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一歩前進、そして暗雲
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「アウロンさんって……趣味悪いですよ……意地悪だし……ここ道の真ん中ですよ……何やってんですかぁ……」
可哀想なくらいに真っ赤になった望は忙しなく瞳を動かし周りを見て、アウロンを見て、手元を見て、またアウロンの唇を見て、と視線が定まらない。
「愛を囁くのに場所は関係ありませんよ」
「あります!!」
「では、今日の夜…ベッドの中でならよろしいですか?」
口がパクパクして言葉が出てこない。
(おかしい…俺、アウロンさんと付き合ってたっけ??あれ??)
「ふふふ……ちょっと嬉しくて…困らせてしまいましたね、すみません。望様は初心でいらっしゃるから。可愛くてたまりませんね…」
悔しくて睨みつけるが効果は無さそうだ。
「でも本心ですよ」
繋いだ手の指を動かして望の指の間を撫でてくる。
どこかセクシャルな動きに益々困ってしまう。
(何だよ何だよ…何でこんな本気なんだよ。
前からセクハラ親父っぽい所はあったけどさ…な、なんか……今日は特に…熱の入り方が…ど、どうしよ)
「困った顔も可愛いから、こちらも困ってしまいますね望様?」
「アウロンさん……どうしたんですか?」
「望様との旅で浮かれているのもありますが、緊張している望様を見るのは初めてて…私のことだけ考えれば、いつもの様に緊張が解れるかと……」
「そんな意図が……余計に緊張しちゃったんですけど……」
唇を突き出してモソモソと応戦する。
「まぁ、あわよくば本当になってしまえば良いと思ってたことも事実ですがね。ふふふ」
(油断ならないな……)
アウロンの掌の上で転がされていたのかと思うと悔しいが、確かに嫌な緊張感は消えたようだ。悔しくて仕方がないが、ここは感謝すべきなのであろう。悔しいが、
「ほら、もうすぐ着きますよ」
「あそこですか?何かどっと疲れた…馬車のとこからここまでで……」
「そうな事おっしゃいますと…今夜ベッドの中でもっと疲れさせ…」
「もうっ!!!」
神経をゴッソリすり減らされつつ目的の宿に到着した。これ以上アウロンの口を開かせないようにサッサと馬車酔いでダウンしているガマズの元に急ぐ。
「ガマズさーん、大丈夫ですかぁ?」
「あーーー治癒者…様……実は……ダメです」
真っ青な顔をしたガマズが宿の部屋のベッドの上で寝転がっていた。その近くには魔術使いのヒタム・ユーと見習いのゲンコラ・ヤイミュがいた。
「あぁ駄目そうですね。吐きそうですか?実はちょっと試して見たいことがあってですね」
「治癒者様~治していただけるのですか?」
「え!?こんなものに治癒のお力をお使いになると!?魔力の無駄遣いですよ!」
「ヒタム……余計なことを……」
「ものは試しで、治るかどうか分かりませんし…俺、まだ自分の能力をよく理解してなくてですね……そんな大したものでは無いし、人体実験に付き合って下さいよ」
「怖い響ですね…」
アウロンを見て小さくなったゲンコラ・ヤイミュがボソボソ呟く。
「では、確かめます」
望は両手をガマズに当てて、目を閉じて魔力の流れを感じる。魔力には想像力と気持ちの持ちようが大事らしく、気持ち悪いのよくなれ~と念じてみる。
「あ、あ、あ、気分がスーッと良くなっていきます!成功ですよ!!治癒者様!」
「おー良かったです」
「もぅ早く使ってくださいよーそしたらこんなに苦しまなかったのに~」
「ガマズ……貴様、まず先に言うことがあるだろう……」
アウロンが我慢ならんと口を挟んできた。
「ひっ…アウロン様、怖いです…治癒者様、大事なお力を私何ぞにお使い頂き、恐縮至極……」
「いいです、いいです。アウロンさん!俺の人体実験だって言いいましたよね?そんなにかしこまらなくても…」
「いいえ、そもそも私は少し治癒者様と長く接しすぎたのかもしれません。治癒能力をお持ちというだけでも大変貴重なことですのに……」
「…うーん。だったら、その治癒者様って呼び名、やめてもらっても良いですか?ほら、俺は覆面って事になってるし、誰が聞いてるか分からないし」
「成る程、それは一理ありますね」
「ですよね。なので名前で呼んで下さい。あ、後ろの魔術使いの人達も」
「えーと、望様………」
「ガマズ、後ろのアウロンさんのお顔が怖いんだけど…ちょっと遠慮して考えろよ」
「アウロンさん、不満そうな顔しないで下さい」
「使い様以外で、この世界の者が望様とお呼びして良いのは私だけだと思っていたので…特別なようで、甘い響きだと思っていたので…とても残念です」
「えぇ~~呼び方ぁ?じゃあ、苗字の林田で」
「言いにくですね…ながいし…治癒者様もアウロン様に甘いんですね。成る程です」
ジトリと二人を交互に見てくる見習いゲンコラ・ヤイミュはまだメイドへの恋心を引きずっている様だ。
「お前っどんだけ命知らずなんだよっ」
「では……治癒者様に恐れ多くも親愛を込めさせて頂きまして…シダ様、などいかがですか?」
「おぉーそれっぽい」
「これからは、極力治癒者様とはお呼びしないように気をつけます。よろしいですか?アウロン様」
納得げに頷くアウロンだった。
可哀想なくらいに真っ赤になった望は忙しなく瞳を動かし周りを見て、アウロンを見て、手元を見て、またアウロンの唇を見て、と視線が定まらない。
「愛を囁くのに場所は関係ありませんよ」
「あります!!」
「では、今日の夜…ベッドの中でならよろしいですか?」
口がパクパクして言葉が出てこない。
(おかしい…俺、アウロンさんと付き合ってたっけ??あれ??)
