86 / 87
2.5.閑話休題
閑話6 それから/酒と頭∅《からっぽ》な男とこれからと
しおりを挟む
「フフフ……フハハ、ダ――ッハッハッハッハ!!?」
「――こんな、どうして……」
目の前の惨事に、思わずアザミは両手で口を覆う。
もう、どうしようもない自体を前に、彼女は諦めに近いような、そんな目で事を眺めることしかできないでいる。
「そうだ……そうだとも……そう、俺が! 俺こそが……! そう!」
「――誰よ」
そのアザミの横で、シャーリィはワナワナと震え、拳を握り締めてアザミと同じく眺めることしかできずにいる。
しかし、そこは王女として――そして、メンバーのリーダーの風格と言うべきか。彼女は傍観ではなく、立ち向かう意思を持って、
「――だァれよ! コイツに酒を飲ませたのは――!!」
「俺こそが――桐生 悠真だァァアア――ッ!! うおおおォ――!!」
ギルドの酒場の席で大いに叫び、一杯の酒を煽ぐ一人の獣の原因究明にブチ切れるのだった――
■□■□■
……あー、すごいわぁ、すごいふわふわしてるわぁ
なんか選手宣誓しながら一気に飲めとか言われたからコレを喉に直滑降させたわぁ。喉がかっかして絞り潰されそうになったけど、飲んでしまえば楽しいもんである。
「フーッ、あー、一気に飲んだ」
「ユウマ、お前さん良い飲みっぷりだな!」
隣で俺の肩をバンバン叩いてくる元反ギルド団体だった、現ギルドの荷物運び担当のアルゴさん。でも甘いなアルゴさんよ、その肩バンはクレオさんの破壊力にはまっっったく及ばないのさぁ……!
「ッ、アンタかぁ! うちのユウマに酒飲ませたの!」
「……顔色はまったく変わってないですけど、目の焦点がブレッブレですね。ユウマさん、とりあえず水をどうぞ」
「水……水? ああ、水」
アザミから一杯の水を差し出される。なので水に指を突っ込んだ。
「……フンッ!」
「なっ……ユウマさん!? み、水がゼリーみたいに固まって……!?」
「ちょっと待てアンタよく見たら……転生してるじゃない!? いつ!? いつの間に!?」
「大丈夫ですかコレ、実はアルコールで死にかけているとかじゃないですよね……?」
「物騒な発言ね!? いやでも、今のところは呂律は回ってるし……要観察? ってところかな……あんまり近づくと何かに巻き込まれかねないし」
「そ、そう言いながら距離を取らないで下さい!? 私今現在進行形で巻き込まれているのですけど!?」
何かオドオドした様子のアザミが、何か必死に叫んでいる。
でもそんなところでも丁寧語というか、清廉さのあるのが彼女の良いところだなぁとつくづく思う。
よっしゃぁ、んじゃ絡むかぁ~~!
「――アザミ、これができるか」
「えっ、いえ、できませんが……」
「できるかできないかじゃない――やるんだよォ!?」
「ひ、ひぃぃいい……!? う、うう……助けて下さいシャーリィさん、このユウマさんは手に負えません……」
「フゥウウン! むぐむぐ……ん、無味だァ! 若干苦い!」
「いやどっちよ……」
なんかアザミが半泣きでシャーリィに抱きつくように距離を取る。
結局、状況がよくわからないけど……なんだこれ、指になんか刺さってるこの水の塊を、棒付きアイスみたいに噛み付いて咀嚼した。うーん、無味に酒の苦味。
「ユウマすげぇな!? 俺もそれやってみてぇ!?」
「出来るわけないだろゥ!? 転生使いじゃァないとさぁ!!」
「やるんじゃないのかよ!?」
「できるかぁ!!」
「だよなァ! ほら、今度はこっちはどうだ? 白ワインだぜ」
「わっほい! って、悪いけど俺ゃ全然嬉しくないね。さっきもそうだったけど、ワインってなんか果実の絞り汁みたいな見た目してぜんっっぜん甘くないよなぁ。こんなの詐欺だよ詐欺――甘ァ!? 何コレ酒の絞り汁!?」
「デザートワイン、俺からの奢りだぜ……!」
