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高等部のころ
《39》
「サトはまだ寮にいるって……家に帰りたくない…とかって理由?……ごめん、突っ込んだこと聞いて」
フルフルと頭を振る。
「大丈夫。……それも……やっぱりあるかな…なんて言うか……居ずらいんだよね…。でも僕、講習とか色々受けてるから…」
「勉強好きなんだっけ?」
「あー……」
(なんだか、今日は嘘つきたくないな……)
心を楽にしてしまいたかった。
「本当は…そこまで好きじゃないんだ…勉強。嫌いじゃないんだけどね……恥ずかしいんだけど…僕、馬鹿だから……いっぱいやらないと頭に入らなくて…要領悪いんだよね…S組の人には…分からないかな…」
俯きながら話す。きっと受け入れて貰えないよう気がする。今日の央歌の雰囲気が里葉を酔わせているのだ。
(あーなんでここまで喋っちゃうんだよ…なんで今日はこんなに吐き出したい気分になるんだ……)
「そうなの?……だったら…凄い頑張り屋さんじゃない。サトはやっぱり凄いよ」
「え……でも……僕、馬鹿なんだよ…」
「努力してるんでしょ?本当に馬鹿な奴はそんな事出来ないよ…サトはもう少し自分に自信もっていいのに…」
散々馬鹿にされてきた過去を持つと、こういった時どういう反応をしたら良いか戸惑う。
「はぁ……勿体ないことしてきたな……」
ボソリと呟く央歌。
「え?なに?」
「……何でもない。サトの素顔をもっと早く知りたかったなって……」
「え……こんな…無愛想なのに?」
「話してて楽しいよ。とっても魅力的だし…ちょっと自己評価低い所は歯痒いけど…それもサトの個性なんだよね…」
(な、何が山岡くんに刺さったんだ……)
「鵜呑みにしちゃうから……辞めてよ……」
「鵜呑みにして良いのに……」
(わっわっ……なんだこの雰囲気……うわぁ…)
カッカッと頭から湯気でも出ていないかと本気で思ってしまう。
誰もいない空間に道の向こうから人の話し声が聞こえてくる。
(そうだ……ここは往来だ。しっかりしなきゃ)
足音と話し声が近付いてくる。その間も央歌は何が楽しいのか笑顔で里葉の顔を見ている。
話し声がすぐ側まで来た時、不自然に音が止まった。訝しんだ二人が傍で立ち止まっている人に視線を向ける。顔を認識し、目が合ったと思ったら
「あ!里葉だっ!里葉だよな?」
大きな声で名前を呼ばれた。
「あ……副…会長……」
「やっぱり!何やってんだよ…こんな時間にこんな所で……」
「え……いや…」
「なんだなんだ…やぁっぱり、悪い子なのか?」
大きな声で話しかけてきたのは生徒会副会長、本川剣だった。剣は里葉だと認識した途端にグイグイと嬉しそうに近づいてきた。央歌は立ち上がりスっと里葉の前に出た。
「どうも、今は黒龍のツルギさん…とお呼びした方が良いですか?」
「あ?お前は……ハクか…」
「はい。ハクのオータです」
「里葉……俺に嘘ついたのか?キイチじゃ無かったのか?」
「え?……山……いや、オータは友達ですよ」
「ほぅ……しかし……里葉が夜遊びするとは…」
「夜遊び……」
自分と結びつかない単語を言われ、腑に落ちなく微妙な顔をしてしまう。
「飽きないな……里葉は…」
「ツルギさん。何か御用ですか?」
「いや、ハクには用事がない。俺は里葉に用事がある。里葉、この後俺と遊ばないか?なんならゆっくり出来る所でもいいぜ」
「へ?……僕、ですか?…行きません…もう帰りますよ」
(冗談じゃない、着いて行ったら…それこそ身の危険があるじゃないか…)
里葉は央歌の後ろからコソコソと顔だけを出して答えていた。
「ツルギさん……今は無理ですよ。総長がっ」
「あ"~そうだった……しちめんどくさい事になってるんだった……」
黒龍の人達だろう。ボソボソと話した後、剣は渋々といった表情で片手を上げて会話を終わらせていた。
「しかたねぇ……里葉…今は黒龍がゴタついてるから無理なんだ……残念だよ」
「僕の事は気になさらずに…どうぞ行ってください」
「……体良く言ってんじゃねぇよ……次、会った時は覚悟しろよ。口説き落としてやるから」
(うへ~まじかぁ……)
「あ、はは……はは……怖いですね……」
剣は周りに急かされてその場を後にする。残された里葉は央歌の微妙な雰囲気に言葉を出せないでいた。
(ちょっとあの人……なに引っ掻き回してってんだよ……山岡くん…機嫌悪くなっちゃったのかな…)
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