輪廻の熱――ケツの穴よりデカイクソを抱えて

久我光良

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2章/猛流

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 初めての夢精は、男が俺の上に乗って腰を振っている夢だった。ざんばらの髪、無精髭のワイルドなルックスの男。
 夢の中では俺は彼に恋をしていて、胸がいっぱいになって……夢精。
 中学1年生、自分はゲイなのかと夢精の快感の余韻の中頭を抱えてしまったのを覚えている。
 好きなのは昔から女の子だった。
 でもその日を皮切りに俺の夢には2人の男がよく出てくるようになってしまった。
 1人はさっきの野性味が溢れる男。
 もう1人は1人目とは打って変わって真逆の体が弱そうなひょろい優男。なお、こちらもイケメンだ。
 この人達が出る時は大抵ヤッてる夢で、早起きしてパンツを洗う羽目になる。ハメられているだけに。
 もしゲイなのだとしても、好みの高低差が激しすぎて笑えてしまう。
 まぁ、そんな事を考えながら今朝も俺はシャワーを浴びながらパンツをごしごし洗っていた。
 今日は優男イケメンが下だったよ。
「はぁ……」
 パンツが綺麗になったかを確認しながら、盛大にため息をついた。
 女の子が……好きなんだけどなぁ……。
「アニキ!おはよ!」
 突然風呂場に響くアルトのバカでかい声。
 正直飛び跳ねた。
 妹の美羅が早朝ジョギングから帰ってきてしまったのだ。
 振り向くとすりガラス越しに身長170cmの長身のシルエットが見える。
 今年で高校1年生。空手を保育園から初めてスポーツ強豪校に進学。空手もやりつつ、今年から剣道も始めたという格闘系女子だ。
 入学して楽しそうだから、となんとなく始めた剣道。
 4歳から12年の空手歴と「何か性に合ってる」というセンスだけで1年生で兼部、剣道歴2ヶ月というふわふわした立ち位置なのに団体戦レギュラーメンバーに入ってしまい、先日先鋒としてインターハイ予選を無双した……漫画みたいなヤツだ。
 成野家の狂犬の面目躍如だ。
 幼少時は俺と姉さん2人して彼女に物理で泣かされ続けた苦い思い出もある。
 しかし、まぁ、可愛い妹、大事な家族であることは間違いない。
 なんだけど……。
「す、すぐ出るからちょっと待ってろ!」
 慌てて体に着いた泡を流す。
 洗いたてのパンツがあるというのは勿論だけど、どうしてこんなに焦るかというと……。
「良いって!一緒に入るぞ!」
 すりガラスが割れんばかりの元気の良い声とともに、妹のシルエットが服を脱ぎだした。
 これだ。
 最近彼女の距離感か頭がおかしいというか、簡単に言うと逆セクハラをかましてくるようになってきたのだ。
 今の風呂しかり、居間で太もも触ってきたり、音も無く近付いてきて首筋を舐めてきたり頭のニオイをかがれたり、肩を組んできたその手で鎖骨をコリコリするし視線が俺の股間だったり……他にも色々。
 いつからだ?と思うとインターハイの予選を通過した日位(2週間前)から、妹の頭はバグりだしている気がする。
 それ以前だと普通の距離感の普通の兄妹で、シャワーも素直に順番を待っててくれたんだけど……。
「お前!脱ぐな!待てって!出るからっ!」
 ボディタオルで洗ったパンツを包んで隠した。バレバレだけど、一欠片の可能性に賭ける。それを掴んで立ち上がるのと風呂場のドアが開くのは同時だった……。
「よー、入るぞ~」
 溌剌とした笑顔が入ってきてしまった。
 俺より少し目線が低い175cmの長身が立ち塞がる。
「だから入ってくるなって!」
 美羅だって年頃だ。こんなことをしてくるが年頃だ。体を見ないようにしながら俺は効果は無いだろうが美羅を睨みつけた。
 なのに美羅は俺の足元から顔までつらーっと眺めて。
「隠すなし」
 不満そうに俺がボディタオル(と、パンツ)で隠した股間を再度見て不満そうに呟いた。
 そしてあろうことか手まで伸ばそうとしたので、慌てて横を通り抜ける。
「馬鹿っ!恥じらえ!」
 俺は風呂場を飛び出て風呂場の戸を閉めた。
「なんでだよ~一緒に入ってくれても良いじゃねーかよ~」
 シルエットが戸を開けようとしたので、急いで押さえる。
「お、追っかけてくるなよ!大人しく浴びてろ!」
 こ、怖い。怖すぎる。なんでそんなにガンガン攻めてくるんだよ。
 俺も男だからそれなりに力はあると思うけど、両手で押さえてるのに力負けしている。
 さすが空手歴12年……。
「捕まえた」
 最初から勝負になってなかったのかもしれない。戸の隙間から伸びた手が俺の手を握る。
 ぎらついた目が俺を見ている。
「え……」
 何その視線。
 今まで誰にも向けられた事が無いような……肉食獣が獲物を狙うような……背筋がぞくっとして、完全に力が抜けてしまった。
「……そんなにびびるなよ」
 視線を反らす美羅。バツが悪そうな顔をしている。
「冗談だよ、じょーだん。ごめんな、アニキ」
 俺の肩をぽんぽんと叩くと、美羅は風呂場の戸を閉めた。
「……」
 本当怖かった。アレが兄を見る妹の目か?
 息が上がっている。戸の開け閉めの攻防のせいだと思いたい。
 冗談にしろ迫真に迫りすぎている。
「……ふぅ」
 俺は大きくため息をついていた。
 本当……どうしちゃったんだ、美羅?