「やだ……なんか渋くてかっこいいなその台詞と指パッチン……! 惚れ直した……! ワインに!」
「俺じゃねぇのかよ! ガハハ! かんぱーい!」
「いぇーい! かんぺー!」
あはははは、あー楽しいなぁ。そっかぁ、コレが酒かぁ。今まで飛び道具としか見てなかったけど、こうやって飲むことも出来るんだぁ。
……ベル、俺一つ記憶を取り戻したよ。“酒は飲めるんだ”って――
「なっ……アルゴてめッ、また昼間っから……はぁ!? なんで転生使いの小僧まで飲んでんだよ!?」
「ビザーさん、でしたっけ? すみませんが、少々手伝って欲しいことが」
「ッ……ああ、ネーデルのお嬢様。やり方は当然アレだよな?」
「ええ、派手な方でね」
「りょーかいした。なんだい、俺とは気が合わないと思って距離を取っていたが、意外とソリが合うじゃねーか」
「ずいぶんと素直ね。嫌いじゃないわよ、そういうの」
アルゴさんの相方、えっと……ビネガー? ビガー? まあ、そんな人がシャーリィとなんか話して、揃って何処かに行ってしまった。
なんか意思疎通してる雰囲気がして、少し妬ける。妬けるぞ俺ァ。
「じゃあ、最後にコイツで〆ようぜ――24年物の蒸留酒。この前のポーカー大会で勝ち取って来たレア物――いや骨董品だな。ここまで来るとさぁ」
「俺、自分の年齢を知らないけど、多分同い年か年上だよこの酒……!?」
「そうかー、若いとそういう酒とも出会っちまうか-。ちゃんと敬って飲もうぜ」
「おう! 手の平をパンッと合わせて……ははーっ!」
「なんだいそりゃ、ヘンテコだな」
「これはアザミから教えてもらった敬い方」
「私そんなこと教えていませんが!? なんですかそのポーズは!?」
酒瓶のコルクを引き抜いて、蒸留酒を小さなショットグラスに注がれる。骨董品故に、そうガバガバ飲む代物じゃないのだろう。
「……お待たせ。悪いわね手伝わせて」
「おうよ。そっちもそっちで大変なんだな……」
「あっ……シャーリィさん方――って、なんですかその大きな桶……しかも波々と水を注いで……」
アルゴさんが手の甲で蒸留酒を注いだグラスを俺の手元に滑り込ませてくる。やだ……格好いい惚れる……この技術に。
お互いショットグラスを片手に、体を少しズラして向かい合う。敬意を払うためには言葉は必須。お互い言う言葉は当然決まっている。
「いくぜ、同時にな」
「ああ、敬意を払おうか」
「――いくわよ、せーのっ……」
なんかちょうど良くシャーリィが合いの手を入れてくれたので、それに俺達は便乗して――
「かんぱ――ごぼぼぼおぼぼ!?」
「かんぺ――ぶぶぶぶべぶぶ!?」
「うわぁ……頭から水を……」
突然の頭上からの敵襲に、俺の意識は刈り取られたのだった――
■□■□■
「……んぁ、知らない天井が――いや、知ってる!? ここギルドの元自室だ!?」
『おはようユウマ、酷い醜態をさらしていたな』
「……? あ、ああ? とりあえずおはよう……俺なんで寝てたの? なんで服が上も下も――下着もだ! なんで変わってるの!?」
『あわわ……急にズボンを下ろさないでくれ……!?』
あ、それはごめんなさい。でも着ている服がいつの間にかぜーんぶ替わっていたらそりゃ誰だってビビると思うので許して欲しい。
って、いつもの上着は――ああ、よかった。壁に掛かっている。でもなんで濡れているんだ? あれじゃ着られないじゃないか。
「……ああ、起きてたのね」
「! シャーリィ。こんなところにどうして?」
「それ、私の台詞。なんで貴方こそギルドに居て――しかも、あんな飲んだくれになってたのよ……」
「飲んだ、くれ……?」
「記憶が飛ぶタイプか……まあ良いわ。今アザミさんがエスプレッソをコーヒーハウスからわざわざ持って来てくれるから……彼女が来た時に色々話しましょうか」
「……なんでエスプレッ……えっと、なんだっけ」
「二日酔い対策よ。あんなに酒に弱いなら二日酔いになりかねないって……でも貴方の様子を見る限り、杞憂だったみたいだけど」
