2 / 46
少年のころ
《2》
武通学園(むつがくえん)昨年出来たばかりの中高一貫の全寮制の男子校だ。学園を新設するさい、経済界に影響力を与える新規加入した会社やグループが多く出資し出来た。学園に入学する生徒もそんな会社の子息が多かった。その学園のトップを務めるのが武藤 一(むとう はじめ)息子が2人いる。また彼らも武通学園に入る。
「友達?お母さんたちと?」
「そうだよ、君とも赤ちゃんの時は会っているんだけどね…」
森 里葉(もり さとは)彼は至って普通の家庭で育っていた。特別お金持ちな訳ではなく、特別生活が苦しかった訳でもない。ただ、祖父母が短命で既に他界していた。親戚とも余りにも遠縁であるため付き合いが一切なかった。両親と自分の友達の話しはしても、両親の友達の話は聞いたことが無かった。
「このまま、病院に行けそうかい?」
「病院……」
急激に不安になる。
「お母さんたち……いるんですか?」
「……そうだね……」
「あの、私はこの学校の養護教諭をしています。森くんは、あの……混乱しているようで…ハッキリと理解出来ていません」
「っ!!……あぁ……分かりました」
(なんで皆……痛そうに僕を見るの……)
「失礼致します。秘書の赤木と申します。理事と森里葉くんは先にお車に…後は私がお話させて頂きます」
「頼むよ、里葉くん…いいかい?」
「え……はい……あ、ランドセル…」
「じゃあ、教室まで着いていくよ。部屋の外で待っているから取っておいで、一緒に車に乗ろう」
里葉はランドセルを背負って駐車場に一といた。目の前の車は黒くてピカピカと輝いていた。中に乗り込むと小学生でも分かるほど上質で座り心地が良かった。
「里葉くんは何年生になったのかな?」
「6年です」
「おぉ…そうか……私の下の子も同い年だ」
(チビだって言いたいんだ…)
里葉は平均より小く骨格も華奢で小学校の中学年にしか見えなかった。里葉は俯いた、一の反応は如実に語っているようなもので拗ねてしまった。しかも不安でたまらない。何が起こっているか理解したくなかった。頭が拒否しているようだ。
秘書の赤木がやって来て運転席に乗り込む。その隣、助手席に一が座っている。里葉は後部座席だ。背負っていたランドセルを膝の上に置き抱きしめる、つま先を見ていると気分が悪くなりそうで窓の外を眺めていた。
「……里葉くん行けそうかな?」
病院の駐車場、車のドアを開けて一が聞いてくる。
指先が冷たくて、頭より身体が状況を正確に理解している。分かっている、分かっているが認めたくなかった。
里葉は頷いて車から降りた。歩いて病院に入る、そこからの記憶が断片的にしか思い出せない。白い布で見えない両親。玉突き事故に巻き込まれた、とか即死に近かった、とか大人が全てやるから、とか色々とあった気がするが所々しか思い出せず、ずっと夢の中の出来事のようで涙が出なかった。泣けなかったことだけは鮮明に覚えている里葉だった。
(あ、お父さんとお母さんがいないと僕は……どうなるんだろう……)
そんな事をぼんやり考えていた。お通夜、告別式と無事に終わり里葉はずっと言葉少なくぼんやりしていた。現実だと思えなかった。
小さな骨壷2つを目の前にして、急速に両親が自分の傍にいない、暖かな温もりが消えたと頭から全身に冷たい何かが突き抜けた気がした。その時、里葉は声を出すことなくただただ瞳から涙が流れていた。触れた骨壷は冷たかった。
「里葉くん……くっ…………」
ずっと泣けないでいた里葉が立ち尽くして泣いている姿は周りの者を悲痛な思いにした。
「君の……お父さんと約束しているんだ……私が……私たち家族が……君を守るよ……うっ」
自分のあずかり知らぬ所でそんな約束をしていたとは、斯くして里葉は武藤家に引き取られることになった。早生まれの里葉が小学6年生、11歳の秋めいた日だった。
あなたにおすすめの小説
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
前世が悪女の男は誰にも会いたくない
イケのタコ
BL
※注意 BLであり前世が女性です
ーーーやってしまった。
『もういい。お前の顔は見たくない』
旦那様から罵声は一度も吐かれる事はなく、静かに拒絶された。
前世は椿という名の悪女だったが普通の男子高校生として生活を送る赤橋 新(あかはし あらた)は、二度とそんのような事ないように、心を改めて清く生きようとしていた
しかし、前世からの因縁か、運命か。前世の時に結婚していた男、雪久(ゆきひさ)とどうしても会ってしまう
その運命を受け入れれば、待っているの惨めな人生だと確信した赤橋は雪久からどうにか逃げる事に決める
頑張って運命を回避しようとする話です
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