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高等部のころ
《29》
古びたドアを開けるとカランカランと鐘の音が聞こえた。店内に一歩入ると階段があり数段下がる。カウンターとソファ席が2つ、テーブルと椅子の席が4つ後は隅の方に足の長いテーブルが置かれている。客はまだ数人しかいなかった。里葉は来ると決めて来たが、何となく夜遅くは怖かったので夕方の時間に来ていた。客層は若そうだった、ともすれば里葉とたいして変わらない年齢のようだった。
(夕先輩も来てたってことは、若者が集まる店なのかな?………若者が集まる夜のバー…それって、不良というれる人種の人がいるのではないか!?)
ハタと、里葉の足が階段を降りた所で止まる。
(え?夕先輩って、不良だったの?)
軽く衝撃と共にショックを受ける里葉。
「いらっしゃいませ」
そんな里葉にカウンターの向こう側から声がかかる。落ちついた大人の男性だった。キョロリと視線を向けて戸惑いながらカウンターの端っこの席に座る里葉。
テーブル席にはじっとしてられなくて座れない。ましてやソファー席なんてもっての他だ。
「いらっしゃいませ」
もう一度にこやかに言われる。カウンターの向こう側にいる男性はいかにもお酒を出す雰囲気の格好をしていて黒髪を綺麗なオールバックにしていた。年の頃は30代だろうか。里葉はどう見てもお酒が飲める年齢に見えない、しかし何も咎められることなくすんなりと店内に通された。
里葉の今の格好は横にラインが入った黒のハーフパンツと黒いTシャツ、くすんだ白いパーカーを着ている。まるで子供だ、服自体は良い物を香から貰っていたがこんな格好で大丈夫かと思ってしまう。傍から見ると里葉によく似合っていて、本来の彼の良さが出る格好だった。
「見ない顔だね。初めてかな?」
「はい…」
「あまりこう言った店に慣れているように見えないけど、今日はどうしたのかな?」
ちょっとびっくりしてしまった。まさかこんな風に話しかけられると思っていなかった。男性の視線は少し探るような感じがした。
(これ……怪しまれてるのかな…)
こんな時は伝家の宝刀の彼の名前だ。
「あの、僕…夕先輩に紹介されて来たんですけど……」
「あ!夕くんの後輩くん?」
「はい、そうです…」
「なぁるほど、可愛いと聞いていたけどこんなに可愛いとはね~」
里葉は恥ずかしくて下を向いてしまう。
「夕先輩は大袈裟なところがあるから…僕はそんな…大したことないです。夕先輩には良くしてもらっていたから、贔屓目です」
優しく笑う男性、里葉は戸惑ってしまう。中ば勢いで来てしまった店。話しかけられてもその続きが困ってしまう。どう振る舞えばよいのか、この先どうしたらよいのか、モジモジしていた。
「何か飲みますか?」
「はい、あの…僕、何を頼んだら…」
「ごめんね、可愛いから見てしまっていたよ。お客様に失礼だったね。メニューはこれ、ソフトドリンクはここ」
「ありがとうございます」
メニュー表を渡され、繕っても仕方ないと正直に話すことにした。
「あの、僕よく分からなくて…こういうお店に来るの初めてだし、夜に一人で来るっていうだけでも……その…緊張しちゃって…夕先輩に息抜きにっていうか、気分転換にって意味で話し相手でも見つかるって言われてて……あ、このピンクグレープフルーツジュースお願いします」
「はい、かしこまりました。そうなんだ、それじゃあ、この店入るのは勇気が必要だったんじゃないのかな?」
「はい…実はその通りです」
「ははは、素直でいいと思うよ」
「あの、僕…普段はこんな感じじゃ無いんです。本当はこんな感じなんですけど……それで、普段の違う感じに時々疲れちゃって、そんな話を出来るのが夕先輩だけで、でも、夕先輩留学しちゃって…それで」
「夕くんが心配していたよ。えーとお名前聞いてもいいかな?はい、ジュースです」
「ありがとうございます。あ、えーと里葉、です」
「里葉くんか、そうだそうだ、言ってたよ。夕くんが話してたなぁ。ここではね自然な姿で、楽に過ごしてほしいって言ってた」
「夕先輩……」
「夕くんの後輩って事はあの学校だよね?」
「はい、同じ学校です」
「それなら、おじさんでも良いけど、同年代の子たちがもうすぐしたら来店する時間かな…」
「え……どういう…」
「ん?聞いてない?この店里葉くんの学校の子とか、ここら辺の学校の子がよく来る店だよ」
「え!?そうなんですか…」
(夕先輩、そんなこと一言も言ってなかった!)
そういえば、と周りを見回してみる。しかし、同年代という事は分かるが知っている顔はいない。私服だともっと分かりにくのかもしれない。人数少なくいる人も皆ラフな格好で少しほっとする。
「あ、丁度来たんじゃ無いかな。彼らは里葉くんと同じ学校の子だったはずだよ」
そう言われて振り返って見て驚愕する。
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