さがしもの

猫谷 一禾

文字の大きさ
43 / 46
高等部のころ

《43》



 里葉にとってまだ何も知らない、真白な1年生との出会いは青天の霹靂だった。客観視が出来るとは言葉だけで、何も自分の事を見れていなかった。
フと考えてしまう。自分の行動や考えは正しかったのか、間違った選択をしていたのではないか、と。

「最近サトは考え込んでいることが多いね」

返事のしようがなかった。

「そう…かな…」

央歌が寮の部屋に遊びにきていた。サラリと当たり前のように部屋にいるが里葉はジロリと見てしまう。

「っていうか…部屋に来ないでって言わなかったっけ?オータ…」
「うん、言ってたね」
「ちょっと!」
「大丈夫、バレないように来たから。そんなヘマはしないよ~」

央歌の様子がますます図々しくなって来ていた。

「サトが俺に心を開いてくれてるみたいで嬉しいんだよね~。だけどさ、考え込んでることが多いでしょ?最近。心配なんだよね」

いつものようににこやかな笑顔で里葉の頭を撫でてくる。

「オータ…」
「俺には何でも話して欲しいな…サトの負担を俺にも分けてよ」

(そうやって…いちいち僕の…心臓に負担を掛けてくるんだけど…)

「サトの心配事、俺が全部取り払ってあげたいんだよね…俺に甘えて良いんだよ?」
「な、何言ってんの…」
「もぅ…本気で行くって…言ってなかったっけ?」
「う……」

(どうしよ…部屋に二人きりって…実はよくないんじゃ…2年になってから、オータが…僕の勘違いじゃないような…)

「サトってさ…俺のこと好きでしょ?」
「は、はぁ!?」
「あれ?違った?…俺…こーゆー事そんなに外さないんだけどな…思い悩んでるサト見てたらさ…何となく……腕に閉じ込めたい衝動がさ…」
「オ、オータ…あの…僕……人と触れ合うのって…その……あんまり得意じゃないっていうか…あの近いんだけど……」
「サト、可愛いね」
「な、なんか!つ……剣先輩みたい…」

衝撃を受けたようの顔をした央歌。

「嘘でしょ…サト……あの、剣先輩と俺を一緒に、何て冗談でも考えないでよ…。剣先輩には、卒業式の日に俺からキチンと話をしたんだから…」
「へ?……オータ…話したの?」
「うん…ちょっとね。話したよ」

目をパチパチさせて央歌の顔を見てしまう。

「あ…もしかして、剣先輩が僕に何も言わずに卒業したのって…オータが?」
「ん~どうだろう?」

(なんで…少し満足そうな顔してるんだろ)

さぁ何でも話しなさい、と言わんばかりの余裕が見える態度でゆったり座っている央歌。

(なんだろ、最近オータに対して悔しく思えてくるこの感情は…)

それでも里葉は央歌にこう言われると従ってしまう。

「大丈夫だよ、サト。俺に話してみて」
「うん…」
「最近、何悩んでるの?」
「何ていうか…僕のしてきた事って……間違ってたのかなって…思って…」

真白な純粋な1年生に会って、自分が言われてきたような注意をそのまましてしまったと白状した。その子を見ていると心配になってしまう。つまりそのまま自分もそうではないか、と。

「皆んなの気持ちっていうか、進の気持ちが分かった気がして…僕って……間違ってたのかな」
「ふぅん。サトは大人になったんだね」
「え?大人?」
「うん、相手の気持ちを考えられるようになったんでしょ?それは成長したってことじゃないの?」
「そうなのかな…」
「サト、誰も彼も真直ぐな道しか歩くなんて無理だよ。実際に経験しなくちゃ間違いも何も分からないでしょ?」
「うん、確かに」
「だから、間違っていたかもしれないし、間違っていなかったかもしれない。結果なんて分からず毎日過ごすんだから、過去は後悔ばかりしてたら勿体無いよ。それを糧にすれば良いんでしょ?」
「……オータって…本当に同い年?」
「あはは…褒め言かな?」

いつでも里葉の気持ちを軽くしてくれる央歌の言葉は、里葉にとって絶対になっていた。気持ちも実際の距離も少しずつ近付いて来る央歌。その少しずつは里葉にとってはとてもちょうど良いペースで、とても心地良かった。

(毒されている)

そう揶揄しなければズブズブと央歌という人物にハマってしまいそうで怖かった。
感想 1

あなたにおすすめの小説

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

俺以外を見るのは許さないから

朝飛
BL
赤池凌平は、成瀬真介と出会い、緩やかに親交を深めてやがて恋人同士になるのだったが、時折違和感を抱いていた。  その違和感の正体が明らかになる時には、もう何もかも手遅れになってしまい……。 (女性と付き合うシーンもあります。) ※ネオページ、エブリスタにも同時掲載中。マイペースに更新します。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……