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命をかけて
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(んがぁ~~ふらついて来た…これが……魔力が無くなってきた…とかってやつか…魔力って何だ……生命力とか言われたら、ゾッとすんぞ)
「んぐっ……はぁはぁ……はぁ……はぁはぁ」
遂に望は覚束無い足元でバランスを崩し座り込んでしまった。額から汗が落ちて来て腕で拭う。
(苦しい……やっぱ……俺じゃ無理なのか……)
じんわりと涙まで滲んできた。つま先がまた、コツンと何かに当たった。
「アウロンさん………」
心細すぎて頭に思い浮かんだ人を呟いてしまう。何かに当たったつま先をもう一度弱々しく蹴る。結界の壁が憎たらしい。望は壁を蹴ったつもりだったが、蹴った物が動いた。
「え?はぁはぁ……やっと…壁が崩壊……した?」
違った、軽い感触だった。何か小さい物だった気がする。望は疲れ切っていたが視線を向けてみる。
「…………嘘……」
望の視線の先には本があった。
「嘘、嘘…………はぁ……はぁ……これ、これ」
本を手に取る、それはあの例の本、日記だった。
「へ?何で……何で?結界……解けてないじゃん……はぁ……意味わかんない。これ……あ、黒い靄が僅かに……出てる?」
(俺、おかしくなったのかな……黒い靄に触りまくってるのに…普通じゃないか?)
「出てきたの?やっぱ……寂しかったから?」
ギュウっと日記を抱き込む。
「なぁ…止めてくんない?その黒い靄…3人…死んじゃったよ……そのまま……兄ちゃんも殺しちゃう気?……なぁって……なんか……言えよ……俺にどうしろって?」
体育座りで日記を抱き込み膝に額を押し付ける。
「なんだよ……どうすりゃいいんだよ……全然止まんないじゃん!黒い靄…………くそっ…………そもそもさぁ……ふっ……そもそも、お前が死ねって思った奴らさぁ…とっくの昔に死んでんじゃん!末代まで呪ってやるってやつ?」
ボロボロ涙が出てくる。
「どうも出来ねぇって、俺には……無理だってば……ヘロヘロだし、頭も回らねぇ……アウロンさんもそばに居ない…ここまで出てきたんだろ…俺の元に来たんだろぉ…うっ……本当に人を殺したかったのかよ……もぅ……どうしよう……」
拭っても拭っても涙は出てくる、日記にもポタポタ落ちてしまう。
「俺の力だけじゃ………ん?」
無力さに沈みかけた時、ポケットがほのかに光っているのが目に止まった。そっと触れて、ポケットの中から取り出す。それは小さな水晶だった。
「え?これって……」
片手で日記を持ち、もう片方の掌に水晶を乗せて目の高さまで上げる。マジマジと近くで見て思い当たる。
「あ!これっ…………」
目を見開いて真っ赤になる望。記憶の断片が思い浮かんだ。
「これ……アウロンさんが俺のケツに……兄ちゃんから渡されたって言ってた…」
確か、アウロンといたした時にドロドロと酷い状態になってしまった水晶だ。記憶の断片と、アウロンから聞いて、出かける前に何度も何度も洗った水晶だ。それはもう何度も洗った。
「いつの間に俺に持たせたんだよ…」
アウロンからの説明という名の言い訳では、望の身体の内側からの方がより強く魔力が浸透する。というような事だった。
「だからって……エッチしちゃうとか…まぁここで死んだとしても、いちよう経験済みってことになんのか、俺は……どうなんだよそれ」
望は改めて水晶を見つめる。
「浄化の力を持った水晶…これしかないじゃん」
望は日記に水晶を挟んでみた。
「なんか違う気がする…これで魔力流してみる?治癒のが良いのか?……でも……治癒にしろ、魔力にしろ、次が最後のチャンスだよ。本当に……俺、限界超えそうだ」
人差し指と親指で摘んでみる。
「兄ちゃん……アウロンさん……俺に力を貸して」
(身体の中がいいんだろ……身体の中……自分でケツの中は無理だ。絶対。だとしたら、俺が自分で自分の身体の中を触れる唯一の場所)
望はちょっと躊躇したがポイっと水晶を口の中に入れた。ほやっと口の中が温かくなった気がする。
(これで、最後!)
口の中の水晶を舌で包み込んで治癒の力を流す、そしてその流れを抱え込んでいる日記まで伝える。
(ヤバい、腕……感覚無くなってきた……足も……冷たい……頼む頼む頼む……もう本当に無理なんだよ)
”やっぱり、愛の力ってやつ?”