「ふふふ……ちょっと嬉しくて…困らせてしまいましたね、すみません。望様は初心でいらっしゃるから。可愛くてたまりませんね…」
悔しくて睨みつけるが効果は無さそうだ。
「でも本心ですよ」
繋いだ手の指を動かして望の指の間を撫でてくる。
どこかセクシャルな動きに益々困ってしまう。
(何だよ何だよ…何でこんな本気なんだよ。
前からセクハラ親父っぽい所はあったけどさ…な、なんか……今日は特に…熱の入り方が…ど、どうしよ)
「困った顔も可愛いから、こちらも困ってしまいますね望様?」
「アウロンさん……どうしたんですか?」
「望様との旅で浮かれているのもありますが、緊張している望様を見るのは初めてて…私のことだけ考えれば、いつもの様に緊張が解れるかと……」
「そんな意図が……余計に緊張しちゃったんですけど……」
唇を突き出してモソモソと応戦する。
「まぁ、あわよくば本当になってしまえば良いと思ってたことも事実ですがね。ふふふ」
(油断ならないな……)
アウロンの掌の上で転がされていたのかと思うと悔しいが、確かに嫌な緊張感は消えたようだ。悔しくて仕方がないが、ここは感謝すべきなのであろう。悔しいが、
「ほら、もうすぐ着きますよ」
「あそこですか?何かどっと疲れた…馬車のとこからここまでで……」
「そうな事おっしゃいますと…今夜ベッドの中でもっと疲れさせ…」
「もうっ!!!」
神経をゴッソリすり減らされつつ目的の宿に到着した。これ以上アウロンの口を開かせないようにサッサと馬車酔いでダウンしているガマズの元に急ぐ。
「ガマズさーん、大丈夫ですかぁ?」
「あーーー治癒者…様……実は……ダメです」
真っ青な顔をしたガマズが宿の部屋のベッドの上で寝転がっていた。その近くには魔術使いのヒタム・ユーと見習いのゲンコラ・ヤイミュがいた。
「あぁ駄目そうですね。吐きそうですか?実はちょっと試して見たいことがあってですね」
「治癒者様~治していただけるのですか?」
「え!?こんなものに治癒のお力をお使いになると!?魔力の無駄遣いですよ!」
「ヒタム……余計なことを……」
「ものは試しで、治るかどうか分かりませんし…俺、まだ自分の能力をよく理解してなくてですね……そんな大したものでは無いし、人体実験に付き合って下さいよ」
「怖い響ですね…」
アウロンを見て小さくなったゲンコラ・ヤイミュがボソボソ呟く。
「では、確かめます」
望は両手をガマズに当てて、目を閉じて魔力の流れを感じる。魔力には想像力と気持ちの持ちようが大事らしく、気持ち悪いのよくなれ~と念じてみる。
「あ、あ、あ、気分がスーッと良くなっていきます!成功ですよ!!治癒者様!」
「おー良かったです」
「もぅ早く使ってくださいよーそしたらこんなに苦しまなかったのに~」
「ガマズ……貴様、まず先に言うことがあるだろう……」
アウロンが我慢ならんと口を挟んできた。
「ひっ…アウロン様、怖いです…治癒者様、大事なお力を私何ぞにお使い頂き、恐縮至極……」
「いいです、いいです。アウロンさん!俺の人体実験だって言いいましたよね?そんなにかしこまらなくても…」
「いいえ、そもそも私は少し治癒者様と長く接しすぎたのかもしれません。治癒能力をお持ちというだけでも大変貴重なことですのに……」
「…うーん。だったら、その治癒者様って呼び名、やめてもらっても良いですか?ほら、俺は覆面って事になってるし、誰が聞いてるか分からないし」
「成る程、それは一理ありますね」
「ですよね。なので名前で呼んで下さい。あ、後ろの魔術使いの人達も」
「えーと、望様………」
「ガマズ、後ろのアウロンさんのお顔が怖いんだけど…ちょっと遠慮して考えろよ」
「アウロンさん、不満そうな顔しないで下さい」
「使い様以外で、この世界の者が望様とお呼びして良いのは私だけだと思っていたので…特別なようで、甘い響きだと思っていたので…とても残念です」
「えぇ~~呼び方ぁ?じゃあ、苗字の林田で」
「言いにくですね…ながいし…治癒者様もアウロン様に甘いんですね。成る程です」
ジトリと二人を交互に見てくる見習いゲンコラ・ヤイミュはまだメイドへの恋心を引きずっている様だ。
「お前っどんだけ命知らずなんだよっ」
「では……治癒者様に恐れ多くも親愛を込めさせて頂きまして…シダ様、などいかがですか?」
「おぉーそれっぽい」
「これからは、極力治癒者様とはお呼びしないように気をつけます。よろしいですか?アウロン様」
納得げに頷くアウロンだった。
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