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高等部のころ
《40》
「サト……いつも、ややこしい人を引き付けちゃうね……」
「えっ!……そん…」
「ごめん…進の気持ちが…ちょっと…分かってしまったよ…」
申し訳なさそうに苦笑する央歌。
「頼りない……よね……僕…」
「ん~……というより…守りたくなるんだよ」
「……それは……違うの?」
「なんて言ったらいいんだろうな……俺の場合は……男の本能っていうか……単純にサトに傷ついて欲しくないって気持ちからかなぁ」
ニコリと笑顔付きで言われた。
「僕……も…男なんだけど……」
央歌の顔に見とれそうになって慌てて誤魔化す。
「あはは…だよね~」
(本当に、今日の山岡くんはどうしたんだろう)
里葉は央歌が自分に興味を抱いていると思えなかった。ただ、進とイザコザと喧嘩腰で話していたので、目に余って相手をしてくれている。そう思う方が中等部から今までの彼の対応でしっくり来る。
(今日の事で舞い上がって、期待して、やっぱり違かった……なんて…耐えられないよ……山岡くんが僕のことを…なんて……そんな、そんな図々しいことっ。目を覚ませっしっかりしろ!)
どうしても自分に自信を持てない里葉だった。
寮に帰る時も央歌は優しくエスコートをしてくれた。今までだって優しかった、しかし今日の優しさは違く感じる。好きな相手から勘違いしそうな態度を取られる事は嬉しい事ばかりではなく、疑心暗鬼にさせる。素直に喜べない自分に嫌になりながらも、信じて馬鹿を見るのも嫌な臆病な自分に気が付かされ、自分はなんと醜い心なのかと落ち込む。
結局のところ、自身のなさに全て繋がっていく事だった。
里葉はこの央歌の態度は今日限りの事だと予想していた。しかし、気が向いた時に訪れる店に必ず央歌はいて、里葉の隣を陣取る。進に苦い顔をされながら店にいてもフォローしてくれる。そして送ってくれるのだ、正に守られている…と感じる。
(山岡くんが変だ……話し相手だけでなく、あわよくば恋愛相談的な、愚痴を言いにこのお店に来ているはずが……当の本人が常に側にいるんじゃできないんだけど…)
里葉の悩みが一つ増えた。
さらに夏休みだけだろうと思っていた央歌の態度、新学期が始まってもそれは変わることがなかった。
ある日の放課後、人がいない空き教室で里葉と央歌は向かい合って話していた。
「あの…山岡くん…言いにくいことなんだけどさ」
「今は学校でも二人なんだからオータって呼んでほしいな」
(これだ……この甘い雰囲気だ……)
「あの…オータ」
「うん、何?サト」
「えと…だから……学校では…その……夏休み前みたいにして欲しいんだけど…」
「……今の感じで、何が不都合があるの?」
「いや…えっとー…僕は親衛隊であって…」
言い淀む里葉、シドロモドロとして視線も定まらずキョロキョロしてしまう。
「うん、分かってるよ。親衛隊と風紀はあんまり仲良くしちゃダメなんだよね?だから俺は学校では話しかけてないよ」
「うっ…うん。そう…なんだけど……確かにその通りなんだけどね……」
「秘密の間柄みたいでドキドキするよね」
「いや、楽しまれても…僕はヒヤヒヤするだけだから…あの、オータ……僕が親衛隊の仲間といる時も…目配せするの……あれ…ちょっと」
「えぇ?大丈夫だよ、バレないって。親衛隊の子は生徒会ばっかり見てるから…俺たちのことなんて見てないよ」
とろけそうな笑顔で言われる。
「分かっちゃうよ!っていうか、バレちゃったらダメなんだって!」
(なんだよこの会話…まるで秘密の逢瀬みたいだ)
自分の考えに恥ずかしくなる里葉。
「サトは嫌なの?」
「え!」
「俺と仲良くするの…嫌?」
「い、嫌じゃないよ…嫌じゃないけど……」
「じゃ、良いじゃない」
(うぅ~~この丸め込まれた感……山岡くんってこんな感じの人だっけ?嫌じゃないよ……だから……困るんじゃないか……嬉しすぎて困ってるんだよ)
親衛隊の中で、常に気を張っていなければいけない里葉は自分の素顔が覗くような行為はやめて欲しかった。
この学校に来て、初めての嬉しい悩みだった。
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