「二日酔い……?」
『本当に何も覚えていないんだな……』
覚えているもいないも、何も知らずにギルドの自室に運び込まれた身としては疑問しか浮かばないのである。
……と、シャーリィの言うとおり、本当にアザミがバーン、と戸を開いて――カップを片手に――突撃してきた。清廉さは捨ててきて、何やら緊急事態だと言わんばかりの剣幕だ。今日は謎が多い。
「ユウマさん! 大丈夫ですか!?」
「あ、ああ。アザミこそ大丈夫か? なんか汗かいてるけど……走ってきたのか?」
「ええ、できましたよ! 珈琲の水面にまるで形を与えたように運ぶ方法が!」
「え、何の話……? こわ……」
自分の知らないところで何か話が進んでらっしゃる。まさかまた俺は記憶喪失――いや、プチ記憶喪失になったのだろうか? だとしたら恐ろしいな。
「……んじゃ、面子も揃ったことだし、今回王国に戻った理由話を説明しましょうか」
「あの! エスプレッソは!?」
「話がややこしくなるから後にしてちょーだい。貴女までボケに回られると手に負えなくなるのよ……」
「えっと、アザミの馬車の用意と……なんかシャーリィが政治的にヤバいってのは聞いたけど」
「人のことヤバいとか言うなっ。今月は私の誕生月なのよ。で、演説とかするんだけど……そんな中で本人不在とか国民ビックリするでしょ?」
まあ、事情としては納得したし、理解もした。
……多分だけど、王国の一部の住民にはシャーリィが王女だって既にモロバレしている点に目を瞑ればって話だけども。コーヒーショップの常連の一部は、薄々感づいていることを知っているのかシャーリィさんや。
そんな自由奔放な王女様が居なくてもこの国の国民は驚かないだろうし――何より、シャーリィのお父さんとの約束で、もう自分は王女なんかじゃない~とか、そんな滅茶苦茶なことを言ってなかったか?
もしそれが本当なら、彼女の父が上手いこと言いくるめてくれると思うのだが――
「……んや、今回は特別なの。私のやらなきゃならないことがある。だから少しの間王女として振る舞うわ」
「……えっと、むしろ王女になったりならなかったりする方が変なお話しだと思うのですが……そう感じてるの、もしかして私だけですか?」
『大丈夫だ、アザミさん。ユウマ含め私達はそう感じてるよ』
シャーリィが異例過ぎるのである。幼いから自由を許されたとかじゃなくて、本人の背負っていた物が重すぎるが故にここまで自由になってしまった――って感じ。悲しい業を背負った分のメリットというか、見返りと言うべきか……
「だから今月は基本私は不在よ。だからアザミさんとユウマ、それとベルの三人で色々行動して貰おうかなって」
「行動……馬車の手配とか?」
「それはもうクレオさんがやってる。私が言いたいのは――アンタは! 何もかも不足してるってことよ!」
ビシィ! なんて効果音が付きそうな勢いで俺を指さすシャーリィ。
……いや、まあ、はい。そうですね? としか言えないと言いますか……
「……今アンタ、何を今更だとか考えてるでしょ」
「なんでシャーリィって俺の考えてることすぐに読むん?」
「わかりやすいのよ、アンタは。武器も無い! 知識も無い! いっつもその場にある物やその場でベルの知識に頼ってる! 前にじゃじゃ馬って言ったけど、改めて考えたら荒れ馬も良いところよアンタの滅茶苦茶さは! ほんっっと心配して心臓止まるわ!」
「……アザミさん、お人好し判定は」
「はい、75お人好しポイントだと思います」
「人を茶化してる場合かァ! ユウマもアザミさんも! とにかく、アザミさんにはユウマに色々基礎を叩き込みつつ、武器とか防具の準備をさせておいて欲しいの。お願いして良い?」
……つまり、俺の強化を図りたい……という訳か。
ちょっと嬉しい反面、一体何を叩き込まれるのか不安な面も感じている。
