さがしもの

猫谷 一禾

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高等部のころ

《41》



 春、新学期。朝のいつも通りの風景。

『きゃあ~新会長様~』
『素敵ですぅーー!』

波に乗って騒ぐ里葉の心情は淡々としていた。見慣れた風景、慣れた仕草、この仮面を被ってから早5年目。ベテランの域に達した里葉は高校2年生になった。
いつも通りでホッと一息つく里葉、チラリと親衛隊をみまわす。最近は今年度から隊長になった手島 匠(てじま たくみ)の横柄さが目に余る。前年度の内々に隊長に就任すると決まった辺りから酷くなってきた。それは中等部と時と同じでまたか、と周囲も思っていた。しかし、高等部ではそれが中等部の比ではなかった。一部の隊員を引き連れて制裁など行っているらしい。

(あーぁ…最近の隊長、僕に当たりキツいんだよね…1年の頃より居心地悪くなってきたなぁ…)

匠の横柄さが際立ってきたのは最近の出来事だが、不穏な空気を出していたのは夏辺りからだった。噂話や例の店での情報によると、どうやら2年の新会長に特定の相手が出来たことが発端のようだった。それまでは遊んでもらえていた親衛隊がパッタリと相手にされなくなったらしい。

(いや、常識的になっただけだど思うんだけど…)

匠は今の新会長にご執心で、一度夜の相手をしてもらった事を自慢げに話していた。里葉としては恥ずかしげもなく、よくもまぁシャアシャアと話せるもんだと思っていたが、この学校の…特に親衛隊の内部ではステータスとして尊敬されていた。
こういった話が出る度に親衛隊に入って後悔の文字が頭を過ぎる。
しかしながら、別段問題なく学校生活が送れている事実がある以上、親衛隊は里葉にとって安全帯であった。
ふと、気がかりなことに思考が傾く。

(そういえば、剣先輩が卒業していく時にもっと面倒臭いことになると身構えてたんだけどな…案外あっさり卒業してくれて助かったな……いや、なに本気にしてるんだ僕は……剣先輩の冗談に…)

気がかりなことが一つ減るとまた一つ出てくる近頃だった。


「森!掃除当番、忘れないでよ!」
「…は~~い、隊長」
「すぐにボウッとするんだから…ふんっ」
「すみませ~ん」

匠はプリプリしながら行ってしまった。

「はぁ……」
「森……気にしない方が良いよ…隊長、当たってるだけだと思うし…」
「うん……ありがとぅ」

隊員の中でも、比較的大人しい仲間が声を掛けてくれる。隊員それぞれでも思う所があるようだ。

「でも……森はちょっと…特別気をつけた方が良いかも…目立つ行動しない方が良いよ」
「?なんでぇ?」
「だって…ほら、森ってさ…中等部の頃と比べると…変わったじゃない?」
「え!僕…変わったぁ??」
「だぁって、中等部の時って小学生みたいだったじゃん、それが今はちゃんと成長してさ…遅れてきた成長期?森って、実は顔が整ってるし」

(実は…って……遅れてきた成長期って…)

「あ、あはは…そう、かなぁ?」

その隊員は近づいて声を落とす。

「隊長、森の成長が気に入らないものあるみたい」
「えぇ!!」

さらに声を小さくして言ってくる。

「ほら、隊長って…チヤホヤされないと気が済まないタイプでしょ?だから……」
「わっわっ……そんな話……」

(曲がり間違っても隊長の耳に入ったら…)

慌てて周りを確認する。幸い近くに誰もいなかった。

「大丈夫、ちゃんと確認してるよ~」
「僕……夕先輩に言われてたんだ…」
「あ、夕先輩と中良かったもんね…よく仲良くできたよね…森ってば」
「?夕先輩、優しかったよぉ~」
「あぁ~森は夕先輩のお気に入りだったもんね…実はね、みんなでよく言ってたんだよ。変わり者の夕先輩に好かれちゃって森は可哀そうだけど、僕たちは助かったねって…ごめんね?」

全然悪いと思っていない雰囲気で謝られた。びっくりする里葉、夕は変わり者なのは否定しないがまさか自分がそんな目で見られていたとは。

(だから、誰も近付いてこなかったんだな…確かに、そもそも親衛隊は生徒会に憧れている人が入る組織。僕と夕先輩の目的はちょっと違ってたから…だから意気投合したんだった。純粋な子たちからしたら…夕先輩は厄介者だったのかも…ん?)

「ねぇ、それって…僕も…変な人ってみられてたのかなぁ…それは……」

(ちょっとショックだぞ)

「えー?森は……ごめん…。あんまり印象に無くって…なにせ夕先輩が強烈で…」
「え!本当に?」

思わず喜んでしまった。

「あー僕、目立つの苦手だからさ…」
「うん、そんな感じだよね」

ニコリと言われてしまった。微妙な心境であったが、目的は果たされていた。狙っていた通りだった。

(これは、喜んで良いんだよね…うん)
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