 数日後。7月のある日。
 学校終わりにスーパーで買い出しをして、帰宅して作ったのは2人分の夕飯。
 チキンの照り焼きとおから、海藻サラダ。
 いつもなら両親の分も作るんだけど、今日は地方に法事で出ていて、帰ってくるのは明日の夕方だったか。
 我が家のエンゲル係数をバクアゲさせてる欠食児童の美羅は……今日は剣道部の練習だったかな。
 腹を空かせて帰ってくる。友達と外食もせず真っ直ぐに。出した食事を美味しそうにモリモリ食べてくれる。
 そんな美羅の姿を見るのが大好きだ。
 兄というよりは親の気持ちに近いのかもしれない。
 大きくなーれー、大きくなーれーと魔法をかけながら、俺は料理をしている。
「ただいま~」
「おかえり~」
 料理に使った鍋や包丁を洗ってると、制汗スプレーの良い香りをさせて美羅が帰宅してきた。
「……」
 いつもの美羅ならシャワー浴びてくるっ!とすぐに姿を消すのに、今日はドアを開けてこちらを見たまま動かない。
「どした?」
 なんだろう。タオルで手を拭きながら美羅を見た。
 目が合うと目を反らされた。
 天上を右から左に見回しながら、左右に体を揺らしてつま先で床をトントン。
 なんだ?何か言いたい事がありそうな。
「あのさ」
「うん」
「今日の夜の予定は?」
「予定?」
 なんだ?
「何時に寝る?」
 藪から棒にどしたのか。
「家事やら宿題やら風呂やらして……11時位かな」
 変なこと聞くやつだ。
「そっか」
 また床をつま先でトントン。
「アニキ、今日一緒に寝ようや」
「は?なにそれキモ」
 思わず反射的に言ってしまったが、良い年した兄妹が一緒に寝るとかないわー。
 それに最近セクハラもしてくるしな……。
「キモとか言うなし」
 唇を尖らせて美羅はシャワー浴びてくる、とドアを閉めた。
 いつになくしおらしいけど、セクハラがなぁ……。

 シャワーを浴びて夕飯の席に着いた美羅は相変わらず上の空というかなんとなく挙動不審だった。
 さっきの駆け引きに苛立っているとかそういうのは無さそうだけど……どうしたんだろうか。
 俺を見て~鶏肉食べて~天井見てからの又俺を見て~をループしている。
「今日の照り焼きどうだ?」
 言いたい事でもあるのかな?
 さっきの延長だったらイヤだけど、場が悪くなるのもイヤだった。
「え、あ、マジ最高。今日も美味しいわ」
 モリモリモリ……。
「なぁ」
 おからを口にかきこみながら美羅がようやく俺に視点を定めた。
「はいはい、おかわりか?」
「いや、違う。あのさ……」
 机に身を乗り出してくる。
 俺等以外俺もいないのに内緒話か。ともかく俺も美羅に合わせて耳を向けた。
「楓って人に心当たりある?」
 なんだ、それ。内緒でする話か?
 ともかく、かえで、楓?
 誰だ。
「いや、判らない。芸能人?何かのドラマに出てた?」
「そっか……」
 少し残念そうに俯く美羅。
「じゃあよ、ハヤテは?」
 ハヤテ。
 はてさて?
「ハヤテ?」
「あ……もっかい言って」
「ハヤテ」
「もっかい……」
「ハヤテ……ねぇ、何の話だ?」
「……」
 俺をぼーっと見たまま黙り込む。
「おい、どうした?おーい」
「……なんでもねーよ、ありがとな」
 何故か凄い優しい笑顔で微笑む美羅。
 な、なんなんだ一体……。

