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中等部のころ
《11》
しおりを挟む風紀室からの帰り道、央歌は進と帰っていた。
「武藤は生徒会かと思ってた」
「ん?あぁ…きらびやかなのは苦手で」
「ふっそうか…同室の子……注意してやって」
「山岡に言われなくても見てるって…」
「え?どーゆー意味?」
「あ"……あー……ちょっとした……知り合い?何だけど……あー…向こうが…知らないフリしたいみたいで…そんな感じ」
「ふーん?珍しいね…武藤の知り合いなの、隠したいんだ…」
「ちょっと……色々あるんだよっ」
「ふーん…惜しいことしたな…よく見ておけばよかったなぁ」
「辞めてやれ、アイツは目立ちたくないんだよ」
「あ、そっちかぁふーん」
「興味を持つな」
「はいはい」
里葉からするとスマートに助けられたかに見えたが、央歌は実の所凄く緊張していた。初めて困っている人を目の当たりにしたのだ。緊急性は感じなかったが、周りに頼れる人がいなかった。自分がどうにかしなければいけないと自らプレッシャーを掛けていた。しかも相手は3年生、詰襟に3年のバッチを付けていた。思わずS組で有り、風紀だと名乗ってしまった。権力を滲ませたのだ、助け方としては恥ずかしいやり方だったと反省している。自分はまだまだだと改めて未熟さを痛感した。
「早く、一人前になりたいな…」
「山岡はなんで風紀?」
「俺、白井学園でさ。そん時もやってたから…」
「そっか~白井学園の役職者ってそんなに優遇されてたの?」
「いや、生徒会だけだよ…こう見えても俺は正義感が強いんだよ」
「ふっだから…から回っちゃったのか…」
「煩いな…誰でも最初があるだろ…」
「うそうそ、気持ちわかるって…ま、頑張ろうな」
風紀に入る生徒は縁の下の力持ちがしょうに合っていると感じている生徒が多かった。そして、密かに正義感を持ち合わせてもいた。
里葉の日課は勉強だった。学校が終わり寮に帰ると机に向かった。道雄から聞いていた話で周りを警戒していたので単純に余計な接触を減らせば良いと考えた事と、一の顔に泥を塗るわけにはいかないと思った為だった。せめてA組から落ちる訳にはいかない。元々嫌いではない勉強、自分を偽ってまで付き合う友達より机に向かっている方が気が楽だった。ただ、要領が悪いのかトップの成績には行けないでいた。
(今日は図書室に寄って帰ろう)
里葉はトイレに行ってから図書室に行こうと思っていた。個室に入って息をつく、学校のトイレとは思えないほど綺麗な個室で、今日も一日気を張り続けた自分に一時の休憩を与えていた。
「はぁ……中等部来たらさっそく生徒会から声が掛かったな…仕事覚えろってことだよなぁ」
「前もやってたんだ…中等部、高等部とどうせやる事になるんだから覚えるの早い方がいいだろ」
「さぁすが…コウだねぇ……しっかしさぁ……あの親衛隊?あれどうにかなんないの?煩いんだよねぇ」
「個人でストーカーされるより良いだろ?」
「あー確かに…でもあのぶりっ子ぶり……付き合いにくくない?」
「まぁな…でも奴らはぶりっ子でも親衛隊に入ってれば襲われないって利点があるからな…生徒会の所有物に手を出すやつはいないから……」
「……後腐れなく遊べるかなぁ?」
「将……やるつもりか?」
「ん~中学生になったしぃ…そろそろ経験しとこうかなぁ…ま、最初はお姉さんが良いけどぉ」
カラカラと笑いながらトイレから出て行った。里葉は個室から出るに出られず、聞き耳をたててしまっていた。
(親衛隊に入ると……襲われない?…絡まれないってことなのかな)
静かになったことを確認してから、個室からゆっくり出て手を洗う。
(ぶりっ子って……女の子に使う言葉じゃないのかな…親衛隊……近くで見てみたいかも…)
近づかない方が良いと忠告を受けていた親衛隊に興味を持ち始めた里葉だった。
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