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プロローグ
《1》
季節は10月になろうとしてるのに今だ残暑が厳しく、服装はいつまで経っても夏服のままだ。ここは公立小学校、6年2組の教室。担任教師の昼過ぎの眠たくなる授業、教室内は冷房の涼しい風のおかげで快適に保たれている。もうすぐ放課後になる、外の暑さの中帰るかと思うとため息が出る。頬ずえをつき外の様子を何となく見ていた。
(あ、今日は蝉の鳴き声聞こえない)
教室全体に微睡んだ雰囲気が漂っている中、廊下から走る足音が聞こえてきた。小学校では特に口うるさく言われている廊下は走るな、をこんな授業中に誰が走っているのかと視線が自然と音の方へと向く。
ガラリ
教室のドアが勢いよく開かれた。
「あ、先生……ちょっと宜しいですか?」
廊下を走っていた人物は教頭だった。予想外の人物の登場に教室内がザワつく。教室の端でコソコソと話している2人の教師、その2人の視線が自分へ向いている気がする。体の中がザワついた。
「森、ちょっと来なさい」
「え、はい……」
名前を呼ばれ、席を立つと教室中の視線を集める。
(見ないで欲しい……)
注目を浴びる事に慣れていないのだ。窓側に座っていたので廊下側の端にいる教師の元へゆっくり歩いていく。途中に”お前何やったんだよ”などと声が掛かるが反応せず歩き続ける。
「森、教頭先生と職員室に行きなさい」
「はぁ……」
「行こうか……」
教頭は静かに言い、背中から肩に手を回し職員室に誘導する。2人の教師の顔が重々しいことが待っていると物語っているようだった。
「森くん……落ち着いて話を聞いて欲しいんだ……大丈夫かな?」
「は……い…」
職員室の奥に簡単な応接スペースが有り、そこに座らされている。教頭の声は穏やかに聞こえるがやけにゆっくり話すのが気になる。
(なんだろ……逆に怖い……)
「先程、連絡があってね……君のご両親が事故にあわれたらしい…」
「え……」
ドクン
心臓が変な音をたてた気がした。
「それで……非常に残念なんだが……亡くなられたという事なんだ…」
「は……はい?」
(なんだ?何言ってるんだ?)
「森くん、今君の緊急連絡先に連絡を取っていてね……その……親戚の方じゃないんだが……これからここにいらっしゃるそうだから…」
(意味が理解できない…言葉は分かる…でも……)
「な、なに……何を言ってるんですか?」
隣に女性が座り呆然と前を向き座っている背中をさすられる。母親よりだいぶ年上の優しげな女性は養護教諭だった。
「教頭、今はちょっと……連絡を受けた方がいらっしゃるまでは……」
「あぁ……そうだな……」
無言で隣に座っている養護教諭を見つめ口を開く。
「あの……あ…の…僕……理解…出来なくて……」
一瞬、養護教諭の顔が泣きそうに歪められたがすぐに穏やかな顔に戻り何度か頷く。
「大丈夫、大丈夫よ。ゆっくりで良いの」
「はい……あの……僕の、僕の……両親。お父さんとお母さんが……な、なに?」
「……車で事故に合われてね……」
「はい、事故。うん……分かる……今日出かけるって言ってた」
「それで……」
「それで?怪我、してるんですか?」
「…………」
養護教諭と教頭は思わず言葉を飲み込んでしまった。次が続けられなかったのだ。目の前に座るのは子供だ、こんな痛ましいことを告げなければならないとは、やるせなかった。緊急の連絡先を調べた所、親戚の情報は何も無かった。その事実が、この子の未来を案じてしまう。両親の仕事場、友人のみ記されていた。これから、その友人がやってくる。
「失礼します」
よく通る低い声が職員室に響いた。
「私、連絡頂きました武藤と申しますが…」
「あ、こちらです。お待ちしておりました」
足早に近くまで来る、武藤という男性ともう1人若い男性が付いてきた。
「初めまして、連絡ありがとうございます。私はこういう者です。後ろの者は私の秘書です」
「これは、ご丁寧に…あ、理事をやられてるんですか……」
「はい、新設したばかりの学園ですが……今、病院にはもう1人の秘書が行っております」
頭上で交わされる会話についていけない。
「私は、この子が心配で…こちらに来ました」
(誰?……知らない……)
武藤は目線を合わせるために低くなり声を掛けてきた。
「こんにちは、私は武藤一と言います。君のご両親とはお友達なんだよ里葉くん」
これが、武通学園、理事長の武藤一と里葉の出会いだった。
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