 皿も洗ったし、美羅が汚れ物をぶちこんだ洗濯機はさっき回した。洗濯が終わるまで少しの休息。
 ソファに腰掛けテレビでバラエティ番組をかけながら、スマホでお気に入りのユーチューバーの料理動画を見て、いつか俺もこうなりたいなぁと思うのが、俺の一時の安らぎ。
 なのに……。
「アニキも麦茶飲むだろー?」
 どすん、と真横に座る美羅。
 テーブルの上に麦茶のグラスを2つ置くと、俺の体に自分の体を密着させてくる。
「近い近い近い……」
 スマホを見ながら離れようとすると肩を抱かれて阻止された。
「良いじゃんかよ~別に」
 ヘラヘラ笑いながらホットパンツみたいな部屋着からスラリと伸びたしなやかな筋肉質のふとももを俺の足にこすりつけてくる。
 腰、胸、二の腕までべったりくっつけてきて……暖かい体温が伝わってきた。
 ……またセクハラ。もうリアクションしたら逆に喜びそうだから放っておくか……と思っていたら。
「なぁ……」
 耳元で囁く美羅。生暖かい吐息があたってゾゾゾとなる。
「近いって……」
 やっぱりイヤでリアクションしてしまう。
 密着してる腕を外そうとすると、今度は……。
「……アニキ」
 耳の穴に舌を突っ込んできた!怖気が走って突き飛ばそうとした。でも、ち、力が強くて離れられない。
「やっ、やめろよっ!ほんとキモイ!やめてくれよっ!」
「逃げるなよ……かえで」
「……!」
 かえで。
 美羅が耳元で囁いた言葉。
 それを聞いた途端、体の芯が熱くなるのが判った。
 背筋がぞっとしたのはしたけど、恐怖じゃない、これは別の……。
 頬が赤くなるのが判る。心臓が早く鳴って呼吸が少し苦しくて荒くなってしまう。
 これはやばい。もうセクハラなんてレベルじゃない。アレだ、彼女とセックスする時のアレに近い。
 相手は妹なのに……なんで?
 ゲイで近親相姦とかマジやばいヤツ。
 キモイキモイキモイキモイ!
「……」
 俺の顔の真横で、美羅が嬉しそうにイヤらしく上目使いで笑う。肩で息をしてるくらい呼吸が荒くなってる。
 顔が、唇が近付いてくる。妙に艶っぽく見えるのがまたイヤだ。
 意地でも目を反らす。すると美羅は俺の頬にキスをしてきた。1度、2度、3度。
 一言も喋らないのがまたキモイ。
 妹の癖に兄をリードしようとしてくるのがキモイ。
 兄に手を出そうとする妹もキモイけど、それに流されそうになってる俺はもっとキモイ。
 髪の毛をかき分け、後頭部を優しく撫でてくる美羅。
 そのままぐいっと、俺の顔を美羅の方に向けさせられる。
 やばい、これは口にキスの流れだ。
 ここでキスをしたら……してしまったら……。
 ごくり、喉が鳴る。
 その時、何故か頭に浮かんだのは姉さんの顔だった。
 姉さん……助けて……。
『ピー、ピー、ピー』
 洗濯終了のアラームが聞こえた。
「……?」
 気を取られたのか、視線を台所に向ける美羅。
「ごめん!」
 断らなくても良いのに、俺は一言謝ると力一杯美羅を突き飛ばした。
 物心着いてから初めて誰かに、妹に振るう暴力。
 火事場の馬鹿力かもしれない。美羅はつんのめって後ろに倒れ込んだ。
 俺は走った。鍵のかかる自分の部屋、2階、一番奥の自分の部屋まで。
 足がもつれる、上手く走れない。走ったつもりでも走れているのか判らない。
 階段を駆け上がる……途中の出来事だった。
 足が滑った。靴下を履いていたから。
 顔面に迫る階段の角。どうにか手でカバーできたけど、胸や腹に衝撃。
 息が詰まる。
 変な声が喉から出てきた。
 ずるずると、階段から滑り落ちる。
「……逃げるなよ」
 追いついてきた美羅の低い声。
「あ、アタシと、あ、あそこまで盛り上がってて、逃げんなよ。も、もう我慢、なんかできねぇよ」
 興奮してるのか呂律が回っておらず、どもって震えた声が怖かった。
「や、めろよ……」
 お姫様みたいに抱えられる。
 ギラついた目、本能剥き出しの獲物を蹂躙するような目が俺を睨みつけていた。
 もう、動けない。
 だめだ、離せ、やめろ、運ばれながら、美羅の頬や頭を叩きながら、叫んだ声は叫びになっていたのか。
「うるさいな」
 キスをされた。歯が当たる。歯磨き粉の香り、その奥から生っぽい臭い、そして唇からの血の味。実の妹とのファーストキス。
 俺は妹の部屋まで運ばれて、パイプベッドの上に寝かされた。
 転んだ胸が痛い、腹が痛い、唇も痛い。
 頭も心も真っ白だ、もう逃げる気も起きない。
 それなのに。
「ほら、あ、アニキもやる気満々じゃねぇか」
 俺の股間の盛り上がりを見て、嬉しそうに笑う。
 LEDで明るく照らされた妹の部屋。
 自分の髪を手首に巻いたゴムでポニーテールにまとめると、美羅は躊躇なく着ている物を脱ぎだした。
 顕になる無駄な肉のないアスリートのしなやかかつ柔軟な妹の体。上向いた胸、縦に線の入った腹、股間の茂み……。
「アタシも、も、もうが、我慢できないんだ」
 見ろよ、と美羅は自分の股間に手を入れると、俺の目の前で粘液にまみれた指を見せつけてきた。そのまま美羅は無様に横たわる俺の体に手を伸ばす。スウェットをパンツごと脱がされた。
 イヤなのに、本当にイヤできもいのに、何故か俺の股間は反応しているのが本当に本当にイヤで。
「電気消してくれ……」
「やだよ、アニキの顔見たいじゃん」
 ただ断られただけなのに深い絶望感。
 美羅は俺の上に四つん這いになった。
「荒療治になるかもだけど……必ずアタシとの事を思い出すよ」
 思い出すってなんだよ……!
 もう声にすらならない。
 美羅が俺のペニスを指でつまむ。それだけでピクンと腰が浮くような快感が。そのまま美羅は腰を落としていく。
 ぬるっとしたものが俺の先端にあたった。
 まずいまずいまずい。
「やめろ……兄妹……だろ……」
「愛してるよ、楓……」
 上からのキスで言葉は塞がれた。届かなかった。
 俺と妹は繋がってしまった。