「因みに、どんな武器でも良いのですか?」
「ええ、金銭面は問題ないでしょ、二人揃って給料は高額なんだから。それにギルマスにツケにしても良いだろうし」
「さ、流石にそれは……」
「……? そういや、給料の概念はなんとなーく分かってるけどさ、その肝心の給料ってのはどこにあるんだ?」
働いてお金を貰えるとするならば、俺の手元にお金が無いと変である……ってか、給料の概念あったんだこの組織に。無給だと思ってたよ。
「ギルドに全額預けてる。職員――まあ、レイラさん辺りに頼めば引き降ろしてくれると思うわ。あるいはペーターさん、バーンさんね。元反ギルドの人達はまだ金銭のやり取りを上から許してはくれてないだろうし」
「そ、それって元反ギルドの方々は無給で働かされていると……!?」
「ん? ああ、違う違う。何やるにしても人の目が必要な立場だからね、彼ら。財布管理をギルドがちゃんとやってるし、食事や寝床代に給料が当てられてるって感じ」
一瞬、憤慨したような態度になったアザミが、シャーリィの訂正を聞いてホッと落ち着きを取り戻す。
ああ、よかった。信じてたけど、彼らは不遇な扱いというわけではなさそうだ……まだまだ不自由は多いだろうけども。
「……やば、仕立屋の時間が……私、もう行くから! 今日からしばらくはユウマもアザミさんも、寝床もギルドを利用して良いから! とにかくアザミさんはユウマを頼んだわよ!」
「え、えあっ、ちょっと!? シャーリィさん!?」
脱兎の如くとはこのことか。銀色で白く見えるし。
シャーリィはあっという間に――勝手に俺の分のエスプレッソをいつの間にか飲み干して――この部屋を飛び出して行ってしまった。
「……えっと、どうしましょうユウマさん」
「どうするって……どうするんだ?」
受動的な二人がこの場に取り残されてしまって何も出来ずに居る。シャーリィ、せめて今日の具体的な目的とか立ててから立ち去って欲しかったぞ……!
『あー、なんだ。とりあえずお金を下ろしてくれば良いんじゃないかな。そもそもアザミさんは王国は初めてなんだろう? ユウマ、お前がエスコートしてあげると良いさ』
「……なるほど、確かに」
「そうですね……お願いできますか、ユウマさん」
「ああ、おおよその案内は出来るから、まかせてくれ」
……と、ポケットから受動的な意見を頂けたので、俺達は素直に従うのだった。
ありがとうベルさんや、ありがとう。ベルが居なかったらこのまま夕方までこの部屋で過ごしてそうだったよ……
「――こんな、どうして……」
目の前の惨事に、思わずアザミは両手で口を覆う。
もう、どうしようもない自体を前に、彼女は諦めに近いような、そんな目で事を眺めることしかできないでいる。
「そうだ……そうだとも……そう、俺が! 俺こそが……! そう!」
「――誰よ」
そのアザミの横で、シャーリィはワナワナと震え、拳を握り締めてアザミと同じく眺めることしかできずにいる。
しかし、そこは王女として――そして、メンバーのリーダーの風格と言うべきか。彼女は傍観ではなく、立ち向かう意思を持って、
「――だァれよ! コイツに酒を飲ませたのは――!!」
「俺こそが――桐生 悠真だァァアア――ッ!! うおおおォ――!!」
ギルドの酒場の席で大いに叫び、一杯の酒を煽ぐ一人の獣の原因究明にブチ切れるのだった――
■□■□■
……あー、すごいわぁ、すごいふわふわしてるわぁ
なんか選手宣誓しながら一気に飲めとか言われたからコレを喉に直滑降させたわぁ。喉がかっかして絞り潰されそうになったけど、飲んでしまえば楽しいもんである。
「フーッ、あー、一気に飲んだ」
「ユウマ、お前さん良い飲みっぷりだな!」
隣で俺の肩をバンバン叩いてくる元反ギルド団体だった、現ギルドの荷物運び担当のアルゴさん。でも甘いなアルゴさんよ、その肩バンはクレオさんの破壊力にはまっっったく及ばないのさぁ……!
