に距離を取ったのは“それ”を隠すためだったんですね」
「……はい。悪気はなかったのですが、つい体が動いてしまったと言えばいいのでしょうか……気を悪くしてしまったのなら、すみませんでした」
今の彼女は室内だろうと脱がなかった魔女帽子を被っていない。その頭の上には大きな獣の耳が二つ、ぴょこんと生えていて時折動いていた。
そして、腰の部分からは獣の尻尾が生えていて――和服には尻尾を通す専用の穴が空いているらしい――こちらも同様に飾りなどではなく、彼女の意思で揺れ動いている。
「獣の、耳?」
「はい。本物です。動かせますよ」
「え、ええ。さっきから動いてますね……頭の耳も尻尾も……」
頭の上に生えた耳はピョコンと主張し、尻尾を指さすとフワリと波打つように動いて主張していた。
見慣れないモノだからついつい視線で動きを追ってしまうが、それでは埒があかないのでキチンと彼女の目を見て会話を再開する。
「ちなみに聞きたいんですけど、どうして隠していたんですか? 何かしら見せたくない事情があるとだけでも話してくれていれば、こんな変に詮索することも無かったと言いますか……ああいや、違うッ、アザミさんのせいだって言いたい訳じゃなくて……ええっと」
……そもそも、こんなの人の家に断りなく入っておきながら言える台詞じゃないのだが。
「私がこの耳と尻尾を隠していたのは、単に不要な混乱を避けたかったからです」
「? まあ確かにビックリはしましたけど……流石に混乱まではしないのでは?」
「……転生者伝説の話を思い出して下さい。“多大な加護より生まれし、獣の証を持ちうる人”――その獣人族の話を」
「……? いや、すいません。そもそもその転生者伝説? ってやつを俺はよくわかってないんです。なんだっけ……世界の混乱を正して言語を統一した~って部分は何度か聞いてるんですけど、それ以外の話はこれっぽっちも」
シャーリィが何度か話していた記憶がある。が、話していたこと以上の内容を俺は知らない。
その転生者伝説に獣人族ってのが関わっている話も、そもそもそんな種族が存在していたことも今初めて知った。そもそも種族って概念自体を今初めて知――いや、ギルドマスターが長耳族だとか名乗ってた覚えがあるか。
「転生者伝説を……ご存じないのですか?」
「あー、ごめん。常識が無くて会話の成り立たない奴だって思うかもしれない。言い訳みたいになるけど実は俺、記憶喪失で色々忘れているみたいで……」
「あっ……い、いえ! そういうことを考えていた訳ではなく……記憶喪失云々は気になりますが、それは後で聞かせて頂くとして」
両手を突き出してブンブンと慌てて振って否定を示しながら、アザミさんは話す。
……なんだろう、普段はお淑やかで清廉な印象なのに、慌てたり張り切ったりすると容易くボロが出ると言えば良いのか。
彼女は本来、そんな性質の人らしい。表面上では恐らく、彼女が何度も口にしている“大和撫子”というものを振る舞っているらしいが。
いや、表面上でしかまだ振る舞えていないから“見習い”を自称しているのか――
「そういうことなら、もっと早くユウマさんに打ち明かしていればよかったって思っていたんです。私一人で、変に緊張して話すのを怖がってて……あはは、馬鹿みたいですね」
「秘密を明かすのが怖いのは馬鹿じゃないと思いますよ。むしろ平然と後先考えずに記憶喪失だーって話す奴の方が馬鹿みたいじゃないですか?」
「……ふふっ、確かにそうかもしれませんね。それなら、お互いお馬鹿同士ってことで」
「お馬鹿か……よく相方に言われてますよ」
そんな会話を交えてお互い笑みを浮かべる。
後ろめたさ故にお互い取っていた、たった一歩の間合いをようやく踏み出して近づくことが出来たような、そんな雰囲気。
確かにシャーリィの言う通り、アザミさんは秘密を隠していた。でもそれは、彼女なりに考えた上で我々のことを思っての判断なのだと、今この会話で確信した。
「……アザミさんがもし良かったらですけど、シャーリィともこんな感じに仲良くしてあげてください」
「シャーリィさんとも、ですか? 私は別に拒絶だとかそういうつもりで接した筈ではなかったのですが……まさか、そんな風に感じられてました……!?」
「ああいや、妙に律儀というか丁寧な人だな~とはシャーリィ共々感じていましたけど。そうじゃなくて、彼女の方がちょっとピリピリしていると言うか、今まで顔を合わせたことのない知人って立ち位置の相手に慣れてないと言えば良いのかな……」
「あー、シャーリィさんのお気持ちはちょっと分かりますね……実際に会ってビックリしましたし、距離感が掴みにくい感じとか分かる気がします」
王族云々もあるだろうが、それとは別に、なまじ相手についてある程度知っているせいで初対面でもはじめましてから関係を始められないのだろう。
話すことも精々“以前からお世話になってます”とか、そんな感じで関係を一気に踏み込むことができないんだろうなぁ……なんて、彼女たちの関係を横から考察してみたり。
「そうでしょうね……でもどうか、俺からわざわざ言うような――そもそも、俺が口出しできる用件じゃないんだろうけど、そうだとしてもシャーリィのことをお願いします」
「……ユウマさん」
「シャーリィはアザミさんのことを――いや、なんていうか……その、とにかく仲良くするにはアザミさんの方から動いて貰わないと難しいみたいですから」
……うっかり、シャーリィがアザミさんを懐疑的な目で見ていることを話しそうになって、うやむやな言葉で締める。
もしかしたら今ので何かを悟られたのでは、と彼女の目を盗み見るが、アザミさんはとても穏やかな目をしていた。懐疑も推測も無い、あたたかなものを見る目だ。
「……シャーリィさんのこと、大切に思ってらっしゃるんですね」
「それは……うん、大切に思ってる。俺とベ……いや、俺は無くした記憶を取り戻すのが目的ですけど、それとは別に彼女の掲げている理想……目的の力になりたいと思って、こうして一緒に旅をしているんです。彼女は俺の転生使いとしての力を求めていて、俺は彼女のこうして各地を回れる足を求めている……そんな利害の一致って感じで」
