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高等部のころ
《43》
里葉にとってまだ何も知らない、真白な1年生との出会いは青天の霹靂だった。客観視が出来るとは言葉だけで、何も自分の事を見れていなかった。
フと考えてしまう。自分の行動や考えは正しかったのか、間違った選択をしていたのではないか、と。
「最近サトは考え込んでいることが多いね」
返事のしようがなかった。
「そう…かな…」
央歌が寮の部屋に遊びにきていた。サラリと当たり前のように部屋にいるが里葉はジロリと見てしまう。
「っていうか…部屋に来ないでって言わなかったっけ?オータ…」
「うん、言ってたね」
「ちょっと!」
「大丈夫、バレないように来たから。そんなヘマはしないよ~」
央歌の様子がますます図々しくなって来ていた。
「サトが俺に心を開いてくれてるみたいで嬉しいんだよね~。だけどさ、考え込んでることが多いでしょ?最近。心配なんだよね」
いつものようににこやかな笑顔で里葉の頭を撫でてくる。
「オータ…」
「俺には何でも話して欲しいな…サトの負担を俺にも分けてよ」
(そうやって…いちいち僕の…心臓に負担を掛けてくるんだけど…)
「サトの心配事、俺が全部取り払ってあげたいんだよね…俺に甘えて良いんだよ?」
「な、何言ってんの…」
「もぅ…本気で行くって…言ってなかったっけ?」
「う……」
(どうしよ…部屋に二人きりって…実はよくないんじゃ…2年になってから、オータが…僕の勘違いじゃないような…)
「サトってさ…俺のこと好きでしょ?」
「は、はぁ!?」
「あれ?違った?…俺…こーゆー事そんなに外さないんだけどな…思い悩んでるサト見てたらさ…何となく……腕に閉じ込めたい衝動がさ…」
「オ、オータ…あの…僕……人と触れ合うのって…その……あんまり得意じゃないっていうか…あの近いんだけど……」
「サト、可愛いね」
「な、なんか!つ……剣先輩みたい…」
衝撃を受けたようの顔をした央歌。
「嘘でしょ…サト……あの、剣先輩と俺を一緒に、何て冗談でも考えないでよ…。剣先輩には、卒業式の日に俺からキチンと話をしたんだから…」
「へ?……オータ…話したの?」
「うん…ちょっとね。話したよ」
目をパチパチさせて央歌の顔を見てしまう。
「あ…もしかして、剣先輩が僕に何も言わずに卒業したのって…オータが?」
「ん~どうだろう?」
(なんで…少し満足そうな顔してるんだろ)
さぁ何でも話しなさい、と言わんばかりの余裕が見える態度でゆったり座っている央歌。
(なんだろ、最近オータに対して悔しく思えてくるこの感情は…)
それでも里葉は央歌にこう言われると従ってしまう。
「大丈夫だよ、サト。俺に話してみて」
「うん…」
「最近、何悩んでるの?」
「何ていうか…僕のしてきた事って……間違ってたのかなって…思って…」
真白な純粋な1年生に会って、自分が言われてきたような注意をそのまましてしまったと白状した。その子を見ていると心配になってしまう。つまりそのまま自分もそうではないか、と。
「皆んなの気持ちっていうか、進の気持ちが分かった気がして…僕って……間違ってたのかな」
「ふぅん。サトは大人になったんだね」
「え?大人?」
「うん、相手の気持ちを考えられるようになったんでしょ?それは成長したってことじゃないの?」
「そうなのかな…」
「サト、誰も彼も真直ぐな道しか歩くなんて無理だよ。実際に経験しなくちゃ間違いも何も分からないでしょ?」
「うん、確かに」
「だから、間違っていたかもしれないし、間違っていなかったかもしれない。結果なんて分からず毎日過ごすんだから、過去は後悔ばかりしてたら勿体無いよ。それを糧にすれば良いんでしょ?」
「……オータって…本当に同い年?」
「あはは…褒め言かな?」
いつでも里葉の気持ちを軽くしてくれる央歌の言葉は、里葉にとって絶対になっていた。気持ちも実際の距離も少しずつ近付いて来る央歌。その少しずつは里葉にとってはとてもちょうど良いペースで、とても心地良かった。
(毒されている)
そう揶揄しなければズブズブと央歌という人物にハマってしまいそうで怖かった。
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