「ッ、アンタかぁ! うちのユウマに酒飲ませたの!」
「……顔色はまったく変わってないですけど、目の焦点がブレッブレですね。ユウマさん、とりあえず水をどうぞ」
「水……水? ああ、水」
アザミから一杯の水を差し出される。なので水に指を突っ込んだ。
「……フンッ!」
「なっ……ユウマさん!? み、水がゼリーみたいに固まって……!?」
「ちょっと待てアンタよく見たら……転生してるじゃない!? いつ!? いつの間に!?」
「大丈夫ですかコレ、実はアルコールで死にかけているとかじゃないですよね……?」
「物騒な発言ね!? いやでも、今のところは呂律は回ってるし……要観察? ってところかな……あんまり近づくと何かに巻き込まれかねないし」
「そ、そう言いながら距離を取らないで下さい!? 私今現在進行形で巻き込まれているのですけど!?」
何かオドオドした様子のアザミが、何か必死に叫んでいる。
でもそんなところでも丁寧語というか、清廉さのあるのが彼女の良いところだなぁとつくづく思う。
よっしゃぁ、んじゃ絡むかぁ~~!
「――アザミ、これができるか」
「えっ、いえ、できませんが……」
「できるかできないかじゃない――やるんだよォ!?」
「ひ、ひぃぃいい……!? う、うう……助けて下さいシャーリィさん、このユウマさんは手に負えません……」
「フゥウウン! むぐむぐ……ん、無味だァ! 若干苦い!」
「いやどっちよ……」
なんかアザミが半泣きでシャーリィに抱きつくように距離を取る。
結局、状況がよくわからないけど……なんだこれ、指になんか刺さってるこの水の塊を、棒付きアイスみたいに噛み付いて咀嚼した。うーん、無味に酒の苦味。
「ユウマすげぇな!? 俺もそれやってみてぇ!?」
「出来るわけないだろゥ!? 転生使いじゃァないとさぁ!!」
「やるんじゃないのかよ!?」
「できるかぁ!!」
「だよなァ! ほら、今度はこっちはどうだ? 白ワインだぜ」
「わっほい! って、悪いけど俺ゃ全然嬉しくないね。さっきもそうだったけど、ワインってなんか果実の絞り汁みたいな見た目してぜんっっぜん甘くないよなぁ。こんなの詐欺だよ詐欺――甘ァ!? 何コレ酒の絞り汁!?」
「デザートワイン、俺からの奢りだぜ……!」
「やだ……なんか渋くてかっこいいなその台詞と指パッチン……! 惚れ直した……! ワインに!」
「俺じゃねぇのかよ! ガハハ! かんぱーい!」
「いぇーい! かんぺー!」
あはははは、あー楽しいなぁ。そっかぁ、コレが酒かぁ。今まで飛び道具としか見てなかったけど、こうやって飲むことも出来るんだぁ。
……ベル、俺一つ記憶を取り戻したよ。“酒は飲めるんだ”って――
「なっ……アルゴてめッ、また昼間っから……はぁ!? なんで転生使いの小僧まで飲んでんだよ!?」
「ビザーさん、でしたっけ? すみませんが、少々手伝って欲しいことが」
「ッ……ああ、ネーデルのお嬢様。やり方は当然アレだよな?」
「ええ、派手な方でね」
「りょーかいした。なんだい、俺とは気が合わないと思って距離を取っていたが、意外とソリが合うじゃねーか」
「ずいぶんと素直ね。嫌いじゃないわよ、そういうの」
アルゴさんの相方、えっと……ビネガー? ビガー? まあ、そんな人がシャーリィとなんか話して、揃って何処かに行ってしまった。
なんか意思疎通してる雰囲気がして、少し妬ける。妬けるぞ俺ァ。
「じゃあ、最後にコイツで〆ようぜ――24年物の蒸留酒。この前のポーカー大会で勝ち取って来たレア物――いや骨董品だな。ここまで来るとさぁ」
「俺、自分の年齢を知らないけど、多分同い年か年上だよこの酒……!?」
「そうかー、若いとそういう酒とも出会っちまうか-。ちゃんと敬って飲もうぜ」
「おう! 手の平をパンッと合わせて……ははーっ!」
「なんだいそりゃ、ヘンテコだな」
「これはアザミから教えてもらった敬い方」
「私そんなこと教えていませんが!? なんですかそのポーズは!?」
酒瓶のコルクを引き抜いて、蒸留酒を小さなショットグラスに注がれる。骨董品故に、そうガバガバ飲む代物じゃないのだろう。