それは、偶然それぞれが求めているものを相手が持っていたから。
俺とベルは彼女の旅に記憶を取り戻す可能性を見出して、シャーリィは俺に転生使いとしての存在を求めていた。
……だけど、それだけじゃなくて俺は彼女の在り方に惹かれたんだと思う。そうして彼女の裏の弱さも知って、だからこうして俺はここに居るんだと思う。
「そうでしたか……はい、そうですね。ユウマさんが折角そう話してくださったことですし、私も仲良く出来るよう明日色々話してみようと思います」
「! ありがとうございます」
「打ち解け合うためにもまず、この耳と尻尾について話してみたりして……あっ、今日のことは後でユウマさんの口からシャーリィさんへ話しても構いません。あの大和撫子見習いは、実は獣人族なんだー! って」
「ん、状況に応じて話したり話さなかったりします。実は俺、シャーリィ達に何も伝えずこっそり来ちゃったので、お説教されてアザミさんのことを話す暇が無いかもしれない」
冗談交じりの言葉と受け取ったらしいアザミさんは微笑ましそうに笑みを浮かべて、一方俺は苦笑いを浮かべるのだった。いや冗談でもなく実際そうなってもおかしくないんですよ、はい。
シャーリィだけじゃなくてベルからも怒られて二倍説教を受けることになるかもしれないし。正直この後が怖い……
「……ユウマさん。シャーリィさんと打ち解け合うために、一つお願いをしても良いでしょうか」
「? 打ち解け合うためのお願いって?」
「シャーリィさんにこの手紙を渡して欲しいのです。やっぱり私達はこのやり方が一番話しやすいので……」
「手紙……? ああ、わかりました。渡しておきます……説教されながらでも渡すだけならできると思いますから」
アザミさんからのお願いを快諾して手紙を受け取る。シャーリィにガミガミと説教されながら、恐れおののきながら手紙を差し出そうとする自分の姿がイメージできてしまったが、今は関係のない話だ。
……と、手紙を受け取ったが、アザミさんはまだ何かを言いたそうな様子で俺を見つめている。ので、遠慮せずどうぞと会話を促す。
「えっと、ユウマさん。もし、もしも良かったらですけど、私のことはどうか“アザミ”と呼び捨てにしてください。言葉遣いも丁寧なものじゃなくて結構です。シャーリィさんと仲良くなりたいですが、私はユウマさんとも仲良くしたいですから」
こうして打ち解け合えた友好の証みたいなものだろうか。彼女は少し照れくさそうに頬を人差し指で掻きながら、そんな提案をしてくれた。
……その言葉は素直に嬉しい。最悪、彼女の秘密に迫ろうとして関係が悪くなる可能性だって考えていたのだ。というか不法侵入と覗きはとっても悪い事だ。
だからこそ、彼女からそんな言葉を聞けて心から“良かった”と思えた。
「うん、改めてよろしく、アザミ。……あ、そうだ。それなら俺の名前もユウマって呼び捨てにしてやってくれないか? ほら、対等にさ」
「あっ、それは駄目です」
ガクッ、と思わず頭が一瞬落ちた。アザミの返事はまさしく迷いのない素の反応だった。もしかして先程の一件で微妙に距離を置かれてたり……?
「……対等なのは駄目だった?」
「殿方を呼び捨てにするだなんて、私の信条が許せませんので」
「……えっと、何。それってアレか、ナントカ撫子ってやつ」
「はい、大和撫子です。その見習いですので」
こちらの杞憂なんて知らない様子で、そういうところはしっかりと線引きし自律しているアザミだった。
そもそもの意味をよく理解していないのもあるけど……大和撫子、結局今の今までよく分からんなぁ。
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それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
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2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
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都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
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『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
少し冷めた村人少年の冒険記 2
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地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
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処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
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──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
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かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
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「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
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