[完結]兄弟で飛ばされました

猫谷 一禾

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新たな事実

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 「兄ちゃんはさ、その…力?の練習だっけ?上手くいってんの?」

「あぁ浄化の力だよ。うん、大分上手く使えるようになったよ」

樹は望に分かりやすい様に話した。

「使い様は非常に優秀な方です。お力の使い方もすぐに習得され、聖職者共々、感動致しました」

「あ、そうですか。流石兄ちゃんだね」

クラー・スンナの熱の入れように着いていけない望はどう返して良いか困惑した。

(俺の兄ちゃんであって、お前のじゃないわっ何でお前が鼻高々に喋ってんだよ)

「どこでも優秀なんだね…昔から兄ちゃんはいっつも一番で…凄いよ……」

「お話中失礼致します。私のほうから少しよろしいでしょうか?」

 アウロンが静かに会話にはいってきた。

「はい、何でしょうか?」

「実は…確かな確証があるわけではありませんが…口で説明をするより使い様には実際に目で見て頂いた方が早いかと思いますので…」

そう言うとアウロンは小型のナイフを取り出し自らの手を切った。

「え!?なにやってんですか??」

一番驚いたのは望だ。アウロンの行動が理解不能であった。

「っ……望……お手を煩わせてしまいますが…手を握って下さいませんか?」

「いやいや、止血でしょ!?」

「アウロン……貴様、使い様の目の前で何を!」

険しい表情でアウロンを睨みつけるクラー・スンナ。樹の目を汚すなとでも言いたげだ。

「…………望、アウロンの言う通りにしてもらえる?」

「え……兄ちゃん…何でそんなに冷静なの……」

「望、必要な事なのです。お願いします」

「えぇ……俺血とか怪我とか苦手なんだよ~」

痛そうなアウロンの手を言われるがままソッと握ってアウロンと樹の顔を交互に見る。

「これで良いの?早く治療した方がいいんじゃないの?痛いでしょ?」

(何トチ狂ったことしてんだよ……本当にこの人馬鹿なんじゃないの?)

「!?!??望っ」

「はいっ!?」

驚きに溢れる声で呼ばれた望は思わず大きな声で返事をした。

「望、もう大丈夫ですよ。手を離してみて下さい」

「へ?なに……」

訳がわからず今度はパッと手を離す。アウロンは切った手を三人に見せつけるように少し上にかざして見せた。

「傷が………」

呆然と呟く望、両目をめいいっぱい見開くクラー・スンナ、口元をおさえる樹。

「先日、望はメイドの火傷を治しました。本人達はことの重大さに気がつかなかった様ですが……今、見せた通りです。使い様の目にはどの様に写りましたか?」

「望………私は、魔力が……見えるんだよ」

「へ?え?え?」

アウロンの手は傷一つなく綺麗な手のままだった。

「望は今、アウロンの傷を治癒したんだ」

「そんなっまさかっ!!」

落ち着きを取り戻した樹が望にゆっくり説明した。目の前の光景が信じられないクラー・スンナは声を荒げた。

「はぁ?何言ってんの?」

「望、私の手の傷はどこにもないでしょう?」

「えー……確かに。消えちゃってます…けど…」

望はアウロンの手をマジマジと見つめ、先程まであった傷を見つけようとしていた。

「望…今兄ちゃんが見たのは、望の手から輝く魔力がアウロンの手を包むところだよ…」

「えぇ~?あ、でも俺にも魔力があるみたいなんだよ!シャワーが出せたんだ!水がさ、魔石?だっけ?触ったらさ、ジャバーって出たよ!」

「いやね、だから、今兄ちゃんが望の治癒を見たっていってるでしょ?望、聞いてる?」

「そーゆーのはいいからさ、俺の話聞いてよ!水出せたんだけどさ。この間、メイドの子の火傷冷やすのに水を冷た過ぎで出しちゃって、失敗失敗……あははは……は?」

樹とクラー・スンナが驚いていた。

(え?やだ…なんだよこの空気……)

「望…そんな事……出来たの?」

「えー……なに?」

(何だよ何だよ……何か嫌な予感がすんだけど…)

アウロンは改めて自分の手を見て、頷いて満足そうにした。そしておもむろに口を開いた。

「望、通常は魔石を通して出す水の温度は心地よい温度しか出せないのですよ。高過ぎず、低過ぎず、これが通常なのです」

「はい……そうなんですか…」

(え?だから?)

「まだご理解されていない様ですね。つまり、望の魔力は少し普通と違うという事です。分かりますか?特別なのですよ」

「え?それ……ってなんかマズイの?」

「望っ!!マズイなんてもんじゃ無いよ。望は類稀なる治癒の魔力を持つ者なんだ!」

「えぇ?治癒ぅ……類稀なるって…響、嫌だな、それ……」

「何言ってんだよ!俺は使い様って言われてるけど、数百年に一度は必ず現れる存在なんだよ?でも望はそれよりも、もっともっと希少な存在なんだよ!!」

「その通りです!使い様!!望は凄いのです」

望を置き去りにして樹とアウロンが盛り上がっている。望としては、自分がそんな希少な存在な訳がないと信じられないでいた。二人に寄ってたかってワイノワイノ言われている中、樹の後ろに控えていたクラー・スンナがブルブルと震え出した。そして震える声で喋り出した。

「そ、そんな馬鹿な………伝承でしか聞いた事が無い伝説の治癒の魔力を持つ者が……そんな……い、今目の前に存在している……だと……この弟が……?」

(おわ……あの魔術の人めっちゃ震えてんじゃん……怖いわ……伝説?マジかよ??……いやいや、嘘だろ?俺だぞ?しかもこの魔術の人も弟ごときが……的なこと言ってんぞ)

ガバッと動いたクラー・スンナは望の側に来て跪いた。

「望様っっ!!」

「げぇっ」

「か、数々の御無礼……ま、誠に申し訳ございません!つ、つ、使い様の弟であらせられる望様までも崇高な存在とはっ……この魔術使い高位クラー・スンナ……こんな奇跡を我が人生で目にする事が出来るとはっ……感無量です!!」

「え、えぇーー怖いわ……」

(ヤバいヤバい……どっかの宗教みたいじゃん、辞めてよ……目がマジじゃん……怖いって)






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