「……お待たせ。悪いわね手伝わせて」
「おうよ。そっちもそっちで大変なんだな……」
「あっ……シャーリィさん方――って、なんですかその大きな桶……しかも波々と水を注いで……」
アルゴさんが手の甲で蒸留酒を注いだグラスを俺の手元に滑り込ませてくる。やだ……格好いい惚れる……この技術に。
お互いショットグラスを片手に、体を少しズラして向かい合う。敬意を払うためには言葉は必須。お互い言う言葉は当然決まっている。
「いくぜ、同時にな」
「ああ、敬意を払おうか」
「――いくわよ、せーのっ……」
なんかちょうど良くシャーリィが合いの手を入れてくれたので、それに俺達は便乗して――
「かんぱ――ごぼぼぼおぼぼ!?」
「かんぺ――ぶぶぶぶべぶぶ!?」
「うわぁ……頭から水を……」
突然の頭上からの敵襲に、俺の意識は刈り取られたのだった――
■□■□■
「……んぁ、知らない天井が――いや、知ってる!? ここギルドの元自室だ!?」
『おはようユウマ、酷い醜態をさらしていたな』
「……? あ、ああ? とりあえずおはよう……俺なんで寝てたの? なんで服が上も下も――下着もだ! なんで変わってるの!?」
『あわわ……急にズボンを下ろさないでくれ……!?』
あ、それはごめんなさい。でも着ている服がいつの間にかぜーんぶ替わっていたらそりゃ誰だってビビると思うので許して欲しい。
って、いつもの上着は――ああ、よかった。壁に掛かっている。でもなんで濡れているんだ? あれじゃ着られないじゃないか。
「……ああ、起きてたのね」
「! シャーリィ。こんなところにどうして?」
「それ、私の台詞。なんで貴方こそギルドに居て――しかも、あんな飲んだくれになってたのよ……」
「飲んだ、くれ……?」
「記憶が飛ぶタイプか……まあ良いわ。今アザミさんがエスプレッソをコーヒーハウスからわざわざ持って来てくれるから……彼女が来た時に色々話しましょうか」
「……なんでエスプレッ……えっと、なんだっけ」
「二日酔い対策よ。あんなに酒に弱いなら二日酔いになりかねないって……でも貴方の様子を見る限り、杞憂だったみたいだけど」
「二日酔い……?」
『本当に何も覚えていないんだな……』
覚えているもいないも、何も知らずにギルドの自室に運び込まれた身としては疑問しか浮かばないのである。
……と、シャーリィの言うとおり、本当にアザミがバーン、と戸を開いて――カップを片手に――突撃してきた。清廉さは捨ててきて、何やら緊急事態だと言わんばかりの剣幕だ。今日は謎が多い。
「ユウマさん! 大丈夫ですか!?」
「あ、ああ。アザミこそ大丈夫か? なんか汗かいてるけど……走ってきたのか?」
「ええ、できましたよ! 珈琲の水面にまるで形を与えたように運ぶ方法が!」
「え、何の話……? こわ……」
自分の知らないところで何か話が進んでらっしゃる。まさかまた俺は記憶喪失――いや、プチ記憶喪失になったのだろうか? だとしたら恐ろしいな。
「……んじゃ、面子も揃ったことだし、今回王国に戻った理由話を説明しましょうか」
「あの! エスプレッソは!?」
「話がややこしくなるから後にしてちょーだい。貴女までボケに回られると手に負えなくなるのよ……」
「えっと、アザミの馬車の用意と……なんかシャーリィが政治的にヤバいってのは聞いたけど」
「人のことヤバいとか言うなっ。今月は私の誕生月なのよ。で、演説とかするんだけど……そんな中で本人不在とか国民ビックリするでしょ?」
まあ、事情としては納得したし、理解もした。
……多分だけど、王国の一部の住民にはシャーリィが王女だって既にモロバレしている点に目を瞑ればって話だけども。コーヒーショップの常連の一部は、薄々感づいていることを知っているのかシャーリィさんや。
そんな自由奔放な王女様が居なくてもこの国の国民は驚かないだろうし――何より、シャーリィのお父さんとの約束で、もう自分は王女なんかじゃない~とか、そんな滅茶苦茶なことを言ってなかったか?