「ふぇ?」
いつの間にかギュッと目を閉じていたみたいだ。声が響いた気がしてそっと目を開けると部屋中の黒い靄が集まってきている。
「ふぁ……ふぉふぉ……」
水晶が口に入っていて上手く喋れない。黒い靄の人型、それを見た瞬間止まっていた涙がまた流れてきた。
”お人好し”
我慢出来なくなった望は水晶を口から出して軽く咳き込む。
「けほけほ……やっぱ……いたじゃん……」
黒い靄の人型は集まったと思ったらどんどん薄くなる。
「え、え、もう?もう消えちゃうの?」
自分と似た境遇だった、使い様じゃない異世界からの召喚者。その人物のことを思うと胸がギュッとなる。
「愛の力ってなんだよ…」
一瞬風が吹いた気がした。そしてあっという間に黒い靄は全て消えてなくなってしまった。
「んぐっ……はぁはぁ……はぁ……はぁはぁ」
遂に望は覚束無い足元でバランスを崩し座り込んでしまった。額から汗が落ちて来て腕で拭う。
(苦しい……やっぱ……俺じゃ無理なのか……)
じんわりと涙まで滲んできた。つま先がまた、コツンと何かに当たった。
「アウロンさん………」
心細すぎて頭に思い浮かんだ人を呟いてしまう。何かに当たったつま先をもう一度弱々しく蹴る。結界の壁が憎たらしい。望は壁を蹴ったつもりだったが、蹴った物が動いた。
「え?はぁはぁ……やっと…壁が崩壊……した?」
違った、軽い感触だった。何か小さい物だった気がする。望は疲れ切っていたが視線を向けてみる。
「…………嘘……」
望の視線の先には本があった。
「嘘、嘘…………はぁ……はぁ……これ、これ」
本を手に取る、それはあの例の本、日記だった。
「へ?何で……何で?結界……解けてないじゃん……はぁ……意味わかんない。これ……あ、黒い靄が僅かに……出てる?」
(俺、おかしくなったのかな……黒い靄に触りまくってるのに…普通じゃないか?)
「出てきたの?やっぱ……寂しかったから?」
ギュウっと日記を抱き込む。
「なぁ…止めてくんない?その黒い靄…3人…死んじゃったよ……そのまま……兄ちゃんも殺しちゃう気?……なぁって……なんか……言えよ……俺にどうしろって?」
体育座りで日記を抱き込み膝に額を押し付ける。
「なんだよ……どうすりゃいいんだよ……全然止まんないじゃん!黒い靄…………くそっ…………そもそもさぁ……ふっ……そもそも、お前が死ねって思った奴らさぁ…とっくの昔に死んでんじゃん!末代まで呪ってやるってやつ?」
ボロボロ涙が出てくる。
「どうも出来ねぇって、俺には……無理だってば……ヘロヘロだし、頭も回らねぇ……アウロンさんもそばに居ない…ここまで出てきたんだろ…俺の元に来たんだろぉ…うっ……本当に人を殺したかったのかよ……もぅ……どうしよう……」
拭っても拭っても涙は出てくる、日記にもポタポタ落ちてしまう。
「俺の力だけじゃ………ん?」
無力さに沈みかけた時、ポケットがほのかに光っているのが目に止まった。そっと触れて、ポケットの中から取り出す。それは小さな水晶だった。
「え?これって……」
片手で日記を持ち、もう片方の掌に水晶を乗せて目の高さまで上げる。マジマジと近くで見て思い当たる。
「あ!これっ…………」
目を見開いて真っ赤になる望。記憶の断片が思い浮かんだ。
「これ……アウロンさんが俺のケツに……兄ちゃんから渡されたって言ってた…」
確か、アウロンといたした時にドロドロと酷い状態になってしまった水晶だ。記憶の断片と、アウロンから聞いて、出かける前に何度も何度も洗った水晶だ。それはもう何度も洗った。
「いつの間に俺に持たせたんだよ…」
アウロンからの説明という名の言い訳では、望の身体の内側からの方がより強く魔力が浸透する。というような事だった。
「だからって……エッチしちゃうとか…まぁここで死んだとしても、いちよう経験済みってことになんのか、俺は……どうなんだよそれ」
望は改めて水晶を見つめる。
「浄化の力を持った水晶…これしかないじゃん」
望は日記に水晶を挟んでみた。
「なんか違う気がする…これで魔力流してみる?治癒のが良いのか?……でも……治癒にしろ、魔力にしろ、次が最後のチャンスだよ。本当に……俺、限界超えそうだ」
人差し指と親指で摘んでみる。
「兄ちゃん……アウロンさん……俺に力を貸して」
(身体の中がいいんだろ……身体の中……自分でケツの中は無理だ。絶対。だとしたら、俺が自分で自分の身体の中を触れる唯一の場所)
望はちょっと躊躇したがポイっと水晶を口の中に入れた。ほやっと口の中が温かくなった気がする。
(これで、最後!)
口の中の水晶を舌で包み込んで治癒の力を流す、そしてその流れを抱え込んでいる日記まで伝える。
(ヤバい、腕……感覚無くなってきた……足も……冷たい……頼む頼む頼む……もう本当に無理なんだよ)
”やっぱり、愛の力ってやつ?”
「ふぇ?」
いつの間にかギュッと目を閉じていたみたいだ。声が響いた気がしてそっと目を開けると部屋中の黒い靄が集まってきている。
「ふぁ……ふぉふぉ……」
水晶が口に入っていて上手く喋れない。黒い靄の人型、それを見た瞬間止まっていた涙がまた流れてきた。
”お人好し”
我慢出来なくなった望は水晶を口から出して軽く咳き込む。
「けほけほ……やっぱ……いたじゃん……」
黒い靄の人型は集まったと思ったらどんどん薄くなる。
「え、え、もう?もう消えちゃうの?」
自分と似た境遇だった、使い様じゃない異世界からの召喚者。その人物のことを思うと胸がギュッとなる。
「愛の力ってなんだよ…」
一瞬風が吹いた気がした。そしてあっという間に黒い靄は全て消えてなくなってしまった。
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