さがしもの

猫谷 一禾

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少年のころ

《5》



 2学期後半、里葉は保健室へ入り浸ること後多くなっていた。里葉の事情は有るけれどもその状態を保護者の元に連絡がいくのは当たり前だった。

「里葉くん、少し話が有るんだけれどもいいかな」

日曜日、珍しく武藤家の大黒柱である一が家にいて里葉に声を掛けてきた。里葉は一だけでは無く武藤家の全員とあまり話さなかった。劣等感がそうさせるのか、今だに緊張するし何を話していいのか分からなくなってしまうのだ。香と道雄はそんな里葉にも優しく話題を提供してくれるが、話が広がらない。困惑し申し訳なさそうな態度を取る里葉を見てそっとしてもらっている状態だ。

「そろそろ、中学校の話をしようかと思ってね」
「中学校……ですか…」

(え?…あ、そうか。学区が変わるとかそういう話だよな。今はここに住んでるんだし…)

「うん、おじさんは学校を経営してるんだ。そこの高校には道雄が通っている。進も中学はそこに進学予定だ。そこで里葉くんにも希望を聞いて、選択肢を増やす提案をしようと思ってね」
「選択肢……」
「そう、今の小学校の子達と離れたくないなら前の学区に通うことも出来るよ。それか今住んでいるここの家の近くの中学校、もしくはおじさんの学校。好きな所を選んで欲しんだよ」
「は……あ……」
「そうだよね、ピンと来ないよね。でもちょっと考えて欲しいんだ……もう少し話すとおじさんの学校は全寮制でここではなく、同級生と一緒に寮に住むことになる……香は反対してるけどね…里葉くんと一緒に暮したいらしいよ」
「そう、そうですか……」
「いきなり答えなんて出ないと思うから考えといてね、何でも質問してくれて構わないから」
「あの……おじ…さんの……学校って…あの私立じゃないんですか?僕、受験とか…」
「うん、私立だけどね中学校は狭き門ではないんだよ。里葉くんはよく図書館に通っているし、成績も良いと聞いているよ。進と一緒に塾やもしくは家庭教師を付けることも可能だ」
「でも、でもそんな……高そうです……」
「っ!……そうか、里葉くんは本当にしっかりしてるね……うちの息子達は甘受するのが当たり前だと思ってるところがあるからね……爪の垢を煎じて飲ませたいよ…」

(これって……良く言ってくれてるけど…他に住んでほしいって、おじさんの学校に行って欲しいって事なのかな…)

「あとね、もし、もしもの話なんだけれど…こっちの中学校かおじさんの学校に通うようであれば…3学期だけになってしまうけれど、進と同じ小学校に通うかい?」
「え?転校するって事ですか?」
「うん、それも選択肢の一つだよ」
「は……い…」
「………こんな話をする理由がもう一つあってね…実は学校から連絡があったんだよ…」
「あ……」
「おじさんはね、自由な考えと行動があって良いと思ってる。だけど、もし今の状況が里葉くんにとって苦しい環境なら変えてみてはどうかと思ってもいるんだよ…」
「……はい…」

(確かに、そうだ。今の教室は入りたくない)

「僕、考えてみます」
「うん、分かった」

里葉は確かにこの家も居心地の悪さを感じていた。広すぎる部屋、馴染みのない人達、慣れない環境。図書館にも、いつも以上に長い時間いるようにしていた。本が好きで図書館も好きだが、毎日のように通ってはいなかった。家の周りを案内された時に良い場所を見付けたと思ってしまった。部屋にいてもゆったりくつろげなかった。机に向かって勉強をする時間が多かった。なので誤解されたのだ、里葉は勉強は嫌いでは無かったが、好きでもなかった。しかもやっている割にはそんなに頭に入らない、自分は勉強が出来る方では無いと分かっていた。それでも良い機会なのかもしれない、同級生の会話を思い出して前の所には行きたくなかった。
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