34 / 46
高等部のころ
《34》
「サト……勿体ないねぇ…」
「え?……どういう……」
「オータ!呼び出し。行くぞっ」
意味深な発言の意味を知りたいのにテーブル席にいる仲間からお呼びがかかってしまう。
「あーぁ…残念……ここまでだよ。もう少し話したかったのにね?サト……」
「あ……そう、なの?」
「ふふ……また会おうね。楽しみにしてるから」
「!!」
(た、楽しみにしてるから!?)
軽く手を振りながら仲間の元に歩いて行く。
「ススム~邪魔しないでよ~」
「俺じゃないよ、ボス様だよっ」
(わぁぁ……進だっ…絶対うるさく言うよ…)
「誰と話してたんだよ?」
「えぇ?…内緒だよ」
「ナンパか」
「ふっ……ご想像にお任せします」
(うわっうわっ……こっち見てる。なんだよ、見るなよなぁ)
「なんかさぁ黒龍の奴らが煩いみたいで…」
「黒龍?」
「そう、総長が暴れてるらしい」
「はあ!?暴れてる?」
「近づきたくなくても…呼ばれちゃったから…俺らの総長に…」
(総長、総長!?え?総長!?)
漏れ聞こえた会話に驚愕する里葉。
(は?だって……総長なんて響き…現実で聞くこと本当にあるの?総長って……暴走族とかのでしょ?え、え……山岡くんとか進も?本当に??)
すっかり困惑している里葉は混乱の無限のループに入り込んで一人ワタワタと視線が定まらずにいた。
カランカラン
「ありがとうございました」
鐘の音が聞こえて央歌や進たちが外に出ようとしている。外に出る階段を登りながら進は央歌と話していた相手が気になり振り返って一瞥した。何か引っかかった感覚がした。
(ん?なんだ、この感覚…あそこに座ってるやつ…なんだ?俺が、知らない奴……だよな?)
「オータ、お前が話してた相手って俺の知り合いじゃないよな?」
「えー?……それより今は黒龍でしょ?」
「まぁ確かに……」
最後にドアを閉める直前もう一度振り返って、カウンターに座る後ろ姿を見る。
(あれ?あの服、どっかで見たような…)
バタン
確認する前にドアは閉じられてしまった。視界が遮られると自分のやるべき事へと考えを切り替える。
(はぁ……行った……いなくなった…毎回進と一緒に来るのかな山岡くん)
明らかにほっとした表情の里葉にカウンター向こうから様子を伺っていた三井は顔を綻ばせる。
「サトくん、秘密にしたいことがあるなら周りに注意してね」
「え!ひ、秘密?ですか……」
「そうそう、誰が見てるか分からないからね」
「はぁ……僕、分かりやすいですか?」
「俺から見たらね、ここからならお店の中全体を見れちゃうし」
「そうですよね……あの、さっきまでいた人達って……よく来るんですか?」
「あぁハクの子達ね、最近はよく見るよ。特にサトくんと話してたオータくんは誰かを探してるみたいにキョロキョロしてたよ」
「探してた?」
「ぷっ……サトくんの事だよ…話してみて気がつかなかったかい?」
「え、え、え、僕を…探してたんですか?」
「サトくんの興味を引こうと必死だったでしょ…そんなジュースなんて掛けちゃって…大人っぽい雰囲気を作ってもまだまだ子供だなぁって思っちゃったんだけど…」
里葉の顔が赤くなった。
「あら……そこで赤くなっちゃうの……」
両手で頬を隠す里葉の行動は微笑ましいが、三井の目には危うく写ってしまう。
(だって……さっき僕に興味なんてないって思ったばっかりなのに…ここで会っただけで興味持って貰えるなんて…嬉しいに決まってるよ…)
「サトくん……君が秘密にしたい事の優先順位をつけた方がいいかもなぁ…」
「優先順位…ですか……」
三井はカウンターから身を乗り出してコソコソ言ってきた。
「この店の中で誰かに見つからないってのは難しいと思うよ。だから自分の気持ちを隠す方に専念したらどうかな?」
「!?」
「ごめんね。俺はこんな仕事してるし何となく分かっちゃうんだよ。ポーカーフェイスを磨くか、打ち明けてしまうか、どうだろう?」
「み、み、三井さん…何を……」
「嘘つくの下手だって、さっきオータくんにも言われたばかりでしょ?」
「う"っ……」
「俺はどこまでも中立の立場なんだけどね……サトくんには手を貸したくなるんだ。夕くんにも頼まれてたし…」
「夕先輩………はい、考えてみます」
「よし、素直な事は良いことだよ」
さすがにちょっと悔しい気持ちの里葉は拗ねた顔をしながら反論してみた。
「……僕の、その…普段の嘘くさい笑顔も…ある人の忠告を聞いて始めたことなんです。それに笑顔だと…気持ち誤魔化しやすいから…」
「確かに、的確なアドバイスをしてくれたみたいだね。サトくん、無表情だと顔の造作が引き立って君の持つ雰囲気と相まって色っぽくなるんだよ。後、癖なのかなぁ…時々流し目してるでしょ。あれ…俺は傍から見てるからいいけど…真面に見ちゃったらくラリと来る奴多いよ。武器になるから」
「…………僕の話じゃないみたいです…前から言われてるんですけど…あの…僕って…その……本当にい、色……色気なんてあるんですか?」
「無自覚かい!」
三井に突っ込まれてしまった。
「いや、そんな気はしてたけどね…危なっかしい子だね…君は」
「か、鏡見ても自分じゃ分かりません!」
恥ずかしくて手で顔の半分を隠してしまう里葉。
「手っ取り早くナイトを探してはどう?」
(出た、その単語……)
あなたにおすすめの小説
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
前世が悪女の男は誰にも会いたくない
イケのタコ
BL
※注意 BLであり前世が女性です
ーーーやってしまった。
『もういい。お前の顔は見たくない』
旦那様から罵声は一度も吐かれる事はなく、静かに拒絶された。
前世は椿という名の悪女だったが普通の男子高校生として生活を送る赤橋 新(あかはし あらた)は、二度とそんのような事ないように、心を改めて清く生きようとしていた
しかし、前世からの因縁か、運命か。前世の時に結婚していた男、雪久(ゆきひさ)とどうしても会ってしまう
その運命を受け入れれば、待っているの惨めな人生だと確信した赤橋は雪久からどうにか逃げる事に決める
頑張って運命を回避しようとする話です
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