さがしもの

猫谷 一禾

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中等部のころ

《20》



 保健室に着き、ベッドに寝かされる。

「痛い所とかない?大丈夫?」
「平気……何ともない…」
「今、保健の先生来るから待っててね」
「ありがとう…」

ニコリと綺麗な笑顔を向けられた。

キュン

今度はキュンキュンと煩い心臓だ。また顔が暑くなり、恥ずかしくて布団を顔の半分まで引き上げる里葉。その様子に央歌が頭をポンポンとしてくる。

「こ、子供じゃ……ないから…本当に大丈夫だから……」
「ごめん。でも安心したんだ、怪我もなくて良かったよ」

保健室のドアが開いて白衣姿の先生と上級生と分かる生徒が入って来た。

「ごめんね、留守にしてて」

白衣姿の保健室の先生、後藤先生だ。後藤先生は里葉の小学校の時のような安心できるおばさん先生ではなく、若い男の先生だった。でもその雰囲気はやはり安心できる優しいものだった。

「気分はどうかな?」
「大丈夫です」
「山岡、報告」

先生と一緒に来た生徒が央歌にピシリと言う。里葉はその声にビクリとしてしまう。

「委員長……」
「あ、すまない…俺は風紀委員長の日吉だ。君にも話を聞いて良いかな?」
「はい……」

委員長の前にスっと出た後藤先生は柔らかく笑うと風紀の二人に言う。

「まずは問診、良いかな?そっちで先に話しててくれるかな?」
「はい…すみません」

優しくも逆らえない雰囲気で諭され入口付近の机と椅子が置かれた場所で報告をする。

「じゃあまずは名前は?」
「あ、森里葉です」
「うん、顔色が悪いって聞いてたけど落ち着いたみたいだね。どこか痛い所は?」
「ない……です…あ、そういえば…ちょっとだけ……お腹が…」
「お腹?見せてもらっても良い?」
「はい……あの…殴られちゃったので…」
「え"!?暴力受けてたの!?」
「は、はい……すみません……」
「森くんは悪くないよ!あー赤くなってる…内蔵とかは大丈夫かな…」
「歩けました…ぶつけた時みたいにちょっとだけズキズキするくらいです…」
「そっか…とりあえず様子を見ようね。気分が悪くなったら言うんだよ。他には無いかな?」
「後は大丈夫です」
「彼らと少し話してくるから、話せそうかな?」
「はい」

そう言ってお腹を触られ、布団を被せられた。後藤先生は話し声の聞こえる二人の元に行った。少し言葉を交わしていたが、風紀の二人が慌てたようにこちらに来る。

「里葉くん、殴られてたの!?」
「他は何されたんだ?」
「え、あ、あの……」

勢い込んで聞いた二人に驚いて引いてしまった。

「はいはい、落ち着いて。順番にゆっくりね」
「は、い……すみません。森、すまん」
「ごめん……まさかそこまでとは…」

(なんだか…えらい大変なことみたいに騒いでるな……あんまり騒いで欲しくないんだけどな…)

「最初から、思い出せるだけで良いからね?」
「はい。あの……僕…図書室に行こうとしてて、それであの先輩が声を掛けてきたんです。その時は周りに人が居たから大丈夫だと思ったんですけど…あの…僕の名前、知ってて…調べたって言ってて…それで……急に口を塞がれちゃって……先輩、力強くて…」

一度言葉を切ってしまう。なんでもない事のように話したかった。現に連れ込まれてしまったが、お腹を殴られ馬乗りに覆い被さって来ただけだ。怖かったが、幸い何処も触られていない。央歌が巡回の時に早く見つけてくれたからだ。
急かすような視線が感じられなく、保健室はゆったりとした雰囲気に包まれていた。

「あの……教室に引っ張って行かれちゃって…あの僕、その時に凄い暴れちゃって…だから、お腹殴られたんだと思います。それで……先輩が…その」
「上に乗ってきた?」
「は…い…。でも、その後すぐに、風紀の方に見つけて貰えたんで…大丈夫でした」

里葉はいつもの癖でうつむき加減で話していた。その場の反応がなく、不安で視線だけで伺い見る。

「森くん、実はな…こういった暴力事件は学校側に報告しなければいけない決まりになっている。それで概要をざっと報告したんだが…今回は反応が早くてな…」
「はい」
「君を襲った3年の生徒は退学が決まったんだ。今までにペナルティをもらっているし、今回は悪質だ、特にこの件では犯罪行為だ。傷害もしていたとは…」
「ペナルティ…ですか?」
「ん?あぁ…やつは前から怪しい行動が多かった。相談されたケースもあったし、もしかしたら余罪もあるかもな…風紀や生徒会から注意を何回も受けるとペナルティが付いたりするんだ。イエローカードって言うと分かりやすいか?」
「はい、何となくイメージできます」
「やつは父親が権力者で高を括っていたんだろう…しかし、学校側が早い対応で俺も驚いている。理事長が素早く反応したと連絡を受けているが…」
「そう……ですか…」

(迷惑を掛けてしまったのか…?)

その様子をじっと見守る央歌は口を噤んだままだった。

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