 やめての言葉はキスで塞がれた。
 愛してると何度も言わされた。
 ハヤテ、とも言わされた。
 聞きたくもない妹の嬌声を聞かされた。
 見たくもないのに妹が達する所を何度も見せられた。
 味わいたくもないのに妹の汗の、唾液の、愛液の味、自分の精液の味を知った。
 イキたくもないのに3度も妹の中に出してしまった。
「今度は必ず護るよ……楓」
 美羅は俺と繋がったままうわ言のように呟くと、俺の胸の上で眠りについた。
 ……誰だよ、楓って。誰だよ、ハヤテって……。
 妹の額に浮いた汗が流れる。
 安らいだ寝顔が不気味に思えた。

 眠った妹を押しのける。
 体が重い。
 少し乱暴に押しのけたのに、目覚めない妹。
 重い足。
 どちらの汗か体液か判らない液体でぐしょぐしょになったシャツをその場に脱ぎ捨てた。
 気付いたらシャワーを浴びていて、気付いたら回したままだった洗濯機から半分濡れてる俺の服をとりだすと、シワだらけのまま着た。
 居間に置いたままのスマホを持って、家を出た。
 7月の深夜、まだ暗い。
 何度も脳裏に浮かんだ姉さんに会いたくて仕方なかった。
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