23 / 46
中等部のころ
《23》
同じクラス同じ委員の進と央歌は仲が良く、お互いの寮の部屋を行き来していた。
(あ、山岡くん…今日も部屋にいる)
里葉が部屋に帰ってくると迎えてくれる事が度々あった。その度に里葉の胸は高鳴るが、バレないように必死だった。幸いポーカーフェイスと言うよりニコニコしているのでバレにくい。何より恩人であるので、ある程度の好意は常識の範囲以内である。
「おかえり~里葉くん」
キュン
「ただいま~今日も一緒にいるんだね」
(おかえりってさ、おかえりってさ……)
「山岡って、里葉に愛想良いよな…」
「……そうなの?」
(うそっ…本当に?)
「そう見える?…でも確かに、里葉くん可愛いし、進の同室だしね。友達の友達には良い印象じゃなくちゃ」
「……あ、そうだよね~。山岡くんは常識人だからね~あー僕は勉強しなきゃだから…」
「またぁ?しょっちゅうやってるよな。勉強好きだよなぁ」
「……うん。まぁ……」
「なんの勉強してんだよ、里葉って。余計な雑学なんかやってるから学校の成績今一つなんだろ」
「……ふふ…いいでしょ別に。そこまで恥ずかしい成績じゃ無いんだから…」
「真面目にやれよ~」
里葉は二人に見えないように背中の服を握りしめた。二人は風紀の話など里葉が会話に入れない話を始める。自室に入り机に向かう、俯いた顔は何も映していなかった。ぼんやりと教科書を見つめる。
(やらなきゃ……A組から落ちちゃう……でも……このままで良いのかも…成績で目立っちゃダメだし…っていうか無理な話なんだけどね…)
できて当たり前の人たちの言葉は鋭いナイフみたいだと落ち込む、小学校時代の悪意のない暴言を思い出す。
(山岡くんもそっち側の人なんだよね…)
自分は彼らと対等ではないと日々の生活の中でまざまざと見せつけられているようだった。里葉は能力が低い訳ではなかったが、周りにいる人種が出来すぎるのだ。その中でA組に在籍している事は誇れる事であって、恥ずべきことではない。しかし里葉は人より劣っていると思い込んでいたので焦っていた。
(こんな僕が…山岡くんの事好きって知られたら……ダメだダメだ!)
高みを望む人と生活を共にする里葉にとっては親衛隊は居心地が良くなっていた。誰彼がカッコいい、誰と誰が怪しい、この化粧水が良い、などとおよそ女子の会話のようだが気が抜けて丁度良かった。軽く聞き流せばいい話題が多く、ゴシップを聞いている感覚だった。劣等感は何とか気持ちに折り合いをつけて、騙し騙し傷つかないように過ごせていた。
恋心
これだけが里葉を苦しくさせていた。進に会いに部屋によく来るので、沢山会える。嬉しい半面哀しくなる。”君には興味がないよ”そう言われているのと同じだった。
(遠くから眺めているだけなら良かった……なんでこんな近くにいるんだろ…)
央歌の声が、表情が、仕草が、里葉の視線を離さなくさせる。彼を知れば、見れば、魅力に捕らわれる。吐き出してしまいたい想いは一人で抱え込むしかない。心許せる友達はいない、進になんて絶対に言えない。本人に伝わらなくても、自分を見てくれなくても良い。せめてこの想いを声に出してただ聞いてくれる人がいれば良いのに、と望んでしまう。
「里葉くん……大丈夫?」
声をかけてきたのは生徒会室の掃除中、夕先輩だ。
「え?こっちは終わりました」
「うん。そうじゃなくてね…何か心配事でもあるのかな?って……」
「…………」
「今なら誰もいないよ。僕は口硬いからさぁ」
「……夕先輩…僕……好きな人がいて……」
「あーなーるほど!そうか、そうか…で?誰?」
ニヤニヤしながら聞いてくる。
「面白がってますよね……」
「そりゃ面白いよ~でもさぁ…話すだけでも楽になる事ってあるじゃない?」
「はい……」
「誰?誰?」
「……風紀の人です」
「ありゃ~そうなんだぁ…あ!だから…苦しい片想いしてるからかぁ」
「ダメでしょ?親衛隊は…」
「確かにね~……でもその彼とどうにかなりたいの?里葉くん的に」
「……考えた事なかったです…嫌われたくない、とか……僕を見て欲しいなぁとか…」
「まだまだ可愛い恋なんだね…ふふ」
「夕先輩……」
「僕が里葉くんの気持ちの受け皿になってあげるよ~隊員の健康も管理しなきゃ!僕はお手伝いチームのリーダーですから」
ふっと笑えた里葉は、確かに心が軽くなるのを感じた。
あなたにおすすめの小説
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
俺以外を見るのは許さないから
朝飛
BL
赤池凌平は、成瀬真介と出会い、緩やかに親交を深めてやがて恋人同士になるのだったが、時折違和感を抱いていた。
その違和感の正体が明らかになる時には、もう何もかも手遅れになってしまい……。
(女性と付き合うシーンもあります。)
※ネオページ、エブリスタにも同時掲載中。マイペースに更新します。
【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。