もしそれが本当なら、彼女の父が上手いこと言いくるめてくれると思うのだが――
「……んや、今回は特別なの。私のやらなきゃならないことがある。だから少しの間王女として振る舞うわ」
「……えっと、むしろ王女になったりならなかったりする方が変なお話しだと思うのですが……そう感じてるの、もしかして私だけですか?」
『大丈夫だ、アザミさん。ユウマ含め私達はそう感じてるよ』
シャーリィが異例過ぎるのである。幼いから自由を許されたとかじゃなくて、本人の背負っていた物が重すぎるが故にここまで自由になってしまった――って感じ。悲しい業を背負った分のメリットというか、見返りと言うべきか……
「だから今月は基本私は不在よ。だからアザミさんとユウマ、それとベルの三人で色々行動して貰おうかなって」
「行動……馬車の手配とか?」
「それはもうクレオさんがやってる。私が言いたいのは――アンタは! 何もかも不足してるってことよ!」
ビシィ! なんて効果音が付きそうな勢いで俺を指さすシャーリィ。
……いや、まあ、はい。そうですね? としか言えないと言いますか……
「……今アンタ、何を今更だとか考えてるでしょ」
「なんでシャーリィって俺の考えてることすぐに読むん?」
「わかりやすいのよ、アンタは。武器も無い! 知識も無い! いっつもその場にある物やその場でベルの知識に頼ってる! 前にじゃじゃ馬って言ったけど、改めて考えたら荒れ馬も良いところよアンタの滅茶苦茶さは! ほんっっと心配して心臓止まるわ!」
「……アザミさん、お人好し判定は」
「はい、75お人好しポイントだと思います」
「人を茶化してる場合かァ! ユウマもアザミさんも! とにかく、アザミさんにはユウマに色々基礎を叩き込みつつ、武器とか防具の準備をさせておいて欲しいの。お願いして良い?」
……つまり、俺の強化を図りたい……という訳か。
ちょっと嬉しい反面、一体何を叩き込まれるのか不安な面も感じている。
「因みに、どんな武器でも良いのですか?」
「ええ、金銭面は問題ないでしょ、二人揃って給料は高額なんだから。それにギルマスにツケにしても良いだろうし」
「さ、流石にそれは……」
「……? そういや、給料の概念はなんとなーく分かってるけどさ、その肝心の給料ってのはどこにあるんだ?」
働いてお金を貰えるとするならば、俺の手元にお金が無いと変である……ってか、給料の概念あったんだこの組織に。無給だと思ってたよ。
「ギルドに全額預けてる。職員――まあ、レイラさん辺りに頼めば引き降ろしてくれると思うわ。あるいはペーターさん、バーンさんね。元反ギルドの人達はまだ金銭のやり取りを上から許してはくれてないだろうし」
「そ、それって元反ギルドの方々は無給で働かされていると……!?」
「ん? ああ、違う違う。何やるにしても人の目が必要な立場だからね、彼ら。財布管理をギルドがちゃんとやってるし、食事や寝床代に給料が当てられてるって感じ」
一瞬、憤慨したような態度になったアザミが、シャーリィの訂正を聞いてホッと落ち着きを取り戻す。
ああ、よかった。信じてたけど、彼らは不遇な扱いというわけではなさそうだ……まだまだ不自由は多いだろうけども。
「……やば、仕立屋の時間が……私、もう行くから! 今日からしばらくはユウマもアザミさんも、寝床もギルドを利用して良いから! とにかくアザミさんはユウマを頼んだわよ!」
「え、えあっ、ちょっと!? シャーリィさん!?」
脱兎の如くとはこのことか。銀色で白く見えるし。
シャーリィはあっという間に――勝手に俺の分のエスプレッソをいつの間にか飲み干して――この部屋を飛び出して行ってしまった。
「……えっと、どうしましょうユウマさん」
「どうするって……どうするんだ?」
受動的な二人がこの場に取り残されてしまって何も出来ずに居る。シャーリィ、せめて今日の具体的な目的とか立ててから立ち去って欲しかったぞ……!
『あー、なんだ。とりあえずお金を下ろしてくれば良いんじゃないかな。そもそもアザミさんは王国は初めてなんだろう? ユウマ、お前がエスコートしてあげると良いさ』
「……なるほど、確かに」
「そうですね……お願いできますか、ユウマさん」
「ああ、おおよその案内は出来るから、まかせてくれ」
……と、ポケットから受動的な意見を頂けたので、俺達は素直に従うのだった。
ありがとうベルさんや、ありがとう。ベルが居なかったらこのまま夕方までこの部屋で過ごしてそうだったよ……
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる