暗黒騎士物語

根崎タケル

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第13章 白鳥の騎士団

第28話 狼と蛇(エピローグ1)

 蛇の者達の先導によりテリオン達はバンドール平野を離れる事に成功する。

 これから向かうのはフェリオンの聖地ネウロイである。

 その地は遠く、テリオン達は一旦休憩する事にする。

 今はバンドール平野を離れたカウフ山地である。

 麓には木々が生い茂り、身を隠すには良い場所だ。

 蛇の者達とは既に別れ、この場には狼の一族だけだ。 



「改めましてハヤーナと申しますでしゅ!! このハヤが必ずや獣神子様を導くでしゅ!!」



 休憩に入るとテリオンの前で白い狼の子が頭を下げる。

 テリオンはハヤを見る。

 あまり頼りになりそうにない。

 だが、安全にネウロイに入るためにも今はこの子狼の巫女に頼らなければならないだろう。

 ハヤが言うにはこの辺りは安全らしい。

 

「まさか、あのカジーカ殿の愛弟子が来てくれるとは……。良かったですね、若」



 子分の1匹が笑いながら言う。

 テリオンはカジーカの事を知らないがかなりの力らしい

 他の者もうんうんと頷いている。



「ふふ、任せてくださいでしゅ。婆様に認められたこのハヤに任せてでしゅ」



 ハヤは得意げに胸を張る。

 信頼されている事が嬉しいらしい。



「……。頼りしているぜ、ハヤ」



 一応テリオンも褒める。

 不安だが彼女には頑張ってもらいたいからだ。

 テリオンがそう言うとハヤは目を一層輝かせる。



「はいでしゅ!! いっぱい頑張りましゅ!! 必ずや獣神子様の力になれるように頑張りましゅ!!」



 ハヤが力を込めて言う。

 

(力か……。それを取り戻さないとな……。だが、あいつのおかげで方法はわかったぜ)



 テリオンはコウキの事を思い出す。

 コウキと戦っていると力が戻って来る感じがしたのだ。

 強敵と戦う事で自身の力を取り戻す事ができるようだ。

 コウキと協力して蛇の王子と戦った時も戻って来ている気がしたので間違いないだろう。

 だが、この方法には問題もあった。

 あまりにも強すぎる敵と戦った場合は取り戻すどころか死にかねない。

 今度は暗黒騎士の事を思い出す。

 暗黒騎士はとんでもなく強かった。

 今剣を向けても戦いにすらならないだろう。

 力を取り戻し、さらに力を身に付けなくてはならない。

 そのためにも導く者が必要だった。



「若。只今戻りましたぜ」



 そうこうしている時だった。

 別行動をしていたイカヅチ達が戻って来る。

 戻って来た仲間達の背中には息絶えた鹿等がいる。

 それを見て、子分達が涎を垂らす。



「はは、今夜は御馳走だな!! 皆食って英気を養えよ!」



 テリオンが言うと狼達は月に向かって咆哮を上げる。

 テリオンの旅路はまだまだ続くのだった。








 多頭蛇ヒュドラ会の仲間達が集まる。 

 4の首の候補であったイカヅチがいなくなったので3名のままだ。



「まさか、あの暗黒騎士が本物だったとは騙されましたよ。2の首殿」



 3の首が2の首に言う。

 暗黒騎士の事を根に持っているらしい。

 だが、それに関しては2の首も被害者だと言える。

 折角捕らえた実験体を手放し、騎士団に保護させるはめになった。

 今後は研究もしにくくなるだろう。



「騙したつもりはないぞ。偉大なる方の前に儂らは同様に無力。意思に逆らう事などできるものかね。そうだろう、1の首殿」



 2の首はそう言って1の首を見る。

 2の首はほとんど操られていたがだいたいの事は覚えている。

 偉大なる暗黒騎士と白銀の奥方の力に2の首は屈した。

 逆らえば2度と復活できないようにされていただろう。

 逆らう怖ろしさに比べたら研究所をいくつか失う事など小さい事であった。

 

「そのとおりね。偉大なる御方の御意思には逆らえない。それは2の首殿も同じみたいね安心したわ」



 1の首が嘲るように言うと2の首は何も言えなくなる。

 これまで2の首は信仰心等持った事はない。

 しかし、大いなる力に畏れを抱く事はある。

 今回出会った暗黒騎士の力に触れた時、2の首は恐怖に打ちのめされた。

 言う事を聞かざるを得ないだろう。

 蛇の女王は去り、スノビヘ王国は跡形もなく無くなった。

 そこに住んでいた者達は1の首の教団へと身を寄せているらしい。



「さて、再び活動を始めましょう。偉大なる御方の御意思に沿うようにね」



 1の首がそう言うと2の首と3の首は頷く。

 3者の仕える者は違う。しかし、偉大なる者の意思を聞かざるを得ないのは同じであった。





◆ 



 蛇の女王ディアドナはアポフィスの離宮へと戻る。

 玉座には他の邪神はおらず、息子である蛇の王子ダハークとわずかの侍女がいるだけだ。

 ダハークは跪いて蛇の女王に報告する。



「ふむ、凶獣の血を引く者は無事エリオスの目を逃れたか」



 ダハークの報告を聞きディアドナは笑う。



「母上、あの者を生かしておいて良いのですか? 殺しておくべきでは?」



 ダハークは納得いかなそうに言う。

 ディアドナはダハークを見る。

 ダハークにはわかっているのだろう。

 あの凶獣の血を引く者が成長すれば自身より強くなることが。

 だからこそ今のうちに殺しておきたいのだ。



「それは出来ぬ。この世界を作り替えるためにはまずは今ある世界を壊さねばならぬ。使える札は多い方が良い」



 ディアドナは首を振る。

 ディアドナの望みはミナの子によって汚染されたこの世界を壊し、新たな世界を作る事だ。

 そのためにも力がある者は多い方が良い。

 

「ぐっ……。わかりました。母上がそうおっしゃるのなら……。凶獣の血を引く者に手は出しません。しかし、気になる者が別にいます。共に戦っていたエリオスの眷属らしき子です。あれは何者でしょう? レーナを母と呼んでいたようですが」



 ダハークは頭を上げて首を傾げる。

 テリオンと共に戦っていたコウキという者はかなりの力を持っていた。

 かなり気になる。



「わからぬ。まあ、おそらくレーナが育てているどこぞの神の子であろうな。もしかすると件の勇者の子かもしれん。さすがにレーナの子ではないだろうがな」



 ディアドナはコウキの事をそう推測する。

 過去にレーナが母親代わりをつとめた勇者は幾人かいる。

 ほとんどがエリオスの男神と人間の娘の間に生まれた者であった。



「なるほど……。それならば強さも納得がいきます。どうしましょうか?」

「脅威になるやもしれん。その時は殺せ」



 ディアドナはそう断言する。

 レーナの育て子に容赦はしない。脅威になるのなら殺すだけである。



「わかりました。母上。我らの脅威になるようなら、このダハークが必ず殺しましょう」

「そうか期待しているぞ、ダハーク」



 ディアドナはそう言ってダハークを見る。

 離宮の玉座。

 蛇の女王は静かに笑うのだった。








 今クロキはナルゴルの魔王宮にいる。

 理由は魔王モデスに凶獣の血を引く者の存在を報告するためだ。

 モデスは驚いたが、特に何かをするつもりはないようだ。

 そもそも、明らかに敵対しているエリオスを滅ぼさないのだから、特に敵対していないテリオンに何もしないのも当然なのかもしれない。



(さて、リウキの顔を見にでもいくかな)



 クロキはモデスへの報告をすませたのでリウキの顔を見に行くことにする。

 リウキはポレンの部屋にいる。

 既にクーナはそこに行っているはずだ。

 クロキはリウキの事を考える。

 リウキはよくポレンの所にいる。

 理由はポレンがリウキを可愛がりたいからだ。

 まだ、子どもだが一部のナルゴルの者達から闇の貴公子ダークプリンスと綽名されている。

 もう少し大きくなったら剣を教えようと思っているところだ。



「おお、これはこれは閣下ではございませんか。にひひひひ」

 

 廊下を歩いている時だった。

 クロキは声を掛けられる。

 そこには単眼鏡を付けた白衣のデイモン族の男性が立っている。

 そのデイモンの男性はニヤニヤした不快な笑みを浮かべている。

 だが、その笑みはその男の癖であり、悪意がない事をクロキは知っていた。



「これはウェストル卿。こちらに戻られていたのですか?」



 クロキはデイモンの男に挨拶をする。

 男の名はウェストル。

 デイモンロードであるウルバルドの副官である大アークデイモンだ。

 そのウルバルドの副官であるのでミノン平野へと行っているはずであった。



「いえいえ、吾輩も報告したい事があったので戻って来たのですよ。にひひひひ。あの地でも研究所ができましたので実験の続きができますぞい」



 ウェストルは笑いながら言う。



(すごく有能なんだけど、性格がちょっとなあ……)

 

 クロキはウェストルを見てそう思う。

 ウェストルは魔道博士と呼ばれ、様々な魔術の研究を行っている。

 研究熱心というより、もはや熱狂というほどであり、没頭すると周りが見えなくなるほどだ。

 また、有望な魔術師と契約をして実験の記録を共有したり等もしているのだ。

 

「それは良かったです。また何かありましたら力を貸していただきたい」



 ウェストルは今回の事件を起こした者の1人である2の首と契約を結んだ者でもある。

 遠くにいる彼と魔法で連絡を取り2の首の居場所がわかった。

 おかげで蛇の女王達に近づく事ができたのである。



「いえいえ、閣下のお役に立てたのなら吾輩も嬉しいですぞ。それでは我が師ルーガス様の所に行きますのでこれにて。きひひひひ」



 そう言ってウェストルは去って行く。

 クロキはそんな魔道博士の背中を見送るのであった